魔力の制御
このままじゃ駄目だ。
僕は夜中に家を抜け出し密かに個人練習を行う。
夜中に攻撃魔術を放つ訳にはいかないので、魔力を使った身体強化の訓練をする。
身体強化は魔力の制御の基礎だ。
魔力を全体に均等にめぐらせることで身体能力を倍以上に高めることができる。
「身体強化は上手くできるんだけどなあ」
身体強化は夜中の練習もあってかアレイシアに褒められるぐらいにはなっている。
しかし、一点に集中して放つ攻撃魔術になるとどうしても威力が分散してしまう。
『黄昏の魔女』アレイシア。世界最高の魔女といわれる人物の弟子がこんな体たらくではいけない。
僕はそんな焦りに駆られていた。
「アレン。デートに行かないか?」
アレイシアの言葉に僕は飛び跳ねた。
「明日、街に用事があるんだ。一緒に行かないか?」
「行きます!」
僕は即答で返事をした。
アレイシアと一緒に出かけるなど初めてのことだ。
ましてや、『デート』という単語に僕の胸は高鳴っていた。
僕はアレイシアのことを尊敬している。
魔物に襲われ死にそうになっていた時、彼女に助けられて今ここにいる。
本人は気まぐれで助けたと言っていたが、助けられたという事実は変わらない。
そんな彼女を僕は師匠として、1人の人間として尊敬している。
僕はアレイシアのことを愛してる。
彼女と一緒に過ごしている内に彼女の可憐さ、そしていつも優しく、時に厳しく、自分に教えてくれる彼女に僕は恋をしていた。
そんな彼女に答えたい。その気持ちは魔力の制御も上手くできない僕に、より、焦りを生ませる。