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第四十九話 迷いと現実

 ハセクは自身の体を悪魔と共有した、完全に乗っ取られてる訳ではない、体は城に向け歩みを進めるのみだった。


 老師はスフィアーネに連絡をとり一刻も早く彼を阻止したかった。

「スフィアーネ陛下、ハセク殿はダリウス王を抹殺する気です。悪魔に体の半分を委ねています、目的が明確で無い以上に真相を知る者が居なくなれば我々は危うい。」

 通信魔法でスフィアーネに事の大きさを伝える。

「報告ありがとうございます。グランハース軍で彼らを足止めできますか?私達も急ぎ向かいます。」

「ええ、足止めならお任せを。」

 通信を切るとグランハース軍はハセク率いる討伐大隊に向かう。

 

 ハセクは城へ近づくとサリパスの兵士が一斉に退いて行った、城を放棄する様にだ。

「皆んな、後は僕に任せてくれ。」

「隊長、私達は……。」

「今日限りで討伐大隊は解散する、グランハースの軍が来たら大人しく投降すれば良い。」

「捨て駒にする気で?」

「まさか、君たちは自由になっただけさ。僕とベルフェゴールで未来を守るだけだ。」

「ここまで来て、答えを明かさずに勝手に生きろと?」

「ああ、多分この先には君達が知ってても意味のない事だから。」

 ハセクは城の中へ入って行く。

「クーハ隊長……。」

 別の兵士が急な出来事に着いて行けず困惑している。

「お前達!もしハセク隊長の有志で募ったのなら彼の後に続け!今ままでの汚れ仕事に見合う真実を知りたくはないか!?」

 クーハはハセクに代わりこの場を仕切り始める。

「隊長!グランハースの軍が攻めて来ております、我々を無力化しようと……」

「くそ……どちらに加担すれば良い……私達は……彼に味方するか、統合国の犬に戻るか……。」

 彼女は選択を強いられる、降伏すればハセクが情報源を切り真実を得る事なく平和に過ごせるだろう、逆にハセクに着いて行けば統合軍と敵対し身を追われながらも汚れ仕事に見合う真実を得られると思った。

