ライネル伯爵領XV-クララ・ライネル救出
「[龍化・翼][魔力支配][エアロマニューバ・フルモード]」
背中から龍の翼を出し、全力で空に飛び上がるクロウ。そしてそのまま南部戦線へ超高速飛行を開始する。高高度超高速飛行をしているはずなのに、地面にすら響く轟音をなびかせ、翼を大きく広げ、周囲に漂う魔力を常に吸収しつつ、それを全て強力な推進力に変換するクロウ。かなり遠く離れているはずだが、真夜中に轟音を響かせながら、夜空を隠すほどの大きな龍の翼を広げて超高速飛行するクロウは、フェンデル伯爵やフェナード子爵の紋章が入った兵士達を呼び起こすのに十分だった。
「な、なんだ」
「おい、上、空を見てみろ」
「な、なんだあれは」
夜番の兵士は、寝ぼけ眼をこすりつつ、頭上の轟音と共に流れていく流れ星を見上げた。
「なんだあれ?流れ星か?」
「ああ、かもしれないなぁ」
「結構近いな」
「ああ、音も聞こえてきたし、もしかして近くに落ちるかもな」
「はは、まさかな」
夜番の兵士達が笑っていると、突如として後方から轟音が聞こえてきた。
「な、なんだ」
「おい、まさか本当に落ちたとか」
「ま、まさか」
「ははは」
はるか後方で先ほど見た流れ星が落ちたかもしれないが、持ち場を離れるわけにはいかないので、夜番の兵士は気にせず自分の仕事場に戻った。
一方クロウは....
「あっ、見つけた」
大軍がライネル本家領へと進んでいく中、1つだけ大量の護衛騎士に守られた豪華絢爛な馬車がフェンデル領へと逆走している。[龍眼]で中身を覗いてみると、やたらと豪華なドレスを着たクロエに似た美人の少女が手錠をされ、口に猿轡をかまされていた。
「[ブラインド][パラライズ][スリープ]」
周囲の護衛に試しに大量のデバフ魔法をかけてみるが、全員何かされた事に驚くだけで効いておらず、彼らの持つ何かしらのアイテムが身を守ったようだ。
「じゃあいいや」
こっそり助け出そうと思っていたのに、なんかもう全てが面倒くさくなったクロウ。轟音とも共に適当に真下にいた騎士の頭上から着陸するクロウ。全員を分厚い鎧で守っており、載っていた軍馬も急所を軽い鉄の防具で守ると言う重装備っぷりだっただが、あっけなくクロウに踏みつぶされ、周囲に肉片をまき散らすだけの肉塊になってしまった。
「て、敵襲!その羽衣は?ライネルの伝令兵?なぜここに」
「あっ、良い武器あるじゃん」
敵襲と大きな声を叫んだ重装備の騎士に一瞬で飛び掛かるクロウ。反応される前に馬に乗った騎士の胸鎧を掴んでその馬ごとひっくり返し、地面に叩きつける。地面に馬ごと叩きつけられた衝撃に驚いているうちに、クロウは自分の左腕でその騎士を鎧ごと押さえつけ、右手の拳に力を入れて思いっきり騎士の兜鎧目掛けて拳を振り下ろす。地面に引きずり降ろされた騎士が最期に見たのは、小さい頃、博物館に飾られていた龍の絵画に描かれていたのと全く同じ瞳だった。
「この、ナイトリー・ソードって言うの?ロングソード、ロンソ、良いよね」
死体になった騎士の腰から鞘ごと剣を奪う。そのまま剣を抜いて剣身を確認してみる。
「うんうん、手入れも良いね、大事にされてるみたい。[属性付与・雷]」
手にした剣に魔力を通し、その魔力を[魔力支配]と[元素魔法]で雷属性に変える。すると白銀の刀身はバチバチと黄色い電気を纏い始めた。
【[属性付与E]を覚えました。属性付与の原理を100%理解。[魔力支配EX][元素魔法A][魔神の芽EX]を確認。[属性付与E]を[属性付与EX]に引き上げます】
[属性付与EX]:あらゆる属性を装備に自由自在に付与する事が可能。
「おっ、ものは試しだね」
「今だ!かかれ!」
ようやく反応できた騎士が数名、馬と共にクロウに槍を突きつけ物凄い勢いで突撃してくる。だが
「放電」
剣身を突撃してくる騎士達に向けて、クロウがそう発すると、一番近くにいた騎士が馬ごとビクッと全身を硬直させて動けなくなったり、次にクロウに近づいてきた騎士も馬ごとビクッと全身が真っすぐに硬直し、そのまま肉が焦げる臭いと共に動けなくなってしまった。
