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39.竜騎士ヴァレリー

 セスルラ国会議の真っ最中に起こったできごとは、この私、(せき)双竜(そうりゅう)の騎士ヴァレリーを震撼させるものだった。


「飼育場から多数のドラゴンが脱走しております」




「全兵! ドラゴンを迅速に捕獲しろ! 怪我を負わせることのないように催眠魔法を施した網を使え。そして、この私のドラゴン、ドレッドバーンレには傷一つつけるな! 私の母だからな!」




 そう、ドレッドバーンレは私のママなのだ!




 私はドラゴンに育てられた、元、野生児。ママには誰も触れさせたくない。




 だが、私は演じるのだ。勇猛果敢な騎士として、ママも一匹のドラゴンとして管理せねばならない立場の役職。


 本当はママのことを一匹などと数えるのもごめんなのだが、セスルラ国の第一騎士団に上り詰めた私は、もはや演技力の塊。




 私は自分の姿形を偽り、ここまでの権力を手に入れた男、十四歳。




 今は三十五歳のたくましい成人男性の姿に見えるだろう。そうだ、偽りの姿だ。私は変身魔法の達人なのだ。


 そして、元勇者キーレとの再会を楽しみにしているかつての奴の弟分。




 だが、私はあいつと同じ変態ではない! 




 あんなおぞましい寝取り放題好き放題の勇者など見たくはなかった。私は勇者に絶望したのだ! 




 そして、あの勇者の拷問に私は参加したのだ。私はいつも、勇者の代わりにヴァネッサにぶたれたり、殴られたりしていた。




 私の想像する召喚された勇者像をぶち壊しにしたキーレを私は許さない。




 勇者としての恥を知れと、私はあのキーレに私の靴底を舐めさせたのだ。




 ヴァネッサにも成し遂げることができなかったことを、私は成し遂げたのだ。ヴァネッサのあれは、いつも遊び半分だったが、私のは、遊びではないぞ。




 そう、あのとき本当に私の靴底を舐めざるを得なくなったキーレの屈辱的な顔が今思い出してもぞくぞくしてくる。


 私は優越感に浸る方法を知った。あのキーレに悔い改めるチャンスを何度もやったのだ。




 私はお前の弟でも何でもないとあいつの髪をひっつかんでやった。


 お前には処刑される未来しか残されていない。ならば私に謝罪すれば、エリク王子に処刑の期日だけでも伸ばしてやるように代わりに頼んでやるとな。




 ははは、まあ実際頼んでも拷問の日数が増えるだけだったがな。


 エリク王子も悪趣味をしておられた。私は奴のうめき声だけでも楽しめるというのに。




「時は満ちたようだな」


 かつての仲間を次々に処刑しているとの忠告はリフニア国から受けている。おそらくママたちドラゴンを放ったのも元勇者キーレの仕業だろう。




「もう私はお前の弟分でも何でもないぞ。何度でも悔い改めさせてやろう……キーレ」




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