表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/56

第四十八話 小競り合い

 クフラク達は無事に帝国領へ着きニーナ家の領地に入る、現在はニール・フランク・ニーナという御仁が帝国領を管理しており、彼の政策は戦争不参加を掲げている、スフィアーネ女王とも馬が合うらしく、これからの帝国は戦争不参加を話すと快く受け入れてくれたそうだ。

 因みに統合国で戦争不参加を掲げるのは共和国領、グランハース領とここ帝国領ぐらいだ、グランハースは前科持ちのため厳しい扱いを受けている。

 戦争不参加を掲げているが、敵国の侵攻を受ければこの限りでなく、条約の落とし穴であり、どんな規模だろうと防衛目的の戦争に駆り出さなくてはならない。

 

 クフラク達は帝国領ニーナ家の屋敷前で兵士に書状を渡す。

「どうぞお入りください。」

 門が開き中へ案内される、屋敷はアルバートの所と比べると質素で落ち着いている。

 ルミナスの手を引きニーナ家当主の部屋へ訪れる。

「ここまでご苦労、長旅だったろう。」

 彼の印象は普通のおじさんとうい感じだ。

「さて、噂は予々聞いているが。ここ数日の間に統合国はサリパスへ侵攻する。そのため、攻略が終わるまではこの子は私達で保護をする。」

「はい、よろしくお願いします。」

「彼らの目的が分からん以上、この子を外へ出させ危険に晒す訳にはいかん。」

 クフラクもルミナスを守るために帝国領へ留まり護衛する、彼女には謎が多くありその上鍵と言われる悪魔達によって重要な存在である、サリパスが鎮圧されたら王都へ出向きオロバスに話を聞いてみるのも良いだろう。


 ルミナスの部屋を用意したようで、使用人に案内され付いていく。

 使用人の後を付いていくとニーナ家に使える兵士だろうか、向こうからやって来るのが見える。

「お、クフラクか。」

「ああ、ライノックさんでしたっけ。」

 ライノックとは当時全く持って話していない、彼が王都へ来た時クフラクは独房の中だったからだ。

「何でここに?」

「ああ、俺は元々帝国城の兵士な訳だし。今じゃ帝国城は誰にも使われて無くただの物置小屋みたいな存在だ、居場所を無くなった兵士は各貴族が持っている領地へ行って兵士として働いてんだよ。」

「皆んな移動したんですか?」

「皆んなっていうか一部だな、ここ4年で戦いが減って急に財政が良くなったから辞めてく奴も多いみたいだ、相変わらず黒死隊は健在で帝国領に入ってる信仰騎士団と悪魔崇拝団体を狩り尽くしてるから、異端者は帝国に寄り付かないみたいで……」

 ライノックとこんな話をしていると帝国地下街の話になり存在しているものの以前よりも発展し物乞いする人間やのたれ死んでる者が少なくなってるそうだ。


 ライノックと別れルミナスの部屋に到着すると、まぁ普通であり何不自由なく生活できる感じである。

「クフラクあそぼ!」

「ええ……相変わらず元気だな。」

 ルミナスはテレスと違って感情を前に出して伝える感じがする、テレスの時は控えめで言いたい事は言ってた性格だが、それでも相手の顔色を伺う子だったな……。

「じゃあ後で帝都に行ってあそぼうか。」

 でも、許してくれるかな……許可を貰えるといいけど。

 ルミナスは飽き性なので次々と違う遊びを見つける、我慢しろなんて言えるはずはない。


 クフラクはニーナ家の屋敷に残り独立国家サリパス鎮圧まで待つことにした。



 一方ハセクは独立国家サリパスを攻略しており、西からグランハース領の軍が攻めて、南からハセクのいる王国軍と共和国軍領が攻める。

「状況はどうなってるの?」

 ハセクはサリパス領内まで侵攻しており敵拠点を潰しつつダリウス王が居る城まで進む。

「はい、現在グランハース軍は東拠点の七割を攻略し明日には敵の城へ到着するようです。」

「僕達も急がないと、アグライト率いる騎士団とスフィアーネ女王と親衛隊が来るまで七割まで行くぞ。」

「は!」

 グランハース軍とは丁度敵の城前で落ち合う予定になっている、おまけに沿岸沿いにはワタナベの国から兵士を携えて船団がやって来る、実質サリパスは北と南、西を囲まれるため統合国の勝利は揺るぎないものである、イレギュラーが発生しない限りはだが……。


