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すっとぼけ覇王のVRMMO蹂躙記  作者: 愛良夜
マクベル王国内戦編

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第一次ライネル・フェンデル戦争Ⅰ

「む?これは...クロウ様!」


第三世代の人造英雄達と戦闘訓練をしていたクロウに、小宵は迷いなく声をかける。


「ん?」


人造英雄10体の武器をへし折り、訓練終了を彼らに告げる。そして小宵の方を向くと、彼女は空中に【液晶水】と言う映像魔素粒子受容体を自身の魔力を用いてスクリーンのように広げていた。クロウは彼女と共にそのスクリーンに映し出された画面を見てみる。どうやらゴエティアシステムによって現在のフェンデル領周囲が写し出されており、そこには規律正しく並んだ数えきれない程の馬に乗った騎士に以前とは違い、きちんと軽鎧を着た無数の兵士、そして頭の上にカーソルが出現しているプレイヤーも数多く並んでいた。


「そうか、ついに来たか」

「そのようですね」


最近と言うか、以前ベレンツァ領に行ってからクロウもようやくNPCとプレイヤーの区別が出来るようになった。恐らくだが、自分の頭の上にもプレイヤーを意味するカーソルが出現しているのだろう。自分の姿を鏡で見た時は見えなかったけど。


「丁度一週間か」


クロウだけはゴエティアシステムに直接接続できるため、左目を閉じてそのまま上空に意識を向け、ベレンツァ領を上空から[龍眼]を使用して確認する。昼に差し掛かる前のこの時間帯に、丁度クロエはベレンツァ候爵らしき人物と共に大軍に護衛されて、馬車に乗って出発するようだ。



「動き始めたようです、旦那様」

「そうみたいだな」


ベレンツァ領周囲に目立つ危険がない事を確認し、クロウはゴエティアシステムとの連結を解除して、再び左目を開いた。そして小宵のスクリーンを改めてみてみると、先程まで整列して待機していた大軍は、順序だてて進行を開始した。先頭には騎兵を始めとする重装騎士団が、中盤には豪華絢爛な馬車が複数点在しており、その周囲を囲むように重鎧を着た歩兵が、そしてその更に外側を軽鎧歩兵が、後方には食料や恐らく武器を積んだ大きな荷馬車が途切れることなく続いており、統一性のない服装を着て荷馬車の周囲を守っている人間達の頭上には、プレイヤーを現すカーソルが浮かんでいた。


「Lv20,Lv35,Lv26,Lv27,Lv33,Lv36,Lv40とあと1人はLv42。こいつがリーダーっぽいな」


8人のプレイヤーが等距離に荷馬車を守っている。見た目からして戦士が1人、弓使いが1人、魔法使いが2人、ヒーラーが2人、盗賊が1人と騎士が1人の構成。騎士のLvが42である事から、恐らくこの騎士がリーダーだ。


「少し様子見だな、のちのち追及されたら面倒だから、ライネル領への侵攻路線が確定したら、まずは【コカトリス】と【オリアス】を送る。それと念のために【第五重装飛行師団】に出撃準備を、初の実戦だけど、まずはあいつらで様子見だな」

「了解いたしました」

「今回は、そうだな、俺が行こう。前回は警戒し過ぎて撤退したけど、今回は異世界人を相手してみたい」

「お気をつけて」

「おう、まあひとまずは様子見だな」


クロウは横で待機していた人造英雄達を下がらせる。同時に小宵にいくつか追加の指示を出すと、彼は近くにあったベンチに座って少しだけ肩の力を抜くことにした。


「大規模な戦争は今回初めてだな、前回はメルティに丸投げしたから、今回はどうなるんだろ、何でも自分でやるのは面倒だな、そろそろ内戦も始まるかもしれないし、人材募集でもしようかな」

「それが良いかと」

「小宵、もう帰ってきたのか」

「ただいま戻りました」

「おう、それで、どう思うよ、人材募集の件」

「そうですね、非常に良いと思います。以前から旦那様の言っていた内戦は避けられそうにありませんし、今後はフェンデル卿だけではなく、他の勢力からも目を付けられるでしょう。ならば先に剣柄を握りしめるべきです」

