魔女の弟子
「師匠おはようございます。」
階段から降りてきた女性に僕は声をかける。
女性の名前はアレイシア。僕の師匠であり、命の恩人だ。
「おはよう。アレン。」
答えるアレイシアは寝起きにも関わらず気品に溢れ、身に纏う髪色と同じ赤のネグリジェは彼女のスタイルの良さと相まって女神のような美しさだ。
「どうした。師匠相手に欲情でもしたか?」
アレイシアに見惚れていた僕はアレイシアの妖艶な目線に思わず目を逸らしてしまう。
「ははっ。アレンは本当に可愛いな。」
アレイシアの笑いに僕は少しムッとする。
「僕だってもうすぐ12歳です。もう子供じゃありません。」
「12歳なんて120歳の私からしたら赤子のようなものだよ。」
アレイシアは僕をあしらうように答えた。
アレイシアの弟子になりもうすぐ1年が経とうとしていた。最初こそ素っ気なかったアレイシアとも今ではこうしたやり取りもできるようになった。
ただ、魔女の弟子としてはまだ未熟だ。
どうやら僕には魔術に必要な魔力があまり多くないようだ。
そのため、いまだに初級魔術しか使えないでいる。
今は魔力の制御の修行に励んでいる。
魔力の制御を高めることで中級や上級の魔術を少ない魔力で扱うことができる。
僕は目を瞑り集中する。
魔力を身体にめぐらせる。魔力を右手にこめる。
「ファイアーボルト!」
僕の右手から飛び出た火の玉が10メートル先の的に命中する。的の中心は少しこげ黒ずんでいた。
「制御しすぎようとし過ぎて威力が弱くなりすぎだね」
アレイシアの指摘に僕は押し黙る。
「一方を意識しすぎだ。アレンは真面目すぎるね。
真面目は魔術師として致命的だ。」
アレイシアの言葉に僕は何も返せず、悔しさから俯いてしまった。
魔術師として致命的。その言葉がトゲのように僕の胸に刺さった。
「まあ私はアレンのその真面目さが好きだけどな。」
アレイシアのその言葉はアレンに届いていなかった。