第八話 真実の行方
宴会襲撃に合い必死でラスティーネ王女を護衛したアルス。仮面の女により腹部を刺され絶対絶命に陥るが、マルマキアによって難を逃れた。マルマキアは仮面の女を追っていくのだが・・・。
自分は体の痛みを感じながらゆっくりと目をあけた。どうやら気を失っていたらしい。
「兄貴!」
「アルス!」
「今、どういう状況ですか?」
アルバートとハセクに聞いてみた。
「それなんだけど、マルマキアが......。」
ここで自分は、マルマキアさんが死んだことを伝えられた。昨日まで楽しかったことがフラッシュバックした......。
自分はアルバートの肩を借りマルマキアさんの死体まで足を運んだ——白い布で覆うとこのようで——気を失って二時間ほど経過していたらしく、その間に王国から派遣された騎士団および兵士に発見されたらしい。
「これは、ひどいな......。」
そう言っていたのは、ヒルブライデだった。
「お前たちも大変だったな、ご苦労。」
そう言ってこの場を離れ始めた。
どうやら、宴会襲撃と同時に王国各地でスケルトンの大量発生が起きたと聞いた。
ヒルブライデとスーゼルが仕事をしていると王都内でスケルトンが発生したらしく、駆除を始めたという。
「急いで来たのだが、やはり間に合わなかった......。」
スーゼルが小走りでこちらに来た。
「こうなることを予想していたんですか?」
「いつだったか、酒飲んでる時に話をしてな死ぬかもしれないと。」
「彼女そんなこと言ってたのかい?」
ハセクが驚いていた。
「ああ、あいつは武勇だけでなく時々鋭いからな。10年間こんな大規模な侵略が今までになかった、もしかしたらと思ってな。」
そして、こんな会話をしてると後ろからハクレが全力で走ってきた。
「皆さん、大丈夫ですか?!こちらも貴族を護衛中に襲撃に遭いま......?!」
するとハクレが白い布に気づいて覆われた人がマルマキアだと知って絶句した。
「もう、離れようよ。なんか胸が痛くなってきた。」
ハセクが苦しそうに言う
「そうですね......。」
それから、マルマキアさんの葬儀が執り行われた。親族はいないらしく剣聖隊と飲み屋の主人、国王とラスティーネ女王そして親しかった騎士団および兵士が周りにいた。『なぜこんな......。』そんなことを思いながら、日にちが過ぎていった。
ある時王城地下室に案内され、アルバート、ハセク、自分の三人で拷問室を訪れた。
「よくきたね。」
そう言うのは騎士団副団長アグライト、彼女も剣聖試験の面談にいた。
「アルバートが見事捕縛した魔女なんだが、爪2枚で吐いたよ。もうちょっと骨があると思ったんだがね。」
ちなみに副団長は拷問のプロだ。
「それで、何か情報は出ましたか?」
とアルバート。
「んー、帝国出身てだけで他は何もなかった——別に帝国側から直々に依頼されて動いたわけでもない。」
「100年前の帝国の宰相ルビウスのことを聞いてみよう。」
ハセクが提案。
ハセクが拷問椅子に縛られている魔女に聞いてみる。
「ねぇ、君は100年前帝国の宰相ルビウスについて知っているかい?」
「い、いや知らない、私はある女から老人を護衛しろとだけ......。」
「その女は誰なんだい?」
「わからない、仮面をつけていたから。声も変えられているし。」
恐らくあの仮面の女で間違い無いだろう......。
「君は、帝国大魔女団の一員かい?」
なんだ、その組織はと思った。
「いや、流石に滅んだかもしれない気がするかな?」
ハセクと魔女の会話中アグライトが横に入って魔女の右親指をボキッと折った。
「ああああああ!!!!」
部屋に魔女の悲鳴が響き渡る。
「曖昧な質問をするなと言ったはずだ。」
「喋る!喋る!」
必死に副団長に目で訴えかけてた。
「は、はい私は帝国大魔女団の一員であるセブラブです!」
ハセクが再び質問する。
「じゃあ、君の信仰者は大魔女ゴメリウスであってるね?」
「はい!はい!もちろんです!」
「さすが、ハセクさん。知識人がいると助かります。」
副団長が喜ぶ。
「いや、年の功だよ。」
頭をかきながらへへへと照れている。
「あとは、場所さえ聞き出せればこっちのものですね。」
「うん、それは頼むよアグライト。」
「そうだ、アルスとアルバートは何か聞きたいことは?」
「私は今はないですね・・・。」
メガネは考えながら話す。
「自分もです。」
「そうか、わざわざ御足労をかけたな。」
そして三人で剣聖隊施設に帰ろうとしている時である。
「帝国大魔女団ってなんですか?」
メガネが話を切り出す。
「ああ、君たちは若いから知らないよね。」
確かに帝国にいた頃はその名前を聞いたことがなかった。
