67.邪魔者は消してやるから
俺が自分の脇腹の肉を切り落とすのを見たメラニーの姿のマルセルの赤い唇が、紫色に青ざめる。
氷結魔法による束縛が解けたことをお互いに理解して、俺は口の端を吊り上げ、一方のマルセルは目尻にしわを寄せて怒り喚いた。
「自分の脇腹を切除するなんて! うじ虫の存在で!」
俺が立ち上がると、マルセルが喉を狙ってナイフを真横に振る。
俺はそれを人差し指一本で受け止める。雷属性のナイフで俺のメスの指は感電したが、これくらいどうってことはない。
「騎馬騎士団早く来なさい!」
今頃、援軍を呼びますか。マルセル、お前とメラニーの身体じゃ俺には勝てないって分かっているみたいだな。
爆風で、テントが吹っ飛んだ。風と炎が巻き上がる。爆破魔法か。だが、炎、爆風、風、水は全て切り裂くことができる。
俺は風の方向を見極めて、手のひらを大きく広げて五本の指をフルに使って、切断魔法を展開する。
俺にはかすりもしなかった爆破魔法でテント内部が吹き飛んで、女性の一室が丸裸だな。
ほんと騎馬騎士団はデリカシーがない。俺でもこんな派手な訪問はしないぞ。
騎馬騎士は俺に向かって炎上魔法を放ちながら馬で突っ込んでくる。俺は指揮者のように指を振ってやる。
飛んできた炎は俺の思い描く方向へ、切断されて散っていく。
馬の胴を内臓破裂魔法をまとった足で蹴り飛ばす。騎馬騎士はあっけなく馬といっしょに吹き飛んでいく。
「このうじ虫がああ」
後ろからマルセルの奇声と、ナイフをかざした腕が迫るのが視界の隅で見えた。
俺は振り向きざまにその振り上げた腕をつかんで、背中をつかんで抱き寄せる。
ナイフを握っていない左手が俺の鎖骨を殴るので、その左手もつかんでやる。
「おっと、じゃじゃ馬娘。後ろから俺を抱いてくれるつもりだったのか?」
「ふっざけんじゃないわ!」
マルセルの左手に青い稲妻が集まりだす。
「怒るとブサイクになるぞ」
その左手から電撃を放たれる前に、手首に骨折魔法をかけてやる。ぼきりと一本だけ折ってやる。
「ひいいいいやあああああああああ」
「切断してもよかったんだぞ? そうしなかったのは俺の優しさだ」
マルセルの涙を俺は舌を出して拭ってやる。
「ひやぁ!」
押しのけて押し倒そうと暴れるマルセルは、姫と呼ぶにはみっともなくも蹴りまで繰り出してきた。
膝で軽く受け止めてから本物の膝蹴りってやつを見せてやる。
そのへそにぶち込んだ膝蹴りでマルセルは意識を失ってどうっと、俺の腕の中で眠りにつく。
この柔らかい二の腕や、背中の肉といったら見惚れるな。これを今から切り刻むことができるんだ。
俺のメスの指で好きなだけ。身体はメラニーだけど。いや、メラニーだから胸も大きいし、ついでに言えば、これは一度に二人を処刑できるんじゃないか?
「元勇者! 覚悟しろ」
まだたくさんの騎馬騎士団が残っていたが、全て処刑るのに五分もかからないだろう。
中には雷属性魔法を使う騎馬騎士もいたが、あんなのは雑魚だ。雷は見極めさえすれば白隼のブーツでかわせる。
「マルセル、ちょっとここで待ってろよ。邪魔者は消してやるから。それから二人で楽しもう。長い夜ってやつをな。っくっくははははははははは!」




