プロローグ③
「大丈夫っ。先輩!ほのかは、ほのかはやってくれますから。な、ほのか」
巨大な敵から放たれる光弾からほのかやさくらを守るために水でできた結界を張り、確信を持ってつぶやく。巫女服だ!かわいいな!
今でこそ寮で同室のさきちゃんがライバルの魔法少女として現れた時はほんとどうしようかと思ったけど、一緒にラーメン屋にいける仲になった。また、にんにくマシマシの店に行こう。彼女は町の由緒正しい神社の娘のさきちゃん。ボーイッシュな見た目だけど、出るところはガッツリ出ている。隠れ巨乳の女の子。そんな子が巫女服を着て、飛び回っているのだ。モテるのだ。
実際、さっぱりとした性格。作る料理は絶品。バスケットボール部の若きエース。と、モテ要素がてんこ盛りの彼女は学園でも、女生徒たちが隠れファンクラブを作るほど。事情を知らない街の外の人間が、彼女に声をかけると何者かによって闇に葬られるとかいないとか。うん、わからなくもない。
私が無事なのは、私がサキ様のペットとして、餌付けされているから。ファンクラブのメンバー談。え、私人間扱いされてないの?もしくはさきちゃんが餌付けしないと学園の食堂がいつになっても開かれないからということらしい。いや、私の扱いって何?化け物か何かなの?
よし!腹が立ってきた、乳をもごう。いやいや違う。違う。てへ!いけない!心の声が駄々洩れだったわ。いつか乳がもげる呪いをかけよう。さきちゃんはさくら先輩を横にさせ、自身の使い魔である竜を守りにつかせて、飛び立つ。スケートボードでトリックを豪快に決めながら、叫ぶ。
「ほのか、この戦い勝ったら、私の料理。満漢全席、食べ放題だ!!気張っていくぞ!水よ。かの敵を打ち破れ、水大砲ウォータータンク!!」
満漢全席!!前言撤回!!勝つぞ、この戦い!!さきちゃんは大事な親友。つまらない嫉妬で私たちの友情は壊れない。なにが、ラスボス。なにが世界の危機。ぶっ飛ばしてやらぁ!!
「グヘヘっきゅ。さきの胸がブルンブルっきゅ、ゴボボボ!!!」
杖を振るい、さきちゃんの魔法の残滓を使って水の塊を作り、妖精に被せる。なに色目で私の親友を見てんだ、こら。
「そうだヨ、ほのかは負けないデース!」
「ごぼぼ、カレンの胸にはいつも負けてるッキュ!って溺れるっきゅ!ヘルプブグ、ブグウググ!!」
金髪のスタイルのいい魔法少女が杖を振るって、さきちゃんへの攻撃を防ぐ。召喚されたのは大量の唐傘。彼女は、外国からの転校生、元気はつらつカレンちゃんだ。ナイスバディで正直うらやましい。ああ私の成長期は終わってしまったのか。いや希望を捨ててはいけない。揉めばでかくなる。腕立ても毎日している。豆乳だって毎日飲んでいる。彼氏がいないからセルフで揉みしだいているのに、まったく乳が大きくならないのはなぜ?WHY?OH MY Gush!!!カレンちゃんには勝てない。いや、マジ。最近ブラのサイズが大きくなってきたとか言ってたのは、聞こえない聞こえない。
金髪ツインテールの彼女は創造魔法の使い手の帰国子女。どこの国かはなんかいつもごまかされて、はっきりしないんだけど。彼女はいろんなものを作り出すことができる魔法の使い手。杖一本と魔力があれば、爪楊枝から巨大な仏像も召喚できる。日本マニアの
「スーパーサイズガールっきゅ!え?どこが、スーパーサイズ?!ぐへへ、そんなこと言わせるなっきゅ、ごぺ!」
「セリフをとんな」
誰と話してるんだよ誰と。どうやら水の牢獄から抜け出したぬいぐるみをゲンコツで黙らせる。
「ほのか、この戦いが終わったら、話したいことがありマス。私の秘密です。」
「いや、それ死亡フラグ」
「hahaha!私が死ぬことなんて無いデース。そんなフラグへし折って、フィアンセと結婚しマース」
「それも死亡フラグだよ」
てへっとお茶目に舌を出す彼女は、真剣な顔になって私を見つめる。
「不可能を可能にしてください。ほのかあなたなら。もしかしたら、私を…」
「ん?カレンちゃん、どしたの」
「なんでも無いデース!さっさと敵さんたおしてBBQパーティーナイトでフィーバーデース!!そこの、悪の親分!!知ってますか?!日本の文化には素晴らしいものがありマース!」
はるかに巨大な敵に対して、指をさしてカレンは叫ぶ。
「想像魔法イマジネーションマジック!!大日本刀さむらいそーど!!」
魔法陣と共にビルほどの長さほどある日本刀が召喚される。そのまま飛び出したカレンちゃんは日本刀を振り回し、横薙ぎに切り裂く!!
