第十五話 古城
アルスが皇帝と交渉している間、王国では様々な出来事が起こっていた。少年の成長、国王の真実……それらが起こった後の翌日、アルス一行が王国に帰還するが……。
無事、皇帝と交渉し王国へ帰還した。すぐさま剣聖隊の施設に戻るのだが……。
「ああ、来たね。」
大広間の扉を開けると剣聖隊のエレス、クフラク以外のメンツとアグライトさんがいた。
「ん?後ろの子は誰だい?」
ハセクがキーウィを見て首を傾げる。
そして自分は帝国で聞いた話をみんなに話した。
「なるほど。これで国王を不審に晒すことができそうだね。」
その後、アグライトさんからも密偵から聞いた情報を話してくれた。
「じゃあ、もう早速皇帝陛下に連絡しちゃうよ。」
キーウィが水晶玉に顔を覗かせる。
「陛下、入国して早々ですが。剣聖隊一行が国王の目的が少し明るみになったようです。」
「そうか、早いな。」
水晶玉から皇帝の声が聞こえる。
「どうやら、彼らの話を聞いている限りスフィアーネ女王は生きている可能性がありそうです。」
「それは誠か!?」
「古城にいるようですが、行ってみないことにはどうにも……。」
「うむ……。」
「それともう一つ、次の世継ぎを男児にするために古城に向かうと言っております。」
「く……!では、日時はいつだ?」
「まだ、分かりかねます。」
「分かり次第すぐに伝えよ!」
「承知しました。」
これは遠隔魔法の一種らしいが、かなり高位な魔術師でないと扱えないようだ。
「国王の出立の日時は私の密偵に情報を掴ませる。どうやら私とスーゼルさんは目をつけられたらしい。」
「それって大丈夫なのかい?」
ハセクが心配そうに話す。
「泳がせるらしいです、そしてアルスを狙った子供のエルフも恐らく国王が仕向けた可能性が高い。」
「じゃあ、完璧に僕たちは危ない立場にいる訳か。」
「ええ、ここで大きく動けば——あっちが何をするか分からないですね。」
「じゃあ、どうすんだよ。」
キーウィが話すが。
「私にいい考えがある。」
アグライトが自信よく応える。
王国城地下……。
自分はアグライトさんに何故か連れられて地下牢に入って行った。
「おい、でろ。」
アグライトさんが囚人に話すが。
「ああ?飯か?」
この囚人は……。
「あ!て、てめーは!」
囚人がこっちを見てびっくりしているが、思い出した。こいつは2年前村を襲った盗賊のボスだ。
「てめーこの野郎よくも独房にぶち込みやがったな!」
「口を慎め囚人、今日はお前に仕事を依頼しに来た。」
アグライトが話を始める。
「ああ?騙されねーぞ。」
帝国もといルビウスに騙された事を根に持っているのかとても不機嫌だ。
「まさか、私がお前を騙したことがあるか?」
「うるせーよ、それは拷問の時だけだろ!」
確かに、次は爪を剥ぐと言ったらちゃんと剥ぐしなこの人。
「で、アグライトさんはこの盗賊をどうする気ですか?」
自分は埒が明かないと思って目的を聞いた。
「古城に連れて行く。こいつは元共和国の住民だ、それと同時に敬虔なエルスター教の信徒だしな。」
「ああ、昔のことだよ。スフィアーネ様がいた頃は俺の地域も豊かだったんだよ。国王が来なけりゃな。」
「もし、スフィアーネ女王が生きてたらどうする?」
「言ったはずだ、騙されねーって……。」
盗賊は悲しそうに答えた。
「今、王国は変わろうとしてるんだ。仮にスフィアーネ女王が死んでいたとしても次はラスティーネ様だ。」
「あのガキンチョに何ができんだよ。」
「共和国の再建そしてスフィアーネ女王に変わる新たな象徴だ。」
嘘だ、共和国の再建なんてもの望みは薄い。
「……。」
盗賊が沈黙した。
「どうだ?エルスター教の敬虔な信徒だろ?女王の後継を見捨てるのか?」
「だが、俺は一度殺そうとした。」
申し訳なさそうに話す盗賊
「ラスティーネ様は寛容だ、そんなお前でも許して下さる。神の血を引いているんだから当然だろ?」
さらにアグライトが盗賊に詰め寄る。
「あ、ああ。ちょっと考えさせてくれ。」
「時間はない、日時は追って伝える。行くぞアルス。」
「はい。」
地下、牢獄から離れた場所……。
「結局騙してしまいましたね。」
「ああ、唆すのは悪魔だけじゃないってことさ。」
「それで……自分がここに来た理由は何ですか?」
「お前は、誰が怪しいと思う?」
「え?」
「剣聖隊の中に国王と繋がっている奴がいると思わないか?」
確かに居ても不思議はない。だが、仲間である以上疑いたくない。
「居てもおかしくはないと思ってます。ただ、誰が怪しいか見当がつきません。」
「よく考えてみろ、2年前盗賊が村を襲った日だ。盗賊がルビウスに偽物の情報を渡されたが、ルビウス本人はどこから情報を手に入れた?」
「あの時の兵士の選抜は剣聖隊と王女しか分からないはず。」
「そうだ、宴会の時はどうだ?」
「あの時の選抜も剣聖隊と王女か……。」
あの時王国は王女の警備を厚くするという指示なので選抜は分かっていない。
「共通点があるだろ?敵の目的は王女だった、残るは剣聖隊だ。その二つの出来事に常にいなかった人は誰だ?」
「スーゼルさんと隊長ですね」
「そう、二人の誰かだ。でも近々までヒルブライデとお前はいたからな、スーゼルも怪しいがまずこの二人に気をつけるべきだ。」
