はじまりの魔法少女4 2022.6.11
さきほどの小枝サイズの杖ではなく、彼女の身長と同じくらいの長さになった赤い杖をクルクルと回転させる。
「狐面のねーちゃん。悪いね。さっきまでの私は最強の魔法少女だが、今の私はチョー最強な魔法少女だぜ?あ、魔法使いか。バチクソに強いから覚悟しな。ガッハッハッ!」
上目遣いに不敵に静かに笑う。
「…ただ、図体がでかくなっただけで。そんな魔法いくらでもあるさ。幻術のたぐいだろ?相手の距離感をずらさせる、小狡い小物のすることさ。頭の中身は成長してないようだしね。この一撃は油断しただけ、問題ない」
自分が叩きつけられた木を一太刀で焼き切り、立ち上がる。
「四季源流刺突の弐 火燕」
剣を振るうごとに飛ぶ燃えるツバメは、木々を焼き切り、成長したさちよにせまる。
その様子を大鹿はじっと見ていた。
シュバッ
ゴトッ
パチパチパチ
ん?
「なんか、焦げ臭くないか?ん、のおおお!私の角があああああ」
サクラの放った斬撃はさちよに躱されて、行き場を失い、そのまま大鹿の角を切り落とした。
「ぶっわっははははは!ば、バランス悪い!ガッハッハッ!!」
「小娘がああああ」
「ぶはっな、落ち着けって!くくっ!敵はとってやるからよ」
さちよは杖をクルクルと回して、笑いながら木々を打っていく。さて、イメージを広げろ。
「いくぜ、相棒!赫✖️緑壁!!翠の渓谷!!」
大鹿は足に魔力を込めて、さちよに伝える。その魔力と森の木々をつなげ、攻撃に転じる。木々から枝やつるが伸び増えていく。燃える燕たちは木の枝に阻まれて、さちよたちに届くことはなかった。
「幻術?なぁ、ハル。こいつ、本当にカウンターズなのか。お前が集めている実力者にしては、お粗末だな」
「なっ?」
赤髪の魔女はすでにサクラの首元に杖を当てて、雑談をはじめていた。全く気づかなかった。突風が吹き抜ける。何を2倍にしたら、ここまでの速さになるんだ。筋力だけじゃ説明がつかない。木々の様子に気を取られすぎた。
「サクラは剣の腕前は超一流だけど、魔法は最近習得したから、まだまだね」
やれやれとハルは肩をすくめた。彼女の手には、いつの間にか鹿の角が握られていた。
「指折り(カウンターズ)は、わたしの夢へのカウントダウンに必要な仲間。確かに全員曲者だけど、単純な強さや魔法力で、選んでいない。将来性を見てる。今日のところは負けだ。話してやってくれ」
勝負ありだ。さきほどのちんちくりんの魔法少女とは違う。朗らかに話をしているが、隙はないし、何より圧が違う。これがNo.3。私なんて足元にも及ばない。認めるしか無かった。
「戦いに言い訳はしない。私の鍛錬が足りなかったまで」
さちよも杖を引く。
「へー。いい心がけだな。習得したばかりで、この実力ってわけか。けっ、才能だねぇ。あーやだやだ才能人間。カウンターズに入れたのは、経験と知識を積ませるつもりだな?」
ぺちぺちとさくらの頭をたたく。
「で、ハルよ。どうする?あんたの懐刀は、あたしがやっちまったぞ。いよっあたし!最強!ガッハッハッ!」
ハルは何も言わずに大鹿を見つめる。
「ん?相棒なに、ボーッとしてんなよ。あたしに見蕩れてるのか?ガッハッハッ!」
こちらをじっと見つめる大鹿に声をかける。大胆不敵さに拍車がかかって、さらに自信たっぷりな彼女は森の中で燃えるような赤い髪を揺らしながら笑う。
「あ、はい。いえ、決して、あなたのたわわに実った部分を見ていたわけでは」
「…お前意外とオープンなタイプのむっつりだよな。ガッハッハッ!」
大鹿は咳払いをして、降り注ぐ魔弾を木々を使って、防ぐ。なんだ、なぜ、奴らは近づいてこない。やつらの近接的な攻撃役であるあの小娘がやられたなら、戦法を変えるのがセオリーだろうに。
「時間もねーからな!さっさと片をつけるぜ!赫!赫き韋駄天!」
見えたのは赤色の稲光。暗い森の中を一筋の光が通り抜け、風が吹き荒れる。葉が舞い落ちる頃には、悲鳴をあげる暇もなく魔導師たちは全員地に伏せていた。どいつもこいつも手応えのない。ほんとに女王直属か?
