魔獣の森Ⅵ
翌朝、朝食を作り終えた後、早速アルルに言われた通り、森の北へと[エアロマニューバ]で飛んでいく事にした。既に[エアロマニューバ]はBランクまで上がっており、それに伴ってすっかり長時間高速飛行をする事が出来るようになっていた。
[エアロマニューバB]:長い間高高度を超高速で飛ぶ
かなり広い森のはずだが、数分で雷熊の生息圏が見えてくる。雷雲が頭上に多く広がっており、生息圏の木々は多く雷に打たれ、黒く焼け焦げていた。
「ここか」
地面に降り立ち、[硬化][怪力][威嚇][威圧]を発動していく。同時に全身に魔力を纏って簡易的な鎧を身に纏う。
「ぐおおおおお!」
クロウの[威圧]と[威嚇]に神経を逆撫でされたようで、無数の雷熊が全身に雷を纏って襲い掛かってきた。
「やるか」
両手の魔力を短剣のように尖らせ、180cm近くあるクロウの2倍ほど大きい熊に果敢に肉弾戦仕掛けた。
「ぐおおおおおお!」
2体3体と複数の大熊を相手にするのは非常に骨が折れるが、勝てないわけではない。ただ終わりのない雷熊一体一体に相手をかけてはここから一歩も奥に進めない。
「もっと効率よく、もっと正確に、もっと容赦なく」
大振りの攻撃を潜り込む方法で回避しつつ、魔力を纏った手刀で切り落とす。それと同時に足先にも釘のように魔力を纏い、雷熊の身体を駆け上がり、そのままうなじに座り込むと、左右のこめかみから容赦なく頭を真っ二つに切断する。それと同時に動かなくなった雷熊を蹴り飛ばしながらもう一体の襲いかかる雷熊の両足を切り落とし、バランスを失って頭が落ちてくる場所の下に待ち構えるように手刀を構える。
「ぐが」
すっと顎から脳天までクロウの右腕が貫通し、2体目の雷熊も息絶える。まだまだ3体4体と新しい雷熊が襲い掛かってくるので、心を無心にし、ただひたすらより効率よく魔獣を素手で狩る方法を模索しつつ、奥へ奥へと進んでいった。
「来たか」
「話せるんだな、お前も」
「賢者の使い、と言うわけでもなさそうだ」
「ああ、うちの師匠が世話になったみたいでな」
「仕留め損ねたか...そしてお前はあいつの代わりに報復を」
「そういう事だ」
「ならば多くは言うまい、【雷熊王ボルテックス・バルド】、まいる!」
自らの拳で岩を砕いた作った王座に座っていた熊王、雷のように一瞬でクロウの後方に出現すると、容赦なく爪で後頭部目掛けて攻撃を繰り出した。
「もう見切った」
同じように雷を纏って高速移動するクロウ、バルドが反応する前に右手の握りこぶしに巨大な魔力で作った手甲を生み出し、それをさらに[硬化]スキルで固めるにする。
「ふんっ!」
回避しようとバルドは足に力を入れたが、それよりも先に5m近いその大きな巨体の胸部に大きな風穴が開いた。
「み、ごと」
バルドはそのまま巨大な音を立てながら地面に倒れ伏す。
【[徒手魔獣狩りD]を取得しました。[パンクラチオン][徒手魔獣狩り]のスキルを確認。[近接総合格闘術(CMMA)D]に統合されました】
[近接総合格闘術(CMMA)D]:あらゆる対象との近接格闘に少し得意になる
きちんと目的のスキルを入手したようなので、雷熊や雷熊王を解体する。
「よし、戻ろう」
アイテムボックスに解体し終えた肉や毛皮を全てしまい、クロウはアルル達の元へと戻っていった。
「お帰り、その様子だと無事だったようだな」
「うん、はいこれ」
「くまー!」
少し残忍だが、切り落とした雷熊王の首をアルルに見せる。
「まさか倒してしまうとは、てっきりスキルを習得し終わった後、撤退してくると思ったが」
「あいつはお前を殺すつもりだったんだ、殺されても文句は言えないだろ」
「それもそうだな」
