内戦の戦火と英雄的傭兵旅団達
小宵の手配した復興師団がフェナード・ファイーム両領を統合し、フェム統合領と改名し、順調に統合領からライネル領への移民計画が進んでいく中、マクベル次期国王を争う内戦は始まりを告げた。
それを皮切りに、マクベル王国各所では平和と言う絶妙な均衡が今回の内戦によって壊され、各地の貴族同士が昔からの因縁に蹴りをつけるため、はたまた私利私欲のため、多くの戦争が生まれた。
そんな表舞台とは裏腹に、マクベル王国の周囲の蛮族と裏社会は予想外の静かさを醸し出していた。【百獣之旅団】と【深血之旅団】の二大勢力により、数多くの抵抗する蛮族達は老若男女問わず全て殺され、今ではフレデリカに付き従うか、その種族ごと喰い殺させるか、その2択しか存在しなかった。それにより、フレデリカの旅団は遊牧民族や山間、海上、雪国からさらには砂漠まで、数多くの蛮族に恐れられ、彼ら彼女らから数多くの献上品をライネル領に送り届けていた。
メルティも今ではマクベル王国の裏社会の絶対的支配者に成り上がり、クロウの総資金には及ばないものの、その気になれば犬を国王にし、国王の家畜に堕とす事もその武力と権力、そしてその財力によって成し遂げる事ができるようになった。そんな彼女達は、マクベル王国での内戦にも影響され、以前よりも更に多くの人員、協力者、スポンサーを獲得する事ができ、今ではマクベル王国有数の二大傭兵団として名を馳せる事になっている。
また、プレイヤー間では今回のマクベル王国の内戦は一つの大きなイベント【マクベル内戦】になっており、プレイヤー達は傭兵として、もしくは傭兵団を率いて、それぞれ第一第二第三王子、もしくは無加盟の独立勢力としてマクベル王国の内戦に加わる事ができる。運営からの直接的な報酬はないものの、各勢力から送られる大量の報酬金は、数多くのプレイヤーを熱狂させるのに十分だった。
そして今、内戦が始まってからはや数年、数多くの異世界人の参戦も相まって、事態は混沌を極めていた。イリアス正教を始めとする宗教勢力も今回を機に信者を増やそうと躍起になっていたり、邪神信奉者も再び躍起になって人体実験を開始したり、数か月で終わるはずの内戦は、とどまりなくその戦火を広げていた。だが、そんな戦火を浴びて、名を上げる傭兵団もいる。
【破壊之旅団】
【魔砲のちゃちゃ丸】が率いる総勢3万人の上級魔法使いと上級付与魔法使いからなる超攻撃型傭兵団。
主な戦果に、【魔力砲・極太】1発で城壁を破壊し、そのまま相手の巨大な城塞都市を地形ごと真っ二つにしたという。
【堅牢之旅団】
【オリハルコンのドベック】が率いる総勢4万人の弓使い、重装騎士に長槍使いと言う古典的な傭兵団。特筆すべきは洗練された統率力とその傭兵団の防御的靭性。防衛戦、防城戦において目覚ましい戦果を挙げており、既に数回【破壊之旅団】と戦っているが、双方共に大きな被害を出すだけで、決着はついていない。だが、お互いに互角である事が、お互いの名声を高める原因にもなっていた。
【凪之旅団】
【風のフルール】が率いる総勢1万人の魔法使い、軽騎兵と軽槍兵と言う特殊な傭兵団。先の先と先手必勝を掲げる先鋒兵団とも呼ばれ、特筆すべきはその旅団の軽快さと精密さ。戦闘力も決して低くなく、彼らが先陣を切って相手の陣形を切り崩し、風が吹くように相手を蹴散らすその様が、彼らの名声をより一層高めていた。
【鬼火之旅団】
【霊火のロッシェ】が率いる夜戦や暗殺を専門とする傭兵団。総員の数はロッシェ本人しか把握しておらず、その不可解さと暗殺任務や夜戦において目覚ましい功績を上げている事から、他の傭兵団達には一番関わりたくない傭兵団だと言われている。
【麦之旅団】
【放牧のアネッタ】が率いる補給、戦後復興等を専門とする平和的な傭兵団。総勢5000人の傭兵団だが、ほぼ戦闘能力は皆無で、主に依頼主の為に各地から食料や医療品、その他難民の避難等を主に行っている人道組織だ。彼らを始めとする平和的傭兵団を攻撃するのは禁止されているという暗黙の了解が既に形成されており、彼らに危害を加えた勢力は暗殺人形に磔にされるという噂も広がっている。
その他にも無数の傭兵団がその名を上げており、こうした英雄的な傭兵団が活発に戦火に包まれたマクベル王国を駆け巡る傍ら、まるで対岸の火事を眺めているような、そんな領地も存在した。
曰く、魔獣の森の奥地に桃源郷が存在すると。
曰く、あそこは魔獣の森に飲み込まれた人形の街だと。
曰く、龍の寝床であり、何人たりとも邪魔をする事は赦されないと。
東部ライネル領。数多くの見目麗しい精巧な自立式魔素駆動型奉仕人形、通称【魔素人形】に守られた平和の街。百獣の王のねぐらであり、鮮血紅女の本家であり、龍と織機と人形の街だとも言われている。
周囲は戦火に包まれているはずなのに、その桃源郷は平和そのものであり、数千年先を行く教育に生活環境、見た事もない自動化設備に【魔素駆動】と言う特殊な機械を駆使し、万人が魔法を行使できるという夢のような場所でもあり、世界中に点在する【ライネル】の名を冠する高級施設の元締めが存在する超セレブティな場所でもある。
外部の人間やプレイヤーがライネル領に行く事も可能だが、行った人間が誰も帰ってこようとしないため、巷ではそれも眉唾物の絵空事だと言われている。そんな不可思議で不可解な場所が現在のライネル領であり、そんなライネル領と一番関わりがあると言われているのが、東部辺境のベレンツァ領にいる、四代目ライネル伯爵と、当代のライネル伯爵こと、クロエデュフォン・ライネルと言われている。それゆえ、未だベレンツァ領は未だ攻め落とされておらず、幾たび戦場に現れては数多くの人間や勢力から丁重に扱われている五代目ライネル伯爵も、いつからか【ライネル領への案内人】と言われて、数多くに人間に慕われるようになっていた。




