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第五十二話 通過点

 ラスティーネに自分の過去を話す、ヒルブライデとの脱走、大賢者キルスとの出来事を……。

「これが四年の間に起きた出来事です、自分は大賢者になりました。」

「王国のせいですね、私達が追い詰めたせいでヒルブライデさんは……。」

「いえ、彼女は治療を受けても死ぬ定めでした。長くないから自分達は縛りのない外へ出ただけです。姫が気にする事はない。」

 アルスはそれだけ話すと城を出ていく。

 ラスティーネは見送るだけしかできなかった。


 城を出て街に入ると人は活気していた、四年前までグランハースの攻撃で被害が大きかったはずだが、元に戻っている。


 少しぶらつくと人だかりができている場所があった。

 乱闘だろうか、昼間から酒を飲んで住民が喧嘩をしていた。

 見ていると剣聖隊の制服を着た人が乱闘に入り止めようとしている、見ないうちに人も変わっているようだ。

「隊長、ここです!」

 隊長か、四年経った今は誰が剣聖隊を率いているだろう。

 人混みの中から見たことある顔が出てくる。

「周りに迷惑なのでやめてくださいねー。」

 エレスだろうか……彼女が隊長を務めるとは思いもしなかった。

「なんだネェちゃん?喧嘩しようってんのか?」

「いいえ、止めてるだけです。」

 空気は一触即発になり飲んだくれが酒瓶をエレスに叩きつけようとするが案の定エレスは受け止め拘束する。

 彼女は何事もなく仕事しているようだ、一言かけるべきだろうか……でも、時間が経てばその機会もなくなるし意味がなくなる、今までの積み重ねた思い出はあっという間に消えるのだから。

 アルスはその場を後にする。


「隊長、お手柄でしたね!」

 隊員の一人は元気よく話す。

「なんかあったら私に任せてください!」

 同じく元気良く答えた後、痰が絡まったのか咳をする。

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫ですよ、ほら仕事に戻って!」

 エレスは口に抑えていた手を離すと吐血していた。


 街に出て帝国領へ目指す、そこにはクフラクがいるそうで鍵であるサタンの娘を保護している、こうしている間にも悪魔は力をつけ己のために人類を傷つけるだろう。


 アルスは馬車を待っていると老師から通信魔法が入る。

「聞こえるか、アルス殿。ロート様はこのまま帝国へ足を進めるおつもりじゃ、お主は自由に行動せよとのことじゃ。」

「わかった。」



 一方、王国領レヴン家領内の何処かで不審な動きを見せていた。

「ローザ大魔女第二陛下!御身の前に!!」

 ローザは椅子に案内され困惑していた、監禁場所に悪魔崇拝者団体が押し寄せ連れて行かれたのだから。

 信者はローザを大魔女陛下として慕い正座し額を地に付けていた。

「こ、これは一体なんなのだ?」

「私達は悪魔を崇拝する者どもです。今や大陸はスフィアーネ一族による絶対的支配が始まっております。一部の悪魔は己の存在を忘れスフィアーネの政権に屈している、これでは我々闇に生きる者の自由を奪ったに過ぎない、崇拝見聞録には自然の摂理に反してはならないと大罪悪魔様が残してくださった。悪魔に支配される世界こそが自然であり、平和と均衡をもたらしてくれる!」

「その本は悪魔にとって都合の良い事が書かれてるに過ぎん、これが自然の摂理なものか!私はただロートの為に動いているだけだ!」

「何をおっしゃる!あなたはゴメリウスと親しい間柄だったはずだ、彼女の思想を置いて行くおつもりか!」

「そんなもの知ったことでは無い、時代は変わったのだ!非人道的な実験、大罪悪魔による協力は既に終わったのだ!」

「もう良い。」

 すると信者の後ろからゴメリウスが出て来た。

「誰だお前は?」

 ローザはゴメリウスの体を使った何かだと気づいた。

『私だよ……ローザ……』

『ベルゼブブか……』

 頭に直接話しかけて来た、会話を聞かれたく無いのだろう。

「さて、今日までに我々は調査をして来た、大体表に出ているのは信仰騎士ぐらいで我々の存在は薄まって来ている。」

 ベルゼブブは魔法での会話をやめゴメリウスの体を使って本題に入る。

「現在私達は王国領レヴン家領内に拠点を構えている、それは何故か?」

「表に出てみろ、いくらお前が強かろうと強力な天性の前では歯が立たぬ。」

「それはどうかな。」

 ゴメリウスの体を操るベルゼブブはローザに近づき手をかざす。

「何をする気だ?」

 ゴメリウスの手は神々しく光り始めローザの皮膚が焼け爛れていく。

「さすが、ゴメリウス様!」

 信者は歓喜し始める。

「いいか、お前たち!悪魔を信じれば長年脅威として恐れていた天性の魔法を物に出来る!」

「これは、一体……」

 ローザは突然の出来事に驚く、ゴメリウスの体とはいえ魔力自体はベルゼブブ本人の物だ天性の魔法など使えるはずはない。

『サタンは私達を騙した、彼だけ天に行くなど許されぬ。』

『まさか……実験は……』

 実験の大まかな内容は闇と天性の混合でありグランハース内で共産的政権を効率化するためにやって来たものだ、それ以外にも目的があったようだ。

「話が過ぎたが、私達の次なる狙いはレヴン家、アルバートと言われる男の屋敷にいる子供だ、魔力の素養が高く私達に必須だ、彼の子供を攫い実験を行えば私達の願いは達成される!」

