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砂金集め

 砂金収集隊は、ついに目的地にたどり着くことが出来た。一面の砂浜。初めて見る海だった。


 「ロラン様。どうやらここが目的地のようです。いかがしましょう? 早速調査を始めますか?」

 僕は頷くと、ガーフェは手際よく部下に指示を出して、貝殻集めを命令していた。


 ……貝殻集め? 砂金の調査をするのに貝殻集めちゃうの? なんか想像と違うような。ニッジも横に頷いているところを見ると、問題はないようだ。とりあえず、様子を見よう。


 一時間もすると大量の貝殻が目の前に集められていた。ジャックが興奮しているのは言うまでもないが、これをどうするの? あ、一つずつ砂を掻き出すのね。随分と手間のかかることを。


 「ロラン様。見てください。砂金ですぞ。やはり、この砂浜には砂金があるようです」


 その報告をしてくるガーフェは笑みに満ちていたが、僕は首を傾げていた。

 「ロラン様。なにか、問題でもあるのでしょうか?」

 「砂金があるのは嬉しいんだけど、ひと握りの砂金を集めるにすごく時間がかかるよね?」


 ガーフェの表情はぽかんとしたものだった。


 「そんなものなのではないでしょうか? それこそ簡単に採れてしまっては、王国が放置しないと思いますが。とりあえず、一月ほど掛ければ一握り程度にはなりましょう。それで食料を買えば、それなりの量になるでしょう。今までを考えれば、かなりの効率ですぞ」


 そういうものなのかな? やっぱり、ニッジの言っていた道具作りを急いで作らせたほうが良さそうだな。


 「ニッジ。道具作成をしてもらえないか? なんとか数日中に完成させてくれると助かるんだけど」

 「無理言うなよ。王国の秘密に迫るのに数日でやれだなんて……まぁ、努力はしてみるけど」


 ブツブツ言いながら、ニッジは材料を集めるために森に向かって歩き始めた。

 「ララもすまないけど、ニッジを手伝ってくれないかな?」

 「サボってたら殴ってもいい?」


 「ララはニッジが嫌いなの?」

 ララは首を横に振った。


 「嫌いじゃないけど……なんとなく」


 なんとなくか……それじゃあニッジが可哀想になるな。

 「なるべく殴らないでやってくれ。多分、ニッジも頑張っていると思うからさ」

 「分かった」


 ララは拳をなでながら、ニッジの後を追って、森に入っていった。大丈夫かな? なんか不安になる。さて、僕も砂金収集の手伝いをするかな。そういえば、ニッジは砂金は川の下流に溜まるって言っていたな。


 「ガーフェ。この辺りに川はないかな?」

 「川ですか? 私もこの辺りに詳しいわけではないのですが、今のところ調査範囲ではそのような報告はありませんな」


 残念だ。川があれば、そこから調査が出来たんだけど。この広い砂浜から麦よりも小さい砂金を探すなんて途方もない作業だな。何か簡単な方法はないものかな。


 僕はとりあえず、調査隊の行動を見るために歩いてみることにした。何か発見があるかも知れないと思ったが、収穫はなさそうだ。それにしても、どうして砂浜に砂金があるんだろうか? 波打ち際で波が崩れるのを見ていると、ふと思った。


 もしかして、砂金は海からやってくるのかな? だったら、川がなくても納得だな。


 「もう少し、探索をしてみるか」


 歩き続けていると、ちょうど調査隊とは離れた場所で砂の上に水が流れているのを見つけた。川とは言えない、本当に細い水の流れ。僕は試しに辺りを掘ってみたが、砂金が出てくるようなことはなかった。そんなにうまい話があるわけがないか。


 とりあえず、水の出処を探してみることにした。もしかしたら、川に繋がるかも知れないと思ったけど残念ながら、砂浜の地下から水が吹き出しいるようだった。


 「やっぱり、この辺りには川はないか……ん?」


 水の吹き出す場所には水が溜まっていて、底がキラキラと輝いているのが見えた。底の砂を一掬いして、手の平を見ると、砂金が大量に砂と一緒に混じっていた。


 「砂金だ!! 砂金がたくさんある場所を見つけた!!」


 ガーフェに報告をすると早速、水の溜まり場を中心に砂金収集が始まった。今までと効率は一変して、大量の砂金が集められていった。しかも、ここの砂金は粒が大きいのだ。十分に手でも採れるので、砂金の収集袋にはどんどん砂金が溜まっていった。


 「ロラン様。これは凄い場所を発見しましたな。ここの量ならば、うまくいけば数年分のスラムの食料を購入する金は集まるやも知れませんな。いやはや、恥ずかしながら興奮してまいりましたな」


 ガーフェが興奮⁉ まずいんじゃないか? ここで暴走されたら……


 「いや、申し訳ありません。暴走とかではなく、純粋に楽しいということです。なので、そんなに身構えなくても大丈夫ですぞ」


 ガーフェは笑っているけど、この人の性癖を考えると油断することが出来ない。楽しい興奮がいつ、そっちの興奮にいくか……とりあえず、距離は取っておいたほうがいいな。


 僕は他の水の溜まり場の探索を再開した。こんな場所があと何箇所かあればいいんだけど……そう願っても、やっぱり叶うことはなかった。水の溜まり場というのは見つけることは出来たけど、さっきほどの大粒の砂金がある場所というのはなかった。


 それでも粒は細かいけど、たくさんあるのは間違いないんだよな。こういう場所でニッジの言っていた収集の道具があれば、採れるんだろうけど……ニッジ、出来るのかな?


