ライネル領変革Ⅱ
「できたぁ!」
小型プレス機のような小さな身分証明書発行機械がようやく完成した。バージョン1と言ったところだが、所持者の血液や髪の毛等のDNAを含むモノを機械に入れて、同時に名刺カードくらいの木と鉄、それから小さなICチップの代わりをする魔鉱石が1カラット程入れて自動で必要な魔法効果などを全て刻んで一枚のカードとして完成する。[機械学EX]と[機械工学EX]の悪魔技能を全力フル活動させ、この機械を作り上げた。もちろんこれだけではなく、同様にこの身分証明書を読み込む機械の開発も成功している。こちらも小型化に成功しており、発行されたカードを機械に差し込むだけで、専用のメガネを装着した人のレンズにだけ情報が出現する。もちろんメガネの装備者しか見えない仕様だ。
「とりあえず自分の血で試してみるか」
早速材料を機械に入れ、ついでに自分の血も指定の場所に入れてみる。
「あっ、なんか音やば...いや大丈夫かこれ.....」
想定外の轟音が機械から発せられた後、チン!と言う小気味の良い音と共にカードが出現した。きちんと木と鉄、そして1カラットの魔鉱石がICカードのように埋められており、表面にはきちんと、【名前:クロウ】と【性別:男】とだけ刻まれていた。カードの後ろには【ライネル領発行】と書かれており、クロウは専用メガネをかけてカードを読み取り機械に入れる。ピピっという音と共に、メガネをかけている視界に自分の情報が出現する。
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名前:クロウ
Lv:Error
種族:Error
職業:なし
出自:魔神と人間の混血、悪魔崇拝者の実験体
家系:なし
才能:魔神の芽EX
称号:魔獣の狩人、龍殺し・古龍、混沌の魔法使い、遺伝子編集者
バトルスタイル:龍殺し、魔獣狩り
筋力:EX
知力:EX
俊敏:EX
体力:EX
魔力:EX
幸運:EX
スキル:[魔力支配EX][龍化EX][龍の威厳EX][龍体EX][龍の収穫EX]....
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「多いわ!」
視界の情報量にメガネをかけていられなくなるクロウ。自身のLvとスキルの量以外は特に問題は無いように思えた。[龍眼]で見える情報をもとに製作しているため、正直クロウはこのカードが必要ない。だが自分のステータスを見たのはこれが初めてた。
「Lvと種族以外は問題ないな(すっとぼけ)」
装置から自分のカードを取り外し、そのまま握りつぶすクロウ。
「クロエいる?」
自分の部屋から出て、そこらへんにいたメイドに声をかけるクロウ。
「あっはい、ただいま!」
声をかけられたメイドはぴゅーんとどこかへ行ってしまった。数分後、クロエがやってくる。
「どうしたクロウ」
「クロエ、身分証明書のカードの機械ができたから、早速試してみるか?」
「ああ、もちろんだ」
「こっちだ」
クロエを連れて自分の部屋にやってくるクロウ。2つの装置の内、机の上においておけるほどのサイズのプレス機の方に彼女を連れてくると、小さなくぼみに人差し指を入れるように促した。
「少しちくりとするからな」
「うむ、大丈夫だ、ッ!」
クロエは少しびっくりしたが、どうやら無事に採取できたようだ。魔法で一度血を採取するたびに針頭を変えているため、感染病等の心配もない。クロウは[木魔法・簡易治癒]をクロエの指先に掛けつつ、木と鉄のカードを所定の場所に差し込んだ。そしてボタンをぽちっと押すと、先程のような轟音はなく、カシュっという音と共にクロエの身分証明書が無事に発行できた。
「む、これが私の身分証明書か、思ったより軽いな」
「そそ、表に名前が書いていあるでしょ?裏にもきちんとどこで発行されたか書いてあるし、このメガネをかけてそこのカードに自分のカードを差せば」
「おお、私の名前だ、すごい、私のLvも見えるぞ、それとスキルもだ」
「本当か?見せてくれないか」
「いや、それはちょっと....」
「えっ、ダメ?」
「うん、ちと困る」
「分かったよ、でもまあこれで登録した人の情報も見えるようになったから、次に仕事の割り振りとかが便利になるな。例えば【筋力】が高い人は建設などの力仕事を任せらえるし、【計算】とか【経理】のスキルがある人は会計の仕事を任せられそうだし、【戦闘】系のスキルがある人は魔獣狩りの部隊に編制できる」
「そう考えるとすごく画期的だなこれ」
「でしょ?あっ、そうだクロエ、法律の方はどう?いい感じ?」
「ああ、今は残った細かい部分を突き詰める段階に入ったが、重要な部分は既に決定している」
「そかそか、良かった、ドーベルマンとジーク達は?」
「2人ともフェナード、ファイーム領から頂戴した資金の中から金2万を馬車に乗せてそれぞれの領地へ帰らせたよ、特にジークはかなりの怪我をしていたから、しっかりと傷を治してもらってから帰ってもらった」
「うんうん」
「それからベレンツァ卿のへ送った手紙だが、早速返事が来ていた」
「あれ?早くない?」
「何を言う、貴殿が部屋に閉じこもって3日程経っているぞ」
「あれ!?そんなに経っていたの」
「うん」
「うわマジか、ごめん!」
「まあいい、返事にはこう書いてあった。【カデンリーナの反乱はもう収まりそうだから、そろそろ難民を手配し始める。フェンデル伯との停戦協定の際、詳しく話す】だそうだ」
「ふーん、停戦協定についてはいつ決めに行くの?」
「明日」
「明日!?」
「先延ばしにする事でもないからね、すぐに行くつもりだよ、一応だけど、メルティ君を護衛に連れて行ってもいいかな?」
「あっ、それはもちろん」
「ありがとう、ではクロウ君には一つお願い事をしたい」
「ん?何?」
「領地の拡大を少々お願いしたくてな、それと城塞と城壁の強化だ」
「あー、良いけど、設計図とかある?」
「ああ、こんな感じなのだが」
クロエはどこからともなく大きな羊皮紙を取り出し、中には大まかなライネル領の地図が書かれていた。
「おお、結構大きく改造するね、良いの?こんなに拡張しても」
「構わない、私はこれ以上にこのライネル領を大きくするつもりだ」
「良いね、大きく出たね」
「もちろんだ。メルティ君の報告書を読んで思ったよ。我々に力が無ければ、平和すら得られないとね」
「そうだな、ごもっともだ。だがなクロエ」
クロウはずいっと一歩クロエに近づき、[龍眼]を発動しながらクロエにこういった。
「溺れるなよ、その力に、お前がその力に溺れた時、俺が自らお前の首を喰らってやる」
彼女には少し威圧を込めて釘をさしておく。
「約束しよう、この力は民の為に振うと」
初めて会った時とは変わって、今ではクロウの[龍眼]を見つめ返す事ができるようになったクロエ。内心で彼女の成長を認めつつ、少しうれしくなったクロウだった。
「じゃあ、俺はこの図の通り、改築を始めるよ」
「ああ、頼んだ」
クロエから地図を受け取り、早速[魔力支配]込みで[使い魔召喚]を使用する。今回は大作業になるため、クロウ自身も悪魔技能である[城塞都市建築EX]を発動させたまま大量のノーム達を召喚し、作業を始めた。




