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第二十五話 表裏一体

 ハセク一行はヒルブライデの捕縛に成功するが、問題は国同士の政治関係にある。この問題に直面したハセクは頭を悩ます、疲れてベッドに倒れると悪魔がやってきた。ハセクは気まぐれに契約を果たすがその真意は……。

ハセクが悪魔と契約した翌日、剣聖隊の大広間に顔を出す者が複数いた。

 ハセク、ハクレ、アルス、テレスミクロの四者が顔を合わせていた。

「状況は報告書の通り、これが今の現状だよアルス。」

 ハセクがアルスに話す。

「犠牲が多すぎる……。」

 暗い顔をするアルスだが、ヒルブライデと約束したある程度の命の保証は残酷なものであった。

「テレスが死んだ……それにアルバートは歩行困難になった挙句、スーゼルさんが行方不明とは……」

 意味が分からないと混乱するアルス。

 アルバートは治癒魔法などを駆使して下半身の治療をしたが、神経系が麻痺を起こし下半身付随を起こしたようだ。

「スーゼルは鉄仮面だけ残したけど本人はどこに行ったのか……もうこれは……」

 ハセクも表情が暗くなった、スーゼルとは50年の付き合いで仲が良い——友の唐突な消失にショックを受けていた。

「私がいない間に王が消えて、おまけに戦力的な大打撃とは……大変だな。」

 テレスミクロは人ごとのように話す。

「大変だよ、君が封印されている間に人が死に過ぎた。」

 ハセクはそう言った。

「私そろそろ彼のところに行かないと……」

 ハクレがハセクに話す。

「ああ、そうだね。行ってあげてよ、彼も待ってるだろうし。」

 ハクレはアルバートが怪我を負ってからずっと看護している、彼女の時間を奪う理由などない。

 ハクレが外出したタイミングでテレスミクロが切り出す。

「ハクレは除隊でいいんじゃねーか?ここにいても辛いだろ?」

「そうするよ、でも戦力を削ぐわけには……」

 このタイミングで戦える人が抜けるのは、かなり危うい状況だった。

 帝国はドルクの父を王位に就かせて帝国再興を狙っている、王国に一刻も早くスフィアーネ及びラスティーネを就かせねば、帝国に呑まれるのは想像に難くない。

 少しでもそれに対抗できる戦力がないといけないので、欠けるのは避けたい。

「それで、テレスミクロはどっちに付くんだい?」

 ハセクはそう話すが。

「さぁ……」

 胡散臭くはぐらかすテレスミクロだったが、彼女は現時点で王国に協力するようだ。

 真意はわからないが、目的があるのだろうか?