 ハセク率いる大罪悪魔討伐大隊は怒涛の勢いで攻略を進める、ハセク自身が前線に立ちサリパスの兵士を一掃し始めた。

 サリパスの兵士は雷獄と恐れられる人物の存在を改めて知ることになる。


 七割以上の攻略を進めるとハセク達は兵士に休憩を取らせ次に備え始める。

 各々が簡易的なキャンプを作り住民がいない家には勝手ながらお邪魔させてもらう、野営が完成すると今回の成果を語り始める。

「一時間後にまた出発するよ。」

「もう少し休憩を取らせては?兵士は疲弊してますし、このままでは丁度に落ち合いませんよ。」

「いや、先回りしないといけない。」

「どちらにせよ、情報は露呈しますよ?」

「言ったはずだ、苦しむのは僕達だけでいい!」

 ハセクの目は血走っており、顔色も悪かった。

「隊長……まさか悪魔に……。」

「一刻も早く鍵の情報を引き出すんだ!統合国の連中に知れ渡る前に!ダリウス王に早く会って……!!」

「落ち着いてください!」

「はぁ…はぁ…ごめん……。僕はまだ乗っ取られてない、ただ早く決着を付けないといけない。」

「分かりました、あなたの言う通りに兵を動かします。」

 休憩はたったの一時間半と少なかった、兵士は不満を抱きながらもハセクについていった。



 一方グランハース軍の拠点では老師とキュキュルスが王国軍側の情報を聞いていた。

「予定よりも早い侵攻だ、競争じゃないんだぞ!」

 キュキュルスは不満を口にしていた。

「もし、南から攻める王国軍がこのまま進めばサリパスの兵士がこっちに漏れるな。」

 老師は考察しながら話す。

「面倒事を押し付ける気か、ましてやハセク・ハグバルだろ?あの方がこんなことするかね?」

「恐らく、目的はこの絶対的勝利の戦争ではなく我らが落ち合う城にある。」

 老師は的を得るが、なぜそこに向かうのかは理解できなかった。

「はん、こんな城に?」

「書状には王国領に信仰騎士を偽るサリパスの兵士による侵害だ、王国領に何かある訳じゃな?」

「悪いが爺さん、俺たちは首を突っ込めねーぞ。下手に勘繰りさえすればロート前陛下の王妃さんがあぶねーし、経済制裁で圧をかけられちゃー非難は俺達に飛ぶ。大人しくするしかねーんだよ。」

「どちらにせよ、敵兵がこちらに流れ込むのは勘弁じゃ。方便を立てるぞ、ついて来いと言う意味だと思いましたと……。」

「嘘くせー、でも……あながち通りそうだな。」

 グランハースの軍もハセクと歩幅を合わせるように侵攻していく。



 数日後ハセクにとっては都合が悪い状況になった、なぜなら先に王国軍側が着いている筈なのに、丁度待ってましたとグランハースの軍がいるのだから。

 ワタナベの船団も老師の通信魔法で早く来るように無理を言ったらしい。

「ハセク隊長。」

「分かってる。」

 ハセクは一人軍議に出席し広いテントの中にはキュキュルスと老師、ワタナベがいた。

「これはこれは、ハセクさん。お久しぶりですね。」

 共産国領の人間は定期的に会っている、大罪悪魔であるベルゼブブが拠点としていた場所でもあるので討伐大隊からすれば警戒すべき場所だからだ。

「キュキュルス、何を企んでる?」

「何を言ってるんです?僕達はただ貴方の侵攻速度に歩幅を合わせただけ……作戦通りにしたかっただけですよ?」

「本当に?」

「わしらはただ、敵兵の漏れを防ぎたかったんじゃ。兵士が漏れると少数の奇襲が厄介になる、そうじゃろう?」

「確かにそうだね。」

「ニシテハ、ハヤスギダ。ジョウオウノ、メイレイニ、ハンシテルゾ。」

「知られたくない何かがお有りで?」

 キュキュルスは確信を突いてくる。

「お前達に話す事はない。」

「この事、ラスティーネ様及び母君でおられるスフィアーネ陛下に知られたくないでしょう?」

 キュキュルスは脅しにかかる、老師の通信魔法だったら即密告できる。

「それを分かってて密告しないのは何故だ、何が欲しい?」

「アンタの真意だよ。ここ最近アンタの部下がやらかしたそうじゃないか、しかも野党による事故もアンタのハグバル家領地とその周辺で起きている、どちらにせよ内容は王宮へ輸送される馬車なんだよ、賢いアンタが尻尾掴まれるなんて何焦ってんだ?」