「せっかく集めた私の精鋭もこのザマですか。魔法陣を完成させる時間稼ぎにはなりましたが」
「はっはっは!どうやら、魔法が解ける前に、片付けられたな。たく、手応え無さすぎだな」
さちよの体から煙が出て、それが晴れた時には、すでにせが、縮み元の魔法少女の姿だった。
森の中から1人の魔法使いの胸ぐらをつかんで、引きづりながらさちよはやってきた。彼の首には女王の首飾りがかかっていた。
「いいや、ちがうな。ハル、お前の精鋭じゃねーだろ。コイツらはあくまで、借りてきた魔導師。あの女王んとこの精鋭部隊。おまえ、私をつかって、女王の戦力を潰すつもりだったんだな。」
「さぁ、なんのことやら」
彼女は嘯く。
「脚力以外も2倍にしてますね。「赫」の重ねがけですか」
「ああ!大人になって魔力量もあがり、さらに細かい指定と魔力のコントロールができるからな。何を2倍にしてるかは秘密だぜ」
指を口元にあて、ウィンクをする。だが、そんな彼女の表情を見もせずハルは携帯電話をとりだし、カパッと開いた。
「ガッハッハッ!んだ、それ?」
「非魔法使いが作ったからくりですよ。カウンターズの中にこういった技術が好きな変わり者がいまして、持たされているんですよ」
「ハルさん私は、神獣を盗み出した賊を討伐する。と聞いて参加しました」
「うそは言ってないでしょ?それに、No.3の実力を知って、楽しくなってきてませんか?No.9?」
「はぁ、確かにあなたの言う通りなのは少し癪ですが。その通りですね」
刀を握る手に力が入る。
「もっと魔法を知りたい。私はまだまだ強くなれる。いつか!あんたを!私の剣で!こえてやるんだから!覚えてな!!」
さちよに言い放った。さちよの方はしっしっと手を振っていた。暑苦しいのはゴメンだという様に。
「サクラ、いいこころがけです。はじめて、魔法を見た時にはマジックだ、トリックだと言って、取り合わなかった時とは違いますね。私はこれから、女王の元をはなれて街を作ります。魔法使いが幸せになれる街を」
「街を」
「えぇ、ほかのカウンターズのメンバーも仕事を終えてくるはずです。神獣様の森の魔法もさちよのダブルも便利な魔法です。遠慮なく使わせて貰いましょう。」
「あ?だれが!お前なんかの力になるかっての」
ハルは静かに足元の小石を拾った。
「ダブル」
小石は手の内で2つになった。
「な、んだ、と」
「さっき魔法陣を組んでいたでしょう?あなたが意識を奪っていった熟練の魔法使いたち数十人、彼らは人柱。すでに魔法陣の材料でした。幻術にかけ、決められた行動をする。魔法国の様々な魔法に精通してます。どうせ、あなた甘いから命を奪ってないのでしょ?魔力の塊である神獣様の角、魔法に懐疑的だったサクラの動機づけ、ひとつの魔法を突き詰めた探求者たるさちよを罠にはめ、わたしの目的は果たしました。そして、過去と未来をつなぐ杖を持つ私がいるからこそできる魔法をとくとみなさい」
白い杖と黒い杖を振り回し、急ぎ呪いを完成させる。
「あ?どういうことだ?」
「この魔力が通う龍脈の源泉たるこの地に魔法の街をつくるの。ただ、1からつくるのは大変。だから、いま、魔法陣の中にいる魔法使いたちの魔法をデータ化して、龍脈に刻んだの。生活魔法も、戦闘魔法も、あなたのような固有魔法も、魔力の才能あるものなら、誰でも使えるように。あとはこの地で生まれた魔法をわたしの魔法の制御下に置く魔法もね。私はいま、この地にいる全ての魔法使いの魔法を使える。街を作るのに魔法をつかって反逆されたらめんどうじゃない」
ハルはにっこりと笑う。街1つ分の魔法、いや、魔術か。彼女が説明をしたということは、もはやどう足掻いても覆しようがないのだろう。魔法の仕組みは不明。カウンターズのメンバーが別に動いているのなら、ここで2人とやり合っても、事態は解決しないだろう。
じぶんの角を利用し、憤るも事態が完全にハルの手のひらの上であることは理解していた大鹿も激しくハルを睨みながらも、ただ質問をするだけだった。
「その魔法使いの町は、当然非魔法使いも大勢いるんだろ?どうするつもりだ」
「さぁ?しったこっちゃないですよ、あぁ!そうだ。神獣さまは精鋭部隊もろともさちよによって殺されたことにして、先日発見された、四宝の杖もさちよのせいで、紛失したことにしましょう」
彼女はそう言って杖を振るう。切り落とされた角が空中に舞い、携帯電話に吸い込まれていった。
「な、私の角が!」
「てなことでよろしく?報酬はこれで良いですよね?ニコ。」
電話の向こうの人間は
「あいあいにゃ〜!」
と返事をした。
「これであなたたちは、魔法国には、いられない。わたしと来なさい?」
「・・・ひとつ条件がある、あたしは、学校で雇ってくれ」
「あら?意外ですね。私だけ自由にさせろなんかいいそうなのに」
「ひとつの場所に留まるなら、ガキを育ててみてぇ」
「構いませんよ。ただ、教える内容はこちらがきめますよ」
「構わない」