 本来七人で会話をする大広間だったが、今は三人……部屋の広さを改めて感じた。



 王国の地下牢ではヒルブライデが幽閉されていた、手枷が天井にぶら下がっておりその場から動けないようになっている。

 手錠には魔力が込められており、魔法の発動を抑えている。

 ヒルブライデは騒ぐこともせず、じっとしていた。

「食事だ。」

 隣の牢から声が聞こえた、配給が回ってきたようだ。

「あ、ありがとうございます。」

 ヒルブライデは耳を澄まして隣の会話を聞いていたが、その声には聞き覚えがあった。

 配給係がヒルブライデの前に来る。

「すまないが、アンタはアグライトさんが担当する。両手を拘束してるからな、直に食べさせないといけないらしい。」

「そうですか。」

 配給係はその場を後にした。

「隣にいるの隊長ですか?」

 やはり覚えのある声だった。

「クフラクですか?なぜここに?」

「ハセクさんを襲って、それで……」

「微量ながら闇の魔力を感じますね、契約したんですか?」

「はい、あなたを殺すために。」

「ふふ、でも契約したとで今の貴方じゃ私を殺せませんよ。」

「うっさい!そんなんわかってんだよ!!」

 大声を出すクフラク、黒幕がいるのだから怒りが湧いてるようだ。

「お前がうるさい!」

 警備兵に怒鳴られるクフラク、少し大人しくなった。


「なんで、テレスを連れてきたんですか?」

「それは貴方の契約主に聞いてください、私は命じられただけなので。」

「そんな都合の良い……」

 静かな怒りをクフラクから感じる、テレスの死は彼にとってとても重いものだった。

「それじゃあ彼女は一体なんなですか?」

「コピーもとい複製体と言ってました。」

「それはどういう……」

「恐らく、私達の複製体ですね。魔女が研究していたところから引っ張ってきただけなので。」

「私達?複製体?」

 クフラクは意味が分からなかった。

「いつか分かります。」

 そのように言い残し二人は眠りに着くがクフラクは疑問だけが残っていた。


 翌日になり、地下の牢獄へアグライトとアルス、テレスミクロ、ハセクもいるが、何よりも目についたのは子供のエルフがおり、額にテレスと同じ紋章がある。

 アルスとヒルブライデが帝国に行く際に襲ってきたエルフで間違いなかった。


「それで、なんのようです?」

 ヒルブライデはアグライトに質問を投げる。

「このエルフお前の仲間だろ?知ってることを話せ。」

 アグライトは後ろにいる手枷をつけられたエルフを前に出す。

「あ、お前あの時の!」

 エルフはびっくりして話す。

「ん、初対面か?」

 アグライトは不思議と話すがそれはそのはずで、エルフの子供はヒルブライデが仮面をつけている時しか知らないので、このような反応をとったのだ。

 アグライトがヒルブライデの正体を子供のエルフに伝える。

「え?お前被験体だったの?」

 子供のエルフの発言により、周りが疑問を感じる。

「被験体って魔女の研究の?」

 ハセクが確信をつくように話す。

「知らないのかよ。お前ら、俺たちのコピーを保護してただろ?」

 この時テレスが魔女の被験体の複製体であることが分かった。

 以前、セブラブから聞いた話だと被験体は闇の魔術を所有する者が抗体を作るように天性の呪文を無理やり授けさせるものだったが、その被験体が子供のエルフとヒルブライデということになる。

「テレスミクロさ……これ知ってたんじゃないの?」

 ハセクがテレスミクロを詰めるが。

「だー!あん時は監視が厳しくて言えるかって!」

 ヒルブライデは監禁されていた所をテレスミクロに回収されたわけだが、なぜ国王もとい悪魔に取り憑かれた国王はテレスミクロにヒルブライデの回収を頼んだのか。

「師匠はなぜ、国王にたいちょ……いえ、ヒルブライデを回収するように言われたんですか?」

「それを知ってたら苦労しねぇよ。」

「恐らく大魔女団に研究を催促させるための材料では?」

 ヒルブライデが口を開く。

「君がそんなこと言っていいの?仲間じゃないの?」

 ハセクが警戒しながら話す。

「言ったはずです。自由になったと……今は悪魔とはなんの関係もありませんから。」

「まさか……契約を解除したのか?」

 子供のエルフが驚いた。

「ええ、大罪悪魔に20年近く尽くしてきましたから……その褒美だそうです。」

 幼少の時、誘拐されて魔女の元で人体実験が行われ、挙句テレスミクロに回収された後、悪魔と契約した国王の元で働いたのだから納得できるような回答だった。

「でも、証拠がないからね、警戒させてもらうよ。」

 ハセクは確証がないと判断して厳しい対処をしていくようだ。


「さて、ヒルブライデ——君の処遇……処刑やら終身刑を言い渡したいところだが、最初から悪魔に利用されていた身だ、何か理由があるんだろう?なぜ、こんな……私たちに頼ってくれれば、いつでも協力したのに。」

