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第二十四話 目的

 アルスはヒルブライデのマジックアイテムである姿鏡に閉じ込められていた。すぐにハセクに勘づかれ、追われるヒルブライデ……

 ヒルブライデの疑惑を明るみにするため部屋に入ったハセク一行、ヒルブライデの攻撃により逃してしまうが、挟み撃ちを計画する。


 黒死隊ガイストとオレオンスがヒルブライデを追いかける。

「おい、早いな……全くもって姿が見えねぇ。」

 ガイストはオーガである、図体がデカい分鈍足だ。

「ハハ、じゃあ俺がそのまま追い詰める、後から来いよ。」

 オレオンスはヒルブライデが通ったであろう道を走っていく。


 ヒルブライデは小さな路地を姿鏡が割れないよう慎重にかつ迅速に進んで行く。

「ここまできたんだ……捕まる訳には……。」

 独り言を挟みつつ進んでいく、ヒルブライデはなんとしても城壁を越え外に出るようだ。


「悪いけど、理由を聞くまでは逃さないよ。」

 先回りしたハセクとバルキルウスが立ちはだかる。

 いつの間にか後ろには黒死隊の二人が追いついていた。

「君らしくないな、いつもの冷静さはどこに行ったんだい?」

「いつの間に……」

 ハセクと他黒死隊は武器を構える。

「早いとこ決着をつけないと援軍がくるよ?」


 ヒルブライデは後ろに居る黒死隊を牽制するよに大きい氷の塊を出して一方通行の道を作る。

「正面突破だ!」

 気づいたようにハセクはバルキルウスに訴える。

 信じられない速さで突っ切るヒルブライデだが、通す訳には行かないとバルキルウスが突っ切るヒルブライデに剣を振るう。

 振った剣はヒルブライデを傷つけない程度の威力であり、実の肉親には抵抗があったのが伺える。

「殺す気で振らないとこっちが死ぬ!」

 ハセクは声を大にして話す。

「やはり、私では本気は出せませんか?お兄様?」

「なぜ?」

 バルキルウスは衝撃を受けた。

 今ままで兄弟であることは伏せていたので知るはずがないと思っていた。


 後ろの氷塊が黒死隊ガイストによって破壊される。

「思った以上に早い……」

 渋い顔をするヒルブライデ。

 ハセクとバルキルウスの攻防、片手に姿鏡を庇い戦うヒルブライデには圧倒的不利を用いられた。

 後ろに下がれば、黒死隊が居る状況……八方塞がりを強いられた。


 耳をすませば、中隊ほどの人の人数が迫ってくるのが分かる。

「さぁ、早く投降して。君に時間は食いたくない。」

 ハセクは不機嫌ながら話す。

「邪魔するな!」

 ヒルブライデは剣に氷結魔法を纏わせて大ぶりに斬り上げた。

 その瞬間脇に抱えていた姿鏡がなくなる感覚に陥る。

「何?」

 ヒルブライデは周りを見渡すと、カラス座の一人が姿鏡を脇に持って建物の屋根にいた。

「幻術で隠れていたか……」

 一本取られたと不覚に陥るが取り返そうと、屋根に飛ぼうとする。

「やらせはせん!」

 バルキルウスが飛ばれる前にヒルブライデを突き飛ばす。

 ヒルブライデは飛ばされるが、体制をすぐ持ち直す。

「私の邪魔しないでよ……。」

「悪いが、国の命運がかかっている。」

「自由になった私には関係ない。」

「人を巻き込んだ以上、その言葉は通用せん。」

 バルキルウスはフルフェイスの兜を脱ぐ。

 そこにはヒルブライデと同じ銀髪で凛々しい顔立ちの男性なのが伺える。

「決闘だ!私が勝ったら腹を割って話そう!」

「それは、私とアルス君が結婚してからの予定です。計画を邪魔しないで。」

 そうは言っても囲まれている状況下では決闘をしてもしなくても不利なのは明確だった、仮にヒルブライデが勝っても上手いこと捕縛されるのが目に浮かぶ。


 渋々ヒルブライデはその決闘を受け入れ、王城の模擬戦場に連れて行かれる。

 姿鏡は奪われ、模擬戦上の中を入っても複数の兵士と模擬戦上の外にも兵士がいるのが分かる。

 ヒルブライデはこの時点で拘束されるのが分かっていた。


「卑怯ですね、兵にここを囲ませるのは。決闘なんてしなければいいのでは?」

「いや、私のわがままだ……許せ。」

「なるほど、兄弟愛ですか?」

「気づいていた、大戦時に小さいお前を見た時から……後ろめたさで一杯だったんだ、盗んだ金、食べ物でお前を支えようとして……私は……」

「いいんです、あの時は私も世間知らずでした、盗んだものは良くないと拒み続けて……お兄様を最終的には兵士にしてしまったようなものです。」

 両者は剣を構え始める。

 使用する剣は刃がついてはいない、殺傷率は少ないものを使わされた。

 バルキルウスはハグバルの型をとりヒルブライデはバーラスの型をとる。


