第五十四話 変化の風
ニーナ家にルミナスを保護して数日と経った時、大きな変化が現れる。
クフラクはニーナ家当主の部屋へ一人で招かれる。
「よく来たなクフラク君。サリパスの攻略も終わり統合国への脅威は少し減っただろう、それでルミナスの処遇だが、鍵として使うかどうかで上の者は揉めているようだ。」
ルミナスを鍵として使えば消滅する、これは彼女自身の人生を否定するような事だでも、悪魔だし死ぬ訳ではない、であれば彼女を消滅させ新世界の扉を開きサタンを倒せば良いのだが……。
「怒らないで聞いてほしい。私の意見だが、彼女を消滅させ世界を救う方が合理的だと思う、ましてや死にはしないのだから彼女一人のために世界を天秤にかけるのは愚かだろう。」
「はい、俺もそう思います。」
口では言うものの第三の選択肢はないのだろうか、できれば誰も失わない方法を選びたいのだが。
「意見が決まり次第、ルミナスは王国領へ移送する。結果はどうであれ受け入れてくれよ。」
彼の話を聞いてクフラクは部屋を出る、これも仕方のない事だと思うが、どうすれば良いのか答えは見えなかった。
屋敷を彷徨いていると窓の外からルミナスはキーウィ、マーヤと遊んでいる、退屈してないようで、黒死隊も今日中には出て再び信仰騎士と崇拝団体を狩りにいきたいそうだ。
「クフラク調子はどうだ?」
バルキルウスが出てきて、顔を窺ってきた。
「まぁ、色々と……。」
「ルミナスの処遇だろ?長引はするかもしれんが、早いとこ腹を括った方が良いかもしれん。」
「そうですね。」
四年前のクフラクであれば、すぐに怒り反発していただろう、今のクフラクには子供ながらの正義感はなく落ち着いている、そのため非情な決断も受け入れやすくなっている。
バルキルウスと別れると屋敷の門に行商人がやって来ている、商人の馬車周りを兵士が囲っており危険物がないか確認している。
ニーナ家の人が何か買おうとしているのだろうか、気になったのでクフラクも行商人の所へ行く。
その場へ行くとライノックがおり行商人を監視していた。
「何買ったんですか?」
「基本的に食材とか日用品だよ、ここは人も多いし。」
「へぇー」
そんな会話をしていると、行商人の馬車から人が出てきた。
フードを深く被っており小柄だ。
「どうにも、旅人がここニーナ家に寄りたいそうでして……」
行商人は旅人の話をしている。
「来訪の知らせは来てませんね……。」
兵士は顔を顰めている、知らせれてない状況に驚いてるようだ。
「なら、これで伝わるかな?」
旅人はフードを取ると、信じがたい光景を目にする。
「嘘だ……。」
クフラクは驚いていた、正体はハセクであり、報告書ではサリパス鎮圧の際に戦死したと報告されたからだ。
「ハセク様?なぜここに……?」
兵士も驚いている、まず討伐大隊は国に反した勢力という扱いになっており、その隊長だったハセクは戦死した事になっている、驚いても仕方ない。
「とりあえず、ニーナ家当主、ニール・フランク・ニーナに取り合ってくれないか?」
「確認してまいります……。」
兵士は急いで屋敷内当主の部屋へ直行して行く。
クフラクはハセクに近づき話をする。
「なんで……生きてるんだよ。」
「何でって……生きてちゃまずいのかい?」
「あんたの事だ……何かあるんだろ?」
「そう警戒しないで。」
ハセクは優しく語りかけるが、真意が分からない。
しばらくすると兵士が戻って来た。
「ハセク様、主人が通せとの事です。」
「ありがとう。」
彼は礼だけ述べると屋敷へ入って行った。
「なんかおかしい……。」
クフラクはハセクの急な登場に怪しむ、何か企んでてもおかしくないが、絶対にルミナスを狙っているだろう。
「とりあえず、ハセクさんの後を追いかけようぜ。」
ライノックに勧められクフラクはハセクの後をついて行く、もちろん行き先はニーナ家当主の部屋であり、扉からは禍々しい雰囲気を出している。
「耳を澄ませてみるね。」
クフラクは扉の奥の会話を聞き出す、何を話しているのだろう。
「ニールさん、お久しぶりですね。」
「ああ、ハセク殿か……生きているとは思いもしませんでしたぞ。」
「まぁ、色々あったからね……詮索はしないでくれよ。」
「ええ、あなたにも都合という物があるでしょう……ただ……あなたは統合国の反逆者だ、このまま返す訳にもいかない、要件だけ話してくれませんか?」
