第三十八話 無知
キーウィは地下街で気を失うと知らない女性によって介抱された、彼女の願いは地上での生活であり、家族に会いたいとのこと、そもそも彼女は地下街の住人ではないのか?そんな人間が地上に家族なんかいるのか疑問だが、キーウィと共にその場所を訪れようとしていた。
「場所は分かるのか?」
「はい、今でも鮮明に覚えてますよ。」
「約束忘れるなよ。」
キーウィは彼女を地上へ送らせる代わりに水晶玉の譲渡を取引とした、たまたまそのアイテムを持っていたのもあるが、指名手配の身で赤の他人に水晶玉を譲ってくださいなんて無理がある。
地上に出ると兵士の数はかなり減っていた、監視の目も緩くなっているようだ。
「お前、なんで捨てられたんだ?」
「いえ、捨てられた訳では無いみたいです。」
「曖昧だな、わからねぇのか?」
「ええ、急だったので……」
話が全く見えてこないが、足を進めていくとキーウィ自身も体に覚えがあった、当時幼い記憶が少しずつ蘇り始める。
「ここの近くに私の実家がある、懐かしいな。」
「そうなんですね。もしかしたらお隣さんかも。」
周りに気をつけながら足を進めると、目的地についたようだが既視感しかなかった。
「て、おい!ここ私の家じゃねーか!」
「やっぱりそうなんですね。」
そう話すと顔を覆っていた布を全部取ると正体が明るみになる。
「お久しぶりですね、お姉ちゃん。」
「な?!お前今までどこ居たんだよ!私は家に帰れねーし、親はお前を見捨てたんだぞ?!」
「それで、良いんです。結果的に会えましたから。」
キーウィの妹はそのまま実家へ足を踏み入れていく。
「どうしました?一緒に帰りましょう。」
「無理だ、私が帰ってきたって……お前もきっと……」
「私は最後に皆んなと会いたいだけです。分かってくれますか?」
「分からねぇよ!あんなゴミみてーな家に帰るぐらいなら死んだほうがマシだ!!」
扉の前で騒いでいると、キーウィの屋敷から人が顔を出す。
「うるさいですぞ、人様の家の前で騒ぐなど……」
使用人が姿を現すが二人を見て固まってしまう。
「おぉ、なんと見違えましたな……お嬢様方……爺は嬉しゅうございます。」
涙を見せるのは幼少の頃世話になった使用人だ、会うのは何年振りだろう。
「しかし、このような形で会ってしまうなど……」
「お父さんは居ますか?」
キーウィの妹は尋ねるが。
「旦那様は今現在家を留守にしております。」
「親父がか?どこまで身勝手な……」
「怒らず聞いて頂きたい、旦那様も苦悩なさった。いつもお嬢様方に申し訳ない事をしたと口ずさんでおりました。」
爺の案内により、屋敷へと入っていく、キーウィの身も知っており匿うとのこと。
これよりは彼女達の数奇な話に入って行く。
キーウィの家では魔女と密接な関係値を結んでいた、政府も公認しており、彼女達の家は呪い師として戦場に立ち帝国に貢献することである。
ゲルマルクに政権が交代してもこの風習は続いていった、ある時キーウィが生まれるとトリプルエレメントとして生を受ける、属性を三つ持って生まれて来た上魔力も大きく魔法を武器に戦うには最高の人材だった。
そこから二年後に彼女の妹が生まれて来る、名はマーヤと名付けられた、だが無属性であり魔力も全くもってなかった、そこから姉と比較される人生を送ってしまう。
ある時、王国と帝国の大戦が勃発し兵士の招集がかかって来る、黒死隊にいつも通りバルキルウス、オレオンス、ガイストともう一人キーウィの親戚に当たるものが呪い師として隊にいた、だが大戦前に親戚は死んでしまい他に魔力に長けた人間は居ないかと探し始める、その時最も珍しいトリプルエレメント持ちのキーウィに招集がかかってしまう、父親は断固反対したがそれも虚しく娘を戦場に送り届けてしまう。当時6歳で戦場で人を殺すなど許せる訳がなかった、バルキルウスも猛反対し皇帝に直談判すると、掛け合ってくれたのだが、大戦当日に部隊を確認すると6歳の少女が姿を表していた。
ゲルマルクが皇帝になっても少年兵は何故か大戦に参加はするし皇帝と親しい人間達はそれを疑問に思いながらも大戦に参加していた。
一部の人間が子供の軍事利用に加担しているとしか思えなかった、皇帝の目をすり抜け悪い事を平然とやる人間がこの時代には多かった、現在でもそういう人間はいるだろう。
話は戻るが、この頃キーウィは幼少であり、尚且つ帝国は王国に押されている状況である、そん中で前線に立つ黒死隊にいれば嫌でも人を殺さなければ生きられないし、死体も目にしなければならない、我慢はしてきたが限界になって泣くこともしばしばあったそうだ。
そんな中に放り込むのだから性格は捻れていくだろう。