「私は降らんぞ!彼の理想を実現させたくば身を滅ぼしてまで抵抗しろ!!」

 クーハはハセクを選んでしまった、その選択は彼女を後悔させる事になる。


 グランハースの軍は城に近づいて行くと、反旗する討伐大隊が攻めて来る、あくまでも抵抗するようだ。

「愚かだぞ、その選択は!」

 キュキュルスは呆れると同時に怒りすら覚える。

「ワシらだけでも、城内に入るべきじゃ。」

 老師は転移魔法を使えるが距離に制限がある、悪魔と契約していればかつてのヒルブライデの様にどこでも飛べる。

 キュキュルス、老師、ワタナベは兵士達に討伐大隊と交戦するように指示を出し、敵を退けながら城へ接近して行った。



 ハセクは豪華な扉を開けて王の間へ入って行く、玉座の前にはダリウス王が倒れていた。

「なぜだ?」

 ハセクは状況を飲み込めないでいた、情報を掴ませないため自害したのかどうか色々と考えていると天井から声が聞こえた。

「久しく見るな……」

「お前が黒幕か?」

 ハセクはさらに前へ進む。

「まさか、真の黒幕はサタンだろ?」

「鍵の情報はどこで知ったんだ?」

「俺の契約者はサタンだ、教えてくれただけだよ。」

「じゃあ僕にも教えてよ。」

「悪いが俺はお前が嫌いだ、嫌いな人間には意地悪したくなる。」

「気持ちは分かるけど時間がない、さっさと話して死んでくれ。」

「お前が鍵を手に入れても無駄だ、あれはお前の手に余る。」

「そんなの手にしてみなきゃ分からない。」

 ハセクが強引にでも聞き出すため戦闘態勢へ入ると、扉の方からドタドタと足音が聞こえる、集団であるのは間違いない。

「隊長!!」

 討伐大隊の人間であり、クーハが指揮をしていたようだ。

「お前ら、来るんじゃない!!」

 彼女達が中まで入って行くとボトンと蛇のような体が彼らを囲い落ちる。

「うわ!なんだこのバケモン!」

 討伐大隊兵士は狼狽える。

「落ち着け!ハセク隊長をお守りするぞ!」

「くだらん。」

 アレクは蛇の体で囲った兵士達に地獄の炎をお見舞いする、彼らは逃げようとするが、アレクの体が邪魔でその場から離れられない。

「よせ、アレク!」

「やはり、お前は屍で道を作る方が性に合ってるな。」

 蛇の体に囲まれた兵士はアレクの体を剣で刺そうとすると、その前にアレク自身がそいつを槍で殺す。

「抵抗するな、焼け死ぬまで待て。」

「汚い真似を……」

 今ここでハセクが手を出すと間違いなく彼らは即殺されるし、待ってても死んでしまう、どうにかして皆んな助ける方法を彼は考えてしまった。

『ハセク、彼らは無視しろ。なんなら代わってやる。』

『彼らに罪はないんだ、背負うのは僕たちだけで良い。』

『甘いぞ、今がチャンスなんだ。奴を吐かせなければ、鍵の正体は愚か悪用されるぞ?』

「どうした、誰と会話している?」

 アレクにはベルフェゴールとの会話は筒抜けだった。

 その時、天井から転移魔法で老師達が落ちて来る。

「どこに転移してんだジジイ!」

「すまぬ。」

「邪魔だ!!」

 アレクは脅威を察知し、彼らを蛇の尻尾で攻撃すると、ワタナベにより尻尾は切られてしまう。

「クソ!」

 痛みは感じないようで、次の手として槍で老師を狙うと牽制してキュキュルスが弓を放つ。

 アレクは後ろに下がり槍での攻撃はやめてしまった。

「おい、一時休戦だ。こんな化け物にあんた一人で挑むのは馬鹿げてる。」

 キュキュルスはハセクをみて話す。

 アレクは尻尾を再生し天井を這い始める。

「ウエカラカ。」

 ワタナベは耳と感覚を頼りに剣を構え始める。

 アレクは右手の剣でワタナベを襲うと避けられカウンターを喰らうが背中に突出しているスーゼルの遺体が剣を持っておりそれで防がれる。

「キュキュルス、ナンニンイル!?」

 ワタナベは目が見えないため急な出来事に驚く。

「良いから下がれ!もう一体おまけで引っ付いてやがる!」

 ワタナベが後ろへ下がるとアレクの左手の槍が襲ってくる。

 老師はアレクの下に氷塊を出して槍を吹き飛ばした。

「共産主義者が!!調子に乗ってんじゃねええええええ!!」

 アレクはブチギレ始める、槍は魔法で引き寄せ左手に戻る。

「今は、共産国じゃないんでね……。」

 キュキュルスは皮肉まじりに言う。

「スーゼル……。」

 ハセクはスーゼルの操られた肉体を見るばかりだった。

「ハセクさん、今はアンタの協力がないとアイツは倒せない。感傷に浸るのは奴を倒してからですよ。」

「ああ……」

「もう時期スフィアーネ様が来られる、時間を稼げばワシらの勝ちじゃ。」

「スフィアーネだ?これは好都合……。」

 アレクはニヤニヤし始める。

「気味わりーな。」

 キュキュルスは彼の笑い方に良い印象を受けなかった。


「ハセク隊長……」

 クーハが倒れており焼けていた。

