桔梗
「君が華の話していた幸か···」
凄い剣幕だったため、とっさに声が出ず、頷くだけの形になった。だが、桔梗帝は満足だったらしく、はぁーと息をついて座りこんだ。そして途端、ガッと肩をつかんできた。なんだこの親子。いきなり肩を掴むのが趣味なのか。ちょっと引いていると
「華を愛してくれるか?君に頼みたいことがあるんだ。」と言ってきた。
愛するなら、家族愛でもいいなら愛せるし、帝からの頼み事は断れるはずがないため、とりあえず頷いた。
「あやつは、君の事を朝顔と重ねておる。朝顔はこの世にいないというに。きっと君なら華を愛せる。華から愛される。あやつは、自分では気づいてないが、君のことを好きになれるのだ。都にはどうも本物の愛が足りぬ。少なくとも正室とは、愛し合ってて欲しいのだ。意味はわかるな、頼めるか?」
「桔梗帝、僕は君じゃありません、幸です。桔梗帝が名前を呼んでくだされば、きっと頼みは受けましょう。」
「ああ、すまないな、幸。頼む。あと、私のことも桔梗帝ではなく桔梗と呼んでくれぬか?」
「帝と頼みでもそれはちょっと···」
「菫も朝顔でさえも呼んでくれなんだ。」
「分かりました、桔梗さん。これでよろしいでしょうか?」
満足そうな笑顔を浮かべた桔梗さんはさっさと部屋を後にされた。
僕はまだ知らない。
週3のペースで桔梗さんが会いに来ることになることを。