 両者は剣を交えた、激しい攻防だが、ややヒルブライデが押していた。

 明らかに傷をつけないよう立ち回るバルキルウスだが、ヒルブライデは気にせず攻めの姿勢を取り続ける。

「私を愛してくれるのはありがたいですが、本気を出してください。」

 ヒルブライデは大きな氷塊を出し模擬戦場の壁までも破壊するほど殺傷率が高かった。

 後ろの兵士が潰されて死んでいる。

「私は本気です。本当は殺したくありませんでしたが、ここを出てアルス君を回収しないと。」

「やはり、あの姿鏡……」

 ある程度納得した、バルキルウス。

「援護します!」

 見かねた黒死隊オレオンスが入るが。

「入るな!私とヒルブライデの戦いだ!」

 バルキルウスは次の氷塊が出る前にヒルブライデを斬りつける。

「いよいよですね。」

 ヒルブライデも大きな行動を見せず、バルキルウス単体に集中し始める。

 バルキルウスは盾を投げつけるがヒルブライデに回避される。

「そんなもので……」

 ヒルブライデはそのまま警戒しながら前に突進を始める。

 ハグバルの型で最も致命的なのは左手の装備がなくなることである、左側がガラ空きになり左側面に入られると致命的だ。

 本来は左手の装備がなくなる状況に陥れば別の型に切り替えるのが普通だが、バルキルウスは変えなかった。

『おかしい、何をしている。』

 ある程度懐に入った後に怪しさに気づく、するとヒルブライデの後頭部に盾がぶつかる。

 バルキルウスは投げたと同時に魔法で引き寄せたのだ。

「私の勝ちだ、悪いな。」

 周りに居た兵士が気絶したヒルブライデを地下に連れて行く。


 それを見つめるバルキルウスは素直に喜べずため息をついた。

「どうしたんですか、隊長?」

 オレオンスが話をかける。

「いや、こうもあっさりとは……」

「戦いですから、あっさりいく事もあるでしょ?」

「そうだな……」

 最もヒルブライデは元来戦いとは無縁な存在であった、彼女を闘いに駆り立てた者をバルキルウスは許さなかった。



 翌日になり、女王スフィアーネが目を覚ました。

「おはようございます。私は王国で現在、騎士団長をしています。アグライト・エンス・エガータルといいます。スフィアーネ様の身辺警護をさせて頂きます。」

 アグライトは右目に眼帯をつけていた、体の傷は多少なりとも回復したがしんどそうだ。

「ええ、あ、ありがとう……ここは一体……。」

 状況を飲み込めず、あたふたする女王、封印から急に目覚めたので無理もなかった。

「それと、お目覚めされて急ですがすぐに王国の王位に就いて頂きたいのですが可能でしょうか?」

「え?そんな、急に言われましても。」

「時間がありません、エヴァンス国王は死に……そして帝国のゲルマルク皇帝も……」

「そんな……ゲルマルクが……」

 しばらくは立ち直れそうになかった、最愛の人が亡くなってしまったのだから仕方がないが、とにかく時間がなかった。

「考えるお時間はせいぜい五日ほどとお考えください。」

「しばらく一人にさせてください……」

「わかりました、ですが封印から解かれて早いのでいつ狙われるか分かりかねます。目の届く位置で許してください。」

 アグライトはスフィアーネから距離を置いただけだった。

「一人にもさせてくれないなんて……」



 王城の議会室ではハセクとドルク、そして帝国の貴族と王国の貴族が集結していた。

 議題は両国を束ねる王を決めることだった……今、両国に王がいないことが最大のチャンスである。

「魔界の扉が閉じてはや三日ですな。」

 帝国の貴族が話をする。

「ええ、スフィアーネ女王には五日の猶予を与えました、このまま決まらないことを想定しまして誰が王になるか……」

 ハセクが言葉を選びながら話を始める。

「であれば、そこに座すドルク殿の父、ハルゲン公爵であればよかろう。」

 帝国貴族が話を推し進める。

「なぜ、親父なんです?」

 ドルクは不機嫌に話す。

「武勇に長け、そして国益のためならば手段は問わない。前の皇帝は人情に縋りチャンスを逃してきた、圧倒的武力を持ちながら侵略の手を取らないのは勿体無いだろう?」

 帝国貴族が自慢げに話す。

「それは王国に対する戦争ですかな?もっとこう戦い以外で解決せねば……」

 王国に有力な候補はラスティーネ王女だけだが、幼すぎる——何よりも背負うものが大きいのだ。

「あー皆さん何か勘違いしてませんか?これは王国と帝国をどちらも統べる王を決定しようという……」

 ハセクは議題を戻そうとするが。

「子供は黙っとれ!!」

 老人貴族が叫ぶ。

「いや、僕子供じゃないし……」

 話を戻してもやはり自国の利益しか求めない、帝国側は大帝国も夢じゃないと聞こえる始末、そもそも大戦が原因で溝ができているのが問題なのだ。

「ハグバル家の嫡子よ、これではどうだ?ラスティーネ姫かスフィアーネ女王をハルゲン公爵と婚約すれば良い。さすれば二国は統一されるだろう?どちらも代表だからな?」

 王国の貴族が提案を図ってきた。

「おお、それはいい考えですな。」

 それに帝国貴族は乗るが、ハルゲン公爵が優位に立つことが窺える。

「どいつも腐ってやがる。」

 ドルクは舌打ちをして苛立ちを隠せなかった。

「我が国ではエバルタ家がおるではないか、ロクローネ然りその甥っ子のクフラクはラスティーネ姫の婚約者じゃぞ。国王がお決めになったのだ、覆ることはなかろう。」

「それに関しては国王が悪魔に取り憑かれていたので無効でーす。」

 何もかもめんどくさくなったのかアホみたいな返答をするハセク。

「なんじゃその態度は?大事な話じゃぞ?確かに国王は悪魔に取り憑かれていたとしても、当時からロクローネを側に置いていたのは国王の意思じゃ。」

「そんなん知らん。」

「は?」

 急な返答に各貴族が静まりかえる。


「自国の利益より、ガキの未来心配しろやーーーーーー!!!!!!」

 唐突にキレ出したハセク、イライラがたまったのか……。

「許嫁とかどうでもいいわボケ!!今ここで割れたら王国も帝国も終わりじゃああああああああ!!」

 そう言い放ち、議会室を出て行った。

「ええ……」

 さらに静まりかえる議会室。

 ドルクも後を追うように議会室を後にした。


「なぁ、ハセク気持ちはわかるけどよ。」

 心配そうに話すドルク。

「いや、まぁ……統一ってなるとやっぱり姫と女王をハルゲン公爵をくっ付ける他ないんじゃ……」

「クソ親父なんて真っ平ごめんだぜ。あんなん女遊びが激しくて敵わん。」

「スフィアーネ女王もラスティーネ王女も精神的に参ってるし、あの状態で復帰するのは絶望的だな……。」

「とりあえず休め、ぶっ通しで動いてるんだろ?」

「それはお互い様。」

 ドルクは再び議会室に戻るが、ハセクは剣聖隊の施設に戻り自室に入った。


 ベッドに倒れるが、目が覚めてしまう。

「なんだって、こんな……議会出席なんて親の仕事だろうが……」

 愚痴をこぼすハセク。

「君の選んだことだろ?ハセク。」

 どこからともなく声が聞こえた。

「ああ、君かベルフェゴール」

 ハセクがベッドから起き上がると椅子に悪魔が座っていた。

 姿は人型でなんの変哲もない人間の姿をしていた。

「その姿はなんだい?」

 ハセクが質問する。

「ただの趣味だよ。何十年ぶりだろう?」

「わかんない、かなり昔だから。」

「仕事は楽しいかい?」

「楽しいわけないだろ。お前らのせいだよ。」

「今回はハデスとマモンそして対立するアスモデウスのせいかな。」

「君たちも揉めているのかい?」

「僕は関係ないからね、傍観者だから。」

 ベルフェゴールは怠惰であり無気力な悪魔だ、契約者も怠惰な者が多いためあんまり危害はないし、契約はめんどくさいと断るような人をわざわざ選んでいるそうだ。

「それでなん用?」

 ハセクが切り出す。

「そろそろ君たちに大きな災が降りかかるよ、内容はわからないけど大罪悪魔が動いてる。」

「そんなこと君が言っていいのかい?」

「僕は働きたくないからね、君たちが頑張ってサタン様を倒したら僕は消されずに済むのさ。」

「じゃあ、契約しよう。」

「今までの君は契約なんて拒んだろ?」

「君はサタンに消されたくない、僕たちはサタンを消す、これでどうだい?」



 ハセクは大罪悪魔ベルフェゴールと契約を果たした、彼の選んだ道は果たして……。


 

 二十五話に続く……。



 世界設定:契約


 この世界には契約が存在する、それも様々であり、主に悪魔や魔女からなる闇の魔術を使用する契約しかり、エルスター教を信仰する者も天性の魔法が使えるため一種の契約と言える。契約主は強い魔力を秘めているため魔力が少ないものは契約主にはなれない、基本的には対価が必要であり魔女であれば契約者の寿命をとり魔女が長生きする仕組みだ、逆に寿命を分け与えるかそれ以上の力を持っていれば不老不死も手に入れられる、尚大罪悪魔は欲が対価であり契約者が欲を満たせば契約主も満足する、ただこれは欲が大きくなればなるほど大罪悪魔に乗っ取られるためリスクがある、悪魔、魔女以外にも魔力を秘めたドラゴンや人であれば契約は可能である対価は基本契約主が決める。




 読んで頂きありがとうございます。展開も段々と進んで参ります、これからもよろしくお願いします。


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