第三十九話 麻痺の代償
現在、共産国側と帝国側で戦いが行われているが王国の奮戦により徐々に推している、共産国側には城塞都市を砂地に埋めておりそれが姿を表すと、いよいよ本気の激突が始まる予兆であろう、戦いはまだ続きそうだ。
ラスティーネは前共和国から王国へ無事進んでいた。
「姫、ここを抜ければ王都まで少しです。」
林を抜けていくと王都が姿を表していく。
「ドラグ!敵はいないんだな?」
「もちろんよー」
カラス座二人が抜ける道を確認し安全にかつ迅速に対応していた。
王都に着くと軍部管理官が直ぐに出向いてくれた。
「姫!よくご無事で……」
「出迎え感謝します。一体何が……」
ラスティーネが王都に着くと周りの建物は崩壊しており、氷塊も以前よりは小さくなったが大きいまま残っていた。
軍部管理官が状況を説明し、王都で起こった事を全て話した。
ラスティーネは城にある自室に戻るとセブラブと話を始めた。
「セブラブ、私も共産国側に赴いて戦うべきです。」
「えぇ、流石にまずいです。」
それはそうだろう、年はもいかぬ少女で王族なのだから命の危険を犯していく必要などない。
「私のこの力があれば、アルスさん達の城塞都市の攻略は上手く行きます。」
「確かに、女王が姫に教えた術は強力ですし、対悪魔用の魔法である事は存じ上げております、闇に対してチリ一つ残さないのは確実ですけど……」
ここでは話し相手であるセブラブがラスティーネの要望を断らなければならない、王女の命はセブラブの返答次第で決まるも同然だろう。
「じゃあ、何もせず部屋に篭っていろと?」
「ええ、そうでなくては私達が困ります……」
「お母様でさえ戦っていますわ!私は何も出来ないまま部屋に篭って人が死んでいくのなんて私自身許せません。」
「自分の命を守るのも大事な仕事であり使命でしょう。」
セブラブが言いくるめていると、ドアを叩く音が聞こえる。
「よろしいでしょか?ラスティーネ様。」
この声はオロバスだった。
「オロバスさん、ようこそおいで下さいました。」
「ええ、無事で何よりです、心配致しましたぞ。」
オロバスはラスティーネが王都に戻ってきたと聞くなり住処を飛び出して顔を出して来たようだ。
ラスティーネは自分が共産国側に行って貢献したいと言うことをオロバスに相談し始めると、セブラブは頭を抱え出した。
「ほうほう、なるほど。」
オロバスは頷いて聞いていた。
「オロバスさん、協力はしないでくださいね?万一、王女ですよ?」
セブラブはオロバスに釘を刺す。
「魔法を一発だけ撃って後は後退しますから……」
ラスティーネは懇願する。
「確かに、姫が戦場に立ち駒を有利に進めることが出来るなら、市民の支持も上がるでしょう。」
「私は支持率なんて関係なく皆さんの危機を救いたいんです、相手がアンデットなら私の出番ですよ。」
「うーん……」
「姫。」
部屋にカラス座の二人が入ってきた。
「私達はこれより共産国側へ向かいます、あなたはセブラブと軍部管理官殿に悪魔達がついております、余程の事がない限り命の心配はありません。」
「私もついて行っても宜しいでしょうか?」
「無理ですよ、扉の奥からも聞こえてましたが、あなたを連れていくなど無理です。」
キッパリと断られてしまった。
「では、私達はこれで。」
「ま、待って!」
ドアがゆっくりと閉まりラスティーネの声など届かなかった。
落ち込んで、ラスティーネは壊れた都市周辺をぐるぐるし始める、時々兵士が危険ですよと声をかけてくれるが気にはしなかった。
氷塊から免れた所として墓地がある、そこにはテレスの墓が建てられており、ラスティーネはそこを訪れる。
「はぁ、もう一度会いたいな。」
ため息を吐いたところで戻ってはこない、あの時に一緒だったら助かっていたかもと考える。
「私の友達……」
同年代と言える友達だったが、付き合いはほぼ数日だった、それでも意気投合はした、一目でこの人とならずっと一緒に居られると考えたが、結局は叶わなかった。
二度とこうならないよう、誰かを守りたいという気概がラスティーネにはあったのかもしれない。