「奴らはね、帝国が認可していない組織なんだけど。闇の魔術を布教するために活動している連中だよ——帝国側がそれを危険視して昔魔女狩りを始めるんだけど、中には闇の魔術にあやかりたい者もいるだろ?」
「ええ、自分も帝国にいたので分かりますが——滅多に人の目に入らない場所では闇の魔術を使っている者が多かった気がします。」
「地下都市とかまさにそうだよね、ここ王国にはエルスター教っていう宗派があるだろ?エルスター神の信仰が厚ければ天性の呪文が使える、この宗派はもちろん帝国にもあるわけで——同じく普及している。でも、ここからが本題だ。」
「本題とは?」
「帝国にあるエルスター教のほとんどは上部だけで中身は魔女団なのさ。だから、帝国の一部の民は永遠の命欲しさにエルスター教の信徒のふりをして魔女と契約するのさ。」
「なるほど、通りで闇の魔術を使えるものが地下都市では溢れていた訳ですね。」
「まぁ、昔からあるから——増え過ぎて帝国が対処しきれなくなっちゃたみたいなんだよね。ゴメリウスは契約者の寿命を対価に闇の魔術の性を授ける。だからすごい長生きなんだよ。おまけに気に入った人なら闇の魔術以外にも不老不死の加護や普段生まれ持って来る属性以外に新しく属性を授かることができる——そうやって商売しているから、どんどん大きくなるよね。」
メガネと自分はへーと言いながらハセクの話を聞く。
「僕の予想が正しければ、帝国の元宰相ルビウスはゴメリウスと契約しているはずだ。」
長話を聞いている間剣聖隊の施設に着くのだった。
2日後......。
帝国魔女団の居場所をセブラブが吐いたらしい、予想通り本拠点は帝都地下にあるとのことだった。
宴会襲撃事件は帝国によるものではなく——帝国市民による犯行となったため、セブラブは国外犯となるがこの場合国際間での問題には大きくは発展しなかった。
セブラブは帝国へと身柄を輸送させるのだが......。
「えー宴会事件で犯行者の一人セブラブを輸送護衛すると同時におよび帝国であらわになった魔女団の拠点制圧の依頼だが。」
ヒルブライデが話を始める。
「私自身がこの護衛に行こうと思う。」
「んーでも隊長が自ら行く必要はないと思うよ?」
ハセクが止める
「確かに、ここではあなたがいないと。」
説得を始めようとするスーゼル
「私は、マルマキアが死ぬ必要はなかったと思っている。この手で彼女を殺すことに助力したものを私は許さない!」
まずいな、一応帝国城まで輸送されるから隊長の実のお兄さんであるバルキウスと会ってしまう可能性が......。
「ですが、もし本当にそう思うなら。隊長はマルマキアさんを本当に倒した人を斬るべきだと思います!」
ハクレが割って入ってきた。
「だが!」
中々食い下がらないヒルブライデ
「隊長は焦りすぎなんです!また、誰が犠牲になるか分からないからと自分の力で解決しようと焦っているんです!2番目に強かったマルマキアさんが死んでしまったんですから隊長も同じ目に!」
「......。」
ぐうの根も出ないヒルブライデ
「確かにハクレちゃんの言う通りだね、ここで一番強い隊長を失ったら僕たちは今度こそ終わりだ。王国どころか帝国の未来もない。」
説得するハセク
「わ、わかった。」
渋々諦めるヒルブライデ
「じゃあ、代わりに僕が人選を決めるよ——アルス、アルバート、ハクレ。君たちに頼みたいんだけどいいかな?」
「「「ハッ!」」」
これで、人選が決まった。
早朝、輸送護衛当時......。
自分たちはセブラブが拘束されている馬車に乗った、剣聖3名の編成である。
「き、今日は......よ、よろしく願いしましゅ......。」
何故か、セブラブが緊張していた。
「ど、どうしたんですか?」
ハクレが聞くが。
「アグライト様が粗相をするようならお仕置きをすると......。」
「別に副団長は見てないので大丈夫ですよ。」
自分は話すが。
「もう、たまらないんです......。」
フフフとニヤつき始めた。
「え?」
「お仕置きが最高なんです。全部洗いざらい話したら爪剥ぎや切り傷を負わすのをやめて罵ったり、蹴ったり、犬の真似を要求しくれるようになったんです。」
ハァハァと興奮しながら話していた。
「そ、それは良かったですね。」
副団長が、かなりのやり手なのを再認識させられた。
「なら、私はここで粗相をします!」
「「「あああああああ!!」」」
こんなバカな会話をしながら、道中で休憩を取るなどして八時間掛かってやっと帝国城に着いた。
帝国城に着き——粗相をしそうになった、セブラブを連れて行く。
皇帝との謁見は数日前に書簡で送ってある、そして皇帝が座る玉座の間に案内された。
「お初にお目にかかります。王国精鋭剣聖部隊のアルスです。」
「同じく、アルバートと言います。」
