第十二話 同胞
テレスの正体をセブラブに確認してもらおうと思ったアルスは、それと同時にアグライトの王国の真の目的を探るために協力をお願いした——説得に成功し自分たちは……
昨日、アグライトさんの説得に成功した。本来ならテレスの正体をセブラブに聞くだけだったが、もしこの子の出現が何かの前兆であれば自分たちは阻止しなければならない。
朝になり起きるが、テレスとは一緒に寝ている。かなりのひっつき虫になってはいるが——この子が王国の脅威になっている以上警戒しなければならない。
アグライトさんとスーゼルさんが王国の情報を掴む間、自分たちは何をすればいいか。
大広間に顔を出し会議を始める。
「さて、今回だがテレスの処遇が決まった。」
ヒルブライデが話始めた。
「テレスは剣聖の施設で管理する。」
「え、孤児施設じゃないんですか?」
エレスが疑問に思って聞いてくる。この時、クフラクとエレスは自分たちの計画を知らない。
「ああ、急遽変更したのさ——王国が後で管理するから、しばらく剣聖隊で預かってくれってな。」
すごいでっちあげだった。多分この言種だと王国は黒だっていうこと前提に話している。
「なるほど!そうですか!」
全く疑わないエレス
「そういうことだ。クフラクとエルスは今日テレスと遊んでやれ。」
「え、仕事はどうするんですか?」
クフラクが真面目な質問をするが。
「あー、いいって大丈夫。とりあえず午後まで遊んでこい。」
ヒルブライデが投げやりな感じで喋る。
自分はテレスが自分の部屋に居ることを伝えて二人は出ていった。
「さて、本題だ。」
ヒルブライデが話を切り出す。
「うん、僕たちはアグライトとスーゼルが王国を探っている間にすることなんだけど……」
ハセクが話始める。
「帝国と協力できないかな?」
「流石にリスクはありませんか?」
アルバートが話す。
「いや、王国としてではなく一個人として行けば良いのさ。」
「ですが、協力を仰いだところで帝国にメリットはあるんですか?」
とメガネ
「確かに、そうなんだけどな……でも、とりあえず自分たちが何をやるのかを聞かせてみよう。」
「私、それに賛成したいです。」
ハクレが話始めた。
「以前、バルキルウスさんと話をした時に国王の本性をうっかり話しそうになったんです。もしかしたら何か掴めるかもしれません。」
確かに以前ハクレが国王は良い人と言った時、反発してたのを覚えている。
「なら、決まりだな。アルスはドルクとも仲が良いし君に任せようかな。」
ハセクがこちらを見て話す。
「はい、分かりました。」
「私も行っていいか?」
ヒルブライデが割り込んで話してきた。
「な、何で?」
ハセクが焦るように言う。
「私も帝国近衛騎士のドルクと話してみたいし、黒死隊隊長のバルキルウスなら私の兄の居場所がわかるかもしれない。」
それが、あなたのお兄さんなんだよな……。
「おい、お前たちなぜ目を逸らすんだ。」
「流石に……隊長が自ら行かれますと……ただでさえ二人なのに王国に怪しまれますよ……。」
ハクレが言葉を選んでるようだが、結構納得できる言い訳だ。
「ん……確かにそうだな。」
「じゃあ、方針も決まったしこれで解散だね。」
ハセクがそう話して各々が午前の現場に足を運んだ。
大広間を出てハセクと二人っきりになる。
「危ない、ハクレのおかげで何とかなった……。」
ハセクが冷や汗をかく。」
「ですが、ここまで来たんですし。本人に言ってもいいんじゃ?」
「まだ、国王を黒とは断定出来ないよ。君が帝国に行って正体を暴くんだ。」
「はい分かりました。」
どうやら、長期休暇をとるとして自分は王国関係者にバレないように行くのだが……。
翌日になり、自分は帝国に向かう準備をする。乗合馬車に乗り帝国領まで赴いて、そこからは歩きで向かう。
「じゃあ、気おつけてね。」
ハセクが手を振る。
「ええ、テレスを頼みます。」
「もちろん、常に守っているから安心して。」
そう、言葉を交わして目的地に向かう。
馬車に乗ると人が結構いて帝国領の村に用があるそうだ。席を詰めると隣から、聞き覚えのある女の声がした。
「失礼……。」
『ん?』
女性が隣に座ってきた。フードで顔が見えないが、どこか既視感があった。
「隊長ですよね?」
「いや、何のことやら。」
「何で、来たんですか?」
「有給とったから、別に大丈夫だ。」
「そういう問題じゃないです。」
一方剣聖施設では。
「ハセクさん、隊長有給とったとだけ言ってますがもしや……。」
アルバートが話すが。
「どこに行くとは言ってないし多分……。」
ある程度察しがついていた。
「それで、隊長の目的は何ですか?」