「悪いですけど放ってください、万一人質を取られても戦う他ない。」

 キュキュルスは冷徹な判断をハセクに下す。

「ごめん……」

「たく、役立たずが。」

 アレクは人質の価値がなくなったクーハを刺し殺した、もしも天性の魔法が使える人間がいれば可能性としては助かっていた。

「さぁ再戦と行こうぜ、お前達の屍をスフィアーネに見せつけた後に彼女も痛ぶってやる、娘の前でな。」

「つくづくキモいなお前……」

 キュキュルスは聞くに耐えんとして弓を引く。

 他三人も武器を構え始めアレクと戦おうとしていた。

 アレクは再び天井に這って行く、上からの攻撃はワタナベ以外予測しづらかった。

 天井から火球が降り注ぐ、逃げ場はないため老師が氷結の壁を作り皆んなを覆う。

「なんじゃと!?」

 氷結の壁は直ぐに溶けてしまう。

「みんな床に何か突き刺して!」

 ハセクは声を上げ魔導書を開くと重力が反転する。

 アレクには自分の放った火球と老師の残った氷結が当たる。

 重力に引っ張られハセク達の足は天井へ向かっていきそうだった、重力の重さは普通の比ではなかった。

「ワタナベ!城ごと斬れるか!?」

 キュキュルスはワタナベに問う。

「フカノウデハナイ!」

「だったら、横斜めに切ってくれ!ここ全体だ!」

 キュキュルスとワタナベは床に刺した剣を抜きアレクの方へ向かって行く。

「殺しにくるか……。」

 アレクは重い重力に耐えながら手を伸ばし火球を飛ばそうとすると、キュキュルスが矢を放ち阻止される、手と蛇の体などを射抜かれ天井に固定される。

 ワタナベは集中し全体を横斜めに斬る、すると壁が斜め横にズレて行きアレクが固定された天井は外へ落下し瓦礫の下敷きになる。

「老師!」

「レストオブチェーン。」

 老師は封印の鎖をアレクの入った瓦礫ごとくくり付け封印すると、瓦礫の中からスーゼルの遺体が飛び出して鎖を切ろうとする、それをハセクは見逃さずスーゼルの遺体をアレクの体から斬り離すのだった。

「畜生があああああ!!」

 アレクは瓦礫の中で騒ぎ立てる。

「終わりだアレク、さぁ話せ。」

「なんてな。」

 アレクは自分の体を自切してして蛇の体だけを瓦礫に残す、彼は地中へと潜り姿を消してしまった。

「老師奴はどこへ行った!?」

 キュキュルスは慌てて老師に問う。

「ちょっとまっておれ。」

 老師は杖を地面に突き刺し彼が何処に向かっているか探る。

「王国領じゃな……。」

「なるほど、狙いはラスティーネか……。」

 ハセクは納得が行ったようだ。

「さて、一時休戦と言ったが。どうする?」

 キュキュルスはハセクの処遇を考え始める。

「僕は今日ここで死んだ事にするよ、討伐大隊は解散しこれ以降僕は姿を表だって出さない事にする、ここからは僕単体での行動だ。」

「協力出来ないのか?何も自分一人で背負う必要はないだろ?」

「いや、一人じゃないさ。」

 それだけ言い残すと彼は王国領へ歩みを進めた。


「ニガシテ、ヨカッタノカ?」

「ああ、アレクとかいう奴が吐けばその情報は一気に広まる、ハセクの情報独占はなくなり無理はしなくなると思うんだが……」

 キュキュルスが話していると、後ろからスフィアーネ率いる共和国領の人間達が姿を現す。

「私は統合国共和国領騎士団団長、アグライトだ。ハセク殿が迷惑をかけた、申し訳ない。して、彼は何処に?」

「彼は死んだ、地中に引き摺り込まれてミンチですよ。」

 キュキュルスは適当な嘘をつく。

「そんなまさか……」

 アグライトの顔が曇る、親しい関係なのが分かる。

「アグライト、気を確かに持ちなさい。地中ということはモンスターで?」

 スフィアーネの質問に彼らは答える、そして何処に向かったかも。

「許せん、アレク。」

 アグライトは怒りを露わにした。

「このままではラスティーネが危険です!兵を王国領へ向けてください!」

 共和国領の連中は捕縛した討伐大隊と共に王都へ目指し歩みを進めて行った、老師の通信魔法で王都王宮に危険を知らせる。



 アレクを逃す数十分前、王国領王宮ではラスティーネがロート前王と二人で話をしていた。

「お招きくださり光栄です。」

 ロート前王は頭を下げる。

「頭を上げてください、今でもあなたを王と崇める方もいますでしょう?」

「私は道化ですよ、国民を騙し悪魔根絶の素材として扱ったに過ぎません。現在はシグルスが政権を担っております、我が息子ながらに良くやっている。」

「信頼しているのですね。」

「ええ、それで話とは?」

「現在我々でローザ前王妃を確保していましたが、数日前に何者かによって連れ出されました。」

「本当ですかな?彼女が放たれれば危険です、恐らく悪魔崇拝者団体によるものでしょう。彼らの発端は彼女なのだから、以前資料をもらいました鍵の存在も関係しているかと。」

