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第三十四話 幻覚

 アルスとヒルブライデは共産国のワタナベという異国人と剣を交えていた、異国人ということもあり、剣の型が独特であった、どのような攻撃をするか予想しずらいのが難点であるが、二人がかりではどうだろう。


「ドウシタ?ソンナモノデハ、ワレハタオセヌ。」

 ワタナベは右手に剣を持ち左手に鞘を逆手で持っていた、二人で攻撃しても防がれてしまう。

「なんか共同作業みたいだね、アルス君。」

「とりあえず、相手に隙を与えないでください。」

 相変わらずヒルブライデはブレなかったが戦力的には心強い。


 ワタナベは逆手に持っていた鞘を順手に持って何かを括り付けた、分銅鎖というらしいが、当たると痛そうだ。

 鞘についた鎖を振り回し牽制を測ってきた、これでは右手に持った真剣と左手に持った鞘に括り付けた分銅鎖で遠近と隙がなくなってしまった。

「間合いが分からない。」

 ヒルブライデでさえ、その隙の無さに驚いていた。

「コナイノカ?」

 ワタナベは距離を少し詰めて分銅鎖を自分に目掛けて放って来た。

 上手く避けはするが、顔を掠った瞬間その威力と飛距離に驚愕した。

 ワタナベは相手が避けるのを予測し間合いを詰めてきた、自分は究極型に切り替えワタナベの右手に持っている真剣を防いでカウンターを入れる、だが、ワタナベは上手くそれを避け今度は分銅鎖を体に巻きつける。

 自分は抵抗するも抜け出せそうにない、モタモタしているとワタナベが再び斬りつけるが、ヒルブライデが間に入って防いでくれる。

「私に任せてね。」

 ヒルブライデはワタナベが持っている鞘から自分に伸びている分銅鎖を持って氷結魔法で凍らせ始める、ワタナベが鞘から手を離せば自分を縛った意味はなくなる。

 ワタナベは鎖を斬って距離を置き始めた。

「ありがとうございます。」

「デート一回。」

「え?」

「私が助けた分だけ、デートして。」

 どうやら、条件付きのようだが、これで勝てるならお安い御用だろう。


「コマッタナ、アンガイヤリオル。」

 相手も困っているようだ、あとは近距離戦に持っていけば。


 アルスとヒルブライデは両側面から挟むように仕掛ける、ワタナベは気を研ぎ澄まし何処から来るか探っている。

 同時に攻撃を仕掛けると二人の攻撃をワタナベは案の定防ぐ、そのまま反撃に移り、ワタナベの真剣がアルスの体に入ってしまう。

 アルスの使う型はエルシドのためバランス系であり、ワタナベの猛攻では速さについて行けず攻撃を喰らってしまう。

 だが、ここで気づいたのは先程、重装兵が真っ二つに切れたのと違い剣の攻撃に当たってもそれほど深くないということだ、真っ二つに切ったときはワタナベは真剣を両手で持っており、左手を軸に持ち手の下の方を握って振っていた、だが、今持っているのは右手で防いでいる時は持ち手の上を持っており、明らかに殺そうと剣を振る時は下の方を持って思いっきり振っていた、どちらにしても右手で持っている以上は威力が落ちていることが分かった。


 再びアルスは剣を交えるが今度は究極型の状態で入り込み剣を振るう、ドルクの同じ戦法で斬り掛かるとワタナベが反撃してきた、右手で大きく振ってくるので腕を狙うとワタナベはそれを感じとり直ぐに後ろへ引いた。

「ヨク、アテタ。」

 ワタナベの右腕を見ると微かに切り傷が見える。

 それと同時にワタナベが居た砦も制圧されていた。

「砦は奪いました、大人しく降伏を。」

「ワカッタ、コウフクシヨウ。」

 やけに聞き分けが良い、何かあるのだろうか?


