新ライネル領Ⅲ
少女、フレデリカは思いのほか飲み込みが良いようで、7歳になる頃には基本的な家事や給仕、その他宮廷礼儀作法や[近接格闘術]をすっかり身に着けていた。月1回程クロウが[龍眼]でステータスの成長具合を確認しているが、やはり彼女の出自のおかげか、小宵から格闘術を習い始めた頃からみるみるとステータスが上昇していった。
「おはようございます、クロウ様」
「ん?お、おはようフレデリカ、今日は早いね」
「はい、今日は早朝にメルティお姉さまに[飛行]スキルを学ぶ予定です」
「おっ、頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
出会った当初とは違い、すっかりと血色も見た目もだいぶ良くなった。今ではその綺麗なウェーブのかかった長い赤髪と、綺麗な青い瞳が歳相応に艶やかで爛々としている彼女を見て、クロウは当時まだメルティが小さかった頃を思い出し、思わず嬉しくなった。
「パパ顔にやついてるよ」
「おはようメルティ、なんだか初めてお前に会った時を思い出してなぁ」
「うわやめてよ恥ずかしい」
「恥ずかしがるような事じゃないよ」
昔話を掘り返されて、少し照れるメルティ、そんな彼女をなでなでしつつ、クロウは今日も自分の工房へと向かった。
「今日も新しい武器でも作るか」
現在クロウが研究しているのは航空兵器。残念ながら宇宙には行けないので、超高空から地上兵器の【眼】として飛ばせる飛行機が作れないか研究していた。[光魔法]が使えれば[光学迷彩]のようなチート級兵器が出来上がるんだが、残念ながら使えないので、今はそれの代わりになるスキルや素材がないか考えていた。
「光を反射…同化…そもそも目視以外どうやって確認するんだ?....スキル....魔力...魔力か!」
そこまで思いついて、クロウは【闇魔法・MPドレイン】を発動した。
「そうだ、常時周りの空気中のMPや吸収するようにして、こちらに打ち込まれた魔法などを更に【魔力吸収】でそれすら動力源にすれば」
早速クロウは自分のアイテムバッグから魔鉱石を取り出し、自作の加工台に乗せ、加工を開始する。
「やはり基本になるのはハヤブサのような高速飛行の形を、まずは小型で....」
クロウは早速[機械学][機械工学][龍の鍛冶]でモデルとなる小型超高高度偵察機を数時間で作り上げた。早速屋敷の屋上で飛ばしてみた。まだ無人飛行は完成していないので、[土魔法・プチゴーレム]に簡単な命令を出し、とりあえず最高高度まで上昇した後にライネル領の端まで行ってそのまま戻ってくると言う簡単な命令だ。空まで高く飛び上がったのを確認した後、クロウは[土魔法・ゴーレム系・サイトシェア]を使用して目を閉じて超高高度偵察機に乗ったプチゴーレムに意識を転移させる。内部も非常に簡易にしたので、上昇、降下、加速、減速、飛行方向を変えるようのハンドルしかない。だが、このシンプルな作りが既に不器用なプチゴーレムの限界に近い。
「どれどれ、[MPドレイン]...はきちんと機能しているな」
偵察機内部のパネルのMP燃料メモリがもりもりと上昇している。プチゴーレムを動かす魔力が外部に吸われている様子もないし、予備タンクのMPメモリもぐんぐんと増えている。
「さて、探知機能の方はと」
そちらも問題なく機能しているようで、偵察機の周囲から吸収したMPや魔力を全方向に射出して、反射して戻ってきた魔力や魔力の元である魔素粒子を再吸収し、レーダーのように反射までかかった時間等の情報を再計算する。
「おっ、問題なく表示できる」
偵察機のパネル内にもきちんとライネル領内の建物の位置や歩いている人がくっきりと表示されている。
「よしよし、試しに魔法を打ち込んでみたいんだが」