再びブラブラし始めると兵士達が集まっており共産国側へ出兵する兵士の選定をしていた、遠くには荷馬車がありそこに装備品や食料など戦うのに必要な物を多く載せていた。
『あれに紛れれば……』
ラスティーネは目立たない路地に身を隠し明らかに王族と言える服を脱いで下着になる。
近くにあった、住民が使っていたであろう大袋を頭から被り徐々に荷馬車に近づいていった。
後ろから荷台へ入り身を隠す。
「姫!どこにいますかー。」
セブラブが動き回っているのがわかる。
「王女を探してんのかい?」
「ええ、私が軍部管理官に呼び出されていた間に……」
「犬だから、匂いでわかんじゃね?」
「そ、それです!」
「えぇ……通るのかそれで……」
セブラブは地上に鼻を押し当て匂いを嗅ぎ始める。
「おーい、忘れもんねぇか?」
ラスティーネのいる荷馬車から話し声が聞こえる。
しばらくすると、ガタガタと揺れ始め、移動しているのが分かる。
「んー若干高貴な匂いはするんですけど、ゴミの匂いがするんですよね……」
「なんだそれ。」
「私はしばらくこの匂いを追ってみます、姫の捜索をお願いしますね。」
セブラブは匂いのする方向へ足を進めていった。
しばらく足を進めると決定的とも言える、証拠を確認する、そこには大量の荷物を積んだ荷馬車や兵員を輸送する用の馬車の一団がそこにはあったのだ。
『絶対こん中にいる……』
セブラブは足を進めて匂いを頼りにその馬車を探り当てようとする。
とある荷馬車に目をつけ入って行くと高貴な匂いとゴミの匂いが交わるものを発見する。
『まさか……』
袋を弄り始めると中から下着姿のラスティーネが見えた。
「何やってんですか……」
セブラブの顔は真っ青になる。
「荷物を間違えられて……」
「やばい……バレたら今度こそ殺される……」
「どうしたんだ?あれ、なんでセブラブさんがここに?」
「あ、いえ。荷物に足りない物があったようでその補充を頼まれました、足速いですし私。」
「それは、すいません。ありがたいです。」
「いえいえ、ちなみにですが……王都に戻ることは可能ですか?」
「そんなの無理ですよ、ここまで来て戻ったら納期に間に合わない。」
「ですよねー。」
そう、王都からかなり距離が離れていた、明日には着くそうで、ハセクのいる部隊と丁度合うようにされていた。
しばらく経ちセブラブが載っていた馬車達は目的地へと着く。
「我々、王国から一万の兵士と備品を携えて来ました、よろしくお願いします。」
「おう、よろしく頼むぜ!」
テレスミクロが元気よく返答する。
「でも、結局一万か……もっと欲しいんだけど……」
ハセクが愚痴をこぼす。
「しゃーねーだろ?前の戦いでほとんど死んじまったんだろ?それに数だけが戦いじゃねー。」
「それもそうだけどさ……」
兵士が去った後、セブラブが皆んなに顔を出す。
「あれ、セブラブってここに来る予定あった?」
ハセクは不審に思い始める。
「いや、その……スペシャルゲストと言いますか、なんと言いますか……」
セブラブが口篭っている、なんか懐かしいな。
すると後ろからゴミ袋を頭に被った下着姿のラスティーネが姿を現す。
その姿を見るとライノックとエレス以外は唖然とする。
「死刑ね。」
ハセクが心許ないことを言う。
「ちょ、ちょっと待って下さい!話を聞いて!」
「待つも何も死ぬだけだよ。これは王族を危害に与えると言っても過言じゃない。」
その後、セブラブがペコペコと頭を下げて事の発端を話し始める。
「だったら、馬一つ置くなり、お前が背負って王都に帰れば良かったじゃない。」
「でも、私疲弊してますし、私一人じゃ帰り道を守れるかどうか……」
「しゃーねーだろハセク、来ちまったもんは。」
テレスミクロが仲裁に入る。
「でも、姫は戦いには参加はしないでね。」
「そんな……」
ラスティーネはしゅんとする。
「別にいいんじゃね?ぶっちゃけ敵の数はこちらの倍だ、そんでアンデットを無限のように召喚できるとくれば消耗戦じゃ確実に負ける。」
「だからって死んだらどうすんの?」
「死なないように立ち回るだけだ、てか、天性の魔法を使える魔導士でもこの数は無理だろうし、ハクレとヒルブライデの天性の魔法でもあの数は無理だ、強力なもんがねぇと。」