「ただ、知りたいだけ。」
ヒルブライデがさらに近づいて、誰にも聞かれないように話す。
「私の出自や、私の正体を知りたい。みんな何か隠してるけど、私には知る権利がある。」
「そうですか……。」
確かに——剣聖隊でなくても王国自体ヒルブライデを帝国に行かせないように計らっていたし、こちらを疑うのも仕方がない。
「帝国城についたら分かりますよ、特にあなたの家族については。」
「やっぱりそうか……。」
裏切られたと言わんばかりの表情だった。
しばらくして、帝国領についた。近くに村があるがそこは通らない、あえて山の方を渡って帝都を目指す。
「お、おい村の方から行った方が速いんじゃないか?」
「確かに速いですが、そのまま村の道に沿って進むと関所がありますよね?自分たちの行動は王国だけでなく帝国にも悟られないようにしたいです。」
剣聖隊の人間が帝国領でウロウロしてたら、怪しまれる。これでは、帝国城に着く前に王国にバレる——それだけは避けたい。
「あんな険しい山を登るのか?」
「はい、そこには人もいませんし都合がいいです。」
二人で山を登っていく少しずつ進んでいくと、頂上が見えていき遠くに山脈が見える。
「先に進むと帝国特有の山脈が見えます。結構急ですので気おつけてください。」
「お前は慣れているのか?」
「ええ、少しは。大戦終結時の帝国の傭兵は王国領への出入りが厳しかったですから、わざと人目のつかないルートで王国領に入っていました。」
話をしながら先に進む——道が緩やかになったので休憩した。
「君は山登りの才能があるのだな。」
「まぁ、必要でしたから。」
「まさか山登りデートとはね。」
「バカなこと言ってないで、先に行きますよ。」
小休憩を挟み、急な山脈を登る。
標高もある程度あるため、空気が薄く感じる。
「アルス君、君は疲れないのかい?」
「喋ってると余計疲れますよ。」
先に進んで日が暮れ始めた時、標高も低くなっていき小川を見つけた。火を起こし暖をとるが。
「火まで起こせるとは……。」
「流石に起こせますよ。」
「あと、どれぐらいで着きそうだ?」
「もう半分です。」
「意外と遠いんだな。」
「とりあえず、今日は休んでください。隊長疲れたでしょう?」
「いや、私は大丈夫だ。」
「足怪我してません?慣れないから多分擦れたんだと思います。」
「す、すまない足を引っ張ってしまって……。」
「いえ、仕方ないですよ……自分を知りたいのは誰だってそうですから。」
正直一日使って明日の昼には着く予定だったが、また日を跨ぐ可能性が出てきた。
「そういえば、アルスはテレスミクロの弟子だったんだよな?」
「ええ、そうですね。隊長は連れられたとか?」
「まぁ、正確には王国に誘拐されたのが正解だろうな。」
「誘拐ですか?」
「ああ、私はとある地下で拷問を受けていたんだ——私を助けてくれたのがテレス姉さんだ。姉さんは私を助けた理由は王国に命令されたからと言っていたけど、苦しみから助けてくれたことには変わりないし——感謝しているんだ。」
「そうだったんですね……。」
「ああ、でもあの人は私の中にずっといるから——たとえ見つからなくとも。」
ヒルブライデと師匠の話を聞いた——どうやら7歳の時、師匠に助けらてから王の命令で12歳まで師匠の元で修行したらしい。そして、12歳で剣聖に入り大戦に参加したそうだ——かなりの苦労者なのが伺える。
日が昇り再び目的地を目指す。
その間、自分はずっと周りに目を光らせ警備していた。
「おはよう、アルス……。」
かなり眠そうに挨拶するヒルブライデ。
「おはようございます、さぁいきましょう。」
正直、予定より遅れている急がなくては。
山脈を越え数時間、寝てないせいか——かなり疲れを感じる。
「大丈夫かアルス……。すまない私のせいで……。」
「いえ、隊長の自分を知りたい気持ちが分かるんです。最後まで協力させてください。」
隊長には家族がいる、自分にはそう呼べる人がいない。せめて、彼女には真実を知って欲しいと切に願っていた。
しばらくして上空から、黒いドラゴンを発見した。
「なんだあれは……。」
ヒルブライデが警戒する。
「さぁ行こうかマトン。」
ドラゴンの背中に人が乗っている。
『ワイバーンか?にしては禍々しいな。』
自分はそう思いつつ剣を抜いて構えた。
「無駄だよ、マトンに人が敵うわけない。」
そう言ってドラゴンが自分に突進を仕掛けてきた。自分は吹っ飛ばされて崖ギリギリで留まった。
「んーしぶといねー。」
ドラゴンがゆっくり降りてきて人の顔を確認する。子供のエルフか……性別は分からないが、額にテレスと同じ紋章がある闇と天を扱える者で間違いないか?