「ゴメリウス大魔女第一陛下、万歳!!」

 ローザの目に映る人たちは狂っているように見えた、彼らはベルゼブブに良いように使われており信じても救われない宗教にハマることがいかに恐ろしいか垣間見ていた。

「よすのだ!このような事を続かせるのは……」

「ローザ、お前にも手伝ってもらうぞ?」

 ゴメリウスはローザに催眠をかけ始める。

「信者達よローザを魔力強化室へ連れて行くのだ!」

 ローザは以前グランハースの王宮にあった魔力を強化する部屋と酷似している所へ連れて行かれる。


 地上ではアルバート達が屋敷で過ごしていた、夜になっておりハクレは子供を寝かしつけていた。

 子供部屋にアルバートが入る。

「ハクレ、外の様子がおかしい、見てくるからラールを頼む。」

「わかった気をつけて。」

 アルバートは子供部屋を出て兵士を引き連れ外へ出る。


「外の様子はどうだ?」

「闇の魔力が充満してます、大規模です。」

「全て潰しきれなかったか……。」

「我々を狙いに来てるんでしょう、最近の崇拝団体は表に出ない、策を練っていたんでしょうね。」

 すると地中からスケルトンが出る。

「一匹?おかしい……。」

「私が倒してきます!」

 若い兵士が出て来たスケルトンに近づく。

「よせ!罠だ!」

 若い兵士はスケルトンを倒す前に地中から出たスケルトンの手に掴まれ地中へと引き摺り込まれた。

「まさか……。」

 アルバートがスケルトンの奥へ石を投げるとそれも引き摺り込まれた。

「屋敷の周りはスケルトンがびっしり詰まってる、地中にびっしりだ。」

 さらにスケルトンが出てきてこちらへ向かってくる。

「良いか、屋敷の敷地外へは出るな!引き摺り込まれるぞ!」

「は!」

 アルバートは敷地内に入ったスケルトンを倒していくが、効率が悪過ぎた、敵は相手に休ませる隙を与えず永遠に攻めてくる、兵士は疲弊し油断している所をやられてしまう。

「中に入れさせるな!兵士は中へ入り屋敷の守りを固めろ!」

「しかし、アルバート様!」

「ここは私一人で持ち堪える、中を頼んだぞ!」

 少なくなった兵士達は屋敷へこもり扉にバリケードを施した。

 アルバートは一人奮戦するがスケルトンの群れは屋敷にまで到達する、奴らは扉の破壊をしたり壁に登り子供部屋を目指そうとしているようだ。

「狙いはラールか!」

 アルバートは振り向き壁に登るスケルトンを倒そうと進むと足をスケルトンに掴まれてしまう。

「離せ!」

 アルバートは氷結魔法で掴まってくるスケルトンを吹き飛ばすが後から群れをなして襲ってくる、壁に辿り着く前に飲まれてしまう。


 扉も壊され傾れ込むスケルトンに兵士達は苦戦する。


「お母さん、外で何が起きてるの?」

「ラールは知らなくていいの。」

 ハクレはカーテンを閉め扉を施錠する、剣を用意し周囲を警戒し始めた。


 アルバートはスケルトンに拘束されると、目の前に懐かしい人物が立ちはだかる。

「久しいな、剣聖。」

「ゴメリウス、生きていたのか?」

「当然、この程度で死にはせん。」

「狙いは、ラールか?お前には渡さん!」

「お前の望みは叶わん、残念だったな。」

 ゴメリウスはスケルトンに指示をし、子供部屋の窓を破壊した。

「や、やめろー!!」

 子供部屋に侵入したスケルトンは天性の光で次々浄化されてくが数が多すぎるため光は壊れた窓から消えていった。

「さて、この様子ではお前の望みは果たされんな。」


「それはどうかな?」

 ゴメリウスの後ろからローブを羽織る男が現れる、フードで顔は確認できない。

「何者だ?」

「悪魔狩りとも言うべきかな。」

 謎の男は懐から丸い物をゴメリウスの足元に放る。

「信じられん……。」

 ゴメリウスの見たものはローザの首であった。

「時期にスケルトンは消滅する、残念だったな。」

 スケルトンはボロボロと脆くなっていき消滅する。


「アルバート久しいな、俺だよ。」

 フードを脱ぎ正体を表すとドルク本人だった。

「ドルクさん、あなたは……。」

「結婚祝いに来ただけだ。訳あって四年も待たせちまったがな。」

「貴様か……。」

 ゴメリウスは血相を変えナイフをドルクに突き刺すと右手で受け止められる。

「なんて力だ……。」

