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七剣聖伝説  作者: 山田孝彦
序章
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第一話 剣聖試験



 王国歴10年、ここは北に位置する王都ベルモンド。

 今、王国で一人欠けた七剣聖の補充のために試験を受けようと南にある帝国からはるばるやってきた。

 10年ほど前に帝国で少年兵をしていた。帝国は領地が狭く周りは山や谷で道が悪いため貿易が難しく商売に向いていない——そのため軍事力に注力した結果満7歳の男児は強制的に軍事訓練をして12歳で戦場に出るので当然死者はとても多く帝国は弱まっていった。軍事産業よりも鉱山産業の方が儲かる始末......そんな中で大戦なんかやるので尚更国力は弱まるに決まっている。

 うちの統治者はバカだったのだ。

 生活がままならず帝国兵士を脱退した——大きな戦争もないのでここ最近は仕事がない。敵国である王都の方が潤っているのは間違いないし何より戦うことしか取り柄がないのだ、剣聖という上の立場になれば十分生活できるだろう......。


「すいません、ここが試験会場であってますでしょうか?」

「はい、剣聖試験の受験者ですね。身分証をお願いします。」

 自分はポーチから手帳型の身分証明書を渡した。

 これには自分の出自・経歴・今に至るまでどこの関所を通ったのかなどの詳しいことが書かれている。

 10年前停戦協定が結ばれた後、帝国王国で行き来する際帝国から移民として王国に逃げる者が多くなり帝国王国内で共通の身分証明書ビザみたいなものが発行された。

「帝国の方ですね。もし試験に合格してしまった場合は永住を強制されますがよろしいですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。」

「では、奥の部屋で待機をお願いします。」


 言われた通りに部屋に行き椅子に座る。

 周りを見ると剣に自信があるものばかり確認できる。

 100人近くいるようだ。

 今回の採用基準は人間であれば10〜20代、エルフは10〜500歳、ドワーフは10〜75歳と他の種族を見ても若いものを採用しようというのが見て取れる。

 そして主な使用武器が剣であることが条件であった。

 考えているうち剣聖の一人ヒルブライデという女性が現れた。

 銀髪で20代ぐらいであろう美しい人間だ——そしてこの王国剣聖精鋭隊の隊長を勤めている。

「これより、剣聖試験を始めます!私はこの剣聖隊の隊長ヒルブライデです!試験項目は全部で三つ!」

『すごい声でかいな......。』心の中でつぶやく。

「一つは実技!ここでは体力測定、模擬戦、魔法模擬戦を行います!」

「二つ目は筆記!主に王国の歴史、法律、魔法知識、 武器知識等があります!」

「三つ目は面談です!私と他剣聖の隊員そして王国騎士団の上官等を相手に面談を行います!」


 そんなこんなで一つ目の試験である実技は王国城内の無駄に広い庭で体力測定を行い模擬戦、魔法模擬戦は訓練場で行うようだ——正直体力測定は簡単だった。

 周りを見てもほとんどが合格、次の模擬戦までいけてるようだった。

 この模擬戦では、勝とうが負けようが剣聖隊の面々と王国騎士団の方達が見て選考を決めているようだ。勝てばもちろん次の魔法模擬戦まで行けるが、なぜか負けた者も行けるようだ。

 恐らく潜在的能力を活かせる者は残そうと考えているのだろうか、それか魔法での適性が高そうな者であれば次の魔法模擬戦でジャッジするのかもしれない。

 そう考えているうち自分の番が回ってきた。

「彼、帝国の元兵士みたいですよ隊長。」

 体が細く女性のようなドワーフの少年が言う。

「そう......。」

 興味のない感じで答えるヒルブライデ。

自分は剣を構えた。

「帝国側の傭兵がよくやる構え方ですね。」

 とドワーフの剣聖少年

「始め!!!」と騎士団が審判を務める。

 自分は相手がかかってくるまで待った。

 観察すると王国騎士の構え方である——右手に剣左手に盾オーソドックスなスタイル、ここではこれが一般的であり普及している。

 相手が切り掛かってきたが剣でいなす、王国騎士のような気品と歴史のある戦い方をしているようだ。

 確かにこれを極めれば隙がなく強い......黄金比のような剣技である。だが実戦経験が物言うのも事実であり、この場合相手の右側面までかなり近づいてガード(ガード:西洋剣で見られるグリップ付近の十字のところ)を使って相手の剣を巻き取り一本取った。

 これにて勝利である。

「流石に実戦経験者は違いますね——周りは王国出身の方が多くて実戦に慣れてない方が多いですし特に人間は。」

 皮肉まじりで剣聖少年が言う。

「年齢の壁は大きいし仕方ないだろう。」

 とヒルブライデ。


 時間がしばらく経って次の魔法模擬戦へ移る、ここでは魔法だけで戦い相手を場外に落とすか降参させたら勝つことができる。

 魔法には属性があり主に火、氷、雷、そして神への信仰が厚ければ天性の魔法を使えることができるという逆に悪魔と契約したり魔女の家系生まれたものは闇の魔術が使えるようだ——ちなみに闇の魔術を使う者は少ない、契約はリスクが大きいし天性の魔法との相性が悪くすぐに浄化されてしまう——メリットがほぼないに等しい。