 その後ここに来たテレスミクロ達によってワタナベは拘束される。


「ワタナベさんはどうするんです?」

「こいつを人質に次の砦で交渉する。」

「コウショウデキルトイイナ。」

「何、人ごとみてーに言ってんだ。」


「それじゃあ、私はここに残って次の案を練る、お前らは王国へ急ぎ無くなった酒を持ってこい。」

 テレスミクロは兵士に指示を出すと、ワタナベが話を始める。

「モウオウコクヘモドルノカ?」

「お、どうした?何かあるのか?」

 テレスミクロは何か怪しいと睨み始めた時、ここに来る予定だったヘルヘイトス達が砦に訪れる。

「大変ですよ!大軍が王国に向かってます!」

「なるほど、ここは囮な訳だ。」



 王国、王都では共産国で老師と言われる魔法使いが赴いていた、彼は魔法学会でも有名であり数々の賞を獲得する名誉ある魔法使いであった。

「老師、無事王都に着きましたね。」

「ああ、今頃ワタナベの砦は王国によって奪取されただろう、奴らがこっちに戻って来た時、元々ワシらのいるはずだった砦からエドガー率いる軍勢で奪取された砦を奪い返す作戦じゃ。」

「上手いこと行きましたね。」

「これからが問題じゃ。」

 老師は空に大きい火の玉を作り出す。

「聞こえるかー!今直ぐにでも王国を渡さなければ街を破壊するぞー!」



 王国王城では将軍として指揮する軍部管理官が空を見上げていた。

「将軍!!敵はここ王都を焼け野原にする気ですよ!!」

 ここで兵士を送るなら問答無用で火の玉を放つだろう、話し合いに応じて時間を稼ぐか、将軍は悩んでいた。


「返答なしか……」

 老師は火の玉を落とそうとした時、真下の道が割れ共産国の兵士達が下に落ちる。

「なんじゃ?!」

 上空にあった火の玉も闇の魔術によって消されてしまった。

「ここにいるのは王国兵士だけとお思いかな?」

 割れた道からフードを被ったオロバスが顔を出し悪魔がゾロゾロと出てくる。

「ラスティーネ様によって我々の安全は保証された。今こそ、その恩に報いる時!我々オロバス商会がこの王国を守って見せましょう!」

 ちょうど老師の下は地下街の建設途中場所だったらしく、オロバス達が故意に破壊したようだ。

「ふざけおって、お前達、悪魔を倒すのだ!」

 王都の中心では共産国と悪魔が戦いを始めた。


「将軍!どうやら地下で大人しくしていた悪魔達が止めてくれたようです、オロバス商会と名乗っておりまして……。」

「オロバス商会?なんだか分からんが協力的か?」

「はい、悪魔の方から協力を申し出て来まして。」

「なら、協力し共産国の侵攻を止めよ!」

「は!」



 王国にライノックとエレス、ハクレが向かっているが、彼らが着く頃には老師達はどうなっているだろうか。



 ハセク達はゲトー要塞で帝国の出方を伺っていた。

「ハセクさんが警告したら一歩も動かなくなりましたね。」

「ああ、中には少年兵時代の人間もいるだろう、当時を思えば踏みとどまる奴もいるってことさ。」

 当時少年兵だったアルスもゲトー要塞攻略に参加しておりハセクの強さは帝国でも危険視されている、魔法だけで三百人の少年兵を焼き殺したなど眉唾物だと跳ね返す者もいたが、当時居合わせた人間からすれば派兵先にハセクが居たなど恐怖でしかない。

