第七話 宴会襲撃
主人公アルスは王女ラスティーネの護衛のため貴族の宴会場についていった。そこで不可解な事件が起こるのだが・・・。
マルマキアが担当する庭の警備だが、雑木林から大量のスケルトンが屋敷に向かって進軍を始め交戦状態に入っていた。
「マ、マルマキアさん!この数はやばいですよ!」
「チ!お前は足手纏いだアレク!ここから離れて貴族の護衛にまわれ!」
「はい!健闘をお祈りします!」
「10年ぶりに心置きなく戦えそうだな。」
アルバートは他の部屋を散策していた。
『大広間から爆発......!?』
この時ちょうど大広間の天井に雷呪文が炸裂した時だった。
『私もすぐに行かねば!』
「待ちなさい。」
後ろを振りかると水晶玉を持った魔女らしき人物がいた。ブルカ(アフガニスタンでよく見る被り物)を被っており顔が確認できない。
「貴様の仕業か!」
「答える必要はないわ。」
そう言ってアルバートの周りにスケルトンを召喚させる。
「あなたを彼の元に行かせはしない。」
「ならば、実力行使だ!」
そう言ってアルバートは剣を抜いた。
一方ハセクは苦戦を強いられていた。
「武器がこんな小さい短刀ではなぁ!」
『くそ......。』
女装をしていたハセクはドレス下の太ももに短剣を一つ隠していた。
「でも、あの時の僕じゃない!」
そう言って稲妻を手に纏わせ発射する。
「おおう......!」
相手が剣で稲妻の方向を変える。
「何笑ってんだよ!ジジイ!」
「この時を待ち望んでいたのだよ!」
こうして、一戦攻防の戦いが始まった。
アルスの方は女王を馬車まで連れて行き門の護衛をしていた騎士団兵士に後を任せるのだったが。
「アルスさんも一緒に!」
ラスティーネが必死にそう言うが。
『ここで、屋敷に向かうべきか。それとも王女の側にいるべきか。』
こうして迷っていると、側にいた王国兵士が急に倒れた。
「姫!」
そう言いラスティーネを抱き抱え倒れた王国兵士から距離を取った。
「さぁ、同志よ私と共に来い。さすれば、王女の命だけは保証しよう。」
話を切り出したのは黒いマントを羽織り変声系魔法が付与された仮面を付けていた、体つき喋り口調から女性で間違い無いだろう。
「そこにいる兵士!」
「は、はい!」
「お前は早く王国にこのことを伝えろ!」
「はいぃぃ!」そして馬車を引っ張る馬から一匹持って走っていった。
「交渉決裂か......。」
そうしてお互い剣を構え始める。
大広間では......。
「この程度では、私には勝てんよ。雷獄のハセク。」
熟練度が高いソルブの型でハセクを追いやっていく老人。そして時折闇の魔術を纏った稲妻を発射してくる。
『ダメだ、攻撃の隙がなさすぎる......。』
その時であった。
「アルスさ......ハセクさんこれは一体!?」
アルバートがアルスの元に行くよう指示した王国兵士だった。
「こっちにくるな!」
「食らうがいい!」
老人の稲妻が王国兵士に当たる——うわあああ!という悲鳴をあげ倒れるのだが。
「おい!しっかりしろ!」
すると、王国兵士がハセクに襲いかかってくる。
「な?!」
「どうだ?面白いと思わんかね?」
「くそ、傀儡化か!」
後ろから老人が襲ってきた。
「ごめん......。」
そう言って短剣を傀儡化された兵士の喉元を刺し思いっきり雷属性の魔法を流し込んだ——すると、兵士は丸こげになってしまった。
「ほぉ、仲間を傷つけるのも躊躇わないとは恐れ入るな。」
「バカにして......。」
そしてハセクは兵士が携えていた剣を拾い、ハグバルの型を取り始めた。
「いつもは魔導書だけどさ、僕が剣聖にいる理由を教えてあげるよ。」
そして信じられない速さで老人の懐に入る。
「何?!」
そして、老人の体に右手に持っている剣が入った。
「あああああ!!」
痛そうに叫ぶ老人だが、追撃はやめない。左手の短剣と右手の一般的な長さの剣のコンビネーション。体全体に魔力を巡らせ筋組織を活性化し目にも止まらぬ速さで老人を捌く——老人の体はズタズタになっていった。
「僕の名前はハセク・ハグバル、この型を開発したハグバル家の子孫さ。」
「おのれ......。」
そして観察をすると老人の体の傷が再生していく。
『不死の一種か?』
「この借りはいつか返すぞ!」
老人は周りに闇の魔術を充満させ姿を消した。
ばたりとハセクが仰向けで倒れた。
「今度こそ、一人で泣けるかな。」
そう言ってうずくまり泣き始めたのだった。
アルバートの方は......。
「なんなのだ、その強さは......?!」
アルバートが多くのスケルトンを倒したため。魔女がかなり動揺していた。
「この程度とは、情けないですね......。」
余裕をかますアルバート。
「くそ!」
そう言って水晶玉から召喚門を開こうとするが腕がないスケルトンや足がない不完全なものが多く出てきた。
「なぜなんだ!」
「恐らく、スケルトンを出しすぎたのだろうな。」
「何?!」