アルルは少し嬉しそうに笑うと、以前に植えた木から果実を一つ取り、そのまま食べ始めた。
「困ったな、もう教えられる事は無い」
「気にするな、彼女はどうだ?」
クロウが持って帰ってきた熊の頭に怖気もせず、もふもふとその頭を触っている。
「言葉の方はもう大丈夫だ、今は生活に困らないような常識を教えている、算数とかだな」
「助かるよ」
「[魔法]も[格闘術]も習得したんだ、これからはどうするんだ?」
「ん?もう少しここにいるよ、もう少し彼女が大きくなってから、ここを出ていく」
「分かった、なら私も君達の友人として、教えられる事は全て彼女に教えよう」
「ありがとう」
他にあの雷熊王のような脅威となるヌシはいないのかとアルルに聞いたが、他は自力で勝てるしあちらから襲ってくる事も無いので、暫くは大丈夫だという。
「なら、まずは家作りだな」
自身のスキルや魔法の熟練度を上げるためにも[元素魔法]や[怪力]など使用しつつ、周囲の木々を切り倒して簡易的な拠点を作り出した。今までは雨が降る事も無かったので、屋根の無い拠点でも問題無かったが、長期間ここに滞在する事を考えたら、きちんとした家を作った方が良いと思った。
【[伐採D][建築D][錬金D][道具製作D][魔道具製作D]を獲得しました】
[伐採D]:木々の伐採が少し得意になる
[建築D]:建築が少し得意になる
[錬金D]:錬金術が少し得意になる
[道具製作D]:道具製作が少し得意になる
[魔道具製作D]:魔道具製作が少し得意になる
夜になり、4人程が住めるくらいの広さの家が出来上がった。余り見た目も内装も[建築]スキルのランクが低いため、綺麗とは言えないが、少なくとも雨風は凌げる拠点になった。
「魔鉱石、魔力を含む鉱石は雷熊の住処より更に北に行けば多く取れるだろう、あそこは【ドリルモグラ】と言う魔獣の住処だが、温厚で攻撃もしてこないので、好物の魔獣の肉をいくつか渡せば魔鉱石や他にも珍しい鉱石をくれるだろう」
「分かった、行ってくる」
少し日が沈み始めた頃、食事を終えたアルルの助言を聞き、クロウは早速高速飛行で北部のドリルモグラの生息地に向かった。
「うおぉ、デッカ」
大きな山脈が連なる森の北部、所々洞窟穴が開いているようで、もしかしてと思い、近くのその洞窟穴の一つに降り立った。
「えーと、肉食べるんだったな」
アイテムボックスから雷熊の肉を取り出す。洞窟の中には入らず肉を[投擲]で中に投げ込んでみる。しばらくすると、何かが地下から地上に飛び出すような音がして、スンスンと言う匂いを嗅ぐ音がした後、むしゃむしゃと肉を食べる音が聞こえてきた。
「ニク!マダアルカ?」
「あるよ」
モグラのような魔獣が洞窟の中から姿を現した、外がまだ明るいようなのが嫌で、暗い所から出てこようとはしない。
「ニク!クレ!カワリニ、イシ、ヤル!」
「ありがとう、大量に必要としているんだ」
「オレタチ、ホル、スキ、ダケド、イシ、イラナイ」
「その石全部くれないか?、代わりに大量の肉を渡す」
「ワカッタ、ナカマニモ、ツタエテ、イイカ?」
「もちろんだ」
先程大量の雷熊を解体したので、肉だけなら大量に持っている。
「オマエ、ハイレ、イシ、オクニアル、スキナダケ、モッテイケ」
「ありがとう」
先ほどまで話していた【ドリルモグラ】は再び地面に潜って採掘?を再開したようだ。洞窟の更に奥へ入ると、そこには数えきれない程の魔鉱石が山のように積み上げられていた。もう[魔力感知]が反応し過ぎて眩しいくらいだ。クロウはその積み上げられた鉱石を全てアイテムボックスにしまい、先程の山と同じくらいの高さの肉の山を置いておくことにした。




