第三十一話 王の器
三国大会議場まではあと少しで着く、夕方には着いて各国の主要人物が揃い次第開始する。
「皆さん、あれを見てくだい!!」
御者が驚いたように声を上げる。
そこには、大会議場が見えるが、何よりも簡易的に作られた野営が見えた、古城の時より小さいがしっかりして出来が良かった。
帝国の赤い旗が見えるので帝国の野営地でることが分かる。
大会議場の隣に作られており、貴族が出入りしていた。
自分達も外に出て女王や各貴族、行政府を中に入れる。
「見ろよ、王国の兵士ってこれだけなのか。」
「随分とやられたんじゃないか?少ないのも納得できるだろ?」
帝国兵士の私語が聞こえる、話振りから察するに最低限の武力を持っての防衛の話は帝国の一般兵士には届いてないのかもしれない。
それにしても規模が大きい、戦いをしますよと言わんばかりの提示だ。
しばらくすると、共産国側もやって来たが、兵士の数があまりに多い、もし両国がグルであればこっちに剣聖がいようともあっという間にやられるだろう。
各国のお偉い方は中に入って行き、最低限の兵士を携えて大会議場の中に足を運んで行く。
自分も護衛として、中に入っていくと、いくつか扉があり控室やら全員で使える休憩室など色々な部屋が存在する、ただ、大戦の名残でそこら辺に傷が目立つようだが、ある程度修繕されているようだ。
中央には大きな両扉があり、中に入ると椅子が多く王族用のエリアと貴族用のエリアがある、記録専用の場所も設けており書きやすそうなテーブルだ。
入り口から見て前方に王国のエリアがあり両側面に向かい合うように共産国と帝国のエリアがある、中央に空きがありそこには記録員や進行役の席など色々な用途があるようだ。
やはり三国というだけあってその広さに驚く、各々が席に着きいよいよ始まろうとしていた。
ライノック達は王国の兵士のフリをして外で待機していた、馬車の中で待つ者や他国の兵士と話したりと各々が好きな行動をとっていた。
「エレスさん、ちょっと帝国の同期と話をしたいんですが、いいですか?」
「んーいいんでしょうか……わからないですけど、いいんじゃないですか?」
「あざす!!よし、行こうぜ!!」
「おい、流石にまずいだろ、怒られっちまう!」
ライノックは強引に友人を巻き込み帝国側に引き摺り込んだ。
「おーい!!お前ら久しぶりだな!!」
「だー!!声でけーつうの!!」
焦る友人、苦労が絶えなそうだ。
「おい、あれライノックじゃねーか?」
「お、まじか生きてたか。」
帝国兵士はライノックの存在に気づく、距離をつめ話を始めるのだった。
「おい、お前こんなとこに来てんじゃーねーよ!」
「挨拶ぐらいいいだろ?」
「バカか、俺たちがここに派兵された時、反ハルゲン派の黒死隊が幽閉されたんだよ!!今度はお前達を探してんだ、俺達は大人しく従うだけだからなんともねーが反ハルゲン派の貴族やら、よく目立つ兵士は脅威として排除されるんだとよ。」
「え、バルキルウスさん達が?」
「手も足も出なかったと、どうやら檻に入れたのはドルクさんみたいだぜ。」
「師匠が……」
「だから、こんなとこに居たらヤベーのよ……どこで見られてるか、わからねぇから早く戻れって。」
同期として友達のよしみで見逃してくれたようだ、ライノック達は大人しく自分の陣地に戻って行った。
会議場では、いよいよ本題に入ろうとしている、席は段々になっておりそれぞれの顔が分かりやすい、自分はテレスミクロと共に主に女王と王女の側を離れないようにする。
進行はアグライトがやってくれるが、これから王国の議題が始まるので進行している、これが共産国や帝国による議題が始まれば各国の進行役が前に出て進行する仕組みだ。
「では、早速議題に移らせて頂きます。まず、共産国による属国に従わなければ侵略を開始する件ですが、女王陛下は属国には従わず武力による争いもしないとのことです。これについて、女王陛下よりお話頂きます、よろしくお願い致します。」
スフィアーネ女王陛下は立ち上がり発言をする。
「まずは各国の皆様ご足労頂き感謝します、十日程前に共産国からこのような文をいただきました。」
女王陛下は共産国から来た書簡の説明に入る、内容には侵略がいつなのか明確に記されておらず理由すら書いていないこと、これらを踏まえて共産国の王に聞く。
「失礼。少し直接的でしたな、私はただ王国との和平への道に進みたいだけですよ、素直に聞けば悪いようにはしませんし、政策の変更やら改宗やら大変でしょう、ですのでそれらには関与致しません、ただそちらの剣聖の力を少し貸して頂きたい。」
