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第三十二話 誓い

 ロート王が話した悲劇とは、道中ドルクは疑問を投げ、その答えが返ってくる。

「ここでは話せん、私の乗る馬車で話そう。」

 ロート王はドルクを馬車まで案内する。


 馬車まで案内され話が始まる、彼の過去と悪魔との確執を。


 それは約二十年以上も前になる、ロート王が王子で十二の頃だ、この頃帝国ではゲルマルクが皇帝になる前でもあり、帝国の圧倒的な軍事支配に他国が怯えていた時期でもあった。

 共和国では国民から統治権を選ぶが生まれながらに天性の呪文が付与されるスフィアーネの親族にそれが渡った時期にもなる。

 そんな変化がある中でロート王子はごく普通の生活を送る王族ではあったが、ある時を境に生活は変わってしまう。


 帝国歴2949年頃、軍事国家と名乗る前のグランハースは平和主義を唱える国であった、それは人種は関係なく受け入れ、闇の魔術や天性の魔法にさえ交わる、自分の信じるものを尊重する国である。

 だが、このような国は身を滅ばすだろう、闇と天性では天性の魔法に分があるので闇の魔術の保有者は皆弾圧を受けることになる、人種では年齢に差がある、人間は皆不利だろう、エルフ程長生きで知恵をつけるのは愚か、オーガやドワーフのように力がある訳でもない。

 では、潰し合わず平和を貫けたのはなぜか、それはロート王の父親にあった、住民に闇の呪文を付与させて監視させる、これは現在でも行われていることで闇の呪文を付与する契約の際、法律に反する行動、つまりは住民による不適切な殺人、窃盗などが発覚すれば共産国の兵士がそこに駆けつけ取り締まる仕組みだ、犯罪以外でも戦闘以外で職がある住民は規定通りの労働をしているかでさえ見ている。

 共産国の戦闘以外に職のある人物は皆同じ給料で生活している、中には怠けたり働かない者もいるため監視という面で闇の呪文を付与する、因みにだが規定の売り上げを超えれば超えた分だけ自分の収益になる。

 闇の呪文だが皆魔女から契約をしているグランハースで魔女は行政にも関わっており住民の管理をしている、皆勤勉で職務を全うする、社会的にもしっかりした人材を使っている。

 では、魔女の契約者は誰なのかとなるがそれこそ悪魔である。


 ここまで話をして天性の呪文をもつ者はどう対処するのか気になるだろう、正直現在に至るまで、その問題は解決していなかった。

 そこでロート王の父は魔女を介して闇と天性の混合は可能か話を持ちかけた、そこには悲惨な扱いを受ける身寄りのない子供の屍の山をロート王の父は知らなかった。

 この実験は各国の魔女を通じて行われ何十年と屍を築いて、やっとヒルブライデの代で成功を納めた、成功体は全部で三体、ヒルブライデは被験体3号になる。

 2号は子供のエルフだが1号の行方はまだ分かっていない。

 

 話は戻ってロート王になるが、彼には妹が居た、当時グランハースは悪魔にも寛容でなんでも受け入れた。

 王族であっても悪魔と契約はする、国民だけがやって王族はやらないとなると反感を受ける恐れがあったためである。

 だが、契約を受ける悪魔が悪かった、その悪魔はベルゼブブであり、サタンの部下にあたるという。

 サタンはロート王の考えた闇と天性の混合に目を付けそこから本格的に動きを見せた、そこからの犠牲は想像に難くないだろう。


 なぜ、サタンがその混合に目を付けたのか分からないがロート王の父曰くサタンといくつかの仲間達は堕天使だったと聞く、それらと関係があると話していた。

 

 当時ロート王は妹と仲が良く国でも有名であった、それは国民にも良い印象を受け平和な感情を植え付けるほどに。

 