「セップーーーーーク!!ハラキーーーーーーリ!!」
「そんな文化じゃナイよ!!!」
「メイドフーーーーーーーク!!!!」
「どっから学んだ知識なのよ!!」
轟音とともに悪の親玉が片膝をつく。
いやいやツッコミしてる場合じゃない。別に登場人物紹介がめんどくさかったから一気に凝縮したわけではないのである。私ってこんな時でもいろいろ覚えているでしょ?後々に判明する私の魔法のための伏線なのだよ。っと含みを持たせて言ってみる。
わたしは何で魔法少女をやっているのかと自分で不思議に思えるくらいの一般人。使える魔法もたったひとつしかない。でも、この町に引っ越してきてこの仲間たちや破魔町のみんなとふれあってきて、この町を人を守りたいなって本気で思ったんだよ。
「ぐるがああああああ」
カレンちゃんの攻撃で深傷を負い、理性を失い暴走する悪の組織のボスに対して、杖を向ける。魔法国の神木から削り出したこの杖もボロボロになったなぁ。
「…」
いや、べつにミッキュのケツから出てきた木の棒をそのまま使っているなんて言いたくないじゃん。ミッキュは御神木の分身だから、木。奴は木。ミッキュのおしりからずるりと引き抜いた魔法の杖とか言うよりも、御神木から削りだした杖って言った方がかっこいいじゃん。その方がよくない?
「ほのか、やるッキュよ!!」
相棒の魔法生物、通称ミッキュが魔力を私に注ぎ込む。ちょいちょい失礼な口を挟んでる、憎めないやつ。緑のリスのような見た目をしているこいつのせいで、私のプライベートはめちゃくちゃに。かわいらしい男の子の声をしている割には、発言はおっさんのようなセクハラばかり、まぁ当然こちとら、女だもんで。その手のセクハラ発言には、武力をもってして返してやっている。
「貧乳の意地を見せてやるっきゅ!」
この一年間苦楽を共にした、とてもとても大切な相棒だ。
「きゅ?!ぎゅぺ!ちょ、思ってることとやってる事違うくないっかッキュ!爪が顔面にくい込みゅ!」
暴走を止めるためには、こいつらをどこか違う場所に飛ばすしかない。ありったけの憎しみ…あ、めんご、魔力を込めよう。鷲掴みにしたミッキュを悪の組織のボスの方に投げつける。
「待ってっきゅ!いまこいつら?らって言ったきゅ?!敵は1人ッキュ!待って!待っ」
振り上げた杖を振るう。優しく、激しく、強く、儚く…。集中する。
魔法陣が杖から次々と生まれ、浮かび上がり、ほのかの周りを不規則に回っていく。私の魔法は記憶。出会った魔法を一度だけ使うことのできる魔法。今その全ての魔法を同時に発動する。氷の動物たちで、ボスの手下たちを追い立て、水の魔法で敵の逃げ道をなくす結界を張る。炎の魔法で魔力を回復して、再度、魔力を回復させる。
「超特大魔法、エクセレントギガンティックデリシャスほのかスペシャル!!!」
「技名馬鹿じゃないッキュか?!」
カレンちゃんの巨大な日本刀を再び召喚し、今まで出会った魔法を全て込める。全ては一枚の手紙から始まった私の物語。驚きの連続だった魔法少女生活。学園で学び培った経験と技術。全ての魔法と奇跡とも言える私の運命に感謝と敬意と、ちょっとだけの恨みごとを混ぜてねがう。世界の平和を。運命の祝福を。
出し惜しみはなしだ!!この町で会ってきた魔法という奇跡をこの一撃に叩き込む。静かに目を瞑り、思い出す。町の人たち、学園の学友たち、強敵達、大切な大切な仲間達・・・。そして、セクハラ害悪淫獣の相棒の顔。初めて出会った時のことを思い出す・・・。
「きゅ?君が僕の新しいパートナーキュか?ほのかっていうのかっきゅ!よろしくっきゅ、ほのかって、はっきり言わせてもらうけど貧相っきゅね!!あははっきゅ!もっとバインバインのボインボインのえっちな魅力の溢れるスーパーセクシーお姉さんがよかったきゅ!!」
よし、私の殺意は満タンだ。心置きなく、放てるぜ。私の最大にして最後、全身全霊の全力魔法を!!
「ぶっっっっ飛べぇぇえええ!!!!!!」
光が収束していき、魔法陣が縦に並ぶ。目を開け、狙いを定める。ミッキュとボスが1列に重なった!!魔法陣の中を巨大な日本刀が通過し、絶大なオーラを纏い、滅すべき標的にぶちあたたるようにぶっ放す!
「でゃああああああああああああーっ!!!!」
渾身の力で、放った一撃は狙い通りに、激しい轟音と共に標的を捉える。
「ぐるがるぐるる《え?ワシの出番これだけ…?》ぐるぎゃああああああ」
「ちょまっ!ごめんきゅ!ごめっミギュあああああぁぁぁ」
一筋の光が暗雲を切り裂き、諸悪の元凶となる悪の組織の親玉を貫いた。
元凶が消え、彼の魔力によって作られた荒野も消滅する。尊い一匹の妖精の犠牲と共に。