「敵が攻めてきたら、ハセクさんの魔法で殲滅できますよね?」

「できるけど、他に伏兵がいたら参るかも。」

「魔力の消費が激しいんでしたっけ?もし何かあれば私達で対処しますよ。」

「ありがとう、頼りにしてるよ。」

 ハセクの雷雲は属性魔法に位置している、生成魔法でもあるため自分の血液が消費されるが、強力な一発は消費が激しい、以前はそのせいでルビウスに敗北している。



「聞こえるか、雷獄!!我々帝国の人間は貴様に復讐しに来た!!」

 帝国兵士は拡張音声石というマジックアイテムを使い遠くにいるハセクに訴える。

「なんか言ってるな。」

 他人事のようにハセクは口ずさんだ。

「私達は十二年前の兵士、仲間の仇を討たせてもらう!」

 外をよく見ればアルスと同じぐらいの年齢の兵士がポツポツといる。


「お前らじゃ話にならないよ。」

 ハセクは帝国兵士に警告するが、彼らは聞き受けてくれないようだった、何か秘策があるのか。

「連れて来い!」

 帝国兵士が見慣れた人物をハセクに見せる。

「さぁ、仲間までは撃てまい!大人しく要塞を渡せ。」

 見せて来た人物はバルキルウス本人だった、拘束されており拷問を受けたのかかなりボロボロだった。

「汚い手を……」

 バルキルウスは遠くにいるハセクを見つめ覚悟を決めたのか撃っても構わないと意思表示をしてきた。

 ハセクの落雷は強力であり、撃ってしまえばバルキルウス諸共焼け野原と化すだろう。

「クフラク、敵が中に入ってきたらお前が中心になって戦ってくれ。絶対ここを取られるなよ?」

「俺を信用するんですか?」

「もちろん、僕は君から奪った信用を取り戻すことを約束するよ。」

 今まで口すら聞いてくれなかったが、事情を説明しある程度納得してもらってもクフラクはハセクへの疑心は変わらなかった、再び信じてもらえるようにハセクはクフラクを頼ってみることにした。


 ハセクは要塞の堅牢な扉を開けるように命令し、敵を招き入れるように指示を出す。

「敵が入って来たら、迷わず殺して良いや、その間にバルキルウスを救出する。」

「一人で行く気ですか?」

「もちろん。」

 ハセクには謎の自信があり、王国兵士達はそれを信用することにした。


 扉を開けると、帝国兵士がそれを確認し行軍を開始する。

 進行部隊の後ろに待機している部隊が見える、そこにはバルキルウスがいるようでバレずに救出は可能だろうか。


 進行部隊が要塞前に着くと上から矢の雨が襲いかかる、帝国兵士達はそそくさと要塞の中に入っていくが、そこには王国の兵士達で囲まれており、外に出ようものなら弓矢の餌食になり中では王国兵士達による攻撃が待っている。


「王国は攻撃したようです。」

「愚かだな、雷獄め……情すらないか。」

 当時帝国の少年兵だった者がバルキルウスの処刑を命ずる。

 処刑人はバルキルウスの首を狙ってデカい剣を落とすと横にいたバルキルウスの監視に剣を落とした。

「な、何をする!」

 横にいた監視員は首を見事に飛ばされた。

「様子がおかしい……」

 周りを見渡すと闇の魔術が充満していた。

 兵士が次々と発狂し騒ぎ始める、仲間同士斬り合いが始まり地獄と化していた。

「これじゃあ、要塞の攻略はできないね?」

 そこにはハセクが居た、ここまで気づかれず後列の部隊まで足を進めていたことになる。

「いつの間に……?」

「最近僕も悪魔と仲が良くてね、その一例だよ。」

「またしても、地獄を見せる気か!!」

 当時少年兵だった、帝国兵士は剣を抜きハセクに襲いかかる、だが解放されたバルキルウスに行手を阻まれる。

「あなたも、何故?!帝国を裏切る?!」

「裏切ったわけではない、このままでは帝国の未来がないからだ。」


 異変に気づいた、さらに後ろの帝国の部隊もこちらに向かってきた。

「悪いけど、死んでもらうよ。」

「お前ら、逃げろおおおおおお!!」

 その時、大きな落雷が後ろの部隊に当たり壊滅した。

 雷雲は晴れて行き、戦いの終わりを告げるようだった。



 ハセクはベルフェゴールから幻術を教わり、己の姿を敵に認知されないようにした、バルキルウスの所に着いたら相手に幻を見せ気を狂わせたり、標的を変えたりと同士討ちをさせた。

