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第四十七話 囲い

 アルバートの手配した馬車にクフラクが乗り共和国領へ向かう、何事も無ければ良いのだが。

「ルミナス、立つと危ないよ。」

 クフラクは馬車の中で座っており道が悪いのかガタガタ揺れる。

「面白いよ!」

 ルミナス自身この世界に触れるのが楽しいのだろう、色々な事を経験させてあげたいと真摯に思った。

「クフラクさん、もうそろそろ共和国領です。幾つかの村を抜ければ都市と王宮がありますぜ。」

 御者が元気よく話す。

 共和国領はスフィアーネ女王によって以前よりも活気してる、古城は王宮へと改築され周辺は都市となりつつある。

 しばらくすると馬車の動きが止まった。

「ん、どうかしたの?」

「いや、目の前に多くの人が……」

 そう言われ外に出ると大罪悪魔討伐大隊が数十人程と共和国領の手前で待ち構えていた。

「何でここに……?」

 目的は何だろう、明らかに俺たちを待っていたとしか思えない。

「レヴン家の人間はいるか?」

 女性がこちらに来て声を上げるが指揮官だろうか……。

 クフラクとは別の馬車、囚人の乗る馬車からレヴン家の人間が顔を出す。

「私はレヴン家に使える人間ですが、何か用ですか?」

「単刀直入に言う、お前達が預かっている信仰騎士をコチラに預けて欲しい。」

 どうも上からの態度だ、聞いてて快く思わない。

「申し訳ございませんが、主人の命令ですので……アルバート様と話をした上でお願いしたいのですが……。」

「私達は王国領の命令で動いている、それに逆らう気か?」

「王国領の?では、書状はお有りですかな、証拠が無ければお譲り致しかねます。」

「緊急だ、そんな物はない。」

「でございましたら、一旦囚人を共和国領の王宮に渡した後に王国領王都へ向って判断してもよろしいでしょうか?今日の夜にはお渡し出来ますし……。」

「ならん、そんな暇はない!」

「なんか嘘ついてるよね。」

 クフラクは女性の顔を見て嘘に気づく。

「なんだ?子供は出しゃばるな!」

「何が目的なの?理由が分からないからこっちも応答しかねるんだよ。」

「お前達が知る必要など無いわ、これは匿名だ!」

 なんか引っかかるな……彼女達は共和国領へ持って行かれる前に囚人を手に入れたいようだ。

「因みに何ですけど、囚人を預かって何処に輸送する気ですか?」

「それも言えん。」

 もう胡散くさいな、信じるなんて無理だよ。

「クフラク、何を騒いでるの……。」

 外が気になったのかルミナスが出て来たようだ。

「ん?悪魔か……連れ回してどうする気だ。」

「ああ、王都の孤児院で保護してもらいます、ラスティーネ王国領代表でしたら手厚い保護を受けるので、ですが彼女には謎が多いので闇の魔術に詳しいセブラブさんに話を聞こうと共和国領へ向かっていたんです。」