「な、なんだ」
周囲で様子を見ていた騎士達が、クロウに突撃した他の騎士が全員から焦げたような臭いを漂わせながら次々に倒れこんでしまう様子を見て、流石に困惑してしまう。
「逃げられる前にっと」
数十人を電気焼き肉にした後、思い出したようにクロウは豪華な馬車を引いていた騎士らしき人物に近づき、御者をしていた騎士が自分の腰から近接用の剣を抜く手を脚で蹴って押さえつけ、そのまま左手で騎士の兜を掴み、上を向かせる。そして剣を持った手でそのまま兜と鎧の隙間に剣を差し込むクロウ。
「こいつ!騎士を殺し慣れてるぞ!」
首を貫いた騎士をぽいっと他の騎士の元へその剛腕で投げ飛ばし、続けて襲ってくる騎士も同じく焦臭い死体に変えていく。
「そうだね、ここで逃げ帰ってくれるならとてもありがたいんだけどどうする?」
「こ、ここで逃げ帰ってもどのみちフェンデル様に殺されるだけだ、いざ!まいる!」
「潔い良いね」
奪った剣もそろそろクロウの魔力に耐え切れず、黒く焦げてきたので、突撃してくる騎士の身体目掛けて投擲するクロウ。圧倒的力の前にクロウの持った剣はあっという間に鎧ごと騎士を貫き、はるか遠くの地面にその身体と命を縫い付けた。
「うおぉおお!その命、もらい受ける!」
残った騎士4人が同時にクロウに突撃してくる。騎士たちの乗っている馬はよく訓練されており、乗り手がいなくなった瞬間逃げ出さずにその場に立ち止まっているので、できるだけ持ち帰りたい所。空高く飛び上がって4人の騎士の攻撃を回避して、そのまま[闇魔法]を使用する。
「[闇魔法・インテリジェンススナッチ]」
空の上から騎士4人を標的に、[インテリジェンススナッチ]と言う闇魔法を使用する。本来は相手の一時的に相手の知力を下げる対魔法使いの魔法だが、クロウが使うと、相手の知力を奪いすぎて脳死させられる。一瞬で4人は身体の制御ができなくなり、転がり落ちるように馬から地面に崩れ落ちた。のべ20人程度の護衛の騎士達だったが、あっという間にクロウに1人残らず殲滅されてしまった。
「さて、お前達はライネル領の馬になろうね~」
生物を入れる用のアイテムバッグに乗り手のいなくなった馬をしまい、クロウは豪華絢爛な馬車に近づいた。
「よっこらしょ」
なんかキャビンに厳重な鍵が掛けられていたので、それを腕力だけで引きちぎるクロウ。扉を開けてキャビンの中を覗いてみると
「あんたがクララか」
クロエに似ているが、クロエとは違った魅力のある少女が座っていた。ゆっくりと隅で怯える彼女を近づき、その鉄の手錠を優しく粘土のように引きちぎり、軽く彼女の口に嚙まされていた布を取り外した。
「だ、誰ですか」
「アルルの親友、クロウだ」
「クロウさん?あの、良く手紙に出てくる」
「あー、たぶんそう、手紙に出てるんだ俺」
「はい、魔獣の森で凶暴な魔獣を殺して回ってる悪鬼羅刹だとか....」
「えぇ?アルルそんな風に俺の事思ってたんだ....」
「も、もしかしてライネル領を助けに?」
「うん、そのつもりで来た」
「あ、ありがとうございます、で、ですがもう遅いです」
「なんで?」
「ファイーム卿とフェナード卿は完全に裏切りました。彼らはフェンデル卿の先兵として私達のライネル領を落とすつもりでしょう、彼らの軍勢は既に3万を超える数まで膨れ上がっています。そしてお姉ちゃんの幼馴染も....」
「ん?なんでそんな事も知ってるの?」
「フェナード卿に言われました。お前達の団長は死んだと、そう言って私の前にグランの頭を...」
「......」
流石の仕打ちにクロウも何も言えなくなる。
「とりあえず帰ろう、お前の姉ちゃんが待ってるよ」
「ダメです、わ、私が帰ったら、フェンデル卿の本軍が、私達の街が....」
「[スリープ]」
魔法で無理矢理彼女を眠らせ、そのまま彼女をお姫様抱っこするクロウ。魔法で彼女に防御壁を張り、そのまま[エアロマニューバ]でライネル本家領へ再び飛行を開始した。




