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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その55 壺被り

作者: 天城冴

気が付くと頭に壺を被らされたジコウ党議員スギタン・ミャクミャク。国民に多大な被害を与えてきたカルト集団との癒着をはぐらかしていた報い、無知で卑劣な言動のお仕置きという声が…

『ひ、ま、真っ暗』

目覚めたばかりのスギタン・ミャクミャクは短い悲鳴をあげた。

正確には声も出ないので悲鳴ですらない。

“お仕置きだよ、嘘つき議員”

“嘘つきにふさわしく大好きなカルト協会の壺をかぶせてあげたよ”

『な、なに?』

ミャクミャクはとまどいながら、自分の頭のあたりを触ると、ひやっとした固い何かにあたった。なめらかでカーブのついたものに首から上が覆われている、確かに壺のようだ。

『な、なんで』

“だから、カルトにどっぷりつかってたくせに嘘つくからだよ。わかんない、みんな怒ってるんの”

“ダメだよ、アホトップに気に入られて、議員になっただけのオカシナオバサンなんだから。勘違いの政治家モドキのオッサンたちにもてはやされただけの”

『なんですって、わ、私は総務政務官』

“壺被ったオバサンが?ああ、被らないときもふさわしくないよね、カルト団体の定義がわかんないとか堂々と開き直るんだもん”

“後ろ盾がぶち殺されたってのに、まだ今の地位にいられると思ってるほどの頭の悪さだからね。ママ友にハブられて、キレて妙な方向に走っちゃったら変な人に吊り上げられて有頂天になるぐらいだし”

『な、な、』

ミャクミャクは怒り心頭だが、壺に響く声にどうにもできない。

いや、どうにもならないのはそれだけではなかった。

真っ暗で何も見えず、ベッドから起き上がることすらできないのだ。

すっぽり覆われた壺に邪魔されて声もだせない。壺を取ろうと手をあてたが、なぜか手足に力がはいらず、表面を撫でまわすことしかできない。

そして聞こえるのは自分を嘲る声だけ

『い、いったい何がどうなってるの』


「臨時ニュースです。壺をかぶった人々が出現、いや、政府与党ジコウ党の議員、芸能人、学者、作家の方々など例のカルト協会との関係を取りざたされた人々が壺を、壺をかぶっています」


『どうすりゃ、いいのよ、つ、壺被らされるなんて』

“ああ、謝れればいいの。ごめんなさい、スギタン・ミャクミャクの発言はみんな嘘です。デタラメです。ニホン国民をつぶすカルト協会に肩入れしてもらってごめんなさい、人気が長いだけの能無し害有りの首相に媚び売って国民の皆様に迷惑をおかけしてごめんなさい、今までもらった議員報酬も政党助成金やら文書交通費もすべておかえしします。反省してフクイチの原発処理に残りの一生を捧げます、とかね”

“もちろん、口だけじゃだめだよ。ちゃんと実行しなけりゃね。そんだけのことをしたのアンタは”

『わ、わたしが、何を』

“あら、性犯罪被害者を貶めて、LGBTとかの人を否定してたじゃないの、自分がいったことも覚えてないの?ほかにも人を傷つけて、苦しめるようなことを決めて、国民の生活を滅茶苦茶にしたくせに、ねえ”

“わかってないのよ、他人の受け売りで、周りのオッサンどもに喜ばれるセリフを並べ立てただけだから。オウムのほうが自分のしゃべってる言葉の意味をよっぽど理解してるのかもね”

“フーコーとか、ダヴィンチも知らないんじゃない。ユヴァル・ノア・ハラリさんとかも読んでないんでしょ、世界的に影響を与えてるっていうのにねえ。ホント、無知無教養で無恥なんて、あの最低最悪首相にそっくりよねえ”

“そのうえ、品性下劣な人まねイラストレーターとか顔しか取り柄のない似非学者とかとは仲良しで、人を貶めるのは好きなのよねえ、ほんとクズ。お子さんやご家族がかわいそう、こんなクズで”

『な、何を』

“大丈夫、ご家族も見限ってるんでしょ。だって”

“こんなになったって、誰も助けにこないじゃない”


「壺をかぶった人々が、あちこちに出現していますが。誰も近寄ろうとしません。わが局のアナウンサーや役員らしき方もいらっしゃるのですが、その…、足元もおぼつかないようで…危ないですから(誰が近寄るもんですか、あんな威張ったセクハラオヤジ、現場や視聴者の声を無視して、企画を握りつぶすし、一生壺被ってりゃいいんだわ)」


