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第三十六話 責任

 王国で補給物資を調達したライノック一行はワタナベが居た砦へ戻る、既にその砦は共産国の軍勢と対峙していた。

「かなりの兵力だな、数はあっちの方が上か……」

 テレスミクロは敵の軍勢を見渡し策を練っているようだ。

 白兵戦に持ち込めば勝ち目はまず無い、敵をここまで引き寄せて遠戦に持っていけば勝ち目がありそうだが、どうだろうか。

「ここを奪われちゃあ、王都の侵入を許した事になる、防衛せよ!」

 テレスミクロの指示で砦にいた兵士は敵の大群へ攻撃を仕掛ける。

「アルス、お前も行け。ヤバそうになったらここの砦まで退いてこい。」

「分かりました、ある程度減らして来ます。」

 まだ、ワタナベとの戦いで傷が痛んでおり、ヒルブライデの治癒魔法で何とか傷が閉じてる状態だ。

「ヒルブライデは砦をぐるぐる回ってろ、怪しい奴が居たら斬れ。」

「飽きたら、アルス君の所に行っていい?」

「そうだな……アルスがヤバそうになったら行っても良いぞ。」

 ヒルブライデに指示を出すと、捕縛されているワタナベの縄を砦の突起部分にくくりつける。

「マテ、ナニヲスル?!」

「使える物は使わないとだろ?」



 アルスと兵士達は敵の大軍へ近づき遠距離時には弓を使いある程度接近されたら白兵戦に持ち込んだ。

 ただでさえ兵士の数は少なく王都への援軍と砦に残す兵士を考えれば明らかに王国は不利だった。



「オーフェンスとヘルヘイトスは工作を仕掛けろ、大軍がこっちに来る前に終わらせろ。」

 帰ってきて早々の二人だが休む暇などなかった、彼女達は砦に何かを仕掛けるようだ。

「ヒルブライデ、怪しい奴いたか?」

「いないよ。」

「よし、それじゃあアルスのとこに行って来い。」

 ヒルブライデはその言葉を聞くと信じられない速さで砦を後にした。

「おい、お前達ここを出る準備をしな。」

 全体の兵士に呼びかけ準備を促し始める。



 アルスと兵士達は苦戦を強いられていた、王国の兵士の数は減っていき少数で何とか対抗している。

 アルスの前に武器を持ってない巨漢のオーガが現れる。

「貴様、剣聖だな?」

 話をしているほど暇ではない、自分はオーガに剣を浴びせようとすると剣が体に入った瞬間折れてしまった。

「なぜ?」

「まぁ、まずは付き合え。お互いを知る事こそ勝利へ繋がる。」

 体長二メートルは確実超えてる、そして攻撃がなぜか通らなかった。

「悪いが待ってられないぞ。」

「だろうな……」

 自分は懐に持っていた煙幕を地面に叩きつけ相手の視界を遮らせる。

「おお、おもしれー。」

 背後に回るのはあからさま過ぎるのでそのまま折れた剣で刺突するとまたしても剣は通らなかった。

 おかげで一つ明らかになったのはこれが魔法の類であるといこと、生成魔法だろうか、氷結にしては少し硬く感じる、まいた煙幕が濃すぎて正体が分からなかった。

 一旦距離を取ろうと下がるも相手に体をホールドされてしまった。

「はは、逃さんよ。」

 力強く離れることが難しい。

「グラップラーだ、組み技が得意でね。」

 オーガは抱き抱えた体勢を変え寝技に移す。

「悪いが動くなよ、お前の体が戻せなくなるかもしれん。」

 形は十文字固めで右の方を固められた、無理に抵抗すれば大怪我になる。

 力は強く、右肩辺りが干渉して外れそうな感じがする。

 自分は抵抗虚しく肩を脱臼した。

「さて、次は足だな。」

「テメェえええええええ何してくれんだああああああ!!」

 ブチギレてるヒルブライデが来てくれた、何とか足までは行かずに済みそうだ。

 ヒルブライデにより助けられ、グラップラーとヒルブライデの攻防がはじまった。

 かなり良い勝負をしておりグラップラーが掴もうとすると氷結魔法で牽制し近づけないようにしてる。

『おい、アルス聞こえるか。砦まで後退しろ。』

 テレスミクロからテレパシーで指示を出され周辺の兵士達に呼びかけ交代を始めた。

「あ、おい!まだ、戦いは終わってねぇぞ!」

 急な撤退に驚くグラップラー、そのまま追いかける。



 砦前まで来ると再びテレパシーで砦を奪う前の野営まで来るように指示を出される、野営がある場所を見ると上空に光の玉が見える、あれは天性の魔法でよく戦いでは印であったり合図として使われる場面が多い。