軍事国家グランハース共産国の王であるロート王だが、彼が王になってから軍事国家及び共産国になった、他国に侵略し領土を広げ魔女とも仲が良く、国は多宗教で寛容な方ではある。
「なぜ、剣聖が必要なのでしょう?確かに歴々の国王は剣聖を戦争の道具にしましたが私の代でそれはなくします。」
「戦わずして平和がありますかな?あなたの理想論は素晴らしい、ですがそんな未来は来ませんよ誰が望もうともね、私はあなたに変わって正しい使い方をするに過ぎません、最近物騒でしょう?悪魔やら何やらと、あなたは武力で対抗できない人間だ、王国の民は死んだようなモノですよ。」
「私の国を守ると?信じられませんね、本当の事をお話願いますか?」
「信じていただけぬか、確かに私の目的は別にありますが、守るという面では本音ですよ?」
「それが分からぬ限りは譲れません。」
「強情ですな、多少嘘でも聞き分けが良くなくては王の器に相応しくはない。あなたは純粋すぎる、聞けば封印されていたとか……まだ、二十代の身で良く国を支えてらっしゃる。」
「あなたにそのような事を唱えられたくありません。」
「無礼だぞ、さっきから王に向かって。恥を知れ!」
「良い、まだ若いのだ。彼女は良く国を支えている、私を警戒するのも仕方ないだろう。」
ロート王の隣にいるのはローザ王妃で魔法に長けているらしい見た目は若く綺麗な印象を受ける。
「恐らく、これ以上話してもあなたは心を開いて下さらないだろう。次の議題へ行かれてはどうだろうか?」
「話はまだ、終わっていません。王国への侵攻をどうしても取りやめて頂きたい!」
「なら、しばらくは手を出しませんよ。」
ロート王の話は最もな気がする話し方も上手いし、はぐらかしても説得力があった、王としてのカリスマ性が垣間見える。
「では、次の議題ですが、帝国において鉱物資源の使い方や共産国との関係をお教え願えますでしょうか。」
アグライトが再び進行を開始する。
「では、私から。帝国の鉱物資源の殆どは私ハルゲン公爵の領地からでております、他の領地からも出ておりますが、それらは私達で買取をし、まとめて他国へ輸出し売り上げた分を鉱物資源を買い取った領地に分配しております。使い方ですが、主に鉱物は帝国内にて武器などを作る鍛冶屋に入れております、もちろん王国、共産国と輸出していますがそれだけで、使い方など分かっておりません。」
ハルゲン公爵はそのように話すが本当だろうか。
「では、これの存在もご存知でしょうか?」
女王はアグライトに銃を持って来るように指示をする。
「こちら共産国で出回っている銃という武器です、大砲と同じ仕組みだとか、この武器には帝国の鉱物がよく使われています、ちょうど共産国が王国に侵攻するという時期にこのような武器が大量に量産されるのは都合が良すぎると考えています。」
「私が共産国と共に王国に侵攻しようとでも?いささか考えすぎではなかろうか?」
「聞けばあなたの息子、ドルクさんから私の父は共産国とベッタリだとお聞きしましたよ。」
「はは、全く面白いハッタリですな。なぁドルク?」
高笑いをし、後ろにドルクが居たようだが気が付かなかった。
「はい、私はそのようなことは一言も発しておりません。」
ドルクがそのように話すが少し様子が変だった表情が曇っており、不安そうなのが伺える。
「そういう事だ、もう少し捻りを加えるべきでしたな。」
結局、スフィアーネの発言は全て不発に終わった、共産国は真の目的があるらしいがそれが分からぬままで帝国においては共産国とのグルを認めないままで鉱石の使い方すら改めなかった。
「さて、あらかた議会も終わりですな、王国の使者であるオーフェンス殿をお返ししたかったが、移動中山賊の襲撃で死んでしまってね。これは少しばかりの損害賠償金と戦闘用のマジックアイテムだ、どうか自国を守るために使ってくれ、足りないだろうがそれはまた、後日支給しよう。我々の不得だ……どうか許して欲しい。」
ロート王から謝罪されたが、本当にオーフェンスは山賊による襲撃で死んだのだろうか、口封じとしか思えなかった、彼は共産国の王宮で何を見たのだろうか。
因みに、ラスティーネの悪魔街での出来ことだが伏せることにした、この状況で各国に飲み込んでもらうのは危険と判断したのと、悪魔との共生についての話まで持って行けなかったのが原因だ。
議会が終わると席を立って外に出る者が多くなる、自分達もラスティーネとスフィアーネを外まで連れて行く、女王の顔は晴れなかった。
すると、向かいからドルクがやってきた。
「テレスミクロ、久しぶりだな。」
「ああ?さっきと全然印象違うじゃねーか。」
確かに暗い印象はなくいつも通りだった。