 ちなみに自分は無属性である。

 無属性とはその名の通り属性がないものを指し、物を浮かしたりできる程度で火を纏ったり雷や氷柱を落とすこともできない。

 属性を持つものは体内の少量の血液を使ってその属性由来のもの生成できるのである。

 生成して飛ばす纏う壁を作ると言う訳だ。

 その血が強力であればあるほど強い属性魔法が生成できると言うことなのだ。

 だが、生憎自分は無属性のため血は取られないが、ものを動かす吹き飛ばすなどはかなり集中し頭をよく使う。右手と左手で別のことをしているような感覚になる。

 つまり慣れれば強力だし動かす対象も多くできる。

 何事も経験である。


 自分の番が回ってきた。

 相手はエルフの男性魔法に長けているようだ——何が飛び出てくるのやら。

「始め!!」

相手は右手から炎左手から氷を出してきた。

珍しい......ダブルエレメントか——世界で珍しいとされる両属性所持者である。

「実に興味深いなぁ、ダブルエレメント使い——久しぶりに見ましたよ。」

剣聖少年が言う。

「それよりも相手が悪かったみたい、元帝国兵さんは無属性のようね。」

 とヒルブライデ。

 それまで沈黙していた剣聖隊の男、鉄仮面の男が喋り出す。

「だが、勝敗を決めるのは属性ではなく使い方だ......。」

「ああ、ごめんなさい——スーゼルさんも無属性でしたよね。」

 笑いながら剣聖少年は言う。

 剣聖隊が会話してる中自分は火玉と氷柱を避けながら様子を伺っていた。

 器用だなと思いながら避ける——そんなに撃ち続けると後が大変だと思いながら避け続ける。火玉と氷柱が小さくなっていき相手も息切れし始めているようだ自分より何十倍生きていてそれも分からないのか......。

 動きが鈍くなってきたので魔法で相手の動きを止めた。

 金縛りのような状態にして身動きを取れなくして吹き飛ばす。

 これで試合終了である。

「へぇ、筋組織に圧をかけて動けなくしましたね。器用だな......。」

 値踏みするように見る少年。


 試合が終わってこっちに少年が近づく。

「お兄さんの魔法かなり器用だね10年前はどこに派兵されてたの?」

『こいつ確か......。』

「自分はゲトー要塞攻略に出ていました。」

「じゃあ、僕と同じだね。いやーあの時はごめんね、友達とかたくさんいたでしょ?」

「いえ、仕方ないです当時の時代が悪かったんです。雷獄のハセクさん」

「うわー10年前の呼び名まだ覚えてんだ嬉しいなー。」

 当時300人の少年兵を焼き殺した残虐非道のイメージが帝国にはある。それがこの雷獄のハセクである。——雷呪文が強力であり雷雲を作りそこに投下させる。約三百人という数で攻略が難しいとされる要塞に赴いたが、まさかそこに剣聖がいるとは分からなかった。要塞の兵士が極端に少なく100人もいなかったから物量で押し込んだにもかかわらず、たった一人のために多くが犠牲になった。


 ハセクと話をしているうちに魔法模擬戦が終わり筆記に移った。

 王国内の内政・法律・歴史はあらかじめ勉強してればなんとかなる。魔法知識や武器知識そして剣術型の内容も出てきたが——訓練兵時代やってきたので楽であった。

 これらに関しては積み重ねがあったので苦ではなかった。


 そして面談に入る。王国城内の談話室が会場のようだが、最初の待合室で待機している。

「アルス様お待たせしました。」

 最初会った受付の女性が呼びにきてくれた。

 自分は扉の前に立ち「アルスです。失礼します。」と言って入った。

「どうぞおかけになってください。」とヒルブライデ

 あたりを見渡すと剣聖が6人、まだ見てないメガネで青髪の男性、緑の髪で気が弱そうな少女、そして褐色肌の大柄であるオーガの女性が居た——そして騎士団からは騎士団長の大柄な男性、副団長の金髪の女性そしてそれらを取り締まる総軍部王国管理官の男がいた。

「まぁ、そんな硬くならないでくれ。」とヒルブライデ

「本当にこいつが採用されるのですか?」とメガネ

「僕のおすみ付きだよ。」とハセク

「聞いての通り君は選ばれた——喜ぶがいい。帝国から来た甲斐があったんじゃないか?」

「一つ質問を宜しいでしょうか?」

「もちろんいいとも、あともう仲間なのだから崩して構わんよ。」

「はぁ、なぜ私は無事に試験合格できたのかが分からないのですが——あまりにも容易ではないですか?」

「君は知識もあるし技術もある......そして実戦での経験もある。」

「ここは個性が集まる場所なんだよ。」オーガの女性は言う。

「私たちはある一つの力が特化している、それがあることによって剣聖の象徴になる。」

 スーゼルはそう言った。

「そうだな、ハセクだったら魔法だし私だったら魔法と剣術の合わせ方が右に出るものがいない。後の4人だって面白い能力をもっているぞ。」

 楽しそうにヒルブライデが喋る。

「では、自分はなんでしょうか?」

「オールラウンダーだ。」

「え?」

「前に居た剣聖の役割にピッタリなんだよ。」

 ハセクがはしゃぐ。

「彼女は最強の剣士だったがつい数ヶ月前行方をくらましてね。君よりも段違いに強くトリプルエレメンタル持ちで美人でね、それでね......」

 声がだんだん大きくなってテンションが上がっていくヒルブライデ。

 その時だった。

 ガガガと椅子から立ちメガネが血相を変えて訴える。

「彼にあのお方の代わりが務まるはずがない!!」

 ハセクが耳を塞ぐ

「ちょっと静かにしてよー」

「もし彼がここに入隊をするのであれば私との決闘を申し込む!!」


 二話に続く......。


読んでいただきありがとうございます。初めて書いてみましたが。とても楽しいです。これからも時間があれば書いていきたいと思います。

※カクヨムと同時掲載です。

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― 新着の感想 ―
かつて少年兵だった主人公が敵国である王国の七剣聖の試験に挑むという展開がとても熱かったです。いやぁ、こういう系のお話は大好物です笑 実戦経験と無属性魔法を駆使して試験を突破していく姿は読んでいて爽快感…
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