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転生先はロリの国でした ~チート能力を添えてロリコン目指して翻弄す~  作者: 桐戸李泉
一章 ようこそ真正ローリ帝国編
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第03話 ロリ哲学論考

「……て」


 身体が揺さぶられる。


「ぅん……?」


 ゆっくりと目を開けると、昨日のロリの顔が目の前にあった。どうやら、昨日の一連の流れは夢ではなかったらしい。


「おはよう」


「……おはよう?」


 ヒツギが首を傾げる。どうやらこの世界には朝の挨拶の習慣がないらしい。

 ヒツギだけが知らないという可能性を考慮しなければならないが。


「朝は互いにそうやって言うんだよ。まぁそれはいいか。それよりも……いっ……」


 柩に寄っかかって眠っていたせいか身体全身が強張っていた。ゆっくりと身体を解し、立ち上がる。


「……だいじょうぶ?」


「うん、もう大丈夫」


 景色は変わらず、森の中。

 流石に二日連続で夜を過ごすのはきつい。今日中にせめて屋根のある場所を確保したい。

 欲を言えば、俺も布団の中で夢を見たい。


「それにしても、寝心地よさそうだな、それ」


 柩の中は上等そうな布が幾層にも重ねられており、極上のベッドのように見える。

 誰かが寝る為に整えられているようにも見える。この世界では死人に対して手厚いのかもしれない。ヒツギは生きているが。

 そうしてしばらく柩の中を見ていると、ふと、一冊の手帳のようなものが目に入る。それを手に取り、ヒツギに見せる。


「これはヒツギのか?」


「……? 違うと思う……」


 何とも曖昧な答えが返って来る。


(そういえば、記憶喪失だったか……)


 もしかするとヒツギについて何か書いてあるかもしれない。そう考え、手帳のページをめくる。


『1.ここに記されるはロリコンとしての在り方、その心構えである』


 日本語だった。

 手帳を閉じ、一度大きく深呼吸をする。そもそも異世界なのだし、文字読めないのでは? とか考えていた自分があほらしい。もしかすると、あの自称女神が何かしらのサービスをしてくれたのかもしれない。いや、そんなことはどうでもいい。些細な問題だ。そんなことより、とてつもない問題があった。


(これは……『ロリ哲学論考』では……)


 『ロリ哲学論考』。

 高校時代、薄っぺらな哲学知識とありあまるロリについての感情をまとめた小鳥遊和樹の黒歴史の一冊。

 因みに、オリジナルは机の一番下の引き出しのプリントの中に埋まっている、そのはずだ。

 改めて、手帳の表紙を見る。そこには『ロリ哲学論考』の代わりに、よく分からない文字が書かれていた。

 もしかすると偶然の一致というやつなのかもしれない。再び深呼吸をし、ページをめくる。


『2.まず、前提条件として幼女に対して性的な感情を抱くものはロリコンとは言えない』


 手帳を閉じる。

 間違いない、これはまごうことなく『ロリ哲学論考』だ。そうでないとすれば、俺と全く同じような考えを持つ人間が記した以外に考えられない。それも一言一句間違えずに、だ。そんなこと、自分以外にあり得ないだろう。適当なページをめくってみたが、結局、番号、文言共に全て一致していた。


「……どうかしたの?」


 ヒツギが心配そうな顔でこちらを見上げていた。


「いや、大丈夫だよ。それよりもせっかく早起きしたことだし、どこか人がいそうな場所に行こう」 


 世の中切り替えが大切だ。今日は何としてでも人里のような場所に辿り着きたい。最もそんなものが存在しているかどうかも全然分からないが。そうだとしても足を動かさなければ何も始まらない。


「ヒツギ」


 ヒツギに手を差し伸べる。


「……?」


 ヒツギは小さく首を傾ける。


「手、手を繋いでおこう。万が一でも離れ離れになったら危ない」


「……うん」


 ヒツギが頷き、俺の手を握ろうとした瞬間ーー。


「おい。そこで何をやっているんだ!」

 

 少し離れた場所から男の怒号が響く。声の方向を見ると、そこには鎧を着た男が立っていた。


「な、何ってこれから街を探そうかなぁって」


「嘘をつけ。そのロリを誑かそうとしていたに決まっているだろ。それにそのロリ……」


「そ、そんなわけないだろうが。俺は紳士と書いてのロリコンだ。手を出すわけねぇだろう!」


 怒りのあまり大声で叫ぶ。俺が幼女に手を出す? そんなこと、天地がひっくり返ってもあり得ない。ただ、ロリコンと言ったのは失敗かもしれない。俺の用いる意味と彼の解釈の間には大きな溝があるだろう。