「では、私も皆さんの力になれるんですね!」
「そうだ、頼むぞ姫様!」
どこまで利用する気なのだろう、本人は気づいてないがテレスミクロという女は底が知れない、戯けているが狡猾な所はあるし悪どい、良いように利用して確実な勝利を手にする事しか考えてないだろう。
「恨むぞテレスミクロ……」
ハセクは唇を噛み締めて小言を溢した。
明日早朝には攻撃を仕掛け、城塞都市の攻略に努める、皆体を休め明日に備えるが自分は少し眠れなかった。
「あれ、ハセクさん起きてたんですか?」
砦近くのテントから出るとハセクが敵の城塞都市を眺めていた。
「ん、ああ……眠れないんだ。」
「悩みでも?」
「いいや、不安なんだ明日が、姫が殺されるんじゃないかと。」
「確かに少し強引に話を持っていきましたね師匠は。」
「だろ?姫に興味を持たせて周りが反論できなくするんだ、そんで最終的には私が今回の作戦指揮者だと言って納得させる、狡猾にも程がある。」
苦い顔をしてハセクは話していた。
「昔から思うのですが、師匠の本当の顔って何なんですかね?」
「それが分かったら苦労しないよ、僕が剣聖になる前からずっと居る。あいつは何なんだろうな。」
幼少の頃より育てられたが、テレスミクロの本当の顔を見た事はなかった、殆どは傭兵になる必要な事しか仕込まれてなかった、プライベートでも素顔という素顔は掴めなかった。
「僕はねアルス、人をもう殺したくないんだ。テレスミクロが人を殺すのを厭わないようになったのはその感覚が麻痺してるとしか思えない、殆どがそうだ、殺しを職業にすれば通る道だからきっと麻痺してる、でも僕は未だに麻痺できないんだ。」
その話を聞いて意外と思った、簡単に殺すという言葉を使った上にちゃんと実行するのに本心では殺したくないと言う。
「意外だろ?でもね、大戦の時からそうなんだ、三百人程の少年兵を焼き殺した時、少し考えた、自分よりも有能な奴を殺した時の未来は本当に明るいかどうか……あの中にクズもいれば優しい奴もいる、世の中に貢献できる人材だっていたはずだ、目指す世界が異なればそれを見てみたいってね。」
「……」
「だからさ、姫に生きててもらいたいんだよ、戦いの道具にせず彼女の母親のように対話で何とかなるなら越したことは無い。」
長話をして夜が明けて来た、クフラクとも似たような話をしたらしく、彼が落ち着いているのはハセクのおかげだ、何よりこれは彼の本心だし、情がある。
戦いが始まればラスティーネが死なないという保証はないし、ハセクが心配するのも分かる、前線に出して戦わせようと考えるテレスミクロは果たして焦りから来るものなのだろうか、それとも死んでも別に良いという勝ちに貪欲になっているだけか……。
四十話に続く……。
世界設定:カラス座メンバー
やっと四人出せたのでおさらいです。
一人目にヘルヘイトス、女性で年齢は24歳でメイドになるのが得意、戦闘能力はあまり無いが豪運でありモンスターの群れに放り込んでも生きてます。
二人目にオーフェンス、彼は24歳とヘルヘイトスと同期である、基本有能で何でも出来るのが特徴、好青年であり戦闘にも心得ある、情報収集がカラス座の中でも得意であり人を尾行したりスリも得意である、元々は盗賊。
三人目はドラグ、彼女?は年齢こそ30代後半に見えるが本人曰く秘密らしい、見た目は少し女装男性ぽいが戦闘能力はカラスで一番優れている、キレると怖い、名前の由来はドラァグクイーンから来てます。
四人目にアシュロン、彼は今回名前は出てないがラスティーネの部屋に訪れて話していた人物である、カラス座をまとめる人間でありコマンダーでもある、基本平均値並の人間だが頭が切れる、そして影が少し薄いのも特徴、年齢は42歳とおっちゃんである。
四人とも有能であり与えられた仕事は死んでもこなす程にアグライトに忠実である、密偵、斥候、暗殺、変装など四人ともその力を持っている。
読んでいただきありがとうございます、キャラクターも充実してきて幅が広がっています、これからもよろしくお願いします。