一旦プチゴーレムから視界を解除する。空を見上げて[龍眼]を発動して航空機を探すが、地上からだと相当難しい。[飛行]スキルの高度限界が8000mだが、現在の偵察機は約3万mの高さを飛んでいるので問題ないだろう。あれ以上の高さになると突如周囲からMPや魔力の元になる魔素粒子が消えるの不思議。
「あっ、帰ってきた」
まともに打っても当たる気がしないので諦めて暫く待っていると、無事に偵察機は屋敷の屋上に着陸。
今回のクロウの発明は自分の中ではこのゲームを根本から破壊するレベルの発明だと思っている。ここ最近の商人からは世界各地の戦乱や動乱の情報が聞こえてくるが、やはり皆の戦術や戦闘方式が中世の戦いで止まっている。プレイヤーと言うチートキャラに近い人物がクソデカ大魔法や、スキルで実際に一騎当千の戦いが出来るので、そういった事を開発したり、研究する必要もないのだろう。
「ふふふ、ふふふ、ふはははははは」
自分の開発の大成功が嬉しくて思わず笑い声が出てしまうクロウ。[エアロマニューバ]スキルや、[元素魔法]で強化され、繊細で丈夫で高難易度操作が出来る[アーク・ゴーレム]。後は[火風二重混合属性]である[爆裂]属性を付与した弾頭を....
「ふははははは!あーはははははは!」
再び笑い声が溢れ出るクロウ。自分の研究を進めるため、そしてフェンデル卿の一件を終わらせるため、クロウの脳内には新しい計画ができた。
「短距離、中距離、そして長距離ミサイル、超高高度無人戦闘機、超高高度戦略爆撃機、へへへへ!はははははは!」
「パパうるさい!」
[飛行]スキルを教えていたメルティは、いつの間にかクロウのいる高さまでフレデリカと共に飛び上がってクロウを睨みつけていた。
「あっ、ごめん、お?フレデリカも[飛行]スキルを覚えたんだ」
「そうだよ、さっきからパパに見せようとずっと浮いていたのに、パパずっと笑ってるから」
「ごめんごめん、ただ自分でも恐ろしい程の良い事を思い出してな」
「何?どういう事?」
「まあ簡単に言うと、何もしなくても、フェンデル領を更地に変える事ができる」
「???」
2人は「こいつは何を言っているんだ?」と言う顔でクロウを見ていた。
「まあまあ、楽しみにしてて、それでフレデリカはもう[飛行]スキルを習得したんだよな?他に教えられるのは?」
「私からは[騎乗]とそれから[細剣]かな」
「小宵は?」
「私からは既に教えられるものは全て教えました」
いつの間にかクロウの横に転移した小宵がそう言う。
「じゃあ後はパパだね」
「俺か....」
メルティの横で[飛行]スキルで飛んでいたフレデリカは、多少おぼつきながらもゆっくりとクロウの立っている屋敷の屋上に降り立つ。
「クロウさん」
「ん?」
「お願いします、私を、強くしてください!」
「先に言うと、俺の修業は死ぬほど、て言うか2回くらい死んでもらうくらい本当に滅茶苦茶しんどいぞ?」
「えっ」
「具体的に言うと、魔獣の森で****をした後、*****をして*****する予定だ」
「おう?」
あまりのえげつさにフレデリカは理解できなかったようだが、それでも彼女は改めてクロウに一歩近づいた。
「もう、あんな気持ちは嫌です!蛮族に家を焼かれて、両親を殺されて、お兄ちゃんも、弟も、家畜みたいに殺されて、だから、私を強くしてください!誰にも負けないような」
「.....分かった。そこまで言うなら」
「ありがとうございます」
「じゃあ明日朝から早速魔獣の森に行くから、今日の夜は小宵と一緒に荷物まとめてきてね」
「はい!」
フレデリカはバタバタと屋上から自分の部屋へ向かったようだ。ふむ、やる気は充分。これなら魔獣の森でも数日は生きていけるだろうとクロウは思った。




