新ライネル領Ⅸ-鮮血紅女
メルティ視点です
「ひっ!に、逃げろ!」
「やべぇぞ!近づくな!」
視界が霞む。霞むというより、白色黒色緑色黄色その他無数の色が、全て全て赤色に染まっていく。両足で立つことすらままなくなり、ガクガクと崩れそうになる両足を必死に支え、赤く染まる視界とあたしの瞳に、思わずそんな自分の現状に自嘲の笑い声が出てしまう。どうしてこんな事になってしまったのかは分からない。分からないけど、貴方が別れ際に見せた顔は、厳しい拒絶の顔ではなく、嫌悪感溢れる険悪な顔でもなく、顔を顰め、眉をひそめた、何かを我慢するような、自分の本心に背くような、そんな偽りの仮面をかぶった表情だった。
「くひひ、分かるよパパぁ、パパぁ♡、パパはあたしにもっと強くなってほしいんだよね、いつまでも血を吸わないと生きていけないような、そんな低級吸血鬼じゃなくて、自らの吸血衝動をコントロールできるような、そんな強大な吸血鬼になってほしんだって。くひひ、ひひひひひ!」
自分の身体を抱きしめ、両手の平を頬に当て、今や抑えの効かない深紅の瞳を、雨の降りしきる夜の裏路地で、煌々と輝かせる私。先ほどの逃げ出した2人の代わりに、縄と布を持った4人の、タトゥーが入った荒くれ者達がやってきた。
「おい!早くやれ!」
「こいつぁあ上物だ、薬か何かでイッちまってるが、面ぁはかなり良い、親分も喜ぶはずだ」
大男達にあっという間に組み伏せられ、彼らは手際よく私の口に布を噛ませ、視界を塞ぎ、手足のロープで縛ったようだ。どうやら私をどこかへ誘拐するようだ。だが、そんな状況にも関わらず、私は視界を塞がれる直前の、翼の生えた血まみれの狼と、馬に乗り、槍と見た事のない旗と蛇を持つ、綺麗な女性の騎士が、自分をどこからか見ていた気がする。
時間にして約20分ほどだったろうか、突如地面に放りだされた私は、目隠しと口に詰め込まれていた布を乱暴に外される。
「こ、ここはどこですかぁ...?」
「大人しくしてろ嬢ちゃん、そうすれば悪い事にはならねぇ!」
涙目になりながら、周囲の環境に恐怖する生娘を演じる。
「おう、こいつが新しい女か」
「はい、薬で多少ラリってましたが、かなり上物です」
「どれどれ....おお、素晴らしい」
仕立ての良い服を着た男性は、自らの内ポケットに入れていた財布を取り出し、銀貨を数枚取り出して、私を拉致した男達に投げ渡す。
「2時間後、再びやってこい」
「へい!どうぞ、お楽しみください」
どうやら私のいる部屋は、小さなベッドと、悪趣味な調教器具と過剰装飾の鏡しかない、所謂彼のお楽しみ部屋のようだ。ばたりと彼が部屋の扉を閉める。それと同時に外にいる男達も少し遠くへ行ったようで、目の前の男はカチャカチャと興奮で目を充血させ、鼻息を荒くしながらズボンを脱ぎ始める。
「な、なにをするんですか....」
「だ、大丈夫、酷い事はし、しないから、ただ、天井のシミを数えていれば、終わるから」
もはや興奮で呂律が回らなくなった目の前の男性は、ついに我慢ができずに私に襲い掛かった。
「ああ、良い、生娘だ!生娘の匂いがする!へへ、へへへ、久しぶりの処女だ」
「やめて!離して!いやぁ!」
「もうおせぇんだよ!今更叫んだって誰も来ねぇんだよ!へへへ!大人しく俺....に?」
興奮が最も高まり、もはや顔まで真っ赤になった目の前の男は、下着の中でそそり立つブツを取り出す前に、自分の腹部に突如として異様な悪寒を覚えた。
「くひひ、くひひひひひ、ひひひひひひひひひ、あははははは!ははははははははは!」
私も我慢の限界が訪れ、両手足を縛りつけていたロープを自力で引きちぎり、左手を目の前の男の腹部に突き入れる。
「あがぁ!うぐゅ、や、やめべぇ!」
ハンバーグの肉を捏ねるように、左右上下に、時々握りつぶしたり、かき混ぜたりして、目の前の男の内臓を素手でかき混ぜていく。久しぶりの人間の生き血に、思わず私は凄惨な笑みが我慢できなくなる。
「良い!良い!悪人の血は良い!貴方みたいな濁り切った屑の血は、私を安心させる」
いつの間にか私に押し倒されていた男性に、突如として優しい声と優しい顔で話しかける。
「魅了」
腹部を貫かれ、内臓をぐちゃぐちゃにされた男は、私のチャームの効果で、痛みを全て性的快感に置き換えられる。
「さぁ!もっと!派手に!凄惨に!無残に!華麗に!醜悪に!至上に!」
ついには両手を使って男の内臓の引き抜く。趣味の悪い部屋のそこら中に男の肉片と血飛沫をまき散らしながら、気味の悪い男の歓喜の声と、私の狂喜の声が響き渡る。
「お、おい!どうなってるんだよこれは!」