『こ、このままでいろって。ど、どうやって生きていけばいいのよ』

“被ったままだよ。飢えも乾きも感じないし、トイレとかにも行かなくて済む。このままでいればいいんだよ”

“カルトと癒着した人間だってわかりやすくていいじゃない。壺カルトって言われてたんだし。あ、みんな仲良くかぶってるから、アンタのお仲間”

“あのヨツウラ・ハリとかいう似非学者、外国に行ったらしいけど、逃げられると思ってるのかしら”


「政治学者としてテレビ番組などに出演していたヨツウラ・ハリ氏ですが、○○国の郊外で死体となって発見されました。頭に壺を被った状態で、激しい暴行を受けたようです。現地のリポートによると怨恨と物取りの両方の面で捜査が進められているとのことです」


『お仲間って、ジコウ党全員?そ、それに政財界やメディアにもいるのよ。そんなにたくさんの人間が壺被ったままなんて、混乱が起こるわよ』

“え、何言ってるの?どうせ、アンタたちなんて、いなくても大丈夫。本当に重要なことはほかの人が全部やってたんだし”

“ジコウ党の議員、ましてやアンタのお仲間なんて秘書任せでロクなことしてなかったしね。カルトと関係ない人や野党の人たちで十分、アンタらがいたほうがかえって邪魔よ、ろくでもないことしかしないからねえ”


「政財界の重鎮といわれている方々も壺を被っているようですが、現在、目立った混乱はおきておりません。…むしろ、現場レベルでの判断で行動でき、ウイルスの感染爆発がかえって防げ、各種経済活動などもスムーズに進行するとの声も」


『い、いや、私たちはニホン国に必須な人間なのよ、な、なんとかしてこの壺を』

“だから、謝ったら?そしたら外してあげるよ。まあ、自分の言動の何が悪いかわかんないから無理か、危険カルトがなぜ悪いのかわかんないくらいだし”

“無理に外そうとしないほうがいいよ、似非政治学者じゃないけど、ひどい目にあうから”


「速報です、作家のモモタン氏が被った壺を無理やり割った途端、意味不明なことを喚き散らしたあげく、マイクを口に突っ込んで自殺した、とのことです。“私の書いたものは全部デタラメ、パクリです。私の読者なんて、クズです、恥です、こんなもんに騙されるアンタらはバカ、いますぐすべて焼き捨てなさい。編集者、出版社、私の本も映画も関連本も全部回収焼却して。私も消えます、恥ずかしくて生きていけマセーン”というのが最後との言葉だということです。た、ただいまメイジの党創設者、ハシゲン・テツ氏が家族を殺して、自宅から飛び降りたとのニュースが。頭の壺を割ろうとして妻、子供たちやその恋人、友人にぶつけて死なせたうえ、ベランダから飛び降り…、つ、次はハギュウダン政調会長の一家が…」


『ずっと、このままだっていうの。壺被ってこのまま、そんなのないわよ、わ、私はジコウ党の議員なのよ、比例では1位で、え、えらいのよ、すごいのよ』

“あー、ダメだわ、こりゃ謝りそうにない。おまけに、立場わかってないよね、ただの利用しやすいイヌで、飼い主もいなくなった価値なしなのに。反省する気はゼロなわけね”

“髪を切るより、ほかのものを切ったほうがよかったわね、今からそうする?”

『え?』

途端、

スパッ

ゴロン

スギタ・ミャクミャクの頭は被った壺ごと体から離れ、床に転げ落ちた。

頭を失った身体はベッドに崩れ落ちる。

“壺被りを一つ始末したねえ、もうちょっと苦しめてやればよかったかしら”

“だめよ、壺被りはいっぱいいるんだから。私たちだけ時間がかかってたら、始末しきれないわよ”

“じゃあ、次にいこうかしら。ところで、改心する奴っていると思う?”

“さあねえ。いたら、壺被る前にまっとうに…、もともと被る羽目になってないわよ”

壺の中の声は次第に小さくなり、スギタン・ミャクミャクの血の気のない頭だけが残っていた。


自国を貶め滅ぼしかねないカルト集団と癒着しても問題ないっていう与党議員が多数の国って、もうお先真っ暗どころではないと思うんですけどねえ。考えてみるとそんな国の状態のほうが、よほどホラーかもしれません、おお、こわ

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