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第二十三話 歪んだ愛

 共和国側は封印されたスフィアーネを回収できたが、皇帝と国王の急な消失によって両国は混乱した。不可解な謎を残しながらもヒルブライデによって何処かに転移されたアルス。この後、どうなっていくのか……。

 王国、前共和国で起こった戦いは幕を閉じた、これは帝国と王国間との戦いではなく悪魔との戦いであった。

 被害は甚大——両国は王を失った、これからどうなるのか……


 アルスは古城での戦闘後ヒルブライデによって何処かに転移された。

 場所は薄暗く、人一人住むにはある程度適した広さであった。

 家具はベッド、テーブル、クローゼット、姿鏡があった。



 自分は目を覚ましこの場所がどこなのかを考えるが、見当が全くつかない。

『ここは一体?』

 状況を整理すると、椅子に体を縛り付けられていた、恐らく逃さないためという意図を汲めるが……ドアがない。

 ドアどころか窓すらない、逃げるという手段が全く持ってとれない。


 考えを巡らせていると姿鏡からヒルブライデが出てきた。

 あの鏡はマジックアイテムの一つだろうか……。

「あ、起きたんですね。」

 嬉しそうにこっちに近づくヒルブライデ……何が目的だ……。

「あの、ここは?」

 どうにか出れまいかと話をする。

「何を出ようとしてるんです?」

「す、すいません。そういうことじゃなくてですね……。」

 考えてることが分かるのか、怖い顔で詰めてきた。

「責めてるわけじゃないんですよ。私はただ、あなたを逃したくないだけ。」

「一体どういう……。」

「結婚する際には指輪が必要ですよね?」

「えぇ……何ですか急に……。」

 急な話にびっくりした。

「なぜ、指輪が必要か……それは永遠の愛や誓いを周囲の人に認知して貰う事に過ぎないでしょう?」

「そうですね……。」

「私は形だけを取り繕うのは嫌なんです。だから行動で示してこそ永遠という束縛があると思いました。」

 ヒルブライデは氷結魔法によって封印された悪魔の首をテーブルの上にボンッと置いた。

「これはアスモデウスという大罪悪魔でして、今回王国に悪魔を侵攻させた首謀者です。」

 まだ生きているのか、悪魔が瞬きしている。

「アルス君は周りに私の正体を口外しない約束を果たしてくれました。その見返りとしてスフィアーネや王国にいる仲間の無事を多少なりとも保証する約束ですね?」

 確かに以前模擬戦の時にそのような約束をしてくれた。

「なら……」

「ええ、大丈夫です。スフィアーネはこれから助かります。」

 見ててと言われて剣でアスモデウスを斬る。

 斬ったとの同時にアスモデウスが消えるが、封印していた氷結が消えていく。


「これで、スフィアーネは自由の身です。」

 クローゼットの下を見ると水が滴り落ちていた、その瞬間ガタガタと揺れ始める。

「ああ、アルス君は気にしないで。」

 ヒルブライデはクローゼットに氷結魔法で凍らせた。


「さて……約束もお互い果たせましたし。」

 ヒルブライデは自分の顔を執拗に触ってきた。

「これからは、一生一緒です。力ずくでもあなたと結婚すると言いましたよね?子供は何人欲しいですか?」

「そんな……一方的な……。」

「どうして……」

 ヒルブライデの顔が暗くなる。

「どおしてそんなこと言うのおおおおお!!」

 甲高い声が部屋に広がる。

「私こんなに好きなのに!あなたが剣聖の試験に来た時から一目で気に入ったのに!なんで伝わらないのおおおおお!!」

 ヒルブライデはテーブルを思いっきり蹴り上げて破壊した。

「ご、ごめんなさい。でも、これも愛の裏返しですよね。アルス君は愛を伝えるのが下手くそですね♡」

 この人ヤバすぎる、ヒルブライデは恐らく両思いだと勘違いしているのだろうか……一方的と言ったら逆情した。


 姿鏡から声が聞こえた。

「隊長、大変です!スフィアーネ王女の封印が解かれました今すぐ来てください!」

 ハクレの声だろうか……。

「チッ……意外と早かったな……。」

 舌打ちしたヒルブライデは姿鏡に向かう。

「アルス君、続きはまた後でね♡」

『怖いよぉ』

 そう思いつつ出る方法を考えた。


 しばらくして、部屋を観察するが、やはり姿鏡から脱出する他なさそうだ。