停戦協定が結ばれると、家に帰ってくるがその時に親父嫌いが発動してしまう、自分父親は子供を大切にしない、平気で人殺しの道具にするなど、子供ながらに自分は愛されてないと感じてしまう、そこで父親は見かねてとある島国に留学させたり、服を買ってあげたりと愛情を注いだつもりだった、そんなことをしても軍から抜けれるはずもなく、誰もがキーウィの素質を利用しようと固執するのだ。
まず、国の命令でキーウィは軍に所属すると決められてしまい、彼女の人生は決まったも同然だった。
「なんで、私のやりたいことやらせてくれないの?!」
「仕方ないだろ……国の命令なんだから……従わなかったら……」
「皇帝はそんな人間じゃない!」
「分かっている!そんなこと……」
と、このような喧嘩が毎日続くとキーウィは家を出て帝国城の寮で生活を始める。
「お前は、自分の生きたいようにするんだぞ〜」
妹にその言葉を残し去っていったが、この後にマーヤは魔女の例の実験体として利用されてしまう。
キーウィが家を出て直ぐに魔女が屋敷を訪ねる。
「おお、これはゴメリウス殿いかような……」
「あなたのお嬢さんが必要でして……」
「は?何をなさるおつもりでしょうか?」
「私たちは今とある事に従事しております、大戦が始まる前に人が欠けてしまいまして……その補充として娘さんを……」
「ならん!そんな訳の分からないまま話を進めてどうするつもりだ?!」
「国の命令ですよ。ゲルマルク皇帝の……」
「嘘ばかり言いおって……」
マーヤは言い争いを見て割って入って来てしまう。
「大丈夫お父さん、私大丈夫。」
「何をそんな事……これ以上奴らのいう事を聞かなくても良かろう。」
「どうやら、お嬢さんは無属性で魔力もありません、このままではお偉い方に評価され貴方の家は没落していきますよ?」
「お前らが勝手に評価しているだけだろ?!」
「はて、なんの事やら。証拠もなくそのような事を申すのは聞いているこちらも腹が立ちますね。」
「私お父さんのために頑張りたい。」
「お嬢さんもそう言っておられますよ?」
この時のマーヤの心境は幼く健気であり、いつも頭を抱える父親の助けになりたいと言うのがあった。
実際どのような事をされるかなど二の次だった、これが終われば姉のように留学させたり服を買ってくれたりと期待をしていたのも事実である。
最後の最後まで引き留めたが、最後は催促状を出され、内容には本人の意思を尊重せよと書かれていた、父親はブチギレ未成年の娘に正常な判断などできるかと物に当たり始めるのだった。
キーウィが家に顔を出すと、また父親との口論が始まってしまう。
「はああああ?!マーヤを魔女に預けた?!何考えてんだああああクソ親父!!!!」
当然キーウィは憤り、胸ぐらを掴む。
「く、すまない……私の力が弱いばかりに……」
「マーヤがどうなるか分かってんのか?!死体で帰ってきたらオメー責任取れんのかあああああ!!」
「そうならないよう、お前に探して欲しい……何をされているのか……助けられるなら助けてくれ……」
「ふん!言われなくたって助け出す!お前みたいに直ぐ家族を捨てるような人間に絶対ならないね!」
「ごめんよ……」
キーウィは頭では分かっていた、一応領主だし責任やら何やらあるだろうと……破れば領民に危害が及ぶし屋敷の人間だってどうなるか……だが、こんなにも簡単に渡すなど納得が出来なかった。
それから、地下に潜っては散策を続けるも行方が分からなかった、手がかりも無し、自分の家族を失ったとばかり思ってしまった。
それから程なくしてアルス一行が魔女狩りを始めると魔女団の地下室の実験内容の話を聞いた際小さい穴には子供死体が沢山あったことや実験内容をバルキルスから伝えられた、このことから自分の妹は死んだのだと勝手に確信してしまった。
「まぁ、結局こうして無事に会えたんだ……マーヤ、探し出せなくてごめんな。」
「いえ、仕方ないです。でも結局お父様とは会えないなんて。」
「旦那様は今、反ハルゲン派として戦地におられます、少なくとも帝国では小規模ながら内乱しておりまして……」
内乱か……通りで周りの兵士の少なさに理解した、頭の中にバルキルウス達の会話が流れていたが今は大会議場の制圧だろう、帝国の内側から崩壊させれば少なくとも王国は有利になるはずだ。
「今、親父はどこにいる?」
「申し訳ありませんが、どこで戦っているか分かりかねます……帝都の周りにはゲルマルクの支持者が多い一方で、それを囲むようにハルゲン派がおります、恐らくハルゲン派を支持している領地と戦っているかと……」
「うーんなんとかオレオンスとガイストを解放できればな……」
彼らは現在帝国城に囚われている訳だが、兵士が少ない今なんとかなるんじゃないか?
