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第三十七話 下

 テレスミクロ達が行軍を開始しエドガーがいた砦にまで着く、中は空っぽであり何もなかった、彼女達はそこに滞在し敵の様子を探る、幸いその位置からはギリギリ共産国の宮廷がある場所がわかる、宮廷と都市の前に砦があるが何か妙であった。


「どうやら、本当に王国はお三方を退いたようだね。」

 ウッドエルフが裸眼で距離が遠いであろう砦を見つめている。

「あんた、その位置からでも見えるのか?」

 隣に居たドルクが話をかける。

「当然、まぁ目が特殊でね。目に映ってるものは距離に関係なくよく見えるよ。」


 ロート王がウッドエルフのいる砦に足を運んだ。

「おい、キュキュルスここを浮上させる。お前はここに居て敵を射抜け、ドルクは前に出て殲滅せよ。」

「浮上?」

 ドルクは疑問に思った。

「ああ、この砦は城の一部が突出してるだけだ、本体は下に沈んでる。頼むぞ、ローザ!!」

 王妃が後ろから姿を現すと杖を片手に両手を上げ始めた、その後は凄まじい魔力と共に周囲がビリビリし始め地鳴りがなり始める。



 テレスミクロは砦の上でキュキュルスがいる砦を観察しているが。

「ん、なんだ?」

 その頃、こちらでも地鳴りが鳴り始め兵士達が動揺する。

「お前ら落ち着け!攻撃はしてこねぇよ。」

 周りにそう訴えかけていると、宮廷と都市の周りを囲むような城壁が砂地から出没し、キュキュルスのいる砦はさらに伸びていく、最終的に姿を現したのは城塞都市であり、宮廷と都市を守るような形をしている。

「すげーなこれ……はは参ったな。」

 テレスミクロは苦笑いをした。

 規模はかなり大きく出没した城塞都市は住民が利用しそうな建物こそあるが機能しておらず住民も見当たらない。



 ロート王は次々に指示を出して行き守りを固める準備に入る。

「ローザ、お前は例の部屋に入ってろ。無理はするなよ。」

「心配いらんさ、勝手に死にはしない。」

「これより、私はこの城で奴らを迎え撃つ。お前達頼むぞ。」

 ロート王は兵士達に声明し城の中に入って行く。


「ヘルヘイトスとオーフェンスは中を偵察しろ。」

 テレスミクロが彼女達に指示を出す。



 ヘルヘイトス達は城壁内に侵入した、門は硬く閉ざされており開く様子はない。

 中は荒廃しており寂れていた。

「敵はいませんね。」

「まぁ、どっから出てくるか分からねぇよ。」

 ウロウロしていると、闇の魔術が充満し始め辺りが不穏な空気に包まれる。

「これ、闇の魔術ですよ!」

「分かってるよ!でも、範囲が広すぎる……ただもんじゃねぇ!」

『おい、お前達!早くそこから離れろ!』

 テレスミクロの指示で二人は来た道を戻っていくと、様々な所から召喚門が現れスケルトンの群れが溢れ始める。

「急げ、ヘルヘイトス!」

 スケルトンだけではない、白骨化した獣系のモンスターやトロールなどモンスターというモンスターの死骸が辺りに埋め尽くされる、アンデットの部隊を共産国は召喚したのだった。

 なんとか二人は無事に城壁の外に出てテレスミクロのいる砦へ向かうのだった。



 一方キュキュルスは城の高台で二人を見つめていた。

「お前なら射抜けたんじゃないか?」

「もちろん、僕の存在を剣聖隊に知られたら警戒しちゃうよ、その時まで取っておかないと。」



「お前ら、大丈夫か!?」

 テレスミクロは命からがら逃げてきた二人に話をかけた。

「大丈夫ですけど……中にアンデットの群れが……あの数ではこちらはあっという間に潰されますよ?」

 城塞都市には円形になっており王宮と都市を囲む形で浮上してきた、だが、その大きさに見合うほど共産国の兵士は足りてないはずだ、あれらを全域に配置するならどこかに漏れが生じるだろう、そこで恐らくだが補う形でアンデットを配置させたと考えるのが合理的だろう。

 それにしてもあの群れを召喚するにも何百人と闇の魔法を使える人間が必要なはずだ、中には大型のモンスターもいるため強大な闇の力を必要とされるはずだが……。

「そういえば、気になる部屋がありました。以前小さい水晶を宮廷に蒔いたのですが……。その時に一つだけ魔力が変に突出している部屋がありました、魔法陣はどれも同じでした、ならばこれらを召喚しているのは一人ではないかと。」