「スフィアーネ女王陛下、この度はご期待に添えなく申し訳ない、このままでは我が領民は見せしめとして殺されてしまう、どうか許して欲しい。」
ドルクは女王陛下に頭を下げ謝罪する。
「大丈夫です、己の民を守るのは当然ですので。」
「ありがたきお言葉、このご恩は忘れません。」
ドルクはゲルマルク皇帝の近衛騎士だ忠誠心は皇帝にあるわけで、その婚約予定だったスフィアーネに忠誠があるようだ、皇帝の願いは叶いはしなかったが少なくとも皇帝の思い女の助けになりたいようだった。
「あなたも良くゲルマルクに仕えていました、彼もきっとあなたのような信頼できる人に巡り会えて幸せだったと思いますよ。」
「そうですか……あの方であればそうでしょう……。」
ドルクは少し涙ぐんでいた。
「悪いなアルス、大人気なく泣いちまった。」
「いえ、あまり気にしてませんよ。」
「女王陛下、恐らく近々で大戦と言える戦いが再び起きようとしています、共産国の狙いは分かりませんが、もう対話ではどうすることも出来ません。属国になるか、もし自分の平和を押し切るなら戦ってください。あなたの考えを私は尊重し続けます。」
「そうですか……ありがとうドルク。」
女王は悲しそうに語る。
「そういうことだ、次会う時は敵かもなアルス。」
ドルクはその場をすぐ後にした。
後々聞くことになるが、ドルクは王国に寝返ることは難しく王国との通信がバレた際ハルゲンから自領の民を一人ずつ殺すと言われたそうだ、そしてハルゲンの首を刎ねれば共産国が帝国に攻め込むとの事だ。
彼は八方塞がりで大人しく従うことしか出来なかった。
ドルクが外に出ると直ぐに帝国の野営地に入った、そこにはハルゲンとロート王一行がいた。
「遅かったなドルク、何をしていた。」
「何にもねーよ。」
「さて、ドルク殿も来たことですし、本題に入ってもよろしいかな?」
「ええ、ロート王。して、本題とは。」
「率直に少しの間ドルク殿を貸して頂きたい。」
「ドルクをですか?それはなぜ?」
「三日後王国に奇襲をかける、私はそのまま王宮に戻るが臣下はそのままここに来る道中に建ててる砦に配備させる、ドルク殿はグランハースの少し前の砦で滞在させ最終防衛ラインの護衛を務めてもらう。」
「奇襲って、ロート王いささか気を急ぎすぎでは?!」
ドルクが食いつく。
「黙れドルク!ロート王申し訳ない、口が過ぎたような真似を……」
「構わんさ、そうなるのは当然だとも。帝国もゲトー要塞前まで進めておいてくれ、侵略せよ。」
「仰せのままに……。」
ハルゲンは深々と頭を下げた。
「では、ドルク殿。私達と共に来い、大丈夫だスフィアーネ女王に忠誠しているのはわかっている、お前に直接手をかける訳ではない。」
ドルクはロート王と共に帝国の野営を離れる。
「さて、ワタナベ。ラスティーネ姫はどうだ?」
「マチガイナク、アクマノ、ニオイガ……ココ、スウジツノアイダニ、アッテイルカト……。」
「やはりな、ならば救わねば。これ以上悲劇を生むわけにいかない。」
「悲劇とは、ロート王?」
ドルクは疑問を口にする。
「今から君は私と共に戦う仲間だ、ならば話そう。」
これから、ドルクはロート王の真の目的を知ることになる、ロート王はなぜ王国に侵略するのか……。
三十二話に続く……。
世界設定:キャラクターと獣人について
ワタナベ、彼は獣人で目が見えない、名前の通りこの世界の人間ではなくとある島国の住人だ。剣の腕をロート王に買われ、臣下となっている、目が見えないため文字が読めず、言語を覚えるにも相手の口の動きが分からないため、上手く話せずカタコトになっている、それと彼は獣人の中でも顔付きが獣そのものであり口元が獣と変わらないこともあって発音にも問題がある。エレスは顔付きこそ人間だが、耳が獣で尻尾が付いていたりと可愛い見た目だが、このように人間さを残していればソフトビーストと言われる、反対にワタナベのような獣人はフルビーストと名付けられる、獣人にもそれぞれ人間と獣の比率が各々異なっており、遺伝子が人間と変わらないため染色体の数も変わらない、そのため交配する際、耳や尻尾、目など獣人の方が優れているため優先的にそっちが引き継がれることが多い。もちろん例外もあり、獣人と人間で交配しても完全にフルビーストで生まれるものや、そのまま人間で生まれることもある。基本的にはエレスのような目と耳そして尻尾のついた感じで生まれることが多い。今後獣人について掘り下げる機会があるので注目してほしい。
読んで頂きありがとうございます。物語もこのパートは終盤に近づいています。最終話まではまだ、書く内容があるので気長に見てもらえると幸いです。これからもよろしくお願いします。




