第二話 出会い
無事剣聖試験を合格したアルスだったが。それに納得がいかないメガネの剣聖隊員がいた。いきなり決闘を申し込まれ、訓練場へ移動するのだが・・・。
自分は頭をかきながら模擬戦をした訓練場に戻る。
『なんかめんどくさいことになったな。』
すると横からハセクが話をかけてくる。
「彼はアルバートさんっていう頭の使い方が一番上手い人だよ」
「うん?」
「あーごめん、ようは頭がいいってこと。だから指揮官に向いているし軍師としてこの隊を支えているんだ。」
なるほど、自分から直接手合わせをして自分の力量を測ろうというのか。
すると横からヒルブライデが出てルールを説明する。
「アルバートの提案により模擬戦を始めます!アイテム以外の総合模擬戦です!なお、危うく殺してしまいそうな時は強制的に中止し引き分けにします!」
恐らくここで引き分けの話を持ち込む時点で自分を入隊させたいようだ。
「アルバートの攻撃を長時間凌ぐか、一本取ればアルスの勝利です!」
ルールも凌げば良いという簡単なハンデをもらったが隊長の考えていることがよく分からない。
面談の時もそうだが何を隠しているんだ?
「始め!!」
ヒルブライデが号令をかける。
メガネもといアルバートが構える。
剣の型は恐らくソルブの型、剣を振るう際に手首にスナップを効かせて剣を回す——手数が多い人が好む剣の型だ。
様子を伺っているのか、全く攻撃を仕掛けない。
そして自分から攻撃を仕掛けてみた——すると、カキンといなされてしまう。そこから予測が難しい反撃を右に喰らったが危うく防いだ......この男はこの剣の型を熟知しているに違いない。
ソルブの型は相手に切り掛かる際常に剣を回し続ける。体も中心を軸にし回る華麗な剣技である......なので剣がどこに切り掛かるのかが分かりにくく油断しているとあっさり取られてしまう。
そうこう凌いでいると、左手から氷柱を発射させる——攻撃が防御になるように攻撃させないように立ち回っているようだ......しかも手数も多いのでこっちが攻撃に出ようものならカウンターであっさりやられる。
『これはまいったな......。』
そして自分は傭兵がよく使う剣技をやめ別の構えをとった。
「ん?これって......。」
ヒルブライデが不思議そうに見る。
「究極型じゃないですか?今まで2人しか見たことないですよ。」
得意げにハセクが喋る。
究極型これは大賢者の元で修行した者のみが使える剣技である。
剣の型は歴史がありその時代に合わせて作られてきた——全部で7つの型がありこれは片手剣指南書に書かれている——だが、この究極型は8つ目の型であり表に出ることは一切なく封印されてきたとされる。
「貴様!私を愚弄するのか!!」
ブチギレ始めるメガネ、さっきと打って変わって殺傷率が高い攻撃を仕掛けようとする。
「試合は中止だ!!」
焦るヒルブライデ。
だが、怒り狂うメガネには届くはずもなく——。
メガネは氷柱を自分に目掛けて放つ、恐らくこれは牽制......避ける必要はない。そして、木剣に氷の刃を纏わせ殺意を自分に向けてくる。
お得意のソルブの型、隙のない連続攻撃しかも剣のスピードが段違いであり残像を作っている。これは本気ではないことがわかった——つくづく敵には回したくない。
このまま木剣でいなすと確実に切れてしまう力なので、自分は避け続ける。
相手の体重が右によったので左に思いきり木剣を当てる——するとバキバキと自分の木剣が折れると同時にメガネの助骨辺りを砕いた。
焦るようにみんな中心に集まってくる。
「アルバート!何を考えているんだ!下手をすればアルスが死んだぞ!」
ヒルブライデがメガネに説教をしている。
「隊長......。」バツが悪そうな顔をしていた。
「アルスよお前その型どこで覚えた?」
警戒して話すスーゼル。
「自分の師匠からです。」
「じゃあさ、君の師匠は皇帝の近衛騎士を務めるドルクの弟子ってこと?」
興味津々で聞いてくるハセク。
「いえ、私の師匠は......」
「アルス様!!!!」
振り返るとメガネが土下座をしてきた。
「申し訳がなかった!私はあなたを過小評価していたんだ!本当に剣聖隊に足る人物かどうか確かめたかった!この無礼な振る舞いをどうか許して欲しい!!」
熱い謝罪を語るメガネ。
「私はあなたに感服した!どうか兄貴と呼ばせてくれ!」
「はぁ!?」
意味が分からないことを言われた......なんなんだこいつ......。
「なんだか気にいられちゃったみたいですね。」
緑髪の気の弱そうな少女が喋る。
「彼は向上心の塊のような人物ですし——実は言うと模擬戦で負けたことがなかったんです。そして何より忠誠心もありますから。」
「やけに詳しいんだな。」
「幼馴染ですから。」
一方ハセクの方ではこちらと距離を置いて何か話している。
「ドルクの弟子じゃないならやっぱり彼女の......。」
「その可能性は低い。そんな禁忌を犯すとも思えないし、何より弟子がいたことなんていないだろ。」
ハセクとスーゼルが隅っこで話をしていた。