「じゃあ、アルス君にだけ言うね。」

 条件付きで喋るようだった。

「おい、アルス……聞き出せるだけ聞き出せ。」

 ハセクが近くに寄って小声で話す。

 アルス以外は外に出ていく。


 牢の中に入ると隣の部屋まで声が聞こえない魔法が仕掛けられていた。

「それでね、アルス君。私から何を聞きたい?」

「色々です。」

「私の事をもっと知ってほしい、貴方だけに。」

 ここからはとても長い時間だった。

 今回の一連の事件と悪魔との関係を洗いざらい話してくれた。

 ヒルブライデが大罪悪魔と契約した理由だが、周りとの環境の違いに劣等感を覚えたらしく自分と周りの家庭環境を比べたのが原因らしい。

 彼女が契約した悪魔はレヴィアタン、嫉妬の大罪悪魔である。

 言うまでもないが、彼女は自分の生まれを呪っていたらしく、帝国の地下街で過ごしていた。

 貧富の差に嘆いていたのは想像に難くはない、それだけではなく大魔女団の人体実験や12歳で剣聖隊に入り大戦に参戦するなど、普通の子供であればありえないだろう。

 これらを彼女は比較してしまったらしく、王国の住民を見て嫉妬し悪魔との契約を果たしたそうだ。

 自分の体についても話してくた、彼女の身体中にある抉り傷は元々紋章が入っていたらしく、テレスミクロが敵に魔力を感知されないように施したに過ぎないのだ、醜い体……これもまた他人と比べるきっかけになったようだ。

 テレスミクロとスフィアーネ封印はヒルブライデがやったことで間違いはなかった、テレスミクロは国王の異変に気づいていたようで、それを止めようと画策していたが、勘付かれてしまい一番距離が近かったヒルブライデに隙を見せ封印されたそうだ、この時は国王とヒルブライデが悪魔によって利用されているとはテレスミクロしか分からなかった。

 スフィアーネは今後の利用価値を考えての封印に過ぎないようでヘルヘイトスが王室で聞いた内容とほぼ大差なかった。

 そもそも20年近く悪魔の元で動いていたのかだが、自由を報酬に働いていたようだ、そこにたまたまアルスが入隊して一目惚れしただけで、契約の内容をアルスと遠い地で暮らすことに変更したそうだが、除隊する前にハセクとアグライトに勘づかれ失敗に終わった。

