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すっとぼけ覇王のVRMMO蹂躙記  作者: 愛良夜
青年編

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31/81

ライネル伯爵領Ⅺ

結論から言うと、かなり多くの領民が路銀を貰って他の街へ向かう事に賛同した。クロエは少し悲しそうだったが、恐らく今の絶望的なライネル領の状況を諦めて他の街へ、生きるために向かう事を決めたのだろう。だが、何人かは最後まで自分の意識でライネル領内に残る事を決めた領民も数十人いた。


「きっひっひ、こいつらに製糸を教えればいいのかい?」

「キシャー!」


残った領民にクロエと相談して、就労支援もかねて彼ら彼女らにはクロウ、アラクネとハベトロットの元で綿畑や桑畑の管理、それと紡績と織物を教える事にした。クロウの元には数名の人物がやってきたので、それぞれ何がしたいか聞いてみると、2人が[綿農家]、3人が[桑農家]になりたいと言っていた。[龍眼]で彼らを見てみると、一般人のステータスの低さに驚き、たぶんまともに教えられないので、[栽培F]と[収穫F]と言う使い捨ての魔法のスクロールを作成して、5人にそれぞれ1つずつ渡して使用させた。


「ん?何も起こりませんが?」

「え?あっ」


まさかと思い、[魔力支配]で見てみると、魔力源すら存在しなかった。


「そうだった、少し待ってくれ、書き直す」


クロウは魔法のスクロールを再び書き直す。魔力と引き換えにはできないので、今回はHPと引き換えにしよう。


「ほいこれ、触れてみて」

「あっはい...うっ...頭に」


かなり低レベルのスキルにしてから書き込んだので、HPもあまり吸われなかったはず。


「あっでも、なんか分かった気がします」

「よし、じゃあ領主代行との約束通り、後で新しい家を建てるって言うのと、毎年税として綿を納めてくれれば他は大丈夫だからね」

「はい!頑張ります!」


5人全員が[栽培F]と[収穫F]を覚えたようなので、クロウは同時に新しく[開墾F]と言う魔法のスクロールも全員分製作する。


「こっちは新規開拓用だ。規定量以上納めると色々と優遇されたりするから、頑張ってくれよ」

「あっ、ありがとうございます!」

「じゃあ君達の畑と家作ってくるから。こっちに着いてきてね。家は出来たら鍵渡しておくから、少し待っててね」


そう言いながらまずは事前の実験畑を一度全て破壊して、そこを中心に1農家辺りそれぞれ10a(アール)分の畑を用意しておく。綿畑だけではなく、桑畑の方はすこし大き目の20aの広さにしておく。養蚕の方と紡績の方はまだ時間がかかりそうなので、先にブラッキー達を呼んで、今さっきぶりのノーム達を再び呼び出し、5人分の家を建築を任せる。


「そうそう、種は少しだけ深く埋めて、あまり水を与えすぎないでね」

「きっひっひっ、そう力むでない」

「キシャー!」

「は、はい!」


最初のうちはクロウも手取り足取り綿の栽培や桑の栽培を教える。[教示EX]も合わさり、日が少しくれた時間になる頃には、クロウだけではなく、ハベトロットやアラクネの真似をしていた領民達のスキルランクが1あがった。


「分かりました!これで大丈夫そうです!」

「よし、じゃあ後は頑張ってね!」

「親方ぁ!できましたぁ!」

「速いね」


魔鉱石を渡しつつ、ノーム達から報告を聞く。


「まあ3LDKくらいの庭付き一階建ての家ですから。屋敷の修繕の材料も結構使わせてもらいました」

「素早いお仕事助かるよ、ブラッキー、彼ら彼女らがひと段落したら新家に連れて行ってやってくれ。ついでに家の鍵も渡してあげて」

「あ、ありがとうございます!」

「うんうん、じゃあ技術的な事は今日からだいたい1週間かけて教えていくから、しっかりとばあさん達やアラクネ達の言う事を聞いて、勉強してね」

「はい!あの!私達!絶対ここを離れませんから!」

「だってよクロエ」


アラクネからクロウが自ら作った綿と絹で作り上げた生地を受け取る。


「[龍眼]」


-------------------------------------------------------------------------------------

