魔法学園の編入生①
うわああああ
大きな歓声があがる。
ここは、町の一角にあるラーメン屋『麺魔』月に1度行なわれる大食い大会の決勝戦が行われていた。すでに予選ではギョーザ50人前が食され、満腹に近い出場者たちを決勝の特製『超・麺魔らーめん』が襲う。直径30cmはあろうかという巨大なすり鉢に中太の縮れ麺。スープのベースは豚骨と醤油をブレンドしたもの。香ばしくてスッキリしているのに深みのある味わい。具は腕はあろうかというチャーシュー2本に、たかくたかく積まれたタレのかかったもやし、ネギ、キャベツ。味玉もゴロゴロと入っている極めつけは、店の名前でもあるそびえ立つメンマ。もはや竹である。そのモンスター級のラーメンをすする影が2つ。多くのチャレンジャーたちが倒れていき、足元に転がる中店内は異様な熱気を放っていた。
「おいしい!この卵もとっろとろ!しあわせ~!」
床に転がる死屍累々をよそに笑顔で食べ進める内の一人の少女はおろしたての制服に紙エプロン。長い髪はラーメンに入らないようにくくってポニーテールにしていた。うきうきと食べる姿はパフェを食べに来た女学生といった様子だ。まぁ、目の前にあるのは超高カロリーのラーメンなのだが。
「ガッハッハッ!食いたりねーぞ!賞金はあたしのもんだ!つうか、賞金もらえないとやばい」
対して、もう片方の少女はボサボサの赤い髪を乱暴にまとめあげて、荒々しく食べ進めていく。着ている服のあちこちにあて布がしてあり、髪は長い間手入れをしていないのか、かなり傷んでいた。彼女のカウンターにはお守りのつもりか、くたびれたぬいぐるみがひとつ。
「さぁ、大食い対決も大詰めです。優勝候補だった、相撲取りや大食いタレントを押しのけ、苛烈なデッドヒートを繰り広げているのは女の子2人組だああ!エントリーナンバー3番ピカピカの中学生ほのか選手!エントリーナンバー15番、赤髪たなびくサチヨ選手!!賞金10万円はどちらの手にぃ!」
2人の額には脂汗がじわじわと滲み出ていた。ラーメンは飽きないように味変がいくつもされてあり、今彼女たちが食べ進めているのは辛さ10倍マシマシスパイスがふりかけられていた。
「ガッハッ…ハッ!ギブアップしてもいいんだぜ?嬢ちゃんよ!ま、まぁ?あたしはまだまだ喰えるがよ」
だんだんと顔色が悪くなりつつある赤髪の少女は空元気を振り絞りながら、となりの席の対戦相手に話しかける。
「な~に、いってるんですか!出されたものは皿まで喰らう。わたしんちのモットーです」
さちよは、パクパクと食べ進めていく彼女に絶句した。おいおいマジかよ。あたしはもう、結構キツいぞ。い、いや、まだ全然よゆーだぜ?まだまだいけるが、いけるんだが。ちらりと店外を見る。熱狂する客たちに混じり、黒服、黒眼鏡の連中が中を窺っていた。
「ずるるる~。ったく。なんもやんねーって、、、、の」
悪態づいていた少女は何かに気づいて、にやりと笑う。なんだか、カウンターのぬいぐるみが小刻みに震えているような気がした。
「ガッハッハッ!!よっしゃあ!店長!この勝負私がもらったぁ!!」
席の上に立ち、高らかに宣言する。盛り上がる観客。どんぶりから箸を抜き取り、少女に向ける。
「勝負はまだ分からないよ?あと、行儀が悪いよ。おねーさん」
ジト目で見上げる。ちゅるちゅるとラーメンを吸いながら、ふと、違和感に気づく。
「ん?あれ、ここの箸って、赤色だっけ?」
さちよの持つ箸が赤色になっていた。マイ箸かな?
ダブル
立ち上がった少女が小さく呟く。
「ふぇ?」
なんだか胸がむかむかする。急になんだろ、いつもなら、あと一杯ぐらい、腹が、あれ、
腹の奥底からの圧迫感が込み上がる。
「うぉろろろろろろ」
吐瀉物がキラキラと店内を舞い、汚い虹が空にかかった。