話から察するにニーナ家当主はハセクの内容次第では捕らえるかどうか判断するようだ。
「本題から話すと、クフラクが保護している鍵が欲しいんだ。」
「なるほど……薄々分かっておりましたが……バルキルウス。」
「ここに……」
「彼を捕えろ。」
ドア越しで分からないがバルキルウスがいるようだ、ハセクの目的はルミナスで間違いないだろう。
「大人しく渡して欲しかったんだけど……。」
ハセクは雷をニーナ家当主の居る部屋に直撃させる、雷雲を知らない間に作っていたか……。
クフラクの居た扉前は爆風で吹き飛び煙が立ち込めていた。
「大丈夫ですか!?ニールさん!?」
バルキルスが必死で当主を起こそうとしている、煙越しで見えずらいが当主は倒れておりハセクの姿はいない。
「大変だクフラク!ハセクさんが……。」
ライノックが大慌てでクフラクに話す、彼は当主の崩壊した部屋に入り外を指差す。
そこにはルミナスを守るようにキーウィとマーヤが居た。
「何考えてんだ!?お前そんな事すような奴じゃないだろ?」
キーウィが説得を試みてるがハセクは話を聞いてない。
「大人しく渡してね。」
ハセクはキーウィに剣を向け振るうが、氷結魔法でキーウィは対抗した。
「渡せるか……姫と女王であれば第三の選択肢を考えてくれるはずだ。」
「そんなの待ってられないって言ってるだろ!!」
ハセクが再び襲い掛かるとバルキルウスがキーウィを守るように間に入る。
「邪魔だ!」
ハセクの目は赤く充血している、何かに狂ってるようにバルキルウスは見えた。
バルキルウスはハセクの手を掴む。
「ガイスト!オレオンス!」
横からガイストとオレオンスが現れ、ハセクを挟むように攻撃を仕掛ける。
「離せ!」
ハセクは掴まれてる腕を振り解こうとするが、離してくれる訳がない。
ガイストの斧はハセク目掛けて振り落とされると、ギリギリで回避する、オレオンスの槍攻撃はハセクの左肩に食い込んでしまう。
「許せ。」
バルキルウスはそれだけ言ってハセクの両腕を切断した。
「ぐあああああああ……!」
ハセクは声を押し殺すように我慢した。
「何を焦ってるのです?そして本当に貴方はハセク殿か?」
バルキルウスは疑問に思い話をすると。
『ハセク、お前の体はもう使えん、オレが変わる。悪いな。』
「や、やめろ……」
『大丈夫だ、借りるだけだ。』
ハセクが独り言を話し始める。だが、誰かと話してるようだ。
ハセクの両手から悪魔の手が生える、尻尾も生え背中から翼も生える、頭はツノがこめかみから生える、まるで悪魔だ。
「我が名はベルフェゴール。ハセクと共に世界を救う者だ。」
「バカかよ。」
クフラクは納得が行かないとでも言うように話す。
「ハセクはいつもお前の身を案じていた、大人しくルミナスを渡せ。」
「彼女の人生はどうすんだ?将来という希望に目を向けてたアンタが一つの命を潰すのかよ?」
「一つの消える事のない命と世界を天秤に掛けるなら私は容赦なく一つの消えない命を選ぶ。これは至極真っ当であり、ハセクも同意した。」
「悪いけど納得いかない、アンタの知識なら第三の選択ができたはずだ、犠牲のない選択を……ルミナスを奪うならオレが許さない……。」
クフラクは実力行使に出る、彼の足元から二つの魔法陣が出現し大剣が二つ出てくる。
「悪いなハセク……無傷では返せそうにない。」
ベルフェゴールは悲しそうに話す。
「全部背負うから……。」
クフラクはベルフェゴールに攻撃を仕掛ける。
だが、ベルフェゴールは素手でクフラクの大剣を受け止めたのだ。
「彼とは長い間共存した、お前の力では遠く及ばん。」
「試してみるか?」
クフラクは大量の魔法陣を出し、そこから多くの小剣を出す、小剣はベルフェゴールを囲うように位置し刃が襲ってくる。
一方でマーヤがルミナスを守る形でその場から退散して行く。
「逃さん!」
ベルフェゴールはそれを見るとマーヤ達を追いかけるが、一人それを阻む者がいる。
「行かせないってさ。」
ライノックは剣を抜きベルフェゴールを吹き飛ばす。
「馬鹿力が……」
「今だ!メイフィス!」
ライノックが空へ向け大声を出す。
するとドラゴンの火炎がベルフェゴールを覆う。
「サタンの炎に比べれば……。」
そんな火中でもベルフェゴールは歩みを止めなかった。