 ロート王はベルゼブブとの契約を直に受けその力を有している、当時は子供でこれが戦いの道具にしようとは思いもしなかった。


 ある時、帝国から宰相がやってきて宣戦布告を言い渡された、宰相の名はルビウスと言い年も取っていた。

 この時ロート王の父はその宣戦布告を無視して戦わない事を宣言した、この時ルビウスはあっさりと承諾し自国へ戻っていったが、ロート王の妹が拉致されていた。

 どうやって拉致していたのか分からなかった、護衛は十分だったし戦力だって他の兵士と比べて強い者が多かった。

 その後、ルビウスから書簡が届き、妹を人質に帝国との戦いを飲めとのことだった。

 ロート王の父はそれを承諾し帝国と戦争をした、結果は意外にもグランハースが勝利し帝国は敗走して行った。

 この時、ロート王の父はゲルマルクの父を瀕死にし、まともに生活できないような体にした、その後生まれてくるゲルマルクに政権を交代し戦争による侵略は無くなった。

 

 程なくして、人質だったロート王の妹は帰ってきたが、いつも通りで皆驚いたという。

 ロート王はこれまで通り平和な生活を送るが、この後悲惨ものを眼にする。

 ロート王が夜眠れず、王宮の外に出た時だった、玉座の間が騒がしく扉を開けると言い合いが聞こえてきた。

「なぜ、娘をそのような事に使うのです!?」

「お互いの為だ、わかるだろ?」

「ならば、私が代わりに引き受けます!お願いだ、娘だけは!!」

「お前は賢い、私がお前を乗っ取るのは難しい。現に帝国と戦って勝っているのだから。」

 ロート王は扉を開け中に入る。

「何してるの?」

「来るな!お前はあっちに行ってろ!」

 ロート王の父は涙していた。

「おお、これは良いとこに来たな、妹の最後ぐらい見届けたいだろう。」

 言い合っていたのは妹と父だった、妹の喋り方に違和感があった、八歳とは思えない口ぶりで大人びていた。

「ルビウス頼むぞ。」

 その時、ルビウスが転移魔法で姿を現す。

 ルビウスの手に持っていたのはエルスター教のシンボルである十字架であった、ルビウスは何やら呟き、妹に何かを付与する。

 妹から浄化煙が立ち込め皮膚がただれ落ちる、目は充血していき口や鼻、下からも血が流れ始める。

「ふむ、熱い。体を乗っ取ってもこれではな、だが、良いデータになる。」

「では、ゴメリウスに?」

「ああ、頼む。」

 その後、ルビウスは転移していき姿を消した。

「あああああ、熱いいいいい!!」

 妹が我に戻り、自我を取り戻した、ベルゼブブは乗っ取っていた体を放棄し姿を消した。

 その後、従者や母が駆けつけ皆で妹が死なないよう立ち回ったが死からは免れなかった。

 母は自暴自棄になり、父はその責任感から自殺した、悪魔はロート王から家族を奪っていったのだ。


「なぜ、私から全て奪っていったんですか?」

 ロート王は暗い部屋で呟く。

「辛いか?私はただ、サタンの言う事を聞いただけさ。」

「サタン?」

「ああ、全ての悪魔を統べる王だ。彼を倒せば悲劇は無くなるだろう。」

「悪魔か……お前もサタンも全て倒せば……」

 暗い部屋でベルゼブブと話したのはこれで最後だった。

 そこからは政権がロート王に移り軍事国家を名乗るようになった、この軍事国家は悪魔を倒すためという意味が含まれる。

 そのため、悪魔に対抗するためには力をつけねばならない、そのため軍事で他国や領地を攻め拡大していった。

 最初はエルフの森でウッドエルフを麾下に置いた。

 どんどんと領地を広げ、従わなければ武力を持って制し自国にした、70代に差し掛かった頃にワタナベのいる島国に行き不平等条約を結ぶ。

 ロート王は他国が悪魔に支配され悲惨な利用をされるぐらいだったら支配して救うという考え方だった。

 悪魔の脅威は共産、王国、帝国しか今は分からない、知らない方が幸せだと言うように悪魔は徹底的に駆除することをロート王は誓うのであった。

 闇と天性の混合は悪魔に対抗する最大の武器となる、悪魔が利用する前に利用してやろうと考えている。