 とはいえ、かなりギリギリだったらしく急いで走ったので運動の苦手なハセクには厳しかったそうだ。


 要塞内には敵が多く入り込んではいたが、最終的には全員中に入って行き袋のネズミ状態だった、クフラクを筆頭に敵を倒し、戦闘不能者が多くなった時に降伏してきたようだ。

 クフラクの戦闘能力は凄まじく強かった、サタンの恩恵があるため魔力が強大すぎるのと身体的にも普通の人間とは違うようだ。


 死んでいった帝国兵士はゲトー要塞にいる兵士達で埋葬するようだ、死体の数に驚かされる。


「それで、バルキルウス。他はどうしたんだい?」

「キーウィだけ逃げています、私とドルクさんで一計を案じました。」

 話を聞くと、スフィアーネ一行が大会議場を訪れる前にキーウィだけでも逃さないと通信魔法が使えないのとドルクが王国と繋がってる事が知れれば領民は間違いなく父親によって殺されてしまう、ドルクは黒死隊を反逆者としてハルゲン公爵に報告し実際に黒死隊のバルキルウス、オレオンス、ガイストの三人とガチで戦い拘束し独房へぶち込んだそうだ、ある程度信頼を得ることができたためハルゲン公爵はドルクを疑うことはしなかったそうだ、オレオンスとガイストは何処に捕まっているか分からないし、キーウィもどこにいるのか分からない。

「最近キーウィと連絡が取れないんだけど、心辺りある?」

「そうなんですか?一体何が……。」



 謎が深まるばかりだが、キーウィは現在帝国の地下街で身を隠していた。

「腹が減った……」

 帝国の外に出ようとしても兵士に見つかってしまう、地下街であれば兵士の数は少なく見つかる危険性はない。

「ここにも張り紙が……」

 キーウィは現在、反逆者として指名手配犯になっている懸賞金もかなりの額だった。

「お金もないし、お腹もすいたし、髪はべとべとだし……オシャレしたいけど目立っちゃうし……」

 文句を垂れ流しながら彷徨っていた。

 急にバルキルウスから逃げろとだけ伝えられ、ドルクさんと戦闘になった、あの人だったら私だけ狙うのは簡単なのに、大方予想はつくが私がいないと通信魔法が使えないからだろう。

 時々頭に王国の人の声が流れてくる、その時は強制的に能力が発動されている、私があげた水晶玉にはそのような効果がある。

 そのため、通信が終わった後にはヘトヘトで三時間勉強した後みたいなダルいマインドになる。

 だから、同時に三つと通信は難しく一対一じゃないと私が壊れてしまう。

「てか、ここ水晶玉売ってないなー。二年前の魔女狩り以降、不便かも……。」

 今の私は王国と通信が出来ない、何故なら水晶玉を落として割れてしまったからだ。

 水晶玉がなくても通信はできるが、あまりに遠すぎる、距離が近ければここに居るってわかるけど、遠くじゃどこに居るか分かんないし、水晶玉を経由してここだよーって感じとれないと通信できない、しばらくホウレンソウしてないからハセクさん達に迷惑かけちゃってる。


 ウロウロしていると、疲れて来きて一目の付かないところで倒れてしまった、頭の中で声が聞こえる、恐らくグランハースであった事を王国に伝えてるようだ。

「寝れるかチクショー!!」

 頭が痛くなってキレてしまった。

「あ、やばい……」

 意識が薄れていき目の前がぼやけて来た、おやすみなさい。



 誰もいない路地裏にフードを深く被った女性が現れる。

「お姉ちゃん?」



 様々な数奇な出会いの中、大きく歴史が動こうとしていた、勝つのは王国か共産国か……。



 三十五話に続く……。



 世界設定:キャラクター


 キーウィ、彼女は黒死隊の一人であり、貴族出身でもある。あるとき島国に留学しギャル文化を会得したそうだ、そのため水晶玉にシールをペタペタと貼っており、呪い師の格好こそしているがちょっとハイカラな感じも否めない、この大陸では少し珍しい見た目をしているようだ。貴族出身のため良いとこのお嬢様だが、喋り方は砕けており誰とでも仲良く愛想がとても良い。帝国城には彼女のファンがかなり多く男性にモテる。そんな彼女だが、黒死隊ということもあって幼くして大戦に参加していた、その時はバルキルウスの後ろをついて回っていたこともあり、バルキルウスととても仲が良い。戦闘能力はかなり高く、帝国一の魔法使いでもある。趣味はネイルやら買い物やら女子らしいことをしている。年齢は王国歴12年時点で18歳とライノックの一つ下。



 読んでいただきありがとうございます。最近は別の作品を作ろうか迷っています。もちろん、この作品が終わりに近づき次第投稿も考えています、今後ともよろしくお願いします。

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