「爺!私はこれより帝国城へ行って黒死隊のメンバーを解放させる、内側から崩壊を狙って帝国だけでも熱りが冷めたら、親父とマーヤを引き合わせることが出来る!」
「そんな、急に出来る訳ありませんぞ?!帝国城はハルゲン派によって占拠されております。」
「そんなんどうでも良いね。私に勝てる奴なんか居ないし。」
キーウィは早速疲れた体に鞭を打ち動き始める、水晶玉のストックは自室に沢山あった、キーウィが家を出てからも何一つ変わってなかった。
そこからは水晶玉で通信を行うと皆心配していたようで、これからの事を話し始めるのだった。
三十九話に続く……。
世界設定:今現在の進行度
私も話を書いていてこのパートのあっちこっちで戦い始めてしまいましたので一旦整理しようと思います。まず主人公はグランハース側にいます、エドガーが元々いたはずの砦に滞在しています、王国と帝国の国境では帝国に乗っ取られた大会議場を奪取しようとハセクがいますが、主人公側で応援要請を受けたのでバルキルウスに任せて援軍として主人公側に向かって行きます。ここが対共産国側の戦いになります。前共和国ではアグライト達が帝国に連なる山脈に敵拠点がいるので侵攻しています。帝国内部では反ハルゲン派勢力がいて内乱しています、その間にキーウィ達が黒死隊を救出して早く帝国崩壊しないかなーみたいな状態です。なので大きな戦いはこの三つになりますね。
ここからは十九話であったみたいに分かりずらい事などをネタバレしないように書いて行きます。
グランハースはどこに位置しているか:グランハースは王国の西側に位置しています、そもそも王国は大陸の北側に位置していて帝国は南に位置しています。
大陸とこの物語の本質:この世界の大陸ですが、主人公のいる大陸はその一部に過ぎず、気候も様々です。もっと大きい大陸も存在します、主人公のいる大陸では様々な情勢、種族、国が入り混じっておりそんな中で悪魔が居て、なんか戦ってるなーっていう物語です。
テレスは今どうなっているか:王国の墓にいます。
老師はどこに居るか:サキュバスの館で監禁されています。
ドルクはどっちの味方か:今現在は共産国のロート王に従ってます。
ワタナベの国はどこまで発展しているか:戦国時代ぐらいだと思って頂ければ幸いですが、現実だと江戸時代にペリーが来て不平等条約を結んでる訳ですので、全く発展して無い時に結ばれてますから、かなり生活は苦しいと思って頂ければ良いと思います、この頃に銃は既にワタナベの国では伝来しています。
ベルゼブブが人を乗っ取れる条件:マモンは強欲でしたので欲が強くなれば乗っ取れたりと大罪悪魔は基本明確にされてますがベルゼブブは暴食でなんか食えば良いのかと言えば違います。そこは謎になっております。史実だと(※間違ってたらごめんなさい)人に乗っ取りはしませんがこの物語では都合の良いように書いてます。
ベルフェゴールは敵か:どっちにも属さない感じです。
このような形で今後も分かりずらそうな所があれば書いて行きます、よろしくお願いします。




