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58.囚われのリディ

「骨折魔法は、この妖精のか弱い姿にはさぞかし苦痛だろうな」




「い、いい加減にしろ! お前、さっきからリディに手を出すなって言ってるだろ!」


「言ってる? 誰に命令している。俺がお前の望みを聞き入れる必要がどこにある? お前は今、頼み込む立場にあると思わないのか?」




 ク、クロエに頼み込むだと? そ、そんなのできるわけがないだろう。あのストーカー女に? 俺に処刑を宣言した女にだぞ!




「リディ?」


 リディはこっちをじっと耐えるような目で見つめてくる。いいのか? 俺のために犠牲になるって言うのか?




「ほう。ゲス勇者、妖精と目だけで会話ができるとは驚きだ。この妖精に免じてやるとしよう」


 クロードはそうは言ったものの、リディを開放する気はさらさらない。空間隔離魔法を小さい箱状に手のひらに生み出し、リディをガラスキューブに入れたように閉じ込めてしまう。




「だが、お前には言ったはずだ。皮剥ぎの刑に処すと。このまま俺を帰らせておけばよかったものを。拒んだのならばつき合ってもらおう。さぁ(こうべ)を垂れ、俺に妖精の解放を祈るがいい」




「はいはい、シスタークロエ様。ご立派ですよっと」


 俺は折れてない右腕で降参の意味で手を上げる。リディ解放を女神フロラ様に祈るとするか。


「女神フロラ様。どうかリディを開放して下さい」


「お前はこの俺に祈るのだ」




 そう言って大型のナイフ、刃渡り二十センチはあるサバイナイフに似たナイフを召喚して手に収め、近づいてくる。皮剥ぎの刑ぐらいじゃ俺は死なないぞ。




 それに、至近距離は俺にとっても好都合。人体破壊魔法は近距離戦に特化しているからな。俺は半目だけで笑って口の端を吊り上げる。




「祈りってのは、他人の不幸を願ってもいいのか、シスタークロエ? 俺の願いはお前の腸を引きずり出すことだ」




「信仰心のないお前に、簡単な問題を掲示したまで。妖精の命か、己の皮か」


 そう言って、俺の折れた左腕をナイフが狙ってきた。反則だろ。左腕は今ぶらぶらとぶら下がっているだけだ。




「けっ。内臓破裂させてやるよ!」




 左手をナイフがかすめた。肘の周りの肉を少しそがれて持っていかれた。痛いなぁ。皮剥ぎってこの程度かよ。




 右手でまとった内臓破壊魔法でクロエもといクロードの脇腹を殴る。防御魔法の感触があったが、内臓破裂魔法だけは身体の内側への攻撃だから、ダメージが通るんだよな。




「ぐぶほぉお」


「ははは! いい血反吐だ。リディを返した方がいいんじゃないか」




 クロードは口から吐いた血を拭って、ぎらぎらとした瞳で俺を嘲笑した。




「お前にはちゃんとした処刑場が必要だと思っていたが、仕方ない。この教会内で剥ぐぞ。お前の皮を一枚一枚丁寧にな」




 そう言ってリディを空間隔離したガラスキューブの下から、炎の魔法であぶりはじめた。




 リディ……。リディニ テヲダスナ ッテ ナンド イッタラ ワカルンダ?




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