 アルス一行は野営まで退けた。



「おい!!待てぇ!!」

 グラップラーと共産国の兵士達も砦まで迫るがよく見ると砦に人がぶら下がっていた。

「あれ、ワタナベさんじゃねーか?」

 兵士達がザワザワし始める。

「救出するぞ。」

 グラップラーの指示によりワタナベを救出するため兵士達が砦へ侵入していく、中はもぬけの空で何もなかった。

 屋上に向かうと大砲やら何やら重いものがワタナベ付近に集中しており、ワタナベにもかなりの重りが付けられていて、男手二人で引き上げることは不可能だった、おまけに引き上げようにも大砲やら物で溢れており足場が悪いので兵士達を大勢砦の中に入れワタナベを救出しようとした。

「待ってろよーワタナベ!今助けてやる!」

「ンーンー!!」

 ワタナベは猿轡で喋れなかった。

 兵士が多く砦の中に入ると砦がぐらつき始める。

「な、なんだ?!」

 砦はグラップラーの方に倒れていき共産国の兵士達は下敷きになってしまった。



「何とか上手く行ったな。」

 テレスミクロの作戦はアルス達が共産国の軍勢相手に時間を稼ぎその間ヘルヘイトスとオーフェンスで砦がワタナベの吊るされてる方へ崩れさせるよう細工したのだ、細工には二人以外にも砦にいる兵士全員で行った。

 ヒルブライデを砦でウロウロさせたのは共産国の人間がこの事を知っていれば作戦の意味がないので密偵が居ないかどうか探らせていた、結局は居なかったのでそのままアルスの護衛に行かせたのだ。

「てか、肩大丈夫か?」

 アルスに体を前のめりにすよう言って肩を脱力させる、その後上手い事骨の受け皿の位置に戻し直してもらった。

 脱臼した位置にテーピングをして固定するがまた動けば酷くなるだろう。

「うーんこれ以上お前を酷使したらぶっ壊れそうだな。」

 アルスの体はボロボロであり、無理して動くと多分危ない。

「いや、まだ動けますよ。そしてまだ、共産国の兵士を倒しきれてません。」

「ん、ああそうだな。でもお前は次の戦いでも必要だ、それまでは寝てろ。」



 下敷きになった共産国の兵士だが、その殆どは死に大怪我を負う形になった、グラップラーとワタナベは何とか生きており、グラップラーの肉体がワタナベを覆い被さる形で難を逃れた。

