第十七話 信じた者
クフラクと一緒に店を出ると、見知らぬ女がそこにいた。手紙をもらい中を確認、アグライトの密偵だったようだ。手紙の内容通り目的地に行くのだが……。
アグライトさんの密偵から手紙をもらった、酒場の地下で落ち合うそうだが。
深夜になり、酒場に入る。主人がいてここの下に案内された。
中はお酒の樽が多く配置されており、やや広い。
「アルスも来たな。」
アグライトの方を見ると後ろに昼に会った密偵を発見した。名前はヘルヘイトスというらしい。
その後続々と人が入っていき密会が始まろうとしていた。
今、この部屋の中にはヒルブライデ、スーゼル、アルバート、ハクレ、ハセク、アグライト、ヘルヘイトス、セブラブ、キーウィが居た。
テーブルを用意し中央にキーウィの水晶玉が置かれた。
「皇帝陛下、王の共和国の訪問日がわかりました。」
キーウィが話すと。
「待ち侘びたぞ。」
水晶玉から声がする。
「さて、そろそろか……。」
水晶玉から皇帝以外の声がする。
「紹介しよう、今回の作戦に協力する者たちだ。」
「俺はガイスト、黒死隊のメンバーの一人だ。」
「同じく黒死隊オレオンスだ。」
「今回は黒死隊総出で計略する。尚、帝国騎士団からも幾つか派兵しよう。」
あらかた、紹介し本題に入る。
「今回王国の戦力が二分されますが、大半が共和国に流れるでしょう。そして、残りの少数兵でラスティーネ様の謀殺を図ると我々は読んでいます。」
アグライトが説明する。
「そこで、ラスティーネ様にはスーゼルさんと剣聖を付けて護衛に回らせます。」
「じゃあ、僕が付くよ。」
ハセクが一番に名乗りをあげた。
「テレスの護衛はどうする?」
ヒルブライデが提案をする。
「確かに、護衛をつけないと拐われる可能性がある。」
アグライトが答える。
「なら、私とハクレで引き受けます。」
アルバートとハクレで護衛するようだ。
「一緒にクフラクも護衛しましょう。その方が良さそうですね。」
ハクレが提案する。
「なら、そちらは決まりだな。残った剣聖は共和国に向かうか。」
自分とヒルブライデで共和国に向かうそうだ。
「ならば、私とドルク率いる騎士団及び兵士で共和国に向かう。この手で直接決着をつけさせてもらう。」
皇帝直々に相手をするそうだ。
「黒死隊と帝国兵士は王国に向かわせる。」
皇帝が提案した。
「よし、あらかた決まったな、決行は二日後。大規模な戦いだろうな。」
その後の詳細だが、セブラブはそのまま王国地下で待機しラスティーネが秘密の逃げ道を使った場合背中に乗せて遠くに逃げる。秘密の逃げ口は地下と繋がっており地下には地上に戻れる場所が存在している。
ヘルヘイトスだが、直接戦闘は避け情報をテレスを護衛するアルバート達とスーゼル達に共有する役目を果たす。彼女には密偵の仲間がおり普段はチームで活動しているそうだ。
キーウィは共和国組と王国間の情報交換並びにテレス達に危害が及ぶ場合戦闘に参加する。
アグライトは共和国に赴き何人か信頼している部下を連れていくそうだ。
共和国に行く帝国側は国王が城に入る前に戦いを行う。
王国側は城付近に帝国の隠密部隊を忍ばせてラスティーネが外に出た時に保護をする。
他黒死隊や兵士は帝都内には入らず目立たない場所で待機する。帝国兵が王国領内にいると住民がパニックになるため予防線を張る。トラブルが発生してから、王都に侵入する手筈になった。
翌日になり残された猶予は明日だけだ。
今日はエレスの見舞いにきた。まだ目が覚めない。
この戦いが終わっても目を覚ますとは限らない、あの時連れてきたことを後悔した。
その後、病院を出て業務に戻る、今日は王都の見回りだ。