 クフラクは一通り説明した。

「ん、セブラブ殿と面識があるのか?」

「はい、知り合いなんで。こっちも話したので貴方も話してください。」

「お前、名前はなんと言う?」

「クフラク・リ・エバルタ……今は冒険者してます。」

「うむ。」

 女性の顔が険しくなる。

「分かった、お前達はそのまま共和国領へ迎え、私はレヴン家と話を続ける。」

「すいませんが、俺はアルバートさんから仕事として囚人護衛を任されました。貴方達が怪しい以上、俺はここから離れられません。」

「ならば……」

 女性が右手を挙げると悪魔討伐大隊の人間が数十人と俺たちを囲い銃を構え始める、共産国で見たのと同じだ。

「死にたくないなら、大人しくこちらの言うことを聞け。」

「ならば俺も容赦しない。」

 クフラクは銃を構えている討伐大隊一人一人の下に魔法陣を敷く、その中から小刀が飛び出し彼らの銃を破壊し無力化する。

「な?!」

「覚悟しろ。」

 クフラクは魔法陣から模造刀を出すと彼女に斬り掛かった。

 それに対応し彼女も剣を抜きクフラクの攻撃を受け止めた、クフラクの力は凄まじく彼女は剣が折れると同時によろけてしまう。

「クーハ隊長、護衛します!」

 隊員が複数人前に出てクフラクと交戦しようとする。

「やめろ、お前達!」

 彼女が周りに指示をし攻撃の意思が少し弱まった。

「わ、分かった……通るが良い。」

「お前らの目的は何なんだ?」

「まだ、言えない。だが、統合国は修羅の道を辿るだろう。」

 彼女達はそそくさとハグバル家の領地へ行ってしまった。


 クフラクは馬車の中で揺られハセクを思い浮かべる、彼は今何をしているのかと。


 馬車は無事に共和国領へ着き皆は安堵する。

「ほら、着いたよルミナス。ここは共和国領の都市だ。」

 ルミナスの手を引いて王宮へ赴く、セブラブが信仰騎士を偽る謎の勢力を吐かせている間、なぜか王室へ案内された。

「ええ……これは女王陛下……俺になんのようでしょうか……。」

 目の前にはスフィアーネ女王がおり急の出来事に頭の整理がつかなかった。

「呼び出してごめんなさい、第二大戦時は忙しくて労いの言葉すら送れなかったの。」

「え、いや……それだけの為にお礼なんて大丈夫ですよ。お気持ちだけで十分ですし。」

「それだけでなく、貴方は剣聖隊だった頃に親の都合で散々な目に遭ってたでしょ?どちらにせよ私が無力なばかりに迷惑をかけてしまった。」

「でも、封印されていたわけですし……仕方ないですよ。」

 これ以上女王に謝罪されるのは居た堪れない、何とか出来ないか……。

「最近は信仰騎士と悪魔崇拝団体に独立国家サリパスの対処で忙しいですが、貴方に謝罪の気持ちとしてやれる事をしたいのです、何か協力できる事はありませんか?」

 そう言われ、昨日の夢を思い出した。

「以前、屋敷で暮らしていた時にある使用人がいたんです。父は俺を使用人との間に生まれた子供だと……あの人に会いたいとか……」

「その方の名前はお分かりですか?」

「名前は……」

 クフラクは彼女の名前を言う、特徴や使える魔法、覚えてる限りの情報を話した。

「分かりました、私たちの方で探してみます、会えるといいですね。」

「はい……」

 クフラクは真実を知りたかった、ただそれだけである。


 その後、王宮の地下に赴きセブラブとアグライトに出会う。

「なんかセブラブ進化してない?」

 クフラクは疑問をぶつける、彼女はガルムの姿のはずだが人間の姿をしており尻尾と獣の耳をつけてる、パッと見獣人みたいだ。

「はい、進化しました。四足歩行に飽きたので。」

「ええ……。」

「そんな事より、信仰騎士だが……奴らは偽物だったぞ。」

 アグライトが本題に戻してくれた。

「何者ですか?」

「彼らは独立国家の人間だ、サリパスの兵士が信仰騎士団に成り済ましお前が保護してる悪魔を狙ってるみたいだ。」

「ルミナスを?」

「ああ、その悪魔は鍵だと言っている。ただそれだけで本質は誰に聞いても分からなかった。」

「では彼らに指示したのは?」

「王であるダリウスだろう。」

「もし、国家間で彼女が絡んでいるなら王国領へ預けるのは……」

「やめた方が良いかも知れない、どこでその子を狙っているか……」