「改めて入隊おめでとう。これからよろしくな。」
上機嫌にヒルブライデが話す。
「早速だけど明日から仕事に入ってもらうからよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ今日は、城内と剣聖隊の施設を案内しますね。」
緑髪の少女がそう言う。
「あ、申し遅れました。私ハクレといいます。これからよろしくお願いしますね。」
彼女は2年前の剣聖試験で合格したそうで、同時にアルバートと共に入団したそうだ。
軽く城内と隣に建設されているそこそこ大きい施設である剣聖隊施設の紹介をハクレにしてもらった......あっという間に日が暮れ充実した1日になった。
「ここから下は城下町になっています。そういえばスーゼルさんがあなたと話したいと言ってましたよ。」
「スーゼルさんはどこにいますか?」
「恐らく酒場で飲んでいると思います。場所は......。」
ハクレに場所を教えてもらい、そこを目指す。
扉を開けると聞いたことのある声の男とハセクそしてオーガの女性がいた。
「ここだよ、アルス。」
ハセクが手を大きく振る。
「いやー入隊おめでとう。まぁ、僕は最初から君が合格するとわかってたけどね。」
「私からも一杯奢ろう。」
聞いた声の知らない男性がいた。
「あーそういえば初めてスーゼルさんの顔を見るよね。」
かなり酔っているハセク。
スーゼルの顔を見ると40代位の優しいおっちゃんというイメージである。
「実はさヒルブライデが隊長する前はこのスーゼルさんが隊長だったんだ。」
「世代交代でね......。」
スーゼルは懐かしそうに話す。
「あと、マルマキアさんと話すのも初めてだよね?」
オーガの女性に視線を向ける。
「よぉ、こやって話すのは初めてだな、あたしはマルマキアだ。よろしく頼むよ。」
「よろしくお願いします。」
「そう硬くなるなよ、酒の席なんだし。ところでさ、あたしと隊長——ハクレちゃんとだったらどっちが好みだ?」
「うーん。」
結構難しいなと思いながら考える。
「ハセクですね。」
「おい、冗談言ってんじゃねーぞ!」
ハセクがキレる。
「なるほどそっちの気があるわけだ。」
ふむふむとマルマキアは頷く。
「まぁもちろん冗談ですけどね。」
「舐めやがって、こう見えてこっちは年上だぞ!」
「今日はいい酒が飲めそうだな。」
スーゼルはうまそうに酒を嗜める。
こうして1日が終わりを遂げようとしている。平和な時間が過ぎるのは実に早かった。まだこの時までは......。
三話に続く......。
世界設定1:剣の型について
主に剣の型は7つあるように考えました。
1つ目はサルード、全ての始まりであり後の剣技に発展していく重要な型、使用者は極端に少なく使うものはいない。
2つ目はエルシド、サルードの発展系であり今回の世界では一般的に普及されている極めれば強いバランス型ちなみに今回主人公が構えていたのもこの型。傭兵の間で流行り構えがガラパゴス化していき構え方に正解がなくなってきた。
3つ目はハグバル、右手に剣左手に別の武器を装備できる。王国騎士団および王国国内はこれが普及し左手に盾を装備し構える、他にも短剣を装備した二刀流や魔導書や杖もある、そして何よりこの型から剣盾の型や二刀流の型、魔術装備の型など型の派生が生まれた重要な型である。なおハセクはこの型を習得しており魔導書を左手に装備している。
4つ目はソルブ、1対1を想定した型であり特定の敵を確実に葬ることができる。元々は決闘用の型でサルードと同時期に作られたとされる教養のための型だった。
そのため、年長者が使うことが多い型である。今作のメガネとスーゼルの使用型である。
5つ目はキルス、これといって特徴がなく2つ目のエルシドがガラパゴス化してしまったので対抗するために作られた。剣技が気品のない傭兵に使われるのが嫌だったためエルシドを再生させるために作ったのだが、エルシドはすでに完成された剣技であるため認知度は低く剣技試験の問題でも間違えるものが多い。だが、この剣技は大賢者の修行で使用する重要な型である。今作ではハクレが主な使用者だ。
6つ目はガルガンド、攻撃系の型であり盾の防御も意味をなさない、体格が大きく力が強いものがよく使用する。だが隙が大きくソルブとは相性がかなり悪い。帝国で使う者が多い。油断していると負けるため慎重な者はあまり使用をしない。今作ではマルマキアが主な使用者。
7つ目はバーラス、これはガルガンドと対をなす型であり防御に特化している。極めれば使用者本人には傷一つつけられない。そして属性持ちならその相性が良く大戦直前頃に作られた最新の型でもあるため使用者が多い。元々はガルガンドの型が強力過ぎたためその対抗策として生み出されたものである。主な使用者はヒルブライデ。
この剣技の設定は某有名SF映画を参考に作っていきました。世界観を作るのはかなり大変な作業に思います。これからも頑張って完結できるように精進してまいります。よろしくお願いします。
※カクヨムと同時掲載です。