「鍵……気になりますね。とりあえずこれはどうか内密に……混乱が起きる可能性があります。」

「承知しました、私達の方でも行方を探って行きます。」

「王国領の魔女の拠点及び悪魔崇拝団体の拠点は殆どハセクさんのお陰で減っています、やり方は少々汚いですが闇商人に実験体の子供を売らせて売り先が拠点である事が多いようです。」

「私も手段は選んでいられませんな、何か起きる前に手を打たねば。」 

 話をしていると、扉を叩く音が聞こえる。

「お入りなさい。」

「失礼します。独立国家サリパスの攻略を無事に終えましたがトラブルが幾つか発生しております。」

「トラブル?」

「はい、ダリウス王は死んでおり彼を操っていたと思われる人物が居たとの事です。以前ラスティーネ様に使えてましたアレクが異形になり現在猛スピードでここ王都に迫っております。」

「今すぐ、王都には剣聖隊を配備なさい!オロバス商会の悪魔兵も使い住民の安全の確保に努めるのです、王国領兵士も全身全霊を尽くし守るのです!」

「承知しました、もう一つございます。討伐大隊のハセクさんがアレクによって戦死した模様です。」

「戦死?」

「はい、残念ではありますが……ただ、死体は見つかってなくグランハース領の人間が話しておりました。」

「分かりました……。」

 兵士が部屋を出ると場は静まり返る。

「姫、敵がここに来る前にお逃げを。」

 ロート前王はラスティーネに話す。

「ええ、分かっております。アレクは私が目的でしょう、私が居る限りここを狙って来る。」

「だからと言ってあなたを敵に渡す程我々は愚かでは無いし、望んでもない。」

「そうですわね……。」

「被害を最小限に抑えたいですか?」

「それはもちろん、皆がそう望みます。」

「貴方になら話して良いかもしれない、入って来い。」

 ロート前王が声を出すと扉に誰かが一人入ってくる、フードを深く被り相手に自分の顔を悟られないようにしている。

「最近護衛を雇いましてな、彼一人であればその異形は簡単に倒せるでしょう、王国領の軍は全部国民を守るためにお使いなさい、伏兵もいるかもしれない。常に最悪を考えて動いてください。」

「この方は?」

「貴方の良く知る人物ですよ、私はどちらにせよ悪魔の討伐は諦められないようだ。」

 男はフードを脱ぐと顔を見せる。

「心配かけて申し訳ないです。」

 正体はアルスであり、顔には変な紋様が施されており、目は赤く髪は白いアルビノのような姿になっていた。

「今まで何処に……?」

 急な登場により動揺するラスティーネ。

 彼はヒルブライデと共に姿を消したはずだ、第二大戦が終わり王国領で軟禁状態だったヒルブライデの監視がアルスであり一緒に逃亡したと報告書には書かれた。

「話すと長いです、とりあえず安全な所へ。」

 それだけ話すと直に王国兵士がラスティーネの安全のため部屋を訪れる、アルスは兵士に顔を見せないように立ち回る。

「さぁ、姫行きますよ!貴方を失う訳には行きません!」

 必死に王国兵士がラスティーネを連れて行く。

「ま、待って!なぜ黙って行ったのですか!?」

 アルスに問いかけもその答えは出ない、ラスティーネは兵士に連れて行かれた。

「良いのか?」

「これからは、答えなんて意味を成しません。」

「そうか、生き地獄だったな。」

 アルスはアレクの地中を掘って進む音を感じ取りその場所へ向かって行った。



 五十話に続く……。



 世界設定:キャラクター


 ラスティーネ、彼女は現在、統合国王国領領主王女であり王族の人間である、統合歴2年時点で14歳でありクフラクの二つ下、幼くも王としての素質は持ち合わせており、政策や国民との友好的な付き合いが得意である、母であるスフィアーネよりも現実重視で話合いも大切にしてるが保険をかけて戦いで有利に立ち回せる頭も持っている、差別なく人と接するため悪魔街の悪魔達は彼女を支持している、昔から何不自由なく暮らして来たが、当初は父に当たる国王エヴァンスが乗っ取られてから利用されたり、貴族と結婚されそうになったりと都合のいい存在になっていた、それもあって自由な性格であり同時に好奇心もあるため人懐っこい。趣味は街に出て遊ぶ事。


 読んで頂きありがとうございます、アルスがやっと出て来ました、ここから様々なキャラクターが出てきます、よろしくお願いします。

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