 オーフェンスが考察して話すが合っているだろうか。

「もしそうだとしても、あの群れを突破して宮廷に入るのは困難だ。着くまえに死ぬだろう、そんで例の部屋にはかなりの兵士が配備されてると考えるべきだ。」

 色々と対策を練っていても打開策が見つからなかった、物量戦を考えても今の王国では足りないし、この中に天性の魔法に分がある姫とか王女を入れるのは危険すぎるだろう、そもそも王族を前に出すなど持っての他だ。

 

 テレスミクロは情報交換のためハセクと話始めていた。

「よお、こっちは王宮目前まで来たが、問題が発生した、そっちはどうだ?」

「こっちは、大会議場の制圧途中だよ。」

 現在ハセクは帝国に占拠された大会議場の奪還と隣にある野営を奪取しようとしていた。

「順調か?」

「まぁね、敵は思ったよりも弱い。黒死隊とかドルクがいないんじゃ話にならないよ。」

「なるほどねー、とりあえず本題だが……」

 テレスミクロは今抱える問題を全て話す。

「いや、やばいでしょ。こっちにはバルキルウスがいるから、何人か兵士を携えてそっちに向かうよ。」

 ハセク側だが、大会議場を奪取次第バルキルウスに任せてテレスミクロのいる砦に向かうようだ。

 ハセクとの通信が終わると今度はスフィアーネのいる前共和国に連絡をとり始めた。

 どうやら、住民同士仲良くやっているらしく、山を越えて帝国兵士の侵入もあったそうだが、アグライトとセブラブがいるのであまり心配はしなかった。

 本当に帝国は弱っているらしく、兵士の消耗しかできていない。

「さて、ある程度の兵力の強化は出来そうだな、でも、勝てるかどうか怪しいもんだぜ。」

 テレスミクロは不安であった、そもそも悪魔の存在がある以上イレギュラーも考えなければならない。

 ハセク達は二日でなんとか着いてみせると話す、そこまで敵は待ってくれるだろうか。



 前共和国で古城のとある一室で身を隠すスフィアーネとラスティーネだが襲われることはなく、大事には至っていない。

「お母様、これでよろしくて?」

「ええ、私達は祈りを意識しなくても天が味方してくれます。」

 魔法を教わっているようで、飲み込みが早いラスティーネはどんどんと覚えていく。

「さっきお母様のお話を聞いてました、対共産国側は苦戦を強いられると……。」

「ええ、でもあなたは気にしないで。私が今教えてるのは戦う術だけどあなたには使って欲しくない。」

 それを言われてもラスティーネは納得はできないようだった。

「私、お母様の言う平和論を否定する訳ではありませんが。しばらく戦いは続きますし対話でなんとかなるものではないと思います。」

「分かっています。でも、諦めず対話を続けなければ終わってしまいます。話し合えばわかる事が多いのです。ロート王だって本音を隠してるだけで話せば分かってくれることがあるはずですよ?」

