表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/84

26.破裂魔法

 指を鳴らしてヴァネッサは手に炎を浮かべる。また火あぶりにする気か。芸がないな。




 先にその炎消しときますか。指で弾く動作をすると、切断魔法で鎖も束縛魔法も即、切断だ。




「焼け死ね色欲勇者!」


「骨折魔法っと」


 ヴァネッサが投げつけた火あぶりの火種を左手で受けると、軌道がそれる。




 炎も骨折? って思うが、骨折魔法って実は屈折魔法の延長線上にあったりする。でも、屈折って響きが嫌だし。骨折魔法でいいや。




「続いて、お見せしますのは。処刑をお楽しみいただきたい皆様へ向けてのサクリファイス! 破裂魔法。内臓破裂」


 彼女の腹って、痩せていて小さなへそがかわいいよね。そっと手を押し当てると、ヴァネッサが顔をしかめる。


「うぶぼはっ」


 腸が弾け飛び、胃や肝臓も砕かれた状態でまき散らせる。どす黒い血でいいねぇ。魔女様にはぴったりだ。処刑場の見学者の皆様はどよめいておりますねぇ。




「俺を愛さないってずっと言ってたよな。別にいいよ。俺、マルセルが好きだから。でもさ、俺を愛せない女って不幸な死に様になるって知ってた?」




 ドS同士って本当に相性悪いよな。どちらかが死ぬまで決着がつかないんだから。


 この女、処刑前にも俺に、二回も火をつけてるんだ。もう顔も見たくない。




「顔面破裂魔法」


 ヴァネッサの苦しそうな顔。まぶたの上に手をかざすと、彼女の両目が中心に寄る。続いてこめかみから血が噴き出る。目が落ちくぼんで、顎から歯が弾け飛ぶ。


 頭蓋骨と脳髄が、混ざって赤色と灰色の液体が服にかかった。




 処刑場は大混乱になった。


「王子見てるか? 俺はここだぞ」


「衛兵! 騎士団、何をしておる! 魔女がやられることも想定して訓練しておったろう」


 モルガン、何を今更慌てているのか。俺は逃げる気はないぞ。エリク王子を見つけて痛めつけてから帰ってやってもいいんだ。




 また、弓矢が飛んでくる。追いかけっこか? 市民に当たっても知らないぞ。わざと、逃げ惑う観衆の中に飛び込む。




「っくはははは! みんな殺せよ! 俺の死に期待した奴ら、みんな処刑対象だ」




 俺は降ってくる矢をよけながら、手当たり次第に手でそこら辺のモブを破裂魔法の餌食にする。


 頭部破壊って、花火の打ち上げみたいで楽しいよな。深夜の惨劇にはぴったりだ。


 一瞬でも俺の死を願ったやつはもれなくサクリファイスだ!




「え、リディ」


 突然、俺の指先にリディが飛び出してきて止まった。危なく処刑(サクリファイス)だ。


「何で邪魔するんだよ。っち」




 女神フロラ様は例えアナログばばあだとしても、全てお見通しということか。エリク王子も見つからないし、一旦引き揚げるか。




 矢は人々を巻き込んで、まだ降ってくるしな。俺とやってることが同じだろうがよ、ノスリンジア国の魔弾の弓兵さん方。




 え、俺の脇腹に何かが刺さってる。痛みも感じなかった。矢だ。一本、後ろから射られてる……。




 だ、だけどこれ、魔弾の弓兵の矢だよな。それなら、全部かわせるのに、ど、どうして。 これ、よく見たら何か塗られている。




「ま、まさか、毒矢。俺に気づかせずに? こんなことができるのは……」




「私は森で隠れているつもりないから」




 処刑場の混乱の最中、風で舞う白い髪は見間違いようがない。月光の下の美人至上主義エルフ。

「……アデーラ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これは読み止まらない(笑)。主人公のサクサク具合がいい! 演者としての振る舞いがカッコイイ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