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第十八話 大戦再び

 作戦決行前日、アルスはヒルブライデと決闘しヒルブライデが仮面の女という真実が発覚する。彼女は正体を口外しなければスフィアーネ女王の無事を保証した、それだけでなく王国側で活動する仲間の命もある程度は保証すると約束された。アルスは彼女の提案に乗ってしまう……

 昨日の模擬戦から仮面の女の正体がヒルブライデなのを知った。

 模擬戦が終わって、部屋に戻りベッドに入る。疲れていたのか不思議とよく眠れた。

 ヒルブライデの約束……仮面の女という事を口外しなければ、スフィアーネ女王は助かるし、王国側の作戦に参加する人の命もある程度保証するそうだ。

 果たして、これは正しい選択だったのか……。


 翌日になり、まだ辺りは暗い。当然子供であるテレスは寝ている。

 王国から共和国側に向かう者は国王より先に着いていなければならない。

 身支度を済ませ、指定の場所に集まる。


 王都外門より離れた場所……

 指定の場所に来ると、アグライトと王国のアグライトと親しい兵士が数人そしてヒルブライデがいた。

「やっぱり少ないですね。」

 自分は周りを見て話す。

「しょうがないさ、王国の兵士はほとんど国王に仕えているから。」

 アグライトがそう答える。


 馬に乗り、共和国まで目指す。走ってると日が徐々に登ってきて日の出を見ることができた。


 三、四時間程で元共和国都市に着いた。

 都市の風貌はさらに悪化しており、三日前子供のエルフに襲われた影響もあってか都市の人々を見かけることが全くない。


 皇帝が率いる部隊は城より少し離れていた、馬を走らせた先に帝国のテントが多く見えた。かなりの大部隊だ、恐らく野営地だろう。


「止まれ!」

 帝国の兵士が前に出て指示をした。

「王国から参りましたアグライトです、皇帝との面会を希望する。」

「失礼しましたアグライト殿。少数だったもので、つい。」

 少数だったため敵の索敵か何かだと勘違いしたらしい。


 野営地に入ると約2500㎡ぐらいの長方形で頑丈な岩の壁で覆われており、中にはテントや元々人が住んでた家を使っているらしい。

 壁にはいくつかの簡易的な張り出し櫓が立っていた。中にも簡易的な櫓がいくつか立っており中と外を監視できるようにしているようだ。

 周りをざっと見ると2万人ほどの兵士がいた。

 たった二日で建築士や魔法を駆使してこれを立てるのだから、すごいものだ。


 ここは都市から少し離れているので道は平坦で村が多かった。三日前の騒ぎで人が急にいなくなったので建物を少し拝借してるらしい。

 外にいくつかの簡易拠点があるらしく、国王一行が通るであろう道に建設しているようだ。

 ここは特に村から都市の境目であり最後の防衛拠点だそうだ。


 自分達は皇帝がいるテントに案内されて入る、一回り大きい。

 皇帝が椅子に座っており、甲冑を身につけていた。全身黒で覆われ赤いマント、兜はフルフェイスで闘牛を彷彿とさせる大きな角をあしらえた物だった。後ろの剣掛けには禍々しい巨大な剣が掛けてあった。

「久しぶりだな、アルス。」

「あえて光栄です皇帝陛下。」

 挨拶が終わり、皇帝がアグライトに目を向ける。

「お主がアグライト殿か水晶越しでしか対面してなかったな。改めて今日よろしく頼むぞ。」

「こちらこそ、よろしくお願い致します。」

 アグライトが深々と頭を下げる。

 テント出入り口から「良くきたな」とドルクが出てきて自分の背中を叩いてきた。

「さて、もう時期国王がここに攻めてくる。奴のことだ、このまま真っ直ぐ進軍はしないだろう。部隊を分けるはずだ。」

「少数の編成で向かいますね、近くには騎士団長が常にいるはずです。」

 アグライトが話す。

「ああ、間違いない。そこで、私はこのまま古城付近に赴く。ここの拠点はドルクに任せるぞ。」

「はっ」

「アグライト殿一行は私と一緒にきてくれないか?」

「ええ、もちろんです。必ずや活躍して見せましょう。」

 そして、あらかたの予定を聞いた。前線の拠点で敵を発見した報告を受けたらすぐに都市に出立するそうだ。


 皇帝のテントから出ると、赤髪の青年がこっちに気づいて近寄ってきた。

「あなたがアルスさんですね?ドルク師匠から一本取ったって本当ですか?」

 興奮気味に話をかけてきた。

「ああ、自分はアルスであってるけど……一本は取ってないよ。」

 恐らく2年前、ドルクさんの模擬戦の話をしているのだろう。

「本当ですか?」

 怪しい目で見てくる青年。なんかめんどくさいな……。

「と、ところでドルクさんを師匠って言ってたけど……」

「よくぞ聞いてくれました!俺は一番弟子の……」

 その時青年の顔にガンっとバケツが当たった。

「油売ってないで働け。」

 ドルクが投げたらしい。

 バケツを持ってそそくさと厩舎に向かった。

「悪いなアルス、あいつの言った通り俺の弟子だ。お前との模擬戦を話したら興味が湧いちまったみたいでな、ちとバカだがいい奴だよ。」


 ドルクさんとしばらく話をしていると、鐘の音が響き渡る。

「敵だな。」

 冷静に話すドルク。

「上です!!」

 近くにいた兵士が声を上げる。

 上空を見るとドラゴンがいた、恐らく子供のエルフだ。

 この高さでは、弓どころかバリスタすら届かないだろう。雲の上で影しか見えない。

 ドラゴンはぐるっと野営地を一周しどっかに行ってしまった。

「偵察だな。」

 ドルクがそう話す。


 しばらくすると、帝国の伝達が顔を出す。

「国王一行が動き出しました!中継拠点はドラゴンの攻撃により壊滅!今はこの付近の拠点にいる兵士が交戦中です!」

 張り出し櫓からも兵士が降りてきて情報を伝える。

「敵の軍勢を確認!敵は五万以上と推測!こちらに向かって来ています。」

「五万だと……王国のほぼ全てを投入してるようなもんだぞ……。」

 アグライトが驚いていた。

 確か、ヘルヘイムがラスティーネ謀殺には数人しか居ないって言ってたな……。

「すぐに出立だ!城へ向かう!」

 皇帝がテントから顔を出して大声で話す。

 その後自分達は皇帝と共に城へ向かっていった。



 アルスが共和国に着く数時間前……。

 朝か……。

 クフラクが目を覚ます。

 俺は身支度を済ませ大広間に出る。

 今日は早朝から、みんな忙しそうだ。アルスさんは日が昇る前に仕事があるらしいし、ここ最近忙しいのが分かる。いつか壊れちゃうんじゃないのかな?

 ハセクさんも早朝から王城に行かないとダメらしいし、大変だな……。

「おはようございます。」

「「おはようクフラク。」」

 アルバートさんとハクレさんが挨拶してくれた。それにしても二人は仲がいいよな。

「クフラク、今日は三人でテレスの護衛だよろしくな。」

「なんで三人も護衛をつけるんですか?アルバートさん。」

「今日は王国兵士、騎士そして剣聖隊も人が少なくてそれぞれ分担するとあまり機能しないから偏らせたんだよ。」

「だったら、見回りを一人出しても差し支えないと思いますが。」

「それはギルドの人達に任せたよ、意外と王国に奉仕してくれる人が多いんだ。」

 嘘は言ってない、でも何かありそうな話し方だ。俺は大人を信じる、何か訳があってそうしてるんだ。


 そうして、テレスを剣聖隊施設の外で遊ばせた。

 外に出てみると街はいつも通りである。だが、王国の兵士が極端に少ない。防衛目的でハセクさんを派兵させたのかな?

 

 一方王城では……。

「なんで、ハセクさんがいるのですか?」

 ラスティーネは疑問を口にする。

「まぁ、色々だよ。」

 適当にはぐらかすハセク。

 

 ラスティーネの部屋は王城2階にあり円柱状に屋根が付いてる所に居る。その下は地下に繋がっており外に出られる仕組みだ。

「さて、そろそろかな。」

 ハセクは予想していたと言わんばかりに呟く。


 耳を澄ませると下から何かが上がって来る音が聞こえる。

「ラスティーネ様お茶をお持ちしました。」

 メイドが扉を開けお茶を持ってくる。

「いつもありがとうございます。」

 ラスティーネが感謝する。

 朝はお茶を飲むのが日課らしい。

「ハセク様の分もお入れしますね。」

 メイドがそう答えるが。

「僕はいいかな、それよりポットの中には何が入っているの?」

「中には近隣の村から手に入れた質の良い茶葉を……」

「今はね、茶葉じゃなくて中身の話をしてるんだよ。」

 メイドの話を遮るように話すハセク

 その後、スーゼルとアレクや他兵士が中に入り扉を閉める。

「毒味してみてよ、君。王女には危険な物を飲ませちゃまずいだろ?」

 怖い顔で話すハセク。

「そうですね、それは間違いない……。」

 そう話すメイドはスカートの中に素早く手を入れた。

「スーゼル!」

 ハセクが叫ぶ。

 スーゼルが剣を抜きメイドに切り掛かると短刀で防がれた。

 その時窓が割れアサシンが二人入って来た。

「アレク!急いで地下に!」

 スーゼルがアレクに指示をする。

「わ、わかりました!」

 オドオドしながら、地下に繋がるスイッチを押して下に行く。

「姫!こちらに!」

 アレクがラスティーネを誘導する。

 かなり手練れのようで時間がかかる。


 しばらく攻防が続くようだったのでハセクが痺れを切らして話す。

「スーゼルも急いで!三人は僕がやる!」

「すまない!頼む!」

 スーゼルも地下に向かっていった。

「さぁ、かかって来てよ。」

 ハセクは右手に剣左手に魔導書のハグバルの型をとる。

「お前ら、取り囲め!」

 メイド姿のアサシンが二人に指示をする。

「悪いけど、時間がないんだ。」

 ハセクは魔導書を使い三人を雷でまとめて倒す。

「さ、さすが雷獄……。」

 三人は殺さず捕縛した。


 それにしても嫌な予感がするな……スーゼルは50年以上の付き合いだし……彼は絶対白のはずだ。でも、アサシンの数が少ない……まさか……。


 王城牢獄に続く道……。

 アレクと他兵士三人で王女を護衛している、スーゼルは遅れて着くようだ。

「もうすぐ地下牢に着きます、王女!」

「頑張ってください!」

 王国兵士が女王にそう話すが。


 走っていると扉が目に入る。

「あの扉です、もう少しで……?!」

 隣で話していた兵士が倒れた。

「アレク……なんで……?」

「残念だったなお前達、昔村にいた時から気づかなかったのか?」

 アレクは扉の方に手をかざし床を迫り上げ扉が開かないようにした。

「そんな、嘘だ……村に出た時から王女に恩を返そうって……。」

「そんなの嘘に決まってるだろ、俺の目的は王女の殺害だ。」

「くそおおおおお!」

 王国兵士が槍を持って戦うがアレクはかなり強かった。

 あっという間に残った二人を剣と槍を使って葬った。


「ああ、恐怖で怯える人を見るのは美しいですね、王女。」

 ラスティーネは目の前で人が惨殺され言葉を失い足がすくんでいた。

「なんか、喋って欲しいです。感想とかないんですか?」

「信じてました……。」

「あ?」

「あの時、村に来て農具や物資を渡して豊かになった時から笑顔で溢れてました。アレクさんもその一人じゃなかったんですか?」

「バカ言ってんじゃねーよ、そんなもん猿芝居に決まってんだろ。」

「じゃあ、アレクさんが今手にかけた幼い頃からの友人はなんとも思わないんですか!」

「あのなぁ、姫さん……欲しいものがあったら多少の犠牲はつきものでしょ?悪かったって思ってますよ。」

 笑いながら話すアレクにラスティーネは理解できなかった。


「欲しい物ってなんですか……。」

「強さ!権力!金!女!全てだ!」

 狂ったように叫ぶアレク。


「確かに、村に姫さんが来てから俺の地域は豊かになったさ。でも、満足はしないね絶対だ!そしたらよぉ……そんなこと考えてたら声が聞こえて来たんだ、力は欲しいかってな!それから俺はサタン様に付き従ったさ!傲慢なお前には全てを手に入れる価値があると!それから、俺はやっと狭い村という世界を出るきっかけができた!」

 でかい声でおまけに早口だ、感情的になっているのが分かる。


「あーあー悪かったな……ついつい感情的になっちまってよ、世は自分が一番じゃないとダメだったんだ。才能もない特徴もない俺は力が欲しかっただけさ。」

「そんなことのために、友人を殺すんですか?」


「うるせええええええええ!大体お前は早い段階で殺すか誘拐するかだったんだ!!なのに、アルスとかいう奴が居たせいで計画が全部ぅ台無しだぁ!お前が村に訪問した時に本来はアルバートが護衛する予定だったんだ!なのにアルスとかいう奴のせいで盗賊は時間稼ぎにもならなかった!!アルバートだったら時間かけて戦うだろおおおおおおお!!!!!!!!!」

 ハァハァと息切れを起こすアレク、思い出したのかとてもイライラしている。


「あの時もそうだ!宴会の時もあの女がアルス相手に手加減なんかするからだ!時間がかかったせいでマルマキアが俺たちの集合場所にきて戦うからさぁ!!女ってめんどくセーよなあああああ!!!!」


 よほど怖かったのかラスティーネが泣いてしまった。

「ああ?何泣いてんだ?泣きてーのはこっちだよ!お前のせいで友人を殺すハメになったんだ!どう落とし前つけんだ!!」

 今のアレクは情緒不安定である。

 アレクはそのままラスティーネを押し倒すが。

「少しぐらい楽しませてもいいよなぁ!これじゃあアルスにそういう趣味とか言ってらんねぇなぁ俺も!」


「姫から離れてもらおう。」

 スーゼルが剣を構えアレクに訴える。

「邪魔しやがって、クソ上司が真の俺に勝てる訳ないだろ?」

「それはどうだろうな……。」


 地下牢獄では……

「遅い……。」

 セブラブが不安そうに独り言を呟く。


 クフラクの方では……

「あれは、なんですか……。」

 上空を見てクフラクは驚いたように話す。

 空には黒い渦ができており王都全体を覆っている。中からガーゴイルや悪魔の使いが多く出てきた。


 黒死隊および帝国軍では……

「隊長あれを」

 ガイストが空に指をさす。

「魔界の扉か、これはまずいな……。」

 バルキルウスが心配する。

「我々はいつでも出陣できます。」

 帝国兵士がバルキルスに伝える。

「悪魔狩りだ!皆殺しにしてやれ!」

 バルキルスの軍勢は王都に向かっていった。


 ヘルヘイトスの方では……

「えぇ……あれ……なんですか……。」

 上空の悪魔にビビるヘルヘイトス。

「ぼさっとすんな!お前はギルドに行って応援を呼べ!」

 カラス座のメンバーがヘルヘイトスに指示を投げる。



 こうして、前共和国と王国側で大規模な大戦が再び起こった。この後、取り返しの付かない結末が待っていた。



 十九話に続く………。



 世界設定:キャラクター8


 アレク、彼は王国に所属する兵士であり第三話に出て来た村の出身者である。特に特徴はなくモブ的な立ち位置で今までやっていたが、その正体は悪魔サタンと契約している人物である。普段は弱い演技をしており、実際はかなり強い。槍と剣が得意であり、使う剣技はハグバルを使う。主に剣盾で構えるが、敵との距離を見て槍に持ち替える。魔法も無属性だが扱いには長けている。悪魔と契約する前までは優しい青年だったが契約し力を手に入れてからは出来ることが増えたため貪欲になっていった。その後はサタンの命令通りに動きラスティーネの誘拐を試みるが失敗する。年齢は22歳



 

 読んでいただきありがとうございます、これからもよろしくお願いします。

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