「なっ、……ロリコン……だと?」


 ほら、疑問を抱いてる。あれはおそらく「じゃあ俺が言った事正しいのに、なんであいつ怒ってるんだ」と考えているに違いない。どうせ男の口から出るのは「ならなおさらその子から離れろ」とかそんな感じの言葉に決まっている。


「いや……ロリコンっていうのは言葉の綾で……」


「……いつ、ロリコンになった?」


「は?」


 男の口から聞こえてきた言葉は想像していたものより随分と方向性が違った。


「いや……ん?」


「だからいつロリコンになったかと聞いている」


「???」


 いつロリコンになったか?

 いざ考えてみると難しい。それは生まれつき備わっていた俺の性質のようなものかもしれないし、生きている間の経験から身に付いたものとも考えられる。

 

「まぁいい。試させてもらおう」


「試す?」


「あぁ。ロリコンであるならば『幼書』の全文を暗記しているはずだ。これからそれを試させてもらう」


「……ようじょ?」


 よく分からない単語が飛び出してきた。いや、よく知った単語ではあるんだけれども。

 全文を暗記だとか言っているところから考えるに、おそらく本か何かだろう。

 問題はその本を知らないということだ。残念ながら俺がこの世界に来て触れた本らしい本は『ロリ哲学論考』もどきぐらいだ。


「ではいくぞ。まずは1番だ」


「……」


 1番?

 番号形式から察するに、法律書か何かなのだろうか。……いや、もう一つある。

 『ロリ哲学論考』だ。

 俺がこの世界で触れた唯一の本。そこに運命を感じる。

 ……行くしかない。


「ここに記されるはロリコンとしての在り方、その心構えである」


「ふん。ロリコンを自称するだけあって1番くらいは覚えているらしいな」


 通った。この世界では『ロリ哲学論考』とおそらく『幼書』と呼ばれるものは同じだということだろう。

 つまり———俺の勝利が確定した。


「次だ。7番」


「つまり、ロリコンとは決して性犯罪者を指し示す言葉ではない」


「23番」


「同士で決して争いを起こしてはならない。むしろそこには協力と監視のバランスを要請しなければならない」


「24番」


「争いの内容は例えばこうである。褐色ロリがいいか、はたまた和服ロリがいいか」


「67番」


「ロリにおける神秘とは、ロリがいかにあるかではなく、ロリがあるということそのことである」


「9番」


「ロリのいない世界は存在しえない。つまり、誰しもがロリコンになる素質を外部から受け取る事が可能なのである」


「なっ……全て完璧に把握しているだと……」


「終わりか? だったら俺がロリコンであるということを」


「いや、まだだ73番でどうだ?」


「……73番?」

 

 『ロリ哲学論考』は72番までのはずだ。いや、むしろ偶然一致していたという可能性を考慮するべきなのだろうか。そうだとするならば、分からない。


「何だ、答えられないのか?」


 男がニヤリと笑う。


「……っ」


 ここで……終わりなのか……。


「そこで何をしているのですか?」


 失意の中、聞こえたのは幼いながらも凛とした声。

 男の背後に杖を持った修道服のロリが立っていた。


「なっ……ノ、ノドカ様! ど、どうしてこちらに……」


「国を守る門の門番の姿が見えなかったので、探していたのですよ」


「そ、それは申し訳ありませんでした」


 男がノドカ様と呼んだ修道服のロリに頭を下げる。


「それに『幼書』の暗記云々で人を測るのはいかがなものかと。しかも自分はこっそりと本を見ながら……それは平等ではないような気がしますよ」 


「す、すみませんでした」


「分かればいいのです。それよりも後は私がこの方たちの相手をしますから、あなたは自分自身のお勤めを果たして下さい」


「しかし……あの男はともかく、あのロリは……」


「返事は?」


「は、はい!」


 修道服のロリがにらみを利かすと男は駆け足で何処かへ去って行く。


「あの……何か助けてもらったみたいだな……」


「いえいえ。こちらこそ迷惑をかけてしまいました。ところで、あなた方はどうしてこんな所におられたのですか?」


「いやなんというか……成り行きで」


「随分と不思議な成り行きですね」


 修道服のロリがくすりと笑う。可愛い。


「迷惑でなければ、我が国家に案内します。あなたならおそらく基準は満たせるでしょうし」


「国家?」


「えぇ。ロリコンによるロリのための国、真正ローリ帝国へ」

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