『おい、誰かいるのか?』

 その時頭に声が入っていく。

 これはテレパシーの一種で以前皇帝が使った魔法の類ではない。

「誰ですか?」

 自分はテレパシーが使えないので、言葉を発する。

『バカ!お前もうちょい小声で話せ!てか、お前アルスか?』

「自分を知っているんですか?」

『私だ、テレスミクロだよ!』

「師匠、生きてたんですね。」

『呑気なこと言ってんじゃねぇ!ここどこだ?』

「恐らく、ヒルブライデの部屋だと思われますがドアもなければ窓もありません。」

『なんだそりゃ。』

「ただ、マジックアイテムの姿鏡が……あそこから出入りしているようです。」

『唯一の脱出口か……』

「ところで師匠はどこに?」

『分からん周りは真っ暗で狭い……』

「動いてみてください。」

 まさかと思い師匠に提案する。

 クローゼットがガタガタと動く。

「クローゼットに閉じ込められてますね。」

『よかったぜ、魔法や多少の力は封印されてるが、たかだかクローゼットだ。』

 クローゼットの扉がググっと開く。

 クローゼットの扉が完全に開いて見たことあるダークエルフの女性がボトンっと落ちる。

「大丈夫ですか?」

『封印が解かれちまえばこっちのもんよ。』

 師匠は猿轡に手と足を縄で拘束されている。

 そのまま、姿鏡まで動くが……


「何してるんですか?」

 姿鏡からヒルブライデが出てきた。

『悪い、無理そう。』

「でしょうね」

「ダメでしょ?お姉ちゃん。勝手に出てきちゃ……居候してるんだから、自分の部屋に戻ってね?」

 ヒルブライデは師匠の足を掴んで引きずり無理やりクローゼットに詰めた。

「はぁ、レヴィアタン様の契約を解除してから上手く行かなそうですね……」

 薄々気づいていたがヒルブライデは悪魔と契約していたようだ。


「さて、アルス君これから私は妊活します。」

「どうゆう事ですか?」

「夫婦なんですから、子作りは計画的にしないといけないでしょ?」

『お前ら結婚してたの?』

 師匠が頭に話かけてくる。

「そんな訳ないでしょ。」

「何がそんな訳ないんですか?」

『『あ、やばい』』

 ヒルブライデの顔が曇る。

「とにかく、私とアルス君が一緒に暮らすためには妊娠退職しかないんです。早くここから出ましょう。」

 ヒルブライデは何かに焦っているように見える、何に追われているのだろう。

『おい!私はどうすんだ!』

「師匠はどうするんですか?」

 一応聞いてみる。

「大丈夫、私は忘れないから。」

『答えになってねぇよ!』


「さぁ、時間がありません今すぐ下を脱いでください。ここから出るしかないんです。」

「待ってくれ!」

『何が起こってんだ!説明しろ!』


「隊長〜いる?」

 襲われている時姿鏡から声が聞こえる、声の主はハセクだろうか。

「今出ます。」

 ヒルブライデが再び姿鏡に向かうが。

「大丈夫、もう中に入ってるから。」

「え?」

「今君の部屋にいるけど何処にいるんだい?」

「勝手に部屋に入るなんて困りますね。」

「僕らも困ってるからね。」



 遡ること数時間前。


「ハセクさん隊長連れてきました。」

「ああ、ありがとう。」

 王国城地下で封印されたスフィアーネを管理していた。

 ちょうどこの時スフィアーネの封印が解け宮廷医などが駆けつけていた。

「封印が解けたけど意識が戻ってないみたいだね。」

「ええ、今現在——王が両国にいない状態ですから。すぐにとは行きませんが目を覚させて頂かないと。」

 バルキルウスが提案する。

 この場にはハセク、ハクレ、ヒルブライデの他にキーウィを除く黒死隊がいた。

「とにかく待つしか他はないか……ハクレは医者と一緒に傷なんかを見てくれ。」

「はい。」

 ハクレはスフィアーネの元に向かっていった。

「ハセク私は一体何を……」

 ヒルブライデは自分がここに来た理由を知りたいようだ。

「ああ、君の報告書の件なんだけど、どうも納得いかなくてね。」

「そうですか?」

 ヒルブライデは疑いが濃くなってから、報告書や隊員指示等は殆どハセクがするようになっていった。

「だって、おかしいでしょ?皇帝の遺体が発見されて無いんだよ。どうして戦死なのさ、ここは行方不明では説明が付かないしアルスと一緒に連れて行かれたとかでなら分かるけど。」

