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廻り回って輪廻転生  作者: 和光雅宜
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第一章 第九話 盗賊ギルド

 




「今.......何をしたの?」


 リンがおそるおそる聞いてくる。


 俺の《思考加速(リフレクシス)》の世界の加速についてこれなかったようだ。

 まぁ今のは自分の実力がどんなものか知りたかったから全力でやったし、それが目に映ってたらだいぶ自信なくす。


 それよりも恐れられていることをどうにかしないとな。

 あらぬ疑いがかけられると中々に面倒だ。

 一応、俺は記憶喪失という設定なんだからな。


 かと言って変に取り繕おうとすれば、ますます怪しくなりこの屋敷にいるのは困難になるだろう。


 なので.......


「剣で切った、以上」


 馬鹿正直に話してみた。


 案の定、彼女は理解できないといった顔でこちらを見ている。


 見たところ、戸惑い1割、驚愕2割、困惑7割と言ったところか。


「あんた、なんか記憶を持っているの?」


 当然の事ながら聞かれた。


 まぁ当たり前だしここで聞いてこなかったらいよいよこの世界に失望していたところだ。


「いいや、まだ全く」


「嘘だ」


「嘘じゃないよ。だって最初からこんな力があることを知っていたら、森の中で呆然としていないよ」


 記憶が最初からあったのならばわざわざこの屋敷に来ない。しかも完全に意識を失っていたのだから演技でもない。


「.......今記憶が戻ったという可能性は?」


 .......こいつ、ただの脳筋だと思ったら意外と頭が回るじゃないか。

 普通に今まで馬鹿だと思ってた。


「うん、確かにない訳では無い。ただ、記憶が本当に戻ったなら自分の家族や知人の所に向かうはず。そのためには少なからず一定の賃金が必要だ。そうはせずにこの屋敷に残っているのはとてもリスキーだしあまりメリットを感じないが?」


 そう言うとリンは完全とは言えなくとも納得した様子で、


「確かにそうかもね.......」


 そう言ってくれた。


 先程リンにはああ言ったが、これが俺が賊を倒した最大の理由だ。


 相手の目を欺く。


 その時の最も有効なやり方は、自らに損があるように"見せかける"ことだ。


 "見せかける"だけでいい。


 そして俺らが話終えたと同時に、


「リン! 無事だったんですね!」


 リーエルさんが心配したと言いながらリンに抱きついた。


「お母様.......うん、ちょっと危なかったけどね。レイが助けてくれたんだ」


「僕は何もしてませんよ。偶然賊が来たので、偶然倒してしまっただけですから。」


 リンがじっとこっちを見てきた。

 知らないふりが一番。


「.......倒した?」


 対するリーエルさんも怪訝そうに俺を見てきた。

 そして廊下の片隅に置いてある賊の姿を見て、


「なっ?!」


 急いで賊に駆け寄り顔を何度も確認してから


「本当に倒したんですね.......」


 再び俺に目を向けた。


 やはりその顔は驚愕に染まっていた。


「あなたは誰を倒したのか分かっていないんですよね?」


 随分と回りくどい言い方だな。

 ハッキリと俺の記憶があるんじゃないかと聞けばいいのに。


「もちろん分かりませんよ。もしよかったら誰なのか教えてくれませんか?」


 実際俺もこの男について何も知らないし、聞いておくだけ損は無いだろう。


 するとリーエルさんはリンに目配せをした。

 まるで俺の言葉が真意かどうか問いかけるように。


 リンはそれに対して首を横に振った。

 本当に記憶が戻っていないという意味だろう。


 リンにはさっき説得したからそうしてくれると思っていたが、少し不安だったのは否めない。


 その様子を見て、リーエルさんはしばらく考え込んでいた。

 実の娘であるリンが嘘を言っていることも考慮するとは、手厳しいな。


 まぁ俺が暗示の魔法を使わなかったとも限らないしな。そんなものがあるかは知らんが。


 少ししてからリーエルさんは顔を上げた。


 最終的に俺がリンを説得した時と同じような結論に達したのか、俺を真正面から見据えて話し始めた。


「この男は世界最大の盗賊ギルド『ローベル』のボス、ローベルの右腕です。一応名前はいくつかありますが、どれが偽名でどれが本名なのか分からないので皆、ローベル・ライターの名で呼んでいました」


 なるほど.......やはりだいぶ強い奴だったらしいな。

 リンに勝てたということはそうなんだろうと思っていたが。


 世界最大の盗賊ギルドのローベル・ライターか.......


 そんな男に誘われたんだったらそれなりの地位を確保できたはずだ。勿体ないことをしたな。

 今度探ってみるか。


「ローベル・ライターはその地位と同じく、とても高い戦闘能力を持っていました。元々はそれなりに幸せな家庭を築いていたそうですが、国からの強制出兵を受け戦争で重傷。なんとか生き残り兵士なき戦場をさまよっていた所、ローベルにその戦闘能力の高さを評価され右腕となった。というのが一般的な話です」


 ん?

 それは妙だな。


「どうしてそんな詳細が分かっているのに捕まっていないんだ? 出身場所ぐらい直ぐに分かりそうだが」


「主に理由は二つあります。一つ目は単純にローベル・ライターが強すぎるからです。やっと見つけたと思っても一瞬で蹂躙されてしまうので意味がないんです」


 確かにあの強さだったら並のものは相手にならないだろう。


「もう一つは彼の家族がどこにいるか分からないからです。先程ああは言いましたが彼の元の住んでいた家は既に潰れていました。働き手である父がいなくなったのが原因だと思われています」


 なるほど。

 彼のことが少しでも分かれば近づけたかもしれんが、情報源が潰れていては聞き出すものも聞き出せない。

 上手い具合に行き詰まってた訳か。


「そしてそんな彼をあなたが倒してしまったってわけよ」


「うん....... そうすると?」


「盗賊ギルドローベルは世界有数の巨大ギルドのひとつよ。盗賊なんてついているから不名誉なものだと勘違いされがちだけど、表向きは真っ当な盗賊職ギルドよ」


 リンがそう言い、


「巨大ギルドの右腕、つまり主戦力が倒されたってことです」


 なるほど。

 あとは想像に難くない。


「巨大ギルドの主戦力を失ったことによるパワーバランスの崩壊か....... 面倒臭いことになったなぁ」


「あんたのせいでもあるけどね」


 容赦のないツッコミ.......


 しかしまあパワーバランスの崩壊っていうのは馬鹿にできない社会的影響があるからな。

 地球でもアメリカがかろうじて世界の均衡を保っていたが、ちょっとした拍子で経済力が落ちたらどえらい事になっていた。

 具体的にはロシアとかイギリスとかドイツetcが世界の覇権を握ろうと小競り合いを起こし、最終的には戦争もんだ。


 それだけパワーバランスは馬鹿にできない。


「どこかしらで何かが起こるだろうな。」


「厄介だね.......」


 その場の空気が少し暗くなり始めたところでリーエルさんが、


「それより、賊を倒したお礼をしないといけませんね」


 俺にそう話しかけてきた。


「いえ、偶然その場に居合わせただけなんで。あそこでああしないと僕の命も危なかったですし。パワーバランスだって崩れてしまいますし.......」


「それでも、我が家を救ってくれたのは変わらぬ事実です。シェイル家の名にかけて、お礼をさせて下さい」


 一応この家は名家だもんな。

 こういうのは断るほど失礼なやつだ。


「はぁ....... じゃあお願いします」


「はい、喜んで。何をお望みですか?」


 .......ここはあえて遠慮なく言ってみる。


「そうですね。僕はこの後行く宛がないので、記憶が戻るまでの間この家にお邪魔してもいいでしょうか?」


 この世界の知識も欲しい。

 これだけ屋敷が広いんだから書庫ぐらいあだろう。


「そんなことでしたら喜んで」


 .......思ったよりもあっさり受け入れられたな。


「そんなにすぐ決めてしまっていいのですか?」


「大丈夫ですよ。普通家の名にかけて誓ったことはもっと凄いことに利用されます。例えば、リンを嫁に貰うとかですね」


「ちょっと?!」


 だいぶ覚悟を決めていたらしい。

 なら.......


「それじゃあ今後ともお世話になります」


 今後の活動場所が決まった。








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