 この野党被害が王国領で急に多発したため各国領で警戒されていた、キュキュルスなどの賢い者は不審に思って当然だった。

「勘が良すぎるのも考えもんだ。」

 ハセクが剣を抜くとキュキュルス、老師、ワタナベは戦闘体制に入る。

「乗っ取られてるのう…‥」

 老師はハセクの顔を見ると悪魔に乗っ取られているのが分かった。

「最後まで悩んだ……僕は……ベルフェゴールに託すかどうか……結局僕はいつも人を殺す道を選んでしまう……もう解放されたい……300年も生きてて頭が狂いそうだ。」

「それが……アンタの本心か?」

 どうやらハセクの体は悪魔と共有されてるようだ、闇の魔力が周辺に漂い振動する。

「セッシャニ、マカセヨ!」

 ワタナベが攻撃するとハセクが剣で防ぐ。

「おい、ジジイ!共和国領の連中にこの事伝えろ!」

「そんな場合ではない!爆発するぞ!」

 その瞬間、彼らの居たテントが爆発を起こし大きなクレーターが出来る。



 老師の転移魔法により三人は無事に生還した、ハセクのいる場所から少し離れている。

「何が300年だ!こっちは2000年ぐらい生きてるつーの!」

「心が成長しきれんのじゃ、悪魔に乗っ取られやすい人間の特徴じゃ……。」

「ココロカ……」

「言ってる場合か!もし討伐大隊が城を攻めてダリウス王本人が情報を吐いたら即抹殺だ!生き証人なんて残さねーぞ!」

「今からスフィアーネ陛下に連絡をとる、闇の相手は光にあり。」

 ハセクはベルフェゴールと共に何を背負っているのだろうか、彼らはサタンを倒すために契約を結んだ、それは大陸への平和のためかそれとも己の手に余る屍の山か……。


 独立国家サリパスの城では玉座にてダリウス王が震えながら腰を降ろし天井を見上げていた。

「なぜ……こうなってしまった……」

「それはなダリウス王……アンタの心の弱さにある。」

「お主が現れてから、全てが狂った。妻も娘も全て捧げた挙句、我が兵士を人形のように……」

「黙れ!」

「第一サタン様は未だに姿を現して居られない。貴方がここにいる意味は……」

「この体じゃ表に出れないんだよおおおおお!!」

 天井にはシャンデリアと絵画が施されている筈だが、何かが邪魔して綺麗には見えなかった。

「貴方は何になりたいのですか?そんな体になってまで、話を聞く限り貴方は一階の兵士に過ぎなかったはずだ。」

「俺にその話をするなああああああ!!」

 天井に居る化け物は昔話を持ち込まれ激怒する。

「もし悪魔が人を選ぶなら、既に見限っているのでは?!」

「そんな事はない!サタン様は俺に力をくれたんだ!あんな小僧が選ばれる訳がない!鍵は俺のもんだあああああああ!!」

「その鍵は同時に未来でもある!お前の手によって未来を左右される訳にはいかぬ!」

 ダリウス王は天井に強力な火炎魔法を放つと化け物は蛇の様に避けた。

「貴様!俺に刃向かうか!」

「な?!」

 天井の化け物は右手に剣を持ち左手に槍を持ったハグバルの型を使っていた、槍はダリウス王の胸に入る。

「愚かな人間だ……己の欲に忠実な……」

 ダリウス王は息絶えた。

「何が愚かだ……俺はただ何も無いから欲しいと思っただけだ。鍵を手にいれサタンを殺し、新たな世界を築き上げるまでだ……」

 玉座の間に兵士がバタバタと近づいてくるのが分かる。

「おっと……」

 化け物は天井に身を隠しダリウス王を傀儡化させる。

「陛下!王国軍の大罪悪魔討伐大隊がせめて来ております!」

「今すぐに兵を前面に押し出せ。」

「な、何を……もうこれ以上我が兵力は持ちませんよ、陛下の命令はずっとめちゃくちゃだ!」

「ならば、雷獄だけでも通すが良い。」

「降伏でしょうか?」

「いいや、復讐だ。」

 天井の化け物はその兵士に催眠を掛け何処かへ向かわせた。

 ダリウス王は倒れて死体に戻る。

「なるほど、討伐大隊……」

 化け物は玉座へ蛇のような体を巻き付ける、座った気でいるようだ。

「旧友と再会か……良かったなスーゼルさん……。」

 化け物は己の体に突出している人の上半身を触る。

「アレク様が相手になってやる、魔女に改造されたこの体でな……あの時の借りを返し今度こそラスティーネを抱いてやる。」

 下半身はヘビであり、上半身は人間になっている、背中に人の上半身が生えており焼け爛れていた、見た目は化け物と言うに相応しく、彼の心の醜さを象徴している様だった。



 四十九話に続く……。



 世界設定:キャラクター


 老師、彼に明確な名は知られてないが、魔法研究において様々な成果を収めた様だ、魔法の界隈では有名人らしく、グランハースに立ち寄ったのは闇の魔術が一般に普及していたためである、彼は研究のためなら手段を選ばない人間であり、好奇心を満たすためなら見境ない。とはいえ、人柄は基本良く信頼に厚い。種族は人間であるがエルフよりも長生きらしい、長生きなのは本人も分かっていないようで、最近は日々自分の寿命の研究をしている、天性と闇の魔法はどちらも有してないがトリプルエレメントであり全ての属性が使える。趣味は女漁り。


 読んで頂きありがとうございます。これから話の真相が見えてくると思います、今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