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08.女格闘家

 ドロテは、女格闘家だ。一番最初に俺が勇者として立ち寄った町でふらふらと酒場に寄って、魔王討伐の情報を集めるかと意気込んでいたり、いなかったりした頃。




 俺は剣術もまだ心もとなかった。なんてたって一番最初の村には剣士が一人もいなかった。


 木材で素振りしてみたり、はたまた自主的に筋トレしたり、地味だった。




 一言で地味。




 学校の体育の授業のランニングみたいなのしか知らないし、筋トレってだいたい何すんの? 腕立て? 腹筋? いやいやいや、魔法教えろ!


 異世界なのに、魔法誰か教えろ! 


 それでも基礎体力はこっちにきてからなかなか高かったので、もういいやと思って村を飛び出して、最初の町に至る。




「あんた、強運だね。一人で丸腰で来たの? え、嘘、あの小道には魔物いるはずなんだけど」


 俺を奇異の目で見つめてきたのは、女格闘家のドロテと名乗る女性。日焼け健康美人の年上のお姉さんといった感じだ。


「俺、早く魔王を倒したいんだ」


「え、嘘。あんたがあのリフニア国から召喚された勇者。勇者って召喚された場所じゃなくて、その辺に落ちてくるって聞いたことあるけど、こんな田舎に来なくてもいいのに」




 ドロテにはそれから剣術を教えてもらった。




「あたし、本業は魔力を拳に込めて戦う肉弾戦が得意なんだから。剣はほんと、初歩しか教えられないからね」




 ドロテとの初戦は、剣対拳だった。剣術を教えてくれるとはこれいかに?




 彼女の拳の突きは素早い。剣のブレードで受けなければ見事に顔面に当たっていた。


 でも、彼女は華奢な身体で、信じられない回し蹴りを繰り出してきたんだ。


 俺の剣は俺の腕力では持ちこたえられずに宙を飛んで行った。




「あ、負けた」




 俺は即ギブアップするくせがあったが、彼女の蹴りは止まっていない。




「ぐわああ」




 俺は敗退した。彼女は俺がギブアップするような男に見えなかったと呆れていた。れ、練習じゃないのかこれ? と起き上がると彼女は突然、冷酷な口調になった。




「もう一回。だらしないわよ」




 俺に勇者の第一歩を踏み出させたのが彼女であったのは、間違いない。俺は最初に彼女に勇者と名乗り、いきなり幻滅させてしまっていたんだ。


 だが、いつしか俺は彼女を越えていた――。




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