 使える物は全部使う、手段は選ばない、悲劇は自分だけで十分、人同士の殺し合いなど甘えにすぎないと考えた。


 これが、ロート王の過去と悪魔との確執であった。

「これがロート王あなたの?」

 ドルクは過去の話を聞いて驚愕した。

「どうだ?私も過激派だろう。だが、時が遅くては意味などない。」

「確かに、あっちは待ってませんね。早いとこ手を打たないと。」

「ラスティーネ姫を見ていると私の妹を思い出すよ。まさに平和な……だが、悪魔との関係は切って頂けねばなるまい、彼らは非情だ。」

「ロート王、本当に話し合いでなんとかならないので?」

「今、ここで肩を担げば大罪悪魔に私の国は支配される可能性がある、皆闇の魔術を受けているのだ、どこで見ているか。」

「呪いですね。」

「ああ、これは呪いだ。私の国は民も皆、奴らに支配されてるようなものだ。」


「陛下、そろそろ最初の砦に着きますよ。」

 大会議場で護衛していたウッドエルフが砦の到着を知らせる。

「ワタナベ、お前はここで敵を迎え撃て。」

「ムカイウツ?キシュウデハ?」

「私の王宮にネズミがいる、老師が発見したようだ。」



 王宮では、ヘルヘイトスが潜入していた、急にオーフェンスから連絡が取れなくなり王宮でメイドとして潜入していた。

「ん、お前が捕虜の給餌を?」

「はい!ロート陛下に承りました!」

「にわかに信じられんな、てか、見たことねーよお前!!」

「ええ、ひどいです……ぐすんぐすん……」

「わ、悪かったって、一番奥の独房にいるから行ってこい。」

「ありがとうございます!!」


 パタパタとオーフェンスのいる独房へ向かって行く。

「大丈夫ですかオーフェンスさん。」

「ああ、痛めつけられたがなんとかな……」

「とりあえず、手錠を外しますね。」

 オーフェンスは殴られた跡が多くあった首を見ると焼き印があってグランハースの囚人であることが示される。

「おい、通信でこのことを伝えてくれ。」

「それが、通信できないんです。」

「まさか、キーウィさんが……」

「いいえ、一応声は届いているんですが、届いている場所が違うんです。」

「マジックジャミングか、厄介だ。」

 ヘルヘイトスが外に通ずる柵窓を慎重に切っていく。

「時間がねぇ、どいてろ。」

 オーフェンスが口から差し歯を抜いて壁に無理やりねじ込む。

 すると、爆破し壁が吹き飛ぶ。

「独房からだ!!」

 共産国の兵士がオーフェンス達の場所に向かって行く。

「よし!出るぞ!!」

 カラス座の二人は急いで外に出て行った。



 王宮では、老師と呼ばれる魔法使いが通信魔法でロート王に伝える。

「陛下、ネズミがもう一匹いたようです。気づけぬ申し訳ない。」

「いや、良い。王国も一枚上手だっただけだ。」

「これでは奇襲は上手く行きませんな、そろそろ私のマジックジャミング圏外に出ます。」

「お前は、ハーヴンと共に第二防衛ラインで待機していろ、戦争だ。」

「仰せのままに。」


「キュキュラスはドルクと共に最終防衛ラインで待機していろ。」

「はいはい。」



 これから、王国は両国との戦いに入る。

 彼らに待ち受けるのは大規模な大戦であった……。



 三十三話に続く……。



 世界設定:悪魔窓口


 グランハースでは闇の魔術の契約があるが、その殆どは魔女から契約されている、その魔女達にもルーツがあり、儀式をしても悪魔からの恩恵であることに変わりはない、魔女は多くの悪魔と契約しているため、国民は好きな悪魔を選ぶことができる、悪魔から魔女へ魔女から国民へとなっている。悪魔にもさまざまな能力があるため自分にあった能力を使える。ただ、上位の悪魔との契約は難しく特に大罪悪魔は選り好みをするため難しい。下位の悪魔と契約している者がグランハースでは多い。




 読んで頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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