第二十七話 予兆
現在、王国は共産国及びそれと手を組んでる可能性がある、帝国を警戒している。
王国は監禁中のヒルブライデとクフラクを解放しようと考える。
帝国はライノック一行を派遣し通信水晶を届けるため王国に向かう。
各々の状況が分からない今、大きい動きは禁物だ。
「ライノック、そろそろ王都だ。てか、剣聖隊施設って王城の隣らしいな。」
「え、そうなの?」
二人は王都に行ったことがなく、剣聖隊の施設が分からない。
二人は王都に入っていき、付近を見渡す。
「うわ、こりゃ酷いな……。」
帝国兵士が声を出すが、城壁内に入って外側はそんなにも建物の損傷は酷くは無かった。
しかし、先に進むと建物の倒壊、焼かれた木造建築や時々死体などを目にする事が多くあった。
それは王都全体の中心だけが酷い損傷をしており、明らかにその真上に魔界の扉があった事がわかる。
「にしても、闇の魔力が……微かだが、感じるな……」
「ああ……あそことかな。」
ライノックは指を指すが、その先は路地裏で、悪魔が布で体全体を覆っている者や、倒壊した建物の下で日の光を警戒する者もいた。
「比較的、王城付近は復興の兆しが見えるが、そこから離れた場所は手をつけれねぇのか……」
王城に近づいていくと、ある程度の出店や改修された建物を見かける、死体は一切なく、小綺麗な状態だった。
「まぁ、王都だしな……かなり広い。ここ数日で全部は上手くいかねぇだろうよ。」
二人は近くの人に剣聖隊施設の場所を聞いてそこに向かっていった。
ライノックが施設まで赴き、扉の前に立つ。
「何か用?」
後ろから、ハセクが顔を出すが。
「ああ、剣聖隊の方ですね?俺……いや、私はライノックという帝国兵士です。ドルクさんの指示でこの水晶を……」
ライラックはハセクの剣聖隊の制服を見て本題に切り出す。
「ああ、やっぱり。帝国も勢力が分かれているな……。」
「ええ、そのようです。」
ここからは、ライノックの隣にいる兵士が帝国の状況を伝えた。
「ドルクは自由に動けないんだ……」
ハセクは理解したかのように頷く。
「ハルゲン侯爵が共産国とベッタリでして。ドルクさん一人の行動で、帝国に関係のない人を巻き込むわけにはいかないと……」
「あれ、ライノック?」
ちょうど、アルス一行が帰国した。
アルスの肌は微妙に日焼けしており、以前会った時よりも印象がだいぶ違った。
「あ、アルスさん!先の戦いではお世話になりました!」
「いいよ、自分が担当したのは古城だし、直接は関わってない。」
「アルス、共産国はどうだった?」
ハセクが話す。
「これと言って情報は特に……ただ、兵士は王国と一悶着あると感じているようでして……」
アルスは共産国で得た情報を話す。
「なるほど……とりあえず客人も来てるし、中に入ろう。」
アルスは数日振りに剣聖隊の施設に入る、久々の空気に触れた。
「アルス先輩!」
「エレス……怪我は?」
急なエレスの登場に驚きが優ってしまい、体を気にするアルス。
「心配ご無用です!復活しましたから!」
元気に答えてはいるが、どこか無理をしていないかと心配してしまう。
彼女はこう見えて脳筋かつ単純だが、役に立とうと無理をすることがある、アルスはそこを一番気にしていた。
「無理はしないでね。」
それだけ伝えて、テレスミクロやハクレにも顔を出す、テレスミクロは日焼けした顔を見られバカ笑いしていた。
その後続々と今回共産国に派遣されたカラス座の二人とセブラブそして上司であるアグライトが顔を出していく。
「さっさくですがこれを見てください。」
オーフェンスが机にボンと見慣れない物を置く。
「何これ?」
ライノックが不思議と質問する。
「これは銃と言うらしいです……共産国で出回ってまして、兵士にも支給されているようですよ。大砲と同じ原理で火薬の爆発を利用するそうです。」
「大砲と同じか……じゃあ一発ずつしか撃てないんだ?」
