06.ピクシー妖精リディ
「あ、でもかわいいなぁ。いいの? 女神様。俺、今から処刑しに行くんだけど」
口が滑った。俺は異空間に来てから女神フロラの生足ばかり見ていたのではない。
ちゃんと復讐を考えていたと断言しよう。
「しょ、処刑?」
女神フロラ様も怒る? ついに怒っちゃう? あ、美人を怒らせたらどうなるんだ?
マルセルみたいな怒ったときだけ美人が崩れるブサカワになるのか?
ああ、マルセルみたいなブサカワは、嫌だなぁ。あ、マルセルって、今は姫なんだよな。
信じられない……あのブサカワが姫かぁ。あいつも処刑リストに入れとこう。
「処刑とは、なんたる外道。外道ですよ。げ、げ、げげえええ」
俺のことそんな汚いもの呼ばわりするの? 今のゲロのものまねだよね?
「その子は、リディ。大切にしてあげてね」
それにははっきり断った。復讐には邪魔だと思ったからだ。リディにあっち行けと言ってみたが、返事がない。
あれ、普通ピクシー妖精は甲高い声で話すものだ。
「リディは生まれつき話せないの」
なるほど女神フロラは嫌がらせが好きなようだ。
魔王を倒した以前の俺なら、生まれつきの身体的障害も回復魔法ではなく、上級治癒魔法で完治させてあげられた。
話せない子供の声を取り戻してあげたこともある。でも、今はできない。
「でも、彼女は回復魔法ができるので、怪我をしたら彼女に頼って下さいね」
なかなか屈辱的だな。自分の怪我は全てこのリディに任せろと。
「まぁ、ほどほどに頼むわ」
俺はリディの小さな顎をそっと指でつまむ。なんだ、黒いくりくりの瞳が反抗的に俺を睨むじゃないか。かわいいやつだな。
「彼女とは切っても切れない縁なので、それではお気をつけて。もう処刑されないでね!」
「されるかよ。俺がする側じゃ!」
最後まで女神フロラ様にはペースをかき乱されっぱなしだ。