 ナイフの刃はドルクの掌にに入ってるはずだ、それを握っていれば傷が付き血が流れるはずだが……。

「面白いだろ?アダマンタイトの義手だ、魔力石も入って豪華でな。」

 ドルクはナイフを砕く。

「あの時の礼を果たさせてもらう!」

 ゴメリウスはスケルトンを大量に召喚した。

「俺の前で数は意味をなさない。」

 ドルクは右手をスケルトンの大群に向けると義手が変形し魔力が集中する。

「アルバート、離れてろ!」

 変形した義手は広範囲に強い炎を出す、アルバートは距離をとっても熱風は暑く、直接食らったスケルトンは灰と化す。

「な、なんという力……」

 ゴメリウスはなんとか避けたが、半身が大火傷を負った。

「さて、お前は何もんだ?」

 ドルクが近づくとゴメリウスの体から何かが出てくる。

「ちょっと虫は苦手かな。」

 中から蛆虫が大量に出て来て成虫なのか子供ぐらいの蝿が姿を現す。

「邪魔をしおってからに!」

「悪いが、俺たちの世界だ。お前らに好き勝手させるほど愚かじゃない。」

「私は諦めんぞ!何十億年とまた待ってられるか!!」

 ベルゼブブは姿を消しどこかへいってしまった。


「大丈夫か?早く屋敷に戻ってガキの心配してこい。」

 ドルクはアルバートを気遣い話す。

「あ、ありがとうございます、助かりました。」

 その後屋敷はボロボロになったがハクレとラールは無事だった、一足先にドルクが悪魔崇拝団体の拠点に入り殲滅していた、ローザは催眠をかけられてることを知っていたが、手段は選んでられなかったので迷わず斬ったそうだ。


「ドルクさん今日はありがとうございました。」

 アルバートは状況が落ち着くと改めてドルクにお礼を言う。

「良いって事よ、最近はどうだ?」

「そうですね……平和に暮らせてると言えばそうですが、大罪悪魔がいる以上それは上部だけかもしれないと感じてます。先ほどの事がまたあるかも知れません。」

「そりゃ賢いお前ならそうだろう。鍵の話は来てんのか?」

「ええ、でもなんでドルクさんが?」

「俺とテレスミクロ、アルスとでロート前王に仕えてる。名目上は流れの傭兵で前王の護衛だ。だから自然と情報も入るさ。」

「目的は大罪悪魔ですか?」

「そうだな。再び均衡に戻す準備の段階だ、アルスには頑張ってもらってる。」

「兄貴はどこに?」

「帝国領のニーナ家へ向かうそうだ、俺も時期に行くさ。鍵を狙ってんのは俺たちだけじゃない、先に奪われる前に取らねーと。」

「では私も同行してもよろしいでしょうか?」

「なぜだ?」

「私は未来のため平和な生活を望みます、ならばその力に私を加えさせていただきたい。」

「バカ言え、ガキはどうすんだ?嫁もいんだろ?死ぬかも知れねー旅だ、巻き込めるかってんだ。」

「私は己のため戦うだけです、どう転ぼうと未来は分からない、息子の未来だけでも私は守れる人間になりたい。」

「いいか、カッコつけもそれぐらいにしろ。俺は本気だ、お前がいないのを家族は認めるのか?」

「認めさせるよう説得するのみです。一人でも多く協力すれば未来が助かる可能性は高くなる。」

 アルバートはハクレ達に説得すると死ぬほど怒られたようだ、案の定認める事はできないそうだが、彼の志や信念は本物であり誠意を示すと了承してくれた、ハクレ自身は呆れたそうだが。


 アルバートとドルクは帝国領ニーナ家に向かいハクレとニールは安全のため王都へ向かった。



 五十三話に続く……。



 世界設定;キャラクター


 ハクレ、彼女は貴族の出身で隣の領にアルバートがいた。二人は幼馴染で幼少から婚姻が決まっていた、性格は穏やかで面倒見が良い、天性の魔法も使えるため闇に対しては有効だ、剣の型はキルスを使っている。年齢は統合歴2年時点で24歳。剣聖隊に入ったのは親の都合であり、ある程度見栄を張るためである。実力はある方で戦闘能力も結構ある。真面目で勤勉だがたまに抜けている所がある。子供が出来てからは戦闘には一切参加せず穏やかに暮らすそうだ、ただ身の回りに危険が及べば話は別で子供を守るため身を盾にする気概の持ち主だ。趣味はガーデニングと散歩。


 読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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