この二人が本当に国王と繋がっているのであろうか。
この時は疑いたくない一心だったが後に真実を知ることになる。
翌日、この日は共和国の古城に向かう。
向かうのは自分とエレス、セブラブ、そして元盗賊のアーブル、どうやら一晩考えて腹が決まったらしい。キーウィも行こうとしたらしいが、貴重な通信役なので控えさせた。
自分は狙われているが全身盗人のような見た目でフードを深く被っている。
戦力的に不足があっため、これまでの経緯を説明しエレスにも協力。こちらも自分と同じような服装だ。
現在、共和国の元都市にいるが、かなり荒廃していた。
「過疎化が進んでいると聞いたがここまでとは……。」
アーブルが悲しそうに答える。
先に進んで行くと廃棄された古城の門の前に着く。
「アーブルさん、中に入ったことはありますか?」
自分はそう尋ねるが。
「ああ、昔——毎週集会があってな、エルスター神に祈りを捧げるのさ。」
門を潜り中に入る。
大広間に入るが、かなり広い。神々しい壁画が天井にも描かれており圧倒されるが、人がしばらく補強してないせいか壁が欠けていたりと少し残念なところが見える。
アーブルが壁画に手を当てている、懐かしいのであろうか。
「アーブルさん先に行きましょう。」
自分はアーブルに声をかける。
「ああ、そうだな。」
四人で散策し隅々まで探す。
セブラブはずっと大広間をウロウロしている。
「アルスよ。」
「ん、どうしましたセブラブさん」
「下から、闇の魔力を感じます。」
「下からですか?」
だから、ずっとウロウロしていたのか。
「犬になってから、だいぶ嗅覚が良くなった気がします。」
「いや、関係ないでしょ。」
とりあえずツッコんでしまった。
「恐らく、地下通路だ。城が敵に襲われた際、王女を逃すために設けられたものの可能性がある。」
アーブルが説明する。
「であれば、王女の部屋を探しせば地下に繋がっているかもしれないですね。」
四人は王女の部屋に入るが、至って普通であり周りには本棚で埋められている。
「明らかですね。」
セブラブが察したように話す。
「まぁ、この手のものはそうですね。」
「どうゆうことですか?」
エレスは分かっていないようだ。
「ですが、仕組みがわかりませんね。これでは時間がかかります。」
セブラブが困ったように話す。
「先輩!隙間風です!」
エレスが道を見つけたらしい。
「では、ここが開くということですね。」
セブラブが話すが。
「私に任せてください!」
エレスは本棚を思いきり蹴って破壊した。
下へ続く階段を発見した。
どうやら、鍵やギミックなんてものはエレスの前では効果はないらしい。
下へ降りると地下牢の牢獄内に来たが、セブラブが魔力を感知したらしくボロボロの壊れたベットの下にまた隠された通路を見つけた。今度は梯子である。
下にゆっくり降りていくとまた扉があるが、禍々しい雰囲気を放っていた。
「間違いなくここから闇の魔力を感じます。」
セブラブが確信して話す。
「開けますよ。」
自分は警戒しながら扉を開ける。
中は寒く氷結系の呪文で故意的に凍らせてたのがわかった。
中央には大きい人間一人が入れそうな結晶が鎖で縛られていた。
恐る恐る近づいてみると中に女性がいた。
「アーブルさんこの人は?」
アーブルがこっちに近づいて中を確認する。
「間違いねぇ、スフィアーネ女王だ……。」
「どうやら、封印されているようです。」
セブラブが話す。
「壊せばいいんですね!」
エレスが前に出て剣で切ったら弾き返され、斬撃が天井にあたり傷ができた。
「高等呪文の一種リフレクトです。基本は常時、発動し続けることができません。ですが、この呪文の発動者はここの近くに居ないと難しいはずです。どうして……。」
セブラブが頭を悩ませている。
その後、鎖を切ろうとしても、そこもリフレクトがかけられており。城ごと破壊する方法も考えたが野蛮な上アーブルが悲しむし、尚且つ敵に悟られるため断念した。
ここに長居しても埒が空かないので、一回外に出て考えることにした。
「セブラブ、あの封印をどうにかする方法はないのか?」
自分はセブラブに尋ねてみた。
「どうにか出来るものではありませんね。封印してる人を倒すか、大賢者などの高位に位置する人に頼むぐらいしか思いつきませんね。」
「スフィアーネ様……。」
女王が生きてると分かってからアーブルはこの調子である。
「では、国王がここを訪れる際に女王の封印が解かれるはずです。そこを狙ってはどうでしょう?」
セブラブが提案をする。
「今はそれしかなさそうか……。」
自分は渋々賛成したその時だった。
荒廃した住宅の物陰から子供が歩いて姿を現す。
「その前に君達を殺す。」
そこには、数日前帝都に向かっている途中で襲ってきたエルフの子供だった。
「アルスさんあれは?」
エレスが疑問に聞いてくる。
「あれは、自分が旅行中に襲ってきたエルフだよ。」
「ああ、旅行と称したお仕事ですね。」
「そうだ、ちゃんと理解できてるようだな。」
「そこまでバカじゃないです……。」
「おい、無視するんじゃない!」
エルフの子供が怒ってきた。額を見ると紋章がない、恐らく兄の方だろう。あの時上空に居たため顔を視認できなかったが、弟とそっくりだ。双子だろうか?