名前:価格の割に丈夫で品質が良い綿絹混紡生地

アイテムランク:C+

特性:[強靭・小]

------------------------------------------------------------------------------------


アラクネから貰った生地を[龍眼]で見てみる。アイテムランクも特性も、狙った通り、少し丈夫で大量に用意できる代物だ。なにしろ1aの実験畑から絹を組み合わせて、50m前後の生地が15反も出来上がったのだがから。


「多くない?」

「きっひっひ、あんたさんの何かしらのスキルのおかげじゃろうて、普通はこんなに取れんわい」


横で見ていたハベトロットがクロウの驚きに笑っていた。


「じゃあクロエ、ここは任せて次の事を考えよう。後そろそろ夕食の時間かも」

「分かった。共に戻ろう」


クロウはクロエと共に一旦街中へ戻り、修繕された屋敷へと向かった。


「屋敷はあまり変わってないな」

「ああ、ほぼ以前のまま修繕されている」

「こんな感じだったんだな」


庭、ガゼボ、外壁やその他もろもろと全て丁寧に修繕されており、初めて来た時とは見違えるほど、いかにも【貴族のお屋敷】という風に様変わりしていた。屋敷の中も、まるでつい先日の襲撃なんてなかったかのように綺麗にされており、どこからか調達した高級な調度品も飾られていた。


「ん?どこから持ってきたんだこれ?」

「ああ、屋敷の裏手の倉庫に古い物がありましたんで、修繕して飾っときました」

「ありがとう、すごく立派な貴族のお屋敷っぽくなったよ」


クロウは一緒に帰ってきたノーム達に礼を言うと、魔鉱石を再び渡していく。


「少し屋敷の外で門番を頼めるかな?悪い人が来たら知らせてくれるだけでいいよ」

「分かりました親方!」


ノーム達は魔鉱石をかじりながら、全員手に鎚やのこぎり、斧を持って屋敷の門番がいた場所へ向かっていった。


「さてクロエ、まずは夕飯にしようか」

「ッ!」


ブラッキーもいつのまにか戻ってきたようで、クロウが彼女に目配せをすると、2人に一礼してまずはクロウの部屋で朝からぐーたらゴロゴロしているメルティを呼びに行ったようだ。


「では私達は先にダイニングで待ちましょうか」

「分かった」


クロエを引き連れて先にダイニングルームへ行くクロウ。すっかり家主のように振舞っているが、クロエも何も言わないので、特に気にしないことにした。


「それで、所謂金策の第一段階は完了したと言えるが...」

「そうですね、後は噂の力を信じながら、新しい領民は、残っている領民のための新しい政策を始めるべきですね」

「そうだな、まずは領民の再募集が必要だろう」

「ええ、今晩か明日に帰ってくる騎士団を全て南部戦線に送り、領内では新しく騎士団や領民の職業を再編成しなければいけないでしょう、かなり大事業になります」

「そ、そうだな」

「なら騎士団再編とライネル軍の再編は私にお任せください」

「ん、クロエか」

「ええ、厳しい訓練は私にお任せください。ベレンツァ侯爵にも負けない騎士団とライネル兵を再編します」

「うむ、頼んだ」

「ならクロエ、私達は騎士団再編やライネル兵の補充をするための領民補充政策を始めよう。ライネル領は何も我々のいるこの街だけではない、ライネル領北部や南部、それから西部にも多くの人がいるのですよね?」

「ああ、だがそちらは以前に父が任命した男爵や私の叔父や叔母がいる」

「なるほど、ライネル領全体の地図はありますか?」

「ああ、私の執務室に」

「分かりました。では食後に、執務室でより詳細にライネル家や今後の政策について相談しましょう」

「分かった」


話がひと段落したので、マーノとブラッキーがワゴンに今日の晩餐を載せてやってきた。


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