ハセクが質問する。
「ええ、殺傷能力や飛距離は弓に勝りますが、一発しか撃てないのと装填に時間がかかるようです、雨天時には火薬が濡れて不発に終わることもあるとか。」
共産国内では銃が出回っていた、(※マスケット銃を想像していただければ幸いです。)重量もあるし先端が重いので狙いが中々定まらないようだ。
「おい、ライノックこの金属……」
「ああ、帝国のかも……」
彼らの会話を聞いている限り帝国の鉱物資源の使われ方はこの銃のだった。
「こんなん作っても、まだ私達は戦えるさ。だが、一番厄介なのはこの銃のデメリットがなくなった時だな……その前に叩くか。」
テレスミクロが提案する。
「あー悪いが女王陛下は対話を望んでいらっしゃる。」
アグライトがそう話すが。
「あ?そんなん通用しないだろ?」
「私は陛下の近衛騎士になった、彼の方のご意志はなるべく尊重したいし戦いもなるべく避けたい。とはいえ今後の王国の未来は陛下次第だが……。」
「あのなぁ、もし仮に戦わずに対話で済んだとしてあっちが何もしない訳ないだろ?」
「条件がありそうだよね……。」
ハセクも否定的な意見を出す。
「いや、それはそう……。」
アグライトもぐうの音もでないようだった。
「気持ちはわかるけどさ……血を流さずして平和があると思うのかい?しかもこの状況で。」
ハセクが追い打ちをかける。
「私も同意見だ、1000年以上生きてきたが、どの歴史を見ても時代の変わり目は戦争だったぞ。」
年長者の話には妙に説得力があった。
何だろう、とてもギスギスしている。
ライノック達は下を向いて触れないようにしてるし、ハクレとエレスは何とかしようとオロオロしていた。
セブラブとカラス座の二人はこうなるだろうと予測していたのか肝が据わっている。
その時。
「ご飯食べに行きましょう!!長旅でお腹すいちゃって!王国で有名な食べ物教えてくださいよ、たまには外の空気吸わないと!ね?」
ライノックがギスギスした空間を見かねて喋ってくれた。
以前ドルクさんが言っていたが「ちとバカだがいい奴だよ。」と……それが何となく理解できた。
「確かに、陛下の事も尊重するべきだね。ごめんねアグライト。」
ハセクが察してアグライトに謝る。
「いえ、そんな……」
アグライトが少し申し訳なさそうにする。
「あー私も悪かった、大人気なかったわ。」
師匠も恥ずかしながら反省していたようだ。
まぁ、側から見れば年下に理詰めで詰めてるようなものだったからそう感じたのだろう。
自分はライノックと共に王国周辺をブラついていた。
ハクレとエレスは二人で別の所へ行ったようだがどこに行ったのだろう。
テレスミクロとハセクそしてアグライトは水晶玉で帝国と話をするようだ、あの三人に休息は来るのだろうか。
「ライノック、さっきはありがとうね。」
「いえいえ、これぐらいやらせて下さい。」
自分はライノックに感謝を述べたが、実質あの空気感に割って入る程自分は強くはなかった。
「そういえば、ドルクさんは元気にしてる?」
「それなんですが、前みたいな気さくな感じがなくて……ずっと悩んでるような。」
ライノックは不安そうに語る。
「多分、父親であるハルゲン公爵の息子だからって言うのが大きいでしょうね。」
隣に居た帝国兵士が話す。
仕事とは関係の無い話も交えながら、外でご飯を食べた。
ライノックとその帝国兵士のことや自分の身の上話が多かったが楽しかった。
今度はみんなで来たいとも思う程に。
しばらくして、剣聖隊の施設に入ると例の三人が険しい顔をしていた。
話を聞くと、帝国の状況をバルキルウスから聞かされ、情報の共有に成功したようだ。
ただ、ライノック達が帝国に出た際ドルクが急に姿をくらましたそうで、現在のハルゲン公爵の反勢力は黒死隊と皇帝と親しかった貴族や兵士及び騎士がそれにあたる。