「あ、アルスさん。」
「これはヘルヘイトスさんお疲れ様です。」
偶然ヘルヘイトスに会った。彼女はどうやら、王都内の情報を収集しラスティーネ姫の謀殺に関わる兵士を割り出そうと回っているそうだ。
「順調そうですか?」
「はい、それなりには。どうやら、謀殺の参加者は王城に数人程度でした。」
「少ないですね。」
「本格的に手を汚すのは王国で雇ったアサシンだそうで、この方達の情報が掴めないんです。」
「それは、困りましたね。」
そんな話をしながら彼女の正体も少し教えてくれた。
彼女は王国のギルドに所属する諜報員でギルドの依頼は彼女達が収集している。中には極秘のものもあり取り扱いが厳しい情報も持っている。そんな中アグライトが彼女に目を付け金で雇ったらしい。ヘルヘイトス以外にも3人ほどメンバーを雇い部隊を結成した、その名は諜報部隊カラス座である。通称、カラスやカラス座と呼ばれているそうだ。
ヘルヘイトスと話をして別れた。
剣聖隊の施設に戻るとラスティーネ女王とスーゼルがいた。
「どうしました?」
自分が疑問に思い質問する。
「アルスさん、テレスさんはどこにいらっしゃいますか?」
「どうして急に?」
「姫がテレスちゃんと仲良くなりたいって聞かないんだ……。」
困ったように話すスーゼル。
まぁ、遊び相手が増えるしテレスも喜ぶだろう。
確か、今日は剣聖隊の施設の周りで遊んでなかったような。
この後事務室に行ってみるとハクレの隣にテレスがいた。
おかえりと言って抱きついてきた。
「ただいま、今日は何してたんだ?」
「本読んでた。」
「そうか。」
「ちょっと近いんじゃありませんこと?」
王女が割って入ってくる。
「まだ、子供ですし仕方ないですよ。」
自分がそう諭すが。
「私も子供です。大してテレスさんとも年も変わりません。」
確かに、よく考えてみればテレスとラスティーネは同じ背丈でテレスがもし人間であれば年もそんなに変わらないか。
「テレス、ラスティーネ姫が仲良くなりたいってさ。」
「うん、わたった。」
こくんと頷くと外で遊ぼうと言ってラスティーネの手を引っ張っていった。
「テレスちゃんには助けられたよ。」
そう話すスーゼル
「それはなんでですか?」
自分は疑問に思い質問する。
「最近、クフラク殿の婚約のために色々と準備を王城で進めていたらしい、王女としての作法や振る舞い、ある程度の習い事、ここ最近ずっと城にこもってたから顔にも疲れが出てて……」
「そうだったんですか、王女も大変ですね。」
ハクレが同意する。
「でも、これも謀殺を悟られないようにするダミーなんだろうな、全く。」
不機嫌に答えるスーゼル。
ラスティーネとテレスが外に出たのでスーゼルと共に外へ出る。
外を見ると、二人とも元気に遊んでいた。
「そういえば、あの二人は当日の護衛対象でしたね。」
「ああ、そうだな。守らなければなるまい。」
「残った猶予は明日だけ、その後は……。」
「ああ、もう時間がないな。」
そう、時間がないのだ敵はもうすぐ動き出す。あの二人を狙って。
日も落ちていき、スーゼルとラスティーネを見送った。
また、遊ぼうと約束し姫は王城へ戻っていった。
「楽しかったか、テレス?」
「うん、とっても楽しかった。」
その後剣聖の施設に戻り就寝した。
目を覚まし翌日になった。今日で最後、明日には王が動き出す。
隣で寝ているテレスを起こし身支度を整える。
自分の部屋から出るとハセクが倒れていた。
「だ、大丈夫ですか?」
自分は心配し近くに寄る。
「ん?大丈夫大丈夫……。」
どうやら酔っているようだ、とてもお酒くさい。
「お、おはようございます、兄貴……ウプ……。」