ベルフェゴールは空に大きな雷雲を作る、辺りは暗くなり小粒の雨かと思えば時期に激しい雨に変わっていく。
「環境を変えるか……。」
バルキルウスは警戒する。
次に強風が吹く、まさに台風の中で闘うことを彼らは強いられた。
「刮目せよ。」
その言葉がベルフェゴールのものかハセクかは分からないが、どちらにせよ狂気を感じさせ殺意に満ち溢れていた。
辺りは竜巻が幾つも出来ており、彼と戦う者は強風に耐えられずその場から動けなかった。
「メイフィス!降りられないのか!?」
ライノックは上空を確認するが、ドラゴンに乗ってるメイフィスは強風に煽られ体制を維持できないでいた。
「すまないな。」
ベルフェゴールの口からそのような事を聞いた瞬間、その場に居たルミナス以外の全てに者に落雷が落ち周辺の建物を瓦礫の山と化した。
威力は大きく、皆倒れてしまう。
ベルフェゴールはルミナスに近づく。
「お前に罪は無いが許せ。」
ルミナスを抱え何処かへ消えてしまう、クフラクは意識があり当時の事を思い出す。
「くそ……あの時と同じだ……。」
彼は瓦礫の中でベルフェゴールとルミナスが消えるのを見ていた、それは間違いなくテレスが瓦礫の中で息たえていたのと同じ状況であり、二年前の記憶が嫌でもフラッシュバックする。
「大丈夫か……。」
バルキルウスは氷結魔法で雷と瓦礫を凌いだ、近くに居たキーウィ、オレオンス、ガイストも命に別状は無いが、ダメージが大きかった。
「おい、メイフィス!」
ライノックも無事に生きていたが、メイフィスが致命傷だった。
乗ってたドラゴンは死んでおり、雷に直撃後、落下したのだから普通なら死んでててもおかしくはない。
「こっちも手を貸してくれ!」
キーウィはマーヤが倒れているのを発見したが、幸い息はあるし、近くに建物はなかったので致命傷にはなってなかった。
「恐らく、ベルフェゴールは俺たちを殺さないように立ち回ったんじゃ……。」
クフラクは考察した、彼ほどの力であれば容易く葬る事も可能だったはずだ。
「とにかく、ルミナスを助けなければ……。」
バルキルウスは弱りながらも話をする。
ベルフェゴールの企みはサタンを止める事で我々と目的は同じはずだ、ここで問題になるのが手を取り合わないことである、手を組む事で不都合があるからと考えるのが妥当だが、ハセクの件を考えれば彼の過剰な自己責任によって引き起こされた出来事である事に変わりはない、俺達はルミナスを助けるためベルフェゴールを追いかけなければならない。
「面白い事になってんな。」
それを遠くで見つめる、女性が一人居たが彼らは知る由も無かった。
五十五話に続く……。
世界設定:キャタクター
マーヤ、彼女はキーウィの妹であり貴族の出だ。彼女の生い立ちは第三十八話に描かれている、彼女はキーウィとは違い無属性であり魔力もそんなに大した者では無かったが、魔女の実験体になってから魔力は大幅に増大した。そのため体調は崩しやすく魔力の適性がない状態で付与されたため、魔法を使えばアレルギーのような症状が出る、性格は穏やかであり争いは好きではない。彼女が黒死隊と行動を共にするのは外の世界に触れたいからであり、小さい時に魔女の実験体にされてからロクに外には出れなかったし、尚且つ地下街という場所だったため憧れを抱き、興味を示すのは仕方がない。彼女がどうして急に魔女の拠点から抜けてキーウィと会う事が出来たのかというと、サタンの実験が丁度成功したからである、そのため彼女は被験体4号ではあったが生きて外に出られたのだ。趣味は姉に甘える事と、外の世界に出てからは珍しい虫を闇の魔術で硬直化させ標本にすること、キーウィは良い趣味だと言ってるが内心ではやめてほしい。
読んで頂きありがとうございます、更新が止まりました。そのため、予定通りに事が進みそうにありません。最終話で次の作品を出す予定でしたが、早めに出します。その作品ですが、本気で賞を狙いに行く作品であり、この『七剣聖伝説』のように趣味から始めて賞でも狙うかという浅はかで中途半端な要素がない作品です。こんなタイミングになって申し訳ありませんが、新しい作品を読んで頂けてたら幸いです。作品の名は『Stellar Era-Evidence』です。『七剣聖伝説』はこのまま最終回まで突っ走って頑張るのと同時に新作の方は同時進行で行けたらと思います。今後ともよろしくお願いします。