「君には用がないから死んでね。」
そう言って、ドラゴンの口から炎が見える——恐らく撃つ気だろう。
「おい、」
ヒルブライデがエルフに話しかける。
「君は後でね、僕が用あるのは君だか………」
その時、ドラゴンの頭が吹き飛んだ。
「ま、マトン!!」
「調子に乗るなよ、ガキが。」
なんかすごい怖かったが助けられた。
「本気で殺すのか?!僕は子供だよ?!」
「ああ、殺さなければいいんだろ?」
「はは……冗談でしょ?」
顔面が蒼白していた。
「何をしてるんだ!!」
また、空から何か来た——今度はなんだ?
「お兄ちゃん!マトンが殺されたんだ!!」
「何?殺された?」
話している方を見るとドラゴンがまた一匹、今度は種類が違うよに見える。人が乗っているように見えるが、兄弟だろうか。
「逃げられると思っているのか?」
ヒルブライデが近づく。
「おのれ、許さん!」
ドラゴンがヒルブライデに攻撃するが剣で防ぐ。
「ん、強いな。」
ヒルブライデが苦戦しているが、ドラゴンに隙ができたときドラゴンの体に触れた——その瞬間、触れた場所からドラゴンが一気に氷結化し始める。
「やばい!」
上に乗っている人が治癒魔法でドラゴンの氷結を解こうとしている。恐らく、さっきのと同じ、闇と天を扱える者で間違いない。
「ここは退くぞ!」
「わ、わかった!」
「同胞を救出するまで俺たちは諦めないぞ!」
ドラゴンを操っている者がそう言って空高く飛んでってしまった。
『同胞……恐らくテレスのことか?』
「大丈夫かアルス!」
「ああ、はい大丈夫です。」
とはいえ、腕がパンパンに腫れており痛む。ヒビでも入ったか。
「とりあえず、一回下山しよう。また襲ってくるかもしれない。」
ヒルブライデが提案した。
自分たちは下山した、怪我もしているし——また襲ってこないという確証がない。
村に到着し宿に入る。
「部屋は二つ空いてますか?」
自分はそう尋ねるが。
「いや待て、また襲われたらどうする?」
「流石に大丈夫ですよ。」
「大丈夫じゃない!ご主人、部屋は一つで構わん!」
それで、部屋に案内されるが。ベッドが一つでダブルサイズだった。
「なんかデートみたいだねアルス君。」
「やかましいです。」
十三話に続く……。
世界設定:使える魔法について。
第一話でも説明したが、魔法にはそれぞれ属性がある。主に火・氷・雷が主であり、それらに闇や天を付与することもまた可能である。火であれば最初は指先に炎を灯す程度で慣れてくれば火球を放てる。使い方によっては炎の壁を作れたりと変幻自在である。その他属性でも似たようなことが可能である、最上級になれば空から雨のように降らせることが出来るハセクが雷雲を作れるのも最上級魔法が使えるからである。両属性持ちなら併用もでき火と氷なら水を生み出せて尚且つ最上級だったら本当に雨を降らせる。天と闇では、天は主に人の傷を治せたり闇の魔術を使えるものを浄化できる、闇は死体を傀儡化したりもできる、姿をくらましたり幻覚を見せたりとトリッキーなものが多い。位が高い悪魔と契約すれば、転移魔法などより強力なものを授かるが、その分代償が大きい。
読んでいただき、ありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。