「セブラブ、ルミナスの事を見てくれない?」

 クフラクはなぜルミナスが狙われるのか手掛かりを得るためセブラブに調べさせてもらった。

「魔力は凄まじいですね、質として上級にある存在。大罪悪魔と同等かそれ以上。」

「ルミナスってそんな凄いの?」

「ええ、彼女が何故鍵と言われるのか分かりませんが、大罪悪魔と関係してるからでしょう。」

「とにかく、狙われないようにしないと。」

「引き続きクフラクがルミナスを保護しよう、帝国で身を隠してはどうだ?」

「帝国で?」

「ああ、ニーナ家に匿ってもらえれば安全だろう。王国領は少なからずサリパスに近い、グランハース領の隣でもある。」

「なるべく距離を置くと?」

「ああ、帝国領では信仰騎士と悪魔崇拝団体は極端に少ないし安全なはずだ。」

 一通り話を終え今後の方針も固まった、クフラク達は帝国に赴きニーナ家に匿ってもらう事にした。


 翌日、クフラク達は再び馬車移動になる、ずっと移動してるな。

 クフラクが中に入り、アグライトが顔を出す。

「お前が探してる使用人だが、カラスが捜索している。」

「良いんですか、これからって時に……サリパスの件もあるでしょ?」

「まだ武力行使を決めた訳じゃない、ウチの女王は争いをなるべく避けるからな。」

「そうですか……ならよろしくお願いします。」

「ああ、任せろ。しかし随分と律儀になったな、独房にいた頃が懐かしい。」

「忘れてください……。」

 アグライトとの会話が終わると馬車を走らせ帝国領へ向かって行った。


 数日後にクフラク達は帝国領に着くが同時にハセクの居る討伐大隊本部でも動きがあった。

 ハセクは休憩がてら外で空気を吸っていた。

「ハセク隊長。」

「どうしたの?」

「女王から報告書が……。」

「戦争かな……」

 中を見ると独立国家サリパス侵攻に伴いハセク率いる大罪悪魔討伐大隊の招集が記されていた、内容は統合国側として参戦する事である。

「あの女王様だったら僕たちを威嚇に使い対話に持っていくだろうね。」

「それともう一つ、これは共産国領王宮にて信仰騎士を名乗る偽物が吐いた情報です。」

 中には彼らの証言が書いてある、セブラブの催眠により洗いざらい話したようだ。

「あの箱の中身は悪魔か……本当に鍵であれば……」

「何か、ご存知で?」

「クーハ隊長の証言では本当にクフラクだったんだよね?」

「はい。」

「なら、箱を壊せたのも納得できるか……。」

「如何なさるおつもりで?」

「サリパス制圧後、帝国領に赴きクフラクが保護している悪魔を拉致する。」

「大胆な行動に出れば、私達はお終いです。クーハ隊長の件でも警告を一回されました、誤魔化すのは苦しいかと。」

「いや、これで最後だ。苦しむのは僕たちだけで良い。」


 ハセクは拳を握り締め何かを誓うように空を眺めた。



 四十八話に続く……。


 世界設定:独立国家サリパス


 統合歴2年時点でこの大陸は一つとなったが、未だに受け入れていない国がある、それは独立国家サリパスの存在であり、統合国は手を焼いている。話し合いを拒否し関わりを遮断するほどに堅牢であるが、彼らは秘密裏にエルスター信仰騎士団を狩って身包みを剥ぎ成り済ましていた、目的はクフラクが保護するルミナスであり、何が目的が現時点では分かっていない。サリパスだが、国柄は意外にも普通であり民主制を取っている、統合国との関わりこそ絶っているが物々の輸出入や他国の国民も害が無ければ通れる。面積は小さいく隣にはグランハースが存在しており当時は弱小国で周りに怯えていた、気候は王国領と変わらず城の近くに海がある、漁業が盛んでもあり国民性は温厚な者が多い。側から見れば厄介ごとは御免だと言わんばかりの立ち回りをしているように見えるそうだ。


 読んで頂きありがとうございます、今同時進行で別の小説も書いています、まだ何処にも掲載していませんが、この作品が最終回を迎え次第、出来てる話はまとめて出して、その後に書きつづけて出来次第投稿する形を取ろうと思います。これからもよろしくお願いします。

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