「弟の方はどうした?」
「お前に話す事はない。」
ヘルケン!と叫んで上空から巨大なドラゴンが現れた。前のとは違う、明らかに強い。
「弟に負けたお前が俺に勝てると思うなよ!」
エルフがドラゴンに乗る。
「ギータです!危険な相手です!」
セブラブが警戒しながら話す、子犬の姿からデカイガルムに姿を変えた。
思いの他でかい、無策で挑むのは危険か……。
「これでも食らえ!」
エルフは大声を出してドラゴンが火を吹いた。
「危ないです!」
セブラブが地面を変形させて大きな壁を作ってくれた。
騒音の中静かになるのを待つ。
壁の形が維持できなくなり、崩れた時には周りの街が焼け野原になっていた。
「ギータで人を殺すなんて……。」
セブラブが呟く。
「どうした?この程度で終わると思うなよ。」
エルフは態度を大きくして話す。
「俺が時間を稼ぐ!」
アーブルは両手をドラゴンに向けて天性の呪文を放つ。
すると、ドラゴンは嫌がってこっちにはなるべく近づかないよう立ち回り始めた。
「どうしたんだよ!ヘルケン!」
「間違いないです、あれは闇の魔術で使役されてます。」
とセブラブ
「アーブルさんもう少し足止めできますか?」
自分がそう提案する。
「もちろんだ、任せろ!」
「エレスはドラゴンの注意を引いてくれないか?」
「おまかせください!」
それぞれ指示を出し、セブラブの背中に乗る。
「何企んでるんだ?」
エルフがこちらを観察している。
その時エレスが燃えてる破片をドラゴンに投げつける。
「うわ!なんだその戦い方!」
ドラゴンの動きがエレスに向いているうちにアーブルが全力の光球をドラゴンに当てる。
「しまった!」
エルフがエルスに気を取られている間に弱ったドラゴンが少しずつ下に下がっていく。
「今だセブラブ!」
良い高さになったのでセブラブに指示しエルフの背後まで飛んで行く。
そのまま油断したエルフに金縛りをかけてドラゴンから降ろす。
アーブルはそのまま天性の魔法でドラゴンを弱らせ続けてた。さすが、敬虔な信徒のため威力は高い。
セブラブが鎖をドラゴンの四方に召喚し、縛り付け動けなくした。
そのままエルフも拘束し動けなくした。
「国王はいつ古城に行くんだ?」
自分はエルフに質問する。
「絶対教えない!」
子供相手に殴ったり蹴ったりは少し気が引けるな……。
そう思いつつも、思いっきり顔を蹴った。
「悪いがこっちも時間がない。」
正直この時は焦っていた、弟が居ないということは他で何かしら行動しているという事である、剣聖隊に何かあれば計画も上手くいかない。
エルフに気を取られている時、後ろにいたアーブルさんが倒れた。
「あ、アーブルさん!」
後ろを振り返ると、そこには仮面の女がまた、立っていた……。
十六話に続く……。
世界設定:キャラクター7
アーブル、彼は第三話に登場した盗賊のボスである。襲った村は元は共和国領だったもので、近場で動きやすい者をルビウスが選び仕事を依頼した。スフィアーネ女王を崇拝しており、エルスター教の敬虔な信徒である。そのため、天性の呪文は威力が高く腕の良い魔術師と引けを取らない。基本王国は嫌っており女王が国王に嫁いでから政権が変わり共和国が少しずつ貧しくなっていった。特に国王の血を引いているラスティーネは謀殺の依頼をルビウスに引き受けた際、一切躊躇しなかったようだ。年齢は53歳、無属性、剣はあまり使わずナタや片手斧を愛用している。
見て頂きありがとうございます。少し忙しくなってしまいまして投稿頻度が落ちそうです、これからもよろしくお願いします。




