魔術ギルド
「さあ行こうかアレン」
アレイシアが声をかけた。
アレイシアは魔術師らしい黒のローブを着込んでいる。一見地味だが、アレイシアの美貌があれば神秘的に見えてくる。
僕は顔の熱が高まっていくのを感じた。
今日はアレイシアと街に出かける。
アレイシアは外に出ると僕の手を握る。
これはアレイシアの使う転移の為なのだが、僕はそれだけで胸が高鳴る。
アレイシアが手を掲げると一瞬で周りの情景が変わった。
目の前には城下街が広がっていた。
僕は初めてこんなにも人が溢れるような場所にきた。
こんなに人が多いと人に酔ってしまいそうだ。
僕の様子を察したのかアレイシアは一度離した手を再び握ってきた。
現金なもので、それだけで僕は周囲の人が気にならなくなってしまう。
アレイシアに連れられてやって来たのは魔術ギルドだった。魔術師ギルドに入るとみんながアレイシアに注目した。
「黄昏の魔女」
誰かがそう呟いた。ギルド内にいたものは皆、静まり返った。
「こないだの依頼だが、完了した。報酬を用意してくれ。」
アレイシアはそんな周りの反応もどこ吹く風でギルドの職員の女性に声をかけた。
「す、少しお待ち下さい。ただ今、ギルド長に連絡させて頂きます。」
職員は慌てながらアレイシアに返した。
しばらくすると、ギルド長らしき人物が降りて来た。体格は細く少し前髪が薄い中年だった。
「依頼を完了したということだったな。御苦労。
少しこの後、話はできないだろうか?」
「いや、私は忙しいから遠慮するよ」
アレイシアはギルド長に対して素っ気なく返答する。
「それは残念だ。ところで、隣の少年は誰かな?」
ギルド長は私に目をやる。
「ああ、私の弟子だ。」
アレイシアがサラッと答えるとギルド内が騒めいた。
「あの黄昏の魔女の弟子だと!?」
「弟子なんて今まで聞いたことがないぞ!?」
ギルドにいた人々がそう騒ぐ中、ギルド長は僕をじっと見ていた。ギルド長の冷たい目に僕は背筋が寒くなった。
「彼が弟子か。見たところあまり才能があるようには見えないが。」
「ふん、お前程度にこいつの事が分かる訳ないだろう。こいつ、アレンは私を超える魔術師になるよ。」
アレイシアはギルド長を鼻で笑い、自信満々に答えた。
「なるほど。それは楽しみだな。」
ギルド長は冷めた目でそう言った。
だけど、ギルド長の目で寒くなることはもうない。
師匠の言葉に僕の身体がどんどん熱くなっていくのを感じた。