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はじまりの魔法少女②

「あは、あはは、あはははは!」


次々に繰り出される炎の剣戟を紙一重でよける。(ダブル)で強化しているとはいえ、実体のない魔法剣。本物の剣士と本物の刀相手に受けるのはできるだけ避けたい。万が一にでも、杖を失うことになると、詰む。だが。


「このままではっ!直にこちらのスタミナが切れます!どうしますか?さちよ!」


「ガッハッハッ!やべぇな!相棒!こいつは!土下座したら、お前を勝手に連れ出したこと許してくれっかな?!ぅわっとと!」


意外な提案に驚き大鹿はふりかえる。


「あなた、人に謝ることなんて、できるんですか?!」


「ん?ガッハッハッ!できねぇ!」

即答ですか。さちよらしいと言えばさちよらしいが。どっちにしろ、この状況はよくない。魔力を感知して、木々を操ることで周りの魔道士たちに応戦していたが、さすがに選び抜かれた精鋭たち。思ったより数が減らない。大鹿も焦りを感じ始めていた。1番の厄介者がまだ動かないのも、気になる。ハルは魔道士たちの指揮をとっているが、あまりに、単調な攻め。本来の彼女の指揮能力なら、もっと、工夫や搦手をつかってくるはず。何かを待っているのか?だが、考える余裕は与えてくれないようだ。狐面の女はさちよを蹴り飛ばし、構えを変える。刺突の構えから片手で刀を持ち、上段に構える。


「はぁ、はぁ、あはは、やるなぁ、あんた!流石は、ハルさんが選んだカウンターズのNo.3に認められた女だよ。」


「ガッハッハッ!はぁ、ごほっ!はぁ、はぁ。アタシは、No.1魔法少女だっつってんだろ!タコ殴りにするぞ?!」


2人とも肩で息をしていた。さちよは一瞬の攻防の中で受けた傷を確認する。魔法剣士とは幾度も戦ってきたが、通常よりも長い刀に、あの炎の攻撃範囲。どの使い手よりもやりずらい。熱せられた刀は、切り傷と火傷をさちよに負わせていた。素早さ重視の赫戦乙女(ブラッドヴァルキリー)では、致命傷は回避出来ても、熱波は防ぎきれない。


「おい、狐面、誇っていいぜ、あたし、火傷したぞ」


さちよ本人は賞賛のつもりの発言だったが、相手を舐めているとしか取れない言い方に、その場の全員が絶句し、サクラはブチ切れた。


「あんたのタコみたいな真っ赤な髪を八つ裂きよりも細切れにして、あんたの身体は九つに並べてやんよぉ!」


サクラは杖を振って、纏っていた炎を分け、八本の尾に変える。炎の刀と合わせて九尾。狐面を受け継いだ時に、継承した魔法剣技の奥義の1つである。


「その構え、ちょっと待ちなさい!神獣様を傷つけたらただではすみませんよ!」

「あぁ?おせーよ、四季陣流、袈裟斬りの弐、『八重桜』 ぁ!」

袈裟斬りから連なる尾による殴打も合わせた8連撃は回避不可能なサクラの最高の技。叩きこまれたそれは赤髪の女を消し炭にしてしまう。はずだった。


「指折り(カウンターズ)、四季崎 裂九羅…いい加減にしなさい」

ハルがドスの効いた声で話しかける。二人の間に立ち、杖を向ける。手には白い杖と黒い杖。いつの間にか二人の首元に突きつけられていた。


「からだが、うごか、な、い」

「はる、てめぇ」


ハルは、純白の杖をふり始めた。


「白き杖よ…。顕現せよ。未来を願う我が手に希望を、彼の手に絶望を…」


呼びかけに応えるように、白い杖は姿形を変えていく。


「…そんなにもこちらの世界が大切だと言うのなら…」


杖は背丈を超え、先端にはいくつもの魔石が、輝き始めていた。


「…この地に縛り付けてしまいましょう…」


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