「同じく、ハクレです。」
「頭を上げよ、遠くからわざわざご苦労だ。我が力が及ばぬばかりにそなたの国で迷惑をかけたすまないな。」
この大柄な男はゲルマルク皇帝、自分が幼少から現在に至るまで帝国を統治していた者だ。
フルネームはゲルマルク・ガルガンド、ラストネームからも分かるとおり祖先がガルガンドの型を作った者だ——武勇に優れ大戦当時は最前線で戦っていた。
「剣聖隊の一人が亡くなったそうだな......。お悔やみ申し上げ悼む......これは私の責任だ......。そこの魔女には魔女団の場所を案内させた後即死刑を執行する。当然の報いだろう......そして魔女狩りには我が帝国から精鋭二人を派兵させてもらう。どうにかこれで手を打っていただくようお願いする。」
そう言って頭を深く下げる。
「いえ、十分です。とても助かります。」
皇帝から申し訳ないという気持ちが溢れ出ていた、本当にこんな人が王国と戦争なんてやろうとしたのか不思議に思った。
これから魔女団の拠点を制圧しに王の間を出たのであったが、出た先に男が二人もう一人は見覚えがあった。
「ん?お前どこかで......。」
40代ぐらいの黒い長髪が目立つおじさんが自分をジロジロ見てくる、そして思いついたかのように。
「お前、テレスミクロの後ろにいたガキじゃねーか!」
デカくなったなーと言いながら頭をポンポンと叩く。
「久しぶりですドルクさん。でも、こうして話すことはなかったですね。」
「いやー、ガキ相手だと何話していいか分からねーんだよ。ところで、テレスミクロは元気か?」
「いえ、もうしばらく会ってませんよ目撃もありませんし。」
この時、アルバートとハクレはここ数日の間に自分の出自を説明している。
「そうだよなー、俺も帝国をウロウロしているが全然見かけねー。」
「おい、ドルクお前剣聖と知り合いだったのか?」
もう一人の男が喋り始める。
「私の名前はバルキルウス、黒死隊の隊長だ。」
この人が隊長のお兄さんだとわかった。全身白銀と黒が混合した鎧を纏っていた。
「ところで、ヒルブライデは元気にしているか?彼女は私の唯一の肉親、妹なんだ。」
「「ええええええ!!」」
メガネとハクレびっくりしている。
「彼女は知らないだろうな、なんせこのバルキルウスは偽名だからな——そもそも彼女は王国にいいよう使われているに過ぎないし......」
『やばい、全部喋ってしまうこの人......。』
バルキウスはびっくりしている二人と焦っている自分を見て察したのか。
「ああ、急に話してびっくりさせてしまったね。あと、これはお願いなのだが......。」
こう言って神妙な面持ちになる。
「私、バルキウスは戦場に居ることをヒルブライデに伏せていてくれないか?彼女のことだ幼い頃から義理堅く今でも私を心配しているに違いない。私の存在を知ればヒルブライデは戦意を失い私の元へ来る可能性が高い——王国はかなりがめつい、武力行使の可能性もある。」
ここまで聞いていると、マルマキアさんの考察と少し似ている。やっぱり王国は......。
「そんなことないですよ、国王様は優しいですし......。」
ハクレが説明する。
「ふむ、本当に優しいかどうか。彼の本性は......」
「待て!今ここで話すのは違う!」
ドルクが必死で話を止めに入る。
「悪いなお嬢ちゃん、こいつシスコンなんだよ。愛が重いの、聞かなかったことにしてくれない?な?」
「は、はい。」
ハクレは不思議そうに頷く。
「ほんじゃ、行こうぜ!」
ドルクが元気よく言って、これから帝都の地下都市へ行き魔女狩りを始めるのだった。
九話に続く......。
世界設定:魔女と闇の魔術
今作では闇の魔術と魔女が存在します。魔女と呼ばれる者の定義は闇の呪文が使える女性としました。悪魔と契約するか儀式を行い闇の魔術を習得できます。魔女であれば誰かと契約を結び対価として相手の寿命や魔力を吸収でき魔女自身が延命や魔法の威力が上がります。そのため多くの契約をしている魔女はとても強く若々しい設定にしました。逆に契約者に魔力を分け与えることもでき延命させることもできます。ですが、契約した魔女が倒されると延命の効果が切れ死にます。また、契約者自体は闇の魔術が使えるため天性の呪文の前ではとても弱いです。また、王国帝国問わず嫌われている存在です。因みにセブラブは300歳ぐらいの人間の設定で若いため、なかなかのやり手です。
読んでいただきありがとうございます。結末は初めて書いた時からはある程度決まっているのですが。そうなるまでの過程を描くのが難しいですね。キャラクターの苗字も考えないとも思っています。名前は本当に適当なのでどうしようか考えています。これからもよろしくお願いします。