一番気掛かりなのはドルクの行方だが、急にいなくなるとは誰も予測はできなかったようで、バルキルウス達も困っているそうだ。
ハルゲン公爵の仕業が高いがこの場合バルキルウス達が何をしているのかが明るみになっているのは明白だ。
次に誰がいなくなるか分からない訳で唯一水晶玉を使って通信魔法が使えるキーウィだけは守るとのこと。
自分はこの都合の良さに寒気を感じた。
話を聞いてみると三国大会議館での対話を行う日程を決めたらしく、書簡を両国に出すとのことだ。
その際、スフィアーネの護衛にアグライトさんと剣聖隊の誰かが護衛に入るとのこと。
そして、カラス座の一人が水晶玉をグランハースに持って行き、そこでも情報の交換を行いたいそうだが、距離もあるしおまけに三つを介して通信魔法を使うのはキーウィには負担しかなく、頭痛や眩暈を起こしやすく危険になる。
そのため、通信は二つで行うことを前提にしこれから計画を進めるそうだ。
帝国には馬車で丸一日、近くの商人とかに書簡をお願いして反ハルゲン派の兵士に上手いこと渡して貰えば早いだろう。
問題は共産国だが、王国の使者として行けばとりあえずは怪しまれないだろうし、その使いを誰にするかだが。
「私の部下にやらせる、ついでに通信士の役割も行かせれば良かろう。」
アグライトは提案する。
使者であれば顔が割れる危険もある、そしてそのまま滞在させるのは怪しまれるので二人行かせるようだ。
「ヘルヘイトス、帰国してそうそう悪いがお願いする。滞在して通信士の仕事をしてくれ。」
アグライトが指示する。
「お前もだ、オーフェンス。お前は使者として共産国の王宮へ赴き書簡を出せ。」
「はい。」
「あと、宮廷に入ったらコレを使ってくれ。」
アグライトが出したのは小さい水晶玉だった、王都に悪魔が侵攻した際キーウィが偵察用として空に投げた水晶玉がいくつか残されていた、コレを介してキーウィに共産国の王宮の中を調べさせるようだ。
残ったカラス座の二人だが、彼らは三国大会議館の偵察に行き前もって罠が仕掛けられてないかを調べるらしい、それが分かったら王国の人が中を掃除し各国の人を招き入れる準備をするそうだ。
王国がそう計画した数日後……。
一方グランハースのとある一室では、とある四人が集まっていた。
彼らは圧倒的な力を持ちグランハースが武力的な象徴を位置付ける者達である。
「そろそろ、デカイ戦争が始まるぞ。」
「この戦に勝てばあんたの国も解放されるな?」
「ワカラナイ、コノクニハ、ムジヒダ……スクイハナイ。」
「そう、心配せんでも、わしが王に説明しようかの。」
彼らのいる部屋から一人の男が出てくる。
「おい、ワタナベそしてリルド……これから、三国大会議場に行く。お前らは私の護衛だ頼むぞ。」
彼らは幾つかの兵士を連れ王国と帝国の国境へ向かうのであった。
二十八話に続く……。
世界設定:水晶玉
この世界において水晶玉はマジックアイテムに該当する。主な使い方だが、攻撃や通信、占いや呪いに使われたりと万能である。とはいえ、水晶玉だったら何でもできる訳ではなく持ち主の能力に左右される。キーウィであれば通信の能力があるため水晶玉を介して映像を写し出すことが可能である。セブラブは第七話でスケルトン召喚の消費を抑える意味で水晶玉を使っていたため大量に召喚できた。そして水晶玉には稀に最初から使える魔法が付与されている場合がある。市場では高値で取引されることが多い。尚、闇の魔術を介していなくとも誰でも水晶玉は装備できる。
読んでいただきありがとうございます。キャラクターも増えてきて大変になってきました。実は自分の創作物ではありますがキャラクターには愛着があまり無いです。しいてゆうなら男の娘が好きですので、ハセクは女装もしてないしショタジジイではありますが、それをイメージしています。こんな癖をもっていますが今後ともよろしくお願いします。