いつのまにか2時間経っていたようで、私を拉致した男達が戻ってくる頃には、部屋の中は人間では理解しがたい景色になっていた。天井から赤い糸で吊るされた男の四肢はシャンデリアのように吊るされ、その血のシャンデリアからは未だに血が滴り、部屋中まるで赤いペンキが無造作にぶちまけられたように、赤い血飛沫が広がっていた。
「あら、おかえりなさい」
「お、おおお、おお、お前が、やったの」
「五月蠅いですわね」
地面に広がっていた赤い血だまりの一部が、返し刃の付いた鍵縄のように4人の男目掛けて飛んでいく。最初の2人は反応できずにあっという間に捕まえられ、部屋の中に引きずりこまれたが、外にいた残りの男2人はすぐに入口の方へ逃げ出した。だが彼らの足では[血魔法]から逃げる事は出来ず、どこまでも追尾する[血之鍵縄]にふくらはぎを捕まえられ、ずるずると部屋の中へ引きずりこまれてしまった。
「いやだぁあああ!たすげでぇえええ!」
「くっそおおおぉ!ちくしょぉおおおおお!」
無人の廃棄施設に、彼らの最後の足掻きともいえる声が響き渡る。地面には彼らが決死の覚悟で抗おうとした爪痕が残っているが、そんな彼らの痕跡も爪痕も生きた証も、部屋の扉がばたんと閉められると同時に、全て悲壮な断末魔に塗り替えられてしまった。
血魔法で彼らの身体から感情の迸るまま血液を搾り取り、一滴残さず飲み干す。今まで[吸血]にはかなり大きな抵抗があったが、今はそんな事もバカらしく思えてきた。そうだ、【敵】ならば、【悪人】の血ならば、許されざる極悪人、私とクロウ様と、アルルに仇成す屑ならば、法の裁きですら捌けない、そんな大罪人の血ならば、いくら奪っても良いだろう。
「もっと頂戴?まだあるでしょ?もっと!もっっっっっと!もぉおおおおおっとよ!」
【凄惨な血の夜】と呼ばれたその日は、裏社会における絶対的統治者の出現を示唆する日でもあり、文字通り100万を超える人間を血祭りにあげた、【鮮血紅女】メルティ・ブラッドボーンと言う絶対的君主の誕生を祝う日でもあった。
【貧血症から回復しました。大悪魔の血の覚醒値が20%を超過、〔伯爵グシャラボラス〕〔公爵エリゴス〕の加護を授かりました。〔伯爵グシャラボラス〕の加護により、複数の戦闘技能並びに[吸血][血魔法]がEXに、〔公爵エリゴス〕から複数の戦闘技能及び[戦争予知A][秘匿看破A][寵愛A]を習得しました。】
-------------------------------------------------------------------------------------
名前:メルティ・ブラッドボーン
職業:なし
出自:愛憎の転生者
家系:転生者のため不明
称号:鮮血紅女
加護:〔伯爵グシャラボラス〕〔公爵エリゴス〕
バトルスタイル:鮮血女王
統率する騎士団:深血之旅団
種族:半吸血鬼・半悪魔
Lv:366
才能:【彼も彼女も私のモノ】【???】
血の覚醒値:吸血鬼86%/大悪魔33%
好物:クロウ
嫌いな物:恋敵
スキル:[吸血EX][血魔法EX][飛行A+][料理B+][細剣A][大剣系フランベルジュA+][槍A][弱点看破A+][加速A+][魅了A+][魔力吸収B+][騎乗A][瞬間学習A][愛情付与A][不可視A]
悪魔技能:[戦争予知A][秘匿看破A][寵愛A]
筋力:A
知力:B
俊敏:A+
体力:A+
魔力:B+
幸運:B
説明:被検体番号104番の少女。吸血鬼の女王の一人である【鮮紅の女王の左心】を無理矢理移植され、【大悪魔の右心房】の血を打ちこまれた事がある。身長は171cmで体重は63kg。B90-W57-H87。クロウにぞっこんである。100万人の大罪人と敵の血を浴びて、ついに体つきが少し成長し、【吸血衝動】と【貧血症】を克服した。
【彼も彼女も私のモノ】の効果:性別問わずに相手に[魅了]を使用する事が可能。チャームされた相手に[服従]の効果を追加し、チャームされた相手の性欲に起因する物事を自由に塗り替える事ができる。
【???】の効果:不明
愛憎の転生者:愛とも憎しみともいえる感情を糧に何度も転生を繰り返している者。
-------------------------------------------------------------------------------------
[戦争予知A]:未来に起こるあらゆる戦争や戦いを予知できる
[秘匿看破A]:隠された秘密等を見破る事ができる
[寵愛A]:君主と手下から好かれやすくなる