「私はただ、消耗戦に持ち込んだに過ぎない。あなたは私たちの戦力を過小評価している、恐らく外にいるスケルトンもあなたによるものだ。スケルトンを出してから10分ほど経過しているはずだが、外にいるマルマキアさんだったら軽く200体以上は確実に葬れる。」
「に、200だと?!」
「スケルトンは魔法師の魔力量により質が変わってくる。多分知らない間に多く召喚しすぎて魔力も枯渇し血液も少なくなってきているだろう。」
「クソ!クソクソクソクソクソクソおおおお!!!!」
「今こうして喋っている間にも、マルマキアさんが倒している、貧血で倒れるんじゃないか?」
メガネをクイっとあげる。
「舐めるなよ、剣聖!」
アルバートが相手に魔法を撃たせる前に水晶玉を破壊した。
「ですが、闇の魔術である以上何が出るか分かりません。この場合最初からあなたと戦っていれば私が負けている可能性が高かったでしょう。」
「なんなんだ貴様......。」
そう言って魔女らしきものが倒れた。
アルスの方では......。
『隙がないな、構えはバーラスか......。』
自分は強敵を観察していた。
「来ないのか?」
そう言って構えを変えて切り掛かってきた。
『ん?ガルガンドか。』
直接剣を受けると体勢を崩しそうなので、避ける——隙ができたので一発入れるが、それと同時に剣の型をバーラスに戻したのだ。なので、いなされる。
『フォームをこうも綺麗に変えるとは......。』
剣の型を二つ使う剣士は珍しくない。だが、この女は剣の型の切り替えが上手いのだ。
今度はこっちから攻めてみた——やはり、防がれるバーラスの型を徹底的に極めているようだ。距離を置こうと引くと今度は闇の魔術を纏った氷柱を発射してきた。
『まずい!』
そう思うと腕に刺さった。
「アルスさん!!」
ラスティーネが近くによってくる。
「くるな!!」
その瞬間、仮面の女が素早く王女に近づき首を絞める。
「離せ!!」
「そんなにこの女が大事か?」
信じられない強さで王女の首を絞める。口から唾液が出て目が上に登っていく——王女を持っている手に切り掛かかる振りをして、剣を上に投げ右手で顔を殴る。すると王女を離し、距離を置いた。降ってきた剣を回収——このまま距離を詰めて王女から距離を離す。
「痛かったじゃないか、剣聖。」
「悪いが、これが仕事だ。」
相手はうまく型を切り替えて戦っているようで、相手がガルガンドの構えが来ると予測し究極型に切り替える。すると相手は距離を大きく取り始めた、恐らくこの型の特性を知っていることがわかる。
「これではな......。」
そんなことを言って魔力を高め始めた。
あっという間に周りが凍り始め寒さを感じ始めた。
「人の形が残っていれば、大丈夫か......。」
そう言って切り掛かかってきたので、究極型に切り替えるが体に違和感があった。
上から下が氷結によって固定されていた。
『いつの間に?!』
こうして腹部を刺された。
「アルスさんしっかり!!」
ラスティーネが泣きながら近づいてきた。
「近づくなよ、メス豚が。」
仮面の女がアルスに近づく。
「王女は早く逃げてください......。」
「もう、王女なんて言わせないさ。私の事しか考えられないようにしてやる。」
「ち、近づかないでください!」
泣きながら、自分を庇うラスティーネ。
「全く、命だけは助けてやろうと思ったんだがな。」
その時だった。
上からマルマキアが降ってきて仮面の女を剣で吹き飛ばした。
「くそ、マルマキア!」
「悪い、遅れっちまった。」
そして仮面の女は屋敷近くにある、雑木林の向かって走っていった。
「おい、ラスティーネ。お前治癒魔法使えるだろ、アルスに早く使ってやれ。死んじまうぞ。」
「は、はい!」
「ア・ル・ス♡頑張ったご褒美にキスしてやるよ♡」
「それは、た、楽しみですね......。」
息を切らしながら話す。
「アルバートやハセクももう時期来るはずだ死ぬんじゃねーぞ!」
マルマキアさんは雑木林に向かっていった——。
その数時間後王国の騎士団および王国兵士が到着。中々帰ってこないマルマキアさんを捜索し発見したのだが、死んでいた......身体中に切り傷を負い明らかに故意的に痛めつけられたことがわかった。
八話に続く......。
世界設定:キャラクター3
ハセク、剣聖隊に所属する男性のドワーフだが、ドワーフにしては体が細く顔もかなり童顔である。コンプレックスなので子供扱いや女の子と同じ扱いをするとキレる。見た目とは裏腹に暗い過去を持ちゲトー要塞での少年兵の殺戮は個人的にも気にしているそうだ。剣技、魔術共に優秀であり使用型であるハグバルはハセクの祖先が作ったものとされる。属性は雷であり帝国側では危険視されており雷獄の名が通っている。ちなみに年齢は121歳
読んでいただきありがとうございます。いよいよ主要キャラクターが一人死にました。個人的にはダークな雰囲気にしたいので、愛着をある程度持たせて消す方法が一番好きです。趣味が悪いですが、気持ちを動かすことが大事な気がしますので。これからも読んでくれると幸いです。