 テレスミクロを殺さず封印したのは、彼女に育てられた恩があったらしく、何よりも姉という存在で家族のような拠り所を感じていたそうだ。

「すいません、長々と。」

「いいの、もっと話したい。」

「最後に。」

「何?」

「マルマキアさんを殺したのは貴方ですか?」

「ええ、私に気を取られているうちにアレクに背中を襲わせたの。」

 マルマキアはアルスに好意を寄せていたが、ヒルブライデがそれを許せなかったそうだ、だから遺体は痛めつけられた跡が多かったのだとアルスは理解した。


 ヒルブライデの話し方、いつも冷静に素っ気ないような喋りかただったが……自分と二人っきりで話している時は少し砕けた印象を受けた、お酒を飲んだ時もそうだった。

 彼女は己の二面性を使い分けていたに過ぎなかった。


 地下を出て外にいたハセクに報告書を出した。

「ご苦労様、取り調べの際は君に任せようかな。」

「ええ、自分で良ければ。」

「毎度君にばかり悪いね。」

「そういえば、ドルクさん達は?ここにきてると聞いたんですが……。」

「帝国から来た人たちは帰って行ったよ、自国をこれ以上離れられないって。」

「そうですよね。」

「でも、また来るっていってたよ。」

 そんな話をしていると、ヘルヘイトスが急足で駆けつけてきた。

「み、みなさん!大変です!」

「どうした?ヘルヘイトス?」

 アグライトが不思議そうに話すが。

「グランハース共産国から書簡です!」

「「「「は?」」」」」

 一同驚愕した、内容はある程度予想ができる。

 王国の代表宛になっているが、この時点で直接王宛にしないのはこちらに王がいない事を知っている訳だ。

「どこで漏れた?」

 ハセクは顔が真っ青になる。

 封を開け中を確認すると、グランハース共産国の属国にならなければ、武力を持って制すると書かれていた。

「魔界の扉が閉ざされて四日経ったけど……まさか……」

「なんか引っかかるのかハセク?」

 テレスミクロが質問する。

「少なくとも王がいなくて軍力も低下してるなんて王国と帝国しか知りえない……なら、その情報を渡せるなら帝国ぐらいだろ?」

 少なくとも王国はこの四日間は情報を露呈しないように立ち回っていた、王国商人や外部の人間、ましてやギルドの営業禁止を出し徹底していた、スフィアーネやラスティーネを王位に継がせたらそれらを解禁する予定だった、スフィアーネに五日の猶予を与えたのはそのためでもある。

「とりあえず、ドルクに帝国の状況を聞こう。」

 グランハース共産国の書簡には最終警告の書簡を出したら、すぐに兵を出し侵略を開始するとも書いてあった。

 いつ出すか書いてないのが気がかりだが、いずれにしても危険なのがわかる。



 ドルク一行は帝国城に着いた、玉座の間まで足を進めるとそこにはドルクの父ハルゲンが居座っていた。

「何の真似だ親父?そこはお前の席じゃねぇ。」

「心配することはない、現に皇帝はおらんじゃろう?」

 その言葉にドルク一行は驚く。

「どこにそんな証拠が……」

「これじゃ。」

 ハルゲンは従者にあるものを持って来させた。

「お、おいこれ……」

「陛下……」

 様々な声が聞こえた、そこには無理やり球型にされた酷い姿の皇帝がいた。

「許せん……」

 ドルクは剣を抜くが……。

「おっと、やめた方がいい。大変なことになるぞ。」

「命乞いか?悪魔と繋がってるのか分からんが、その遺体を長く放置したのは万死に値する。」

「我々帝国はこれより、グランハースと合併する。」

「な?!」

「この時を待っていた、いくら貴様でも国の代表格であるワシを殺せば共産国は黙ってはおるまい。」

 ハルゲン侯爵の領地には鉱物がたくさん取れる地域を支配している、その鉱物はグランハースに輸出し儲けており、信用を得られていた。

 ドルクがハルゲンを殺そうものなら、グランハースは鉱物資源を取るのが難しくなる、まずドルクがそうさせないだろう、取れないものならグランハースは攻めてくる、王位に有力な候補であるハルゲンが死ねば、そのチャンスをグランハースは逃すことはしない。

 そのためドルクは自分の行動一つで帝国を終わらせたくはなかった。

「卑しいな……」

「よく言われるよ。」



 軍事国家グランハース共産国……その国が今、両国を支配しようと企む。

 これは悪魔によってもたらされた策略か……あるいは……。



 二十六話に続く……。



 世界設定:グランハース


 正式な名称は軍事国家グランハース共産国、王国と帝国から少し離れた国であり、気候は乾燥地で砂漠化している。生産性はないが少量の小麦や農作物を作っている、ガラス製品は工芸品として他国からの評価が高い。軍事国家であるため生まれた子供は属性持ちであれば4歳で軍に入り訓練を受ける、そこからは少学年、中学年、高学年と上がっていき人間であれば18歳で本格的に軍属する。(種族にあった年齢で学年が進む)尚、無属性であれば訓練を受けることなく別の職に進むことができる。例外的に無属性でも戦闘能力やサバイバル技術であったり、軍で活躍できるなら軍属が許可される。先ほども書いた通り生産性がないため比較的近い王国と帝国から輸入しており、帝国からは鉱物資源を王国からは食料品などを輸入している。基本的な国の収入源だが、モンスター退治及び盗賊狩りが主な収入源になる、モンスターの素材を沢山売っているので冒険者がよくグランハースを訪れている。ちなみにセブラブの出身国である。



 読んでいただきありがとうございます。今回は六千文字近く打ったようです。時間を上手いこと使って書いていきます。これからもよろしくお願いします。


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