「スマヌ、エドガー。」

「いいって事よ。だが、これ以上の行軍は出来ねぇな。」

 兵士の損失はこれ以上できないと考えており、下敷きになって死んだ兵士はともかくまだ息をしている人間は見過ごせないのがエドガーの性分だった。

「だが、この勝負勝ちてぇ……。」

「モウスグ、オウコクカラ、エングンガクルダロウ、カツノハムズカシイ。」

「そうか……」

 虚しい感情がワタナベに伝わる。

「ケガシタヘイシタチハ、ワタシガセキニンヲモッテ、オクリトドケル。」

「エドガーさん一緒に勝ちましょう。」

 兵士達もまたエドガーに厚い信頼を持っていた。

「お前達、良いのか。奴らの援軍が来れば負けるかもしれない。しかも頭までキレてやがる、能無しの俺じゃあお前らを死地に送り届けるようなもんだぞ。」

「それでも、僕達は付いて来ますよ。あなたの願望を実現するために。」

 兵士達は意外にも負け戦に行く覚悟を持ち合わせていた。

「ならば、ワタナベ後は任せた。」

「ギョイ」



 テレスミクロ達は野営から崩れた砦は見つめていた。

「さぁて、後はハクレ達が来るのを待って進行するかな。」

 一人でなんか喋っていた。

「大変です、敵がこちらに攻めて来ます!」

 物見台から兵士が騒ぐ。

「ええ、だるいな。とりあえず、迎え撃つぞ!敵の戦力は消耗しているはずだ!」

 現在、アルスは体を休ませておりヒルブライデは野営の守りにつく。

 テレスミクロを中心に兵を動かし敵と対峙する。


「お前達奴らを血祭りに上げろ!!」

 エドガーが兵士を鼓舞して全体の士気を上げ始めた。

「なるほど、こいつが大将か。」

 テレスミクロはエドガーを発見するとその付近の兵士を斬り殺しながら接近する。

「かかって来い剣聖!」

 テレスミクロは腹部にある短刀を抜きエドガーに当てるが弾き返される。

「なるほど、通りでアルスが勝てねぇ訳だ。」

「こっちだ剣聖!」

 後ろから共産国の兵士が斬りかかる。

「邪魔。」

 後ろなど見ずに剣で斬り殺す。

「お前、変異体だろ?」

「ほう、何故わかった?」

「お前は氷結属だ、だが魔力の変換時に障害を持ってやがる。おそらく氷結じゃなくて銅か何かじゃないか?」

「はは、バレっちまったか。」

 アルスが気づかなかったのはオーガ特有の褐色の肌が銅を生成する際カモフラージュして分からなかったのだ。

「おいおい、認めてどうする。お前の負けだ降伏しろ。」

「そんなもんしねぇよ。勝負はまだ終わってない。」

 ズカズカとテレスミクロに進行し拳で戦ってくる。

 拳を当てる際銅を生成し殴るようだ、彼は武器を持たない理由はただ単に生成魔法が武器の代わりになってくれるからだ。

 テレスミクロは拳を避け続けて拳が銅になった瞬間手で触れると雷撃で攻撃し始める。

 あまりの痛さにエドガーは手を引っ込めてしまった。

「悪いが私の勝ちだ。変換して皮膚に属性が出てる時は体の中に繋がっている、そんな中で電気なんか流されたらどうなるか分かるだろ?」

 テレスミクロに次々と共産国の兵士が襲ってくる。

「エドガーさんから離れろ!!」

「答えは簡単だ。」

 テレスミクロは剣で兵士の腹を突き刺すと雷撃を流し始めた。

 兵士はビリビリと体を痙攣させ皮膚が赤くなっていき水膨れなどが起きる。

「そうだな……まずは体の内側だから内臓系の熱傷もありえるな、神経系の問題もあるし心室細動も起きるだろう。まぁ、死ぬって事だよ。」

 死んだ兵士をポイっと投げてエドガーに見せる。

「こうなりたくなければ、降伏するんだな。」

 周りの兵士達はその姿にビビり散らかす。

「き、貴様よくも!」

 兵士が襲おうとすると今度は火球を投げて火だるまにさせる。

「大人しく言う事きけ、一人ずつ殺していくぞ?」

 エドガーは言葉を失っておりなす術なく俯いていた。

 そこからは殺戮の限りを尽くし付近にいた兵士は全て殺されてしまった、王国兵士の奮闘もありエドガー率いる軍勢は壊滅した。

「殺してくれ……」

 エドガーは何故降伏せず、皆を死なせてしまったのか、彼に付いてきた兵士達は死ぬ覚悟で付いて来た訳でここで引いては彼らの信念を裏切ってしまうと考えたのと同時にテレスミクロと対峙した際自分の死ぬ未来がバカでも分かるほど鮮明であったため撤退と降伏を考えたが彼らの信念と降伏をどっちを取るかで迷ってしまった、絶対的強者を前に怯え、結論が出せず放心状態だったこともあり、気がつけば時間が経っていたのだ。

「殺してくれだぁ?バカ言ってんじゃねーよ!」

「俺のせいだ……」

 その後、テレスミクロはエドガーを利用しようとするが拷問にかけても何も話さないし目がずっと死んでいた、どうやら鬱になっているようで言葉を発しても何を言ってるか分からない、おまけに右腕はテレスミクロの電撃によって神経系が麻痺してるためしばらくは動かせないようだ。



 その後ライノック一行が野営に訪れ、エドガーが居たであろう砦まで進行するのであった。



 共産国王宮ではロート王が頭を悩ませていた。

「おい!老師これはどういうことだ!!」

「申し訳ありません……私は今囚われの身……魔力を探ってみるとエドガーとワタナベは生きておりますがどちらも弱っております。」

 ちなみに老師は魔法に長けているため水晶玉がなくとも通信ができる。

「ええい!剣聖め……ここまでやるとは。」

 その時、老師のいる部屋から扉の叩く音が聞こえる。

「何か物音がしたぞ老師?」

「い、いえ拷問が始まるだけです……お気になさらずに。早いとこ城を浮上させましょう。」

「うむ、そうだなローザ頼めるか?」

「もちろんだ、任せろ。」

 老師の方から低くく気だるい女性の声が聞こえる。

「では、陛下くれぐれもお気を付けて。」

 老師との通信は途切れてしまった。

「私も出るぞ、ローザは城を浮上させた後王宮に残っていろ!」


 これから共産国側はより力を入れて行くようだ、アルス一行は苦難を強いられる。



 三十七話に続く……。



 世界設定:変異体


 この世界には魔法が存在し血液を違う物に変えて生成することができる、普通ならば炎、氷結、雷だが時々、魔力で変換する際異常が出ることがある、今回のエドガーのように氷結ではなく銅を生成してしまうことがある、他にも鉄、金、銀、宝石と様々であり先天性で出て来てしまう事が殆どだ。このような物質を摂る事が難しい場所では変異体の人間を奴隷とし死ぬまで鉄や銅などを生成し続け魔剣に加工する所もあるようだ、一番は酷いもので変異体同士の掛け合わせであり、その変異体の特徴を引き継いだまま生まれてくる確率が非常に高い、そのため近親での交配もあったらしく寿命は短く悲惨な運命を辿るものも少なくない。少なくともエドガーは命の重みを知ってるわけで、テレスミクロとの戦闘は辛いことがあったのではないだろうか。



 読んでいただきありがとうございます。テレスミクロを戦わせましたが少々悪者っぽい感じがしますね。一応最強キャラ的な立ち位置にしています、アルスはその弟子ですがあんまり強すぎないようにしてます。これからもよろしくお願いします。


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