 ……そういえば、こういうのに土魔法って使えないのかな? たしか、土魔法って鉱物に作用するって勉強したっけ。金も鉱物の一種と考えれば、出来なくはないはずだ。


 砂金……やってみるか。魔力を体に循環させ、手に集める。イメージは金を砂から分ける。魔力を解き放つと、地面からキラキラとしたものが手のひらに集まるように上がってきた。魔力が放たれ続けている間はずっと金が手のひらに集まる。


 すると、不意に気持ち悪くなり、魔力を放出するのを止めた。


 「これが僕の今の限界かな? でも、かなり砂金が集まったぞ」


 砂金を適当な袋に入れて、調査隊がいる場所にいくことにした。


 「ガーフェ。ちょっといい?」

 「はい。なんでしょうか?」


 僕は集めた砂金を見せた。一握り程度の砂金があると思う。


 「これはどうなさってのですか? 我々でもようやく一握りというのに」

 「魔法を使ったんだよ。結構うまくいったけど、一回で出来る量はこれが限界かな」


 ガーフェは砂金の入った袋と僕の顔を何度も見て、唸るように考える姿勢を取った。


 「さすがロラン様というべきでしょうか。その歳でこれほどの技術がおありとは……して、その砂金はいかがなさるおつもりですか?」


 いかがもなにも……当然、スラムのものにするつもりだけど。

 

 「それはいけません。スラムのための砂金は我らが集めましょう。その砂金はどうか、ご自身のためにお使いください。おそらく、ロラン様には今後、必ず必要になる時が来ましょう。そのときのために、どうか」


 ガーフェから砂金袋を戻され、「我々への気遣いは不要です。それにロラン様が見つけてくださった水たまりで十分な砂金は得られましょう」


 なんとかく言いくるめられてしまったが、ガーフェが問題ないというのであれば、僕が預かっておくことにしよう。何かあった時に使えるお金があれば安心感が違うからね。ただ、問題は師匠からどうやって守るかだ。最近、高給な酒を飲みたいと言っていたから……こんな砂金があったら使われてしまうだろうな。そんなことに躊躇がないのが師匠だ。


 といっても自分で持ち歩くのもな……どうしたものか。すると、ガーフェが声を掛けてきた。


 「ロラン様。そろそろ野営の支度をしたいと思います」

 「うん。分かった。ちなみにどれくらい野営の予定なの?」


 「砂金が発見されることを想定していなかったのですが、明日より本格的な野営地の構築をします。それが終わり次第なので、あと一週間は」


 やっぱり時間はかかるもんだね。まぁ、その間に土魔法で砂金集めをしておこう。魔法の練習にもなるしね。一週間という時間は瞬く間に流れていった。その間、ニッジは宿営地に戻ることもなく、ずっと道具作りをしていたらしい。結果は残念ながら失敗に終わってしまったらしい。


 「ニッジ。残念だったね」

 「もうちょっとで完成するところだったんだけどな……ロランが見つけたっていう水の溜まり場より収集量を早くするつもりだったんだけど、無理だった。もう少し時間があればな」


 流石だな。たった一週間で手応えを感じるまで道具づくりが進むとは。工作の技術も高いのかも知れないな。


 「ところで。その重そうな袋はどうしたんだ? 果物でも入っているのか?」


 そういえば、僕が土魔法で砂金集めをしていることはニッジに伝えてなかったっけ。


 「砂金だよ。魔法でやってみたらうまくいったんだ。一週間でこれしか出来なかったけど……ってニッジ、どうしたの?」


 「道具作りに一週間かけている間に、ロランはそれほどの砂金を集めたというのか……なんだろう……なんか気持ちが落ち着かないな。別に道具要らなくないか?」


 ニッジが凄く落ち込んでしまった。僕の魔法では大した量が採れないこと、誰でも使える道具があれば、作業が捗ることをなんとかニッジに説明して、ちょっとは落ち着きを取り戻してくれた。


 「絶対に道具を完成させてやる!! それまではスラムには帰らないぞ!!」


 急に燃えだしたニッジを止められる者はいなかった。仕方がないので僕も付き合うことにした。結局、一月という長い間、砂浜で暮らす羽目になった。その甲斐あってか、ニッジは見事な収集道具を完成させ、効率を飛躍的に向上させた。


 砂浜にある砂金も回収可能となり、恒常的にスラムに大量の砂金をもたらすことになった。僕も魔法で砂金を集めたおかげで大袋の砂金袋を持ち帰ることが出来た。


 短期間で大金持ちになってしまった。

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