「そうでしょうか?大会議場の時はスベッてましたわよ。」

「うぐ……痛いところを……」

「でも、信じてみますわ。」

「うぅ、ラスちゃん……」

 親バカ過ぎてなんでも娘の言葉に感化されるようだ。


「陛下!山脈から帝国兵士が降りてきています!今すぐに避難なさってください!」

 アグライトが大慌てで部屋に入る。

「以前のように追い払えないのですか?」

「すでにここは嗅ぎつけれれたようです!ここには留まれないでしょう……」

「ならば、ラスティーネだけでも王都へ行かせて下さい!私はこの国の元統治者です、彼らの象徴でいなければならない。」

「ですが……。」

「お願いします。」

 スフィアーネは深く懇願する。

「分かりました。セブラブ頼めるか?」

「はい、お任せを。」

「残ったカラス二人にも護衛させます、王女の安全を第一に考えます。」

「ありがとう。」

 スフィアーネはセブラブとカラス二人で王都へ避難させるようだ、カラスが安全を確認しセブラブに乗ったラスティーネが一刻でも早く王都に着くように。

 アグライトが部屋を出て、周りの兵士達に話す。

「お前ら、ヒヨッコどもは王女の護衛に付け、敵は大群だ。騎士団と親衛隊兵士の手練れで奴らを駆逐する。」

 アグライトが外に出て陣形を作り帝国の拠点へ赴いていった。

 スフィアーネは古城に残る形になって周りを兵士が固めている、住民も戦えるものは戦うように古城付近に固まり、防衛する。

 古城には守る対象が多く、正直王国の住民多くを収容などもちろん出来ない。

 そのため、戦わない住民は城と敵が対峙している後ろの建物に身を隠すことになる。



 山脈に拠点を構えるのは帝国のエルミ隊という部隊であり、黒死隊よりも劣るがその強さは折り紙つきだった。

「行け!女王と王女の首を取ればこっちのもんだ!」

 帝国兵士達はアグライトの部隊を殲滅するため多くの兵士が降りていく。


「団長!敵の数はあっちが有利ですよ?!」

「怯むな!押し返せ!」

 アグライトが鼓舞すれば敵を押し返そうと兵士達がやる気を見せ始めるのであった。

 相手が山脈で拠点を構える以上下にいるアグライトは不利な立ち回りであった、拠点に近づけば近づくほど矢の雨と投石の餌食になってしまう。

 勝つ確率は非常に少なかった。



 キーウィは地下街のとある小さい建物へ身を移されていた、意識が朦朧とする中頭に人の声が聞こえて、いい夢など見れるはずもなかった。

 彼女は誰かの手によってベッドへ寝かされた、意識がある程度戻っていくとボロ屋敷にいることが少しずつ分かってきた。

「あぁ、なんだここ……」

「あ、起きた。」

 キーウィの前に女性の姿が現れるが、見覚えがなかった、と言うのも全身を隠すような衣服であり顔も布で覆っていたのだ。

「アンタは?」

「ただの、地下住民ですよ。」

「私はすぐに行かないと、色々ありがとうね。」

「待ってください!」

 すると、見知らぬ女性から急に呼び止められてしまう。

「あなた黒死隊のキーウィさんですよね?手配書見ました。ここで動けば暗殺者に狙われてしまいますよ?」

「そしたら私を匿ったアンタもやばいって。」

「お願いがあるんです。私をここから出してください!」

「ここって、地下街をか?」

「はい、私には地上での生活に憧れてまして……お願いします。」

 地下にいる住人は訳ありの連中が多い、地上に出るもんなら避難の対象になってしまう、皇帝がゲルマルクになってからその風潮は落ち着いたが、いまだに老害どもはこれらの風潮を強く根に持ってる、元々は犯罪者やら育てられなくなった子供のため場として設けられたものだ、そこに魔女が住み着いて都合の良いように研究体を漁る始末、彼女達にとって普通の生活は憧れの一つかもしれない。

「今は、戦争中だ!しかも大戦規模の……アンタらみたいな溜まり場の連中が上に出たら怪しまれるだろ?」

 今の状況で地下住民を表に出せばピリついてるハルゲン派の兵士がほっとくはずがない、この子だけではない、地下に住み着くすべての住民に被害が出るだろう。

「そこをなんとか……」

「じゃあ、なんで上に行きたいんだ?」

「家族と顔を合わせたいんです。」

「家族と?」

「はい、私まだ若いですが。もう寿命が……」

 見たところ私よりも二つ三つ下に見えるが、寿命が短い種族なんて聞いたことがない。

「大戦が終わるまで待てないのか?」

「はい、その頃にはとっくに息を引き取る可能性が……」

「あーもう……わかったよ……」

 未熟ながらにその願いをキーウィは聞き入れてしまった。

 彼女達は地上へ出て女性の家族がいるという家まで足を運んで行くのだった。



 三十八話に続く……。



 世界設定:帝国地下街


 帝国には地下街が存在している、ある者は街の発展とともに地下都市と呼称するものもいるがいずれにしても明確な呼び名はない、帝国の歴史背景的に元々は犯罪者や育てきれない子供が多く行き着く、同時に娼婦の街でもあるため捨て子は後を経たないだろう。時代とともに経済が回っていき貧富の差が出始めた、地上と比べれば足もとにも及ばないが、主に潤っていたのは魔女であり、急激に帝国地下街の魔女産業は鰻登りになっていった。だが、王国歴十年時点の魔女狩りによって経済破綻が起き不当な商売も無くなってしまった。現在では魔女の脅威も去り子供の失踪も無くなったが前よりも貧しい人間が増えたのも事実である。



 読んでいただき、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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