「意外と好戦的なんだな」

「いえ、ただ旦那様は平和をご希望でしたので、敵を全て滅ぼせば平和になるのでは?と思った次第です」

「極論が過ぎるよ...」

「?」


なぜっ?と首をかしげる小宵。根本が妖精故の残虐性なのか、それともただ単に直情的なのか。


「そうだ、魔力人形達の開発は?」

「現在進行中です。やはり思考プロセスの開発に研究者達が苦労しているようで、現在新モデルを開発中とのことです」

「うーん、死刑囚の脳をデータするのは?」

「既に数回試験的にその方法を試したようですが、何度やっても犯罪行為に手を染めてしまうようで...」

「あー、それは難儀だね」

「はい、そのため、現在は実際にAIモデルを一から育成中途の事です」

「結構かかりそう?」

「はい...現在はライネル領全域の領民の行動パターン等をデータとして入力し、教育しているようです。少し時間がかかるようです」

「身体の方は?」

「現在は更なる靭性と軽量化を別チームが研究しております。目標は前モデルに比べて20%の軽量化だそうです。それでもまだ少し重たいようですが....」

「別に重量とかはあんまり気にしてないよ....あんまり軽過ぎたら逆に戦闘中不利になるからね、あんまり詰まりそうだったら、[風魔法]か[重力魔法]による軽量化や逆の加重を考慮してみてって言っておいて」

「了解いたしました」

「魔力人形、もといマジックドール達はできれば量産したいな。もちろん使い捨てみたいな事は出来ないけど、軍隊補充には最適だからね。あんまりやり過ぎるとバランス崩れるから、そこらへんは様子見で調節かな」

「のちほど汎用化等の打診してみます。現在最大の問題は思考AIですので、そこさえクリアできればすぐに汎用化や量産化計画も進められるかと」

「焦らなくていいよ。思考モデルはできるだけ高度にね」

「承知いたしました」


自由兵役をライネル領内で進めているせいか、ライネル領兵と言うか、ライネル軍はあまり多いとは言えない。領民数は恐らく近隣でも随一のはずだが、それは赤ん坊や新設したライネル学園に通う学園生を入れたらの話である。事実、出生率が上昇したのもクロエが伯爵に就任してからなので、戦力となるような成人はまだ少ないし、異世界人(プレイヤー)の出現地点であり、蘇生ポイントである【イリアス教会】も残念ながらベレンツァ領とフェンデル領、それからグラユウス領にしか存在しない。


「割とドールに頼る事になるかもな」


特に問題はないが、それはそれで領民の帰属感等が減りそうで少し怖い。でも現実的にはそれが一番なので、後で少しだけドールの開発進捗を見に行くことにした。


そして3日後、内戦の開始を告げるように、国王領での戦争が開始すると同時に、フェンデル伯爵の軍隊は元フェナード・ファイーム領で補給をしたのち、再びライネル領へ進行を開始した。


「確定か」


クロウは自分の執務室に設置した大型液晶水を含むモニターに表示されたフェンデル軍を見つめながら、そう言った。そんなクロウの屋敷の上を、10機のR(ライネル)-12精神干渉機、通称【コカトリス】と4機のR-5超高高度式偵察機【オリアス】が高速で横切る。[エアロマニューバ]を使用し、それなりの高さで飛んでいるが、第二世代の人造英雄達は問題なく乗りこなせているようだ。【コルソン空中大公領】からの【魔素補給パス】も問題なくこの14機の飛行機と人造英雄達に繋がっているようで、更に速度を増し、ついにはアクロバティックな曲芸も披露しだしたが、特に問題はないらしい。


「ったく、遊びやがって」


ぐるんぐるんと空中で無意味に回避行動をとるコカトリス達をクロウは自室から見送りつつ、魔力人形の思考AIモデルを投射したホログラムに再び意識を集中させた。


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