「すまん、怪我を負っていて気が動転していたかも知れない。」

「じゃあ、仕方ないか。アグライトにも聞いたけど報告書の通りだったしね。」

 ヒルブライデは自分の部屋は戻っていくのだった。


「ハセクさん」

 フードを被った一人の男がハセクに話かける。

「ああ、どうだった?」

「はい、中を調べましたが普通の部屋でして……ただ、極端に魔力が高い家具が一つ……。」

「んー決定打に欠けるな……」

「調べますか?」

「いや、もうそのまま行っちゃおう。時間も限られている。」


 ハセクと黒死隊そしてフードの男がヒルブライデの部屋に向かう。

 ちなみにこのフードの男はヘルヘイトスと同じカラス座のメンバーである。

 部屋に着くとフードの男は部屋に耳を当てる。

「誰もいませんね。」

「中に入ろう。」

 ハセク達は中に入っていった。

 中はごく普通の部屋であり、特に目立ったものはなかった。

「魔力が高かったものって?」

「この、姿鏡です。」

「これは、マジックアイテムのオーバーミラーだね。鏡の中に物を収納できたり、部屋作ったりとか色々できるね。」

「それで、どうするんですか?」

 フードの男が話しかける。

「まぁ、任せて。」



「隊長〜いる?」

「今出ます。」

 姿鏡から声が聞こえる。

「大丈夫、もう中に入ってるから。」

「え?」

「今君の部屋にいるけど何処にいるんだい?」

「勝手に部屋に入るなんて困りますね。」

「僕らも困ってるからね。」

 ハセクは後ろに居る黒死隊に武器を構えるように指示する。

「それで、用はなんですか?」

「中に入りたいかなーって」

「入っても面白いものはありませんよ。」

「そうなの?」


 ハセクが鏡に入る瞬間鏡から氷結魔法が飛び出てきた。

 ハセク達は後ろへ距離を取る。

「避けたら、当たらないでしょ?」

 ヒルブライデが鏡から出てきた。

「やっぱり君は……。」

 ハセクが確信したように話す。

「半分正解で半分ハズレです。今の私は悪魔とも関係ありませんから。」

 ヒルブライデは姿鏡を脇に抱えて部屋を氷結魔法で破壊しようとした。

「ここから出るぞ!」

 ハセクとその一行は急いで部屋から出ると、大きな破壊音とともにヒルブライデの部屋が消し飛んだ。

 そのまま外に逃げた可能性がある。

「逃すなお前達!」

 バルキルウスが二人の黒死隊に命令する。

「バルキルウス僕たちは回り込むよ。」

「ええ、私の妹です。ここで逃す訳には……。」


 その後、ハセクとバルキルウスは二人の黒死隊と挟み撃ち出来るように回っていった。

 フードの男は急いでハクレやアグライトなど、この一連の事件に関係しているものに報告し飛び回った。



 二十四話に続く……。



 世界設定:マジックアイテム


 この世界にはマジックアイテムが存在する。今回のように鏡越しに部屋ができていたりと物に魔法が付与されている。中でも指輪に魔法がかけられていることもあり、装備品として流通することが多い。マジックアイテムの種類は様々であり、細分化がなされている。家具であればマジックアイテムと呼称されることがあるが。今回のように魔法を付与された鏡として呼称されたりと人に伝われば良い訳で呼び方は人それぞれだ。指輪のマジックアイテムは装備品に当たるためマジックリングやマジックエクィップメントなどと呼ばれる、効果も様々で属性付与や自身の体が修復し続けるなど多種多様である。他には武器に魔法がかかってるものもある、剣であればマジックソードと呼称されるが、マジックウェポンと呼称することもある。他にも種類が多くあるので、作品を書いて行く上で増やそうと考えてます。




 読んでいただきありがとうございます。気づいたら二十三話でした。どのくらいで完結するか正直わからないです。終わりは見えているんですが、そこまでに行き着く過程が長く感じます。恐らく今出ている話数の倍程度は続くので見てくれたら幸いです。今後ともよろしくお願いします。

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