メガネも部屋から出てきた。かなり飲まされたのだろうか、ハセクは普段優しいが時々クソ上司なところが垣間見える。
「な、なんか昨日ぐらいしか飲むチャンスがないとかって言って飲まされました……。」
何やってんだこの人……でも、好きなことができるのも今のうちか……。
その後、花屋で花を買い病院へ行った、これがエレスへの最後の見舞いだ。
今日はテレスも一緒にいる。
「まだ、起きないの?」
「ああ」
テレスは突然エレスに向かって治癒魔法を繰り出した。
その時である。
少しだが目を開けた、テレスは天性の魔法を極めつつある。
「エレス、すまないこんな目に遭わせてしまって……。」
自分は今しか伝えられないと思って思ったことを全部話した。
喋れないのか、口を少し動かすだけだった。「謝らないで下さい」や「誰も悪くない」の言葉を頑張って伝えてくれた。
その後、疲れてしまったのかまた目を閉じてしまった。
「テレスありがとう。」
「私もエレスが起きて欲しいって願ったから。」
その後医者から聞いたがエレスの体を調べた際、小腸大腸に大きな損傷、肺に少し傷がつき、肝臓や胃にも大きな損傷がみられた。そのため、ひどい損傷部位は摘出し他は治癒魔法や縫合手術でなんとかしたらしい。
もう長くない、アーブルの応急処置のおかげで、ある程度は生きられるが普通の生活は難しいそうだ。
もう、元気な彼女を見ることができない。
あの時交代していれば、間違いなく結果は変わった。
生きて帰ったら、また見舞いにこよう。
病院を出て、テレスと共に街に出た。商店街の方を歩いていると、クフラクがいた。今日は見回りのようで、話しているのは前にトラブルが起きた店の主人だ。
「おう、アルスの兄ちゃん。怪我したとは聞いたが元気そうだな。」
「ええ、命に別状はありませんから。」
「ん?その子何処かで……」
店の主人がテレスを見る。
「うちの食いもん取ったガキじゃねーか。どうしてアルスのにいちゃんが?」
「しばらくこっちで保護することになりました。」
話している最中にテレスが前に出て、あの時はごめんなさいと主人に謝った。
「別にいいよ、剣聖隊のおかげで万引きなんてもうしないんだろ?もう、やらねーなら大丈夫だ。」
別れる際にリンゴをもらった。気前が良い人だ。
そのまま剣聖隊の施設まで歩いて行く……。
「ところでクフラクは何してたんだ?」
自分は疑問に思い質問する。
「俺、自分が今までに悪態ついたり暴言言っちゃった大人に謝ろうと思って。見回りの際には、言っちゃた記憶のある人には謝って回ってます。」
「本当に色々変わったな。」
「ええ、これはハセクさんとテレスのおかげです。」
「私何もしてないよ。」
テレスが疑問に思って返す。
「いいや、俺にとってはテレスの一言のおかげで変われたんだと思う。今まで自分しか見えていなかったから、今度は相手の立場になって考えようって。」
本当に変わった、子供っぽさが薄れて行くのが分かる。
そして、剣聖隊の施設に着いて大広間で報告を行った。
報告が終わった時にヒルブライデから話をかけられた。
「アルス、この後時間はあるか?」
「飲むんですか?」
「いいや、模擬戦場まで来てくれ肩慣らしがしたい。」
「わかりました。」
剣聖隊施設小さな模擬戦場………。
「背中はどうだ?」
ヒルブライデが心配そうに話す。
「だいぶ楽になってきました。」
空いた時間にテレスやハクレに治癒魔法で少しは楽になっている。
「よし、ならば本気で行くぞ。」
「自分も容赦しません。」
二人は構えて、睨み合う。
今回は自分から切り掛かって行く、ヒルブライデはバーラスの型を上手く使って攻撃を凌ぐ。
自分は攻撃の隙は与えないと、魔術でヒルブライデを吹き飛ばそうとするが、ヒルブライデもそれを相殺し衝撃波が生じお互い吹き飛んだ。
一方剣聖隊施設では……。
「なんか、すごい音しましたね。」
ハクレが心配そうに話す。
「そういえば、隊長とアルスが模擬戦するって言ってたな。」
とハセクが話す。
「私1抜けです。」
とアルバート
『ゲ、ジョーカーだ……。』
とクフラク
四人で楽しくババ抜きしていた。
模擬戦場に戻り二人は体勢を立て直す。
「さすが、アルスだちょっとずつ強くなってる。」
「ありがたいお言葉ですね。」
「じゃあ、私の本気……いや、本性を見せようかな。」
今度は本気らしいが構えがガルガンドに変わった。
ヒルブライデから攻撃を仕掛けるが、隙が大きい。そこを狙うがフォームを変えてバーラスに戻された。自分から距離を置くと氷柱を発射させ牽制を図る。
この戦い方……何処かで……。
その後、究極型に変えて自分から攻撃し相手の反撃を予測していなすが、自分の手元を狙ってきた。そこを巻き取ろうとすると今度は巻き返され、首を刺してきた。かなりギリギリだったが避けた。
それよりも気になるのは、反撃の際手元を狙ったことにある、それだけじゃない戦い方に既視感しかなかった。
「同じ手はもう喰らわないよ。」
『同じ手……まさか……。』
この時確信した、ヒルブライデは仮面の女だ……。
今のままでは勝てない、再びエルシドの型に戻した。
「今度は私から行こうかな。」
するとヒルブライデは全身に魔力を巡らせ身体強化を図った。
こっちに飛んできて剣を振り下ろす、剣で防ぐと手が痺れるの感じる。
そのまま斬撃が続いていく。
攻撃が全体的に重い、とうとう剣が折れてしまったがヒルブライデが折れた剣に気を取られているのがわかった、そのまま折れた剣で刺した時、リフレクターが発動。突きが自分の腹に入る。
模擬戦用の剣で助かったがかなり痛い。
「大丈夫ですか?アルス君?」
心配そうに見守るヒルブライデ。
「なぜ?」
「それは、明日わかります。ただし今日の事を誰にも口外しないと約束できるならばですけど。」
「できなければ?」
「んー出来れば約束して欲しいですね。」
考えながら話すヒルブライデ、そして思いついたのか口を開く。
「そうだ、秘密にしてくれればスフィアーネ女王を助けます。そして明日、王国側で作戦に参加する人達の命もある程度は保証しますよ。間に合えばですけどね。」
命か……これでラスティーネや剣聖隊そしてテレスや謀殺阻止に関する兵士が助かるなら……。
その時自分は彼らの命を天秤にかけてしまった。
自己中心的な尊さが勝ってしまい彼らを破滅の道へと誘ってしまう。
自分はヒルブライデの約束を守ることを選んでしまった………。
十八話に続く……。
世界設定:治癒魔法について
治癒魔法は、天性の呪文を使える者にしか発動ができない。エルスター教の信仰力が強ければ、その効果も上がる。基本体の傷だったり、病気や毒に侵されていればある程度は治せたり和らぐことができる。ただし体が欠損してしまった場合は再生は不可能である、治癒魔法の威力が高ければ欠損したものと欠損した本人がいればくっ付けることが一応可能である。欠損したものがボロボロだったり腐っていては、くっ付ける対象にはならない。高位の者、例えば神に近い存在であれば死んだ者の命を吹き返すことが可能である。とはいえ、肉体がなくなってしまえば意味はない、尚死者の蘇生は治癒ではなく蘇生魔法に入る。
読んでいただきありがとうございます。いよいよ、仮面の女の正体がバレましたが皆さん薄々分かっていたと思います。これから